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相続発生後の葬儀費用は誰が負担する? 相続財産から支払いはできるか?

2021年06月15日
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相続発生後の葬儀費用は誰が負担する? 相続財産から支払いはできるか?

人口動態統計のデータによると、2019年の新潟県内における出生数は1万3640人(前年比869人減少)、死亡数は30572人(前年比504人増加)でした。

親族が亡くなった場合、葬儀代としてまとまった金額の支出が必要となります。そのため、最終的に誰が葬儀費用を負担するかは、相続人間で比較的揉めやすいポイントかもしれません。相続人間の公平の観点からは、いったん相続財産から葬儀費用を支出するのがよいように思われますが、その場合には手続きや注意点を事前によく理解しておきましょう。

この記事では、「相続と葬儀費用」の関係性について、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「令和元年人口動態統計(確定数)の概況を公表します」(新潟県))

1、葬儀費用は誰が負担すべきか?

葬儀費用を誰が負担すべきかについては、金額がある程度高額になることもあり、相続人間で揉めやすいポイントのひとつです。

この点について、法律上は葬儀費用の負担者について決まったルールはありません
そのため、基本的には相続人を中心とした身内で話し合って、誰が葬儀費用を負担するか決めることになります。

なお裁判例上において、葬儀費用は「葬儀を主宰する者」が負担すべきという考え方が示されています(東京地裁昭和61年1月28日判決)。
しかし、そもそも誰が「葬儀を主宰する者」にあたるかについての明確なルールはないため、結局は親族間の話し合いで葬儀費用の負担者を決める必要があります

2、相続財産から葬儀費用を支払いたい場合の手続き

葬儀費用を賄うために、相続財産に含まれる預貯金などを活用したいという場合もあるかと思います。
その場合には、一定の手続きを踏むことにより、相続財産中の預貯金を引き出すことが可能です。

葬儀費用に充てるために相続財産中の預貯金を引き出す方法としては、以下の3つの方法があります。

  1. (1)金融機関に相続人全員の同意書を提出する

    相続財産中の預貯金は、遺産分割未了の段階では、相続人全員の共有財産です(民法第898条)。したがって、「相続人全員の同意」があれば、処分することが可能になります(民法第251条)。

    大抵の金融機関では、相続人全員の同意が確認できれば、凍結中の被相続人口座から預貯金を引き出すことを認める運用を行っています。
    そのため、預貯金引き出しする際には、相続人全員の連名で同意書を作成し、金融機関の窓口へ提出します

    なお、金融機関内部で審査に時間がかかるケースもあることに注意が必要です。

  2. (2)預貯金の仮払い制度を活用する

    相続人全員の同意が得られない場合でも、葬儀費用に充てるために相続財産中の預貯金を引き出す方法はあります。
    そのひとつが「預貯金の仮払い制度」を活用することです。

    預貯金の仮払い制度を活用すると、相続人の当面の必要生計費や葬儀費用などに充てるための金銭として、以下の金額を被相続人の預貯金口座から引き出すことができます(民法第909条の2)。

    預貯金の仮払い金額
    =相続開始時に遺産に属する預貯金債権額×3分の1×当該共同相続人の相続分
    ※同一の金融機関に対する権利行使は、法務省令で定める額(150万円)を限度とする。


    預貯金の仮払い制度は、他の相続人の同意を得ることなく、共同相続人が単独で利用できる点が最大の特徴です。

    なお、預貯金の仮払い制度によって共同相続人が行使した預貯金債権は、当該共同相続人が遺産分割によって取得したものとみなされます。

  3. (3)家庭裁判所に対して、預金債権の仮分割の仮処分を申し立てる

    相続人間において遺産分割の審判・調停が係属していることなどを条件として、預貯金の仮払い制度で認められる上限額を超えて、相続財産中の預貯金を使用したい場合には、家庭裁判所に対して仮処分を申し立てる方法も考えられます。

    相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁(金銭の支払い)などのために、遺産に属する預貯金債権を行使する必要がある場合には、相続人などの申し立てにより、家庭裁判所がその者に預貯金債権を仮に取得させることが認められています(家事事件手続法第200条第3項)。

    ただし、これはあくまでも仮の保全処分であり、後の遺産分割協議や遺産分割審判などによって、取得した預貯金の一部を返還しなければならない場合もあります

3、相続税計算の際に控除できる葬儀費用の範囲は?

相続人が承継した遺産に対しては相続税が課税されますが、「合理的な範囲の葬儀費用」については、相続税計算の基礎となる遺産総額から控除することが認められています(債務控除)。

ただし、国税庁の取り扱い上、葬儀にかかった費用の中には、相続税計算の際に控除できる費用とできない費用の両方が存在することに注意しましょう。

  1. (1)葬儀費用に含まれるもの

    相続税計算の際に控除できる葬儀費用に含まれるものの例は、以下のとおりです。

    1. ① 火葬・埋葬・納骨をするためにかかった費用
    2. ② 遺体や遺骨の回送にかかった費用
    3. ③ 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(通夜の費用など)
    4. ④ 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
    5. ⑤ 死体の捜索・死体や遺骨の運搬にかかった費用
  2. (2)葬儀費用に含まれないもの

    これに対して、相続税計算の際に控除できる葬儀費用に含まれないものの例は、以下のとおりです。

    1. ① 香典返しのためにかかった費用
    2. ② 墓石や墓地の買い入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
    3. ③ 初七日や法事などのためにかかった費用

4、葬儀費用について発生しがちなトラブルへの対処法

葬儀に関連する費用については、負担者の決定方法をはじめとして、さまざまなトラブルが発生することが多くなっています。

もし葬儀費用に関するトラブルが発生してしまった場合には、地域の習俗などに加えて、法律上のルールや取り扱いを踏まえて適切に対応することが必要です。
以下では、葬儀費用に関するよくあるトラブルに対する対処方針の目安を解説します。

  1. (1)誰が喪主を務めるかで揉めてしまった

    被相続人の葬儀の喪主を誰が務めるかは、葬儀費用の問題にとどまらず、家族として体面にも関わるため、親族間で話し合いがまとまりにくいポイントのひとつといえます。

    喪主を誰にするかについて法律上のルールは存在しないため、地域の習俗や親族の考え方に合わせて決めるほかありません。
    可能であれば、被相続人の生前から、喪主を誰にするかを親族間で話し合っておくとよいでしょう

    なお、喪主を務めた人が必ずしも葬儀費用をすべて負担しなければならないわけではなく、むしろ親族間で葬儀費用を適切に分担する方が、公平の観点からは望ましいでしょう。

  2. (2)香典を誰がもらうかで揉めてしまった

    香典は、法的には「葬儀主宰者に対する贈与」と解されています。
    したがって、香典を受け取るべきなのは、基本的には喪主であると考えられます。

    ただし、葬儀主催者が誰であるかは実質的に判断されるべきとされています(東京地裁昭和61年1月28日判決等)。
    たとえば、形式的に喪主の席に座っただけで、葬儀費用を全く負担してない場合には、香典を受け取るべき葬儀主宰者には当たらないと判断される可能性が高いでしょう。

    いずれにしても、香典は実質的に葬儀費用の補塡(ほてん)としての意味を有するので、葬儀費用の分担に応じて受け取るのが公平と思われます。

  3. (3)葬儀費用の金額について相続人間で合意できない

    葬儀に誰を招待するか、どのような葬儀プランを手配するかなどによって、葬儀費用の金額は大きく異なります。
    最終的に相続人間で葬儀費用を分担するならば、葬儀費用の金額について相続人が合意しなければなりませんが、意見の食い違いによりなかなか合意できないことも考えられます。

    葬儀費用の金額についてのもめ事を回避するには、やはり被相続人の生前から時間をかけて、相続人同士で話し合いを行っておくことが望ましいでしょう。
    もし相続人間で葬儀費用について合意する時間がなく、いったん誰かが葬儀費用を立て替えざるを得ない場合には、後で他の相続人に対して負担を請求するため、領収書などを保管しておきましょう

  4. (4)葬儀費用を相続財産から支出した場合、相続放棄できなくなる?

    相続財産中に借金(負債)があることがわかっている場合、最終的には相続放棄(民法第939条)を選択する可能性も高くなります。

    しかし、相続人が相続財産を処分した場合は「法定単純承認」が成立し(民法第921条第1号)、相続放棄ができなくなります。
    この点と関連して、「葬儀費用を相続財産から支出した場合、相続放棄が認められなくなるのではないか」という問題が生じます。

    この点裁判例では、葬儀の必要性や突発性などを考慮して、合理的な範囲の葬儀費用を相続財産から支出したとしても、法定単純承認事由には当たらないという考え方が示されています(大阪高裁平成14年7月3日決定)。

    しかし、葬儀費用の金額などによっては、相続放棄が認められなくなってしまう可能性もあるので、後に相続放棄をする可能性がある場合には、事前に弁護士に相談しましょう。

5、まとめ

葬儀費用を誰が負担するかは、法律上のルールがないため、親族同士の話し合いによって決めるべき事柄です。
相続財産中の預貯金から葬儀費用を支払うことも可能ですが、手続きや法律上の注意点に留意する必要があります。

ベリーベスト法律事務所では、葬儀費用の支出も含めて、遺産相続に関するあらゆるお悩みを解決するためにアドバイスを行っています。
遺産相続についてお悩みをお抱えの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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