遺産分割協議のやり直しは可能? 再協議の可否と注意点を解説
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相続は、お金が絡むだけに、トラブルになるケースも少なくありません。新潟市役所・市民生活部は、相続などでトラブルが発生した際に、市民が無料で相談できる窓口を設置しています。
通常、被相続人が亡くなると、相続人全員の話し合いによって財産の権利関係を確定させます。これを遺産分割協議と呼びます。たとえば、「長男がすべてを相続することが当たり前」と主張されたという方もいるかもしれませんが、そのような一方的なルールで相続を行うことは法律上認められていません。
そのようなとき、当初はよく分からず遺産分割協議書にサインしてしまったものの、あとになってやり直しを求めたいと感じることがあるでしょう。協議の過程に問題があったと知れば、そもそも再協議は可能なのか、可能ならばデメリットはあるのかなど、さまざまな疑問をお持ちになるはずです。
そこで本コラムは、遺産分割協議のやり直しをテーマに、可否や注意点を中心に解説します。
1、遺産分割協議をやり直すことの法的意味
遺産分割協議は、相続人全員が署名捺印をして決定する法律行為です。原則としてやり直しができません。しかし、一定の事由に該当すればやり直すことができます。
法律行為を解除するには「合意解除」と「債務不履行解除」の2種類があります。
遺産分割協議については、相続人全員で合意すれば法律上は「合意解除」とみなされ、誰かひとりでも反対する人がいなければやり直すことができます。
一方、「債務不履行解除」については認められていません。たとえば、当初の協議において、相続人のひとりであるAが、親の介護を担当するという約束で他の相続人よりも多い割合で合意していたとします。その後、Aが親の介護をしていなかったとしても、他の相続人たちはそのことを理由に、再度やり直しを求めることはできないということです。
もっとも、相続人全員の合意があれば解除ができますが、債務を履行しないAが合意する可能性は低いでしょう。この場合、調停や訴訟を通じて履行を求めるなど、別の手段による対応が必要です。
また、そもそも協議が成立せず、調停または審判によって分割がなされていたケースでは、特殊な事情がない限りやり直しができません。
2、遺産分割をやり直すことができるケース
ここでは、遺産分割協議のやり直しができる主なケースを紹介します。
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(1)全員の合意がなかった
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、誰かが欠けた状態で合意したものであれば無効です。
あとになって新たな相続人の発覚があった場合も、同様の扱いとなります。たとえば、被相続人が認知した子どもや養子縁組をした子どもがいることが、亡くなったあとに分かるような場合も含まれます。
相続人以外を加えて協議していた場合も、原則としてその者が取得した「部分」は無効となります。ただし相続人以外の参加によって、正当な相続人が除外されているケース、協議の結果が大きく変わるようなケースのように、「全部」が無効とされることもあります。 -
(2)詐欺や強迫があった
遺産分割協議の合意は、相続人同士の契約です。したがって、その過程で詐欺や強迫があった場合には取り消すことができます。たとえば、相続人のひとりが他の相続人に対し、遺産の内容について虚偽の情報を伝えたり、遺産を一部隠していたりした場合が該当するでしょう。
遺産分割協議書が偽造されていた場合も、無効とされる可能性があります。また、強迫とは「書類にサインをしないとひどい目に遭わせる」などと、相手方を恐れさせるような害悪を告知することを指します。 -
(3)遺言書が見つかった
遺産は、遺言書がある場合には、原則として遺言書に従って協議を行い分割されます。そのため、合意後に遺言書が発見されたケースや、その存在と内容を知っていて、協議が成立しなかったような場合は、錯誤による無効を主張できることがあります。
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(4)新たな遺産の存在が発覚した
この場合、通常は当初の協議自体は有効とし、新たな遺産についてのみ協議します。これにより全体を再協議することは不要です。
ただし、新たな遺産の価値が極めて大きいような場合には、相続人全員がやり直しに合意することも想定できます。そのときは合意解除によって最初からやり直すことも可能です。
3、再協議の手続きについて
相続人全員が合意したのであれば、当初の協議と同様に手続きを進めていきます。相続人と財産を再度よく確認し、誰にどの財産を分配するのかを決めます。一堂に会することが理想ですが、難しい場合にはメールや手紙、スカイプの同時通話などを使って合意すれば問題ありません。
ただし、口約束はせず、協議の過程や結果を必ず記録に残しておきましょう。ひとりでも署名捺印の漏れがあると無効となってしまうため、確実に行いたいところです。その後、相続登記の変更手続きなどがあれば、いったん登記したものを抹消し、新たに登記しましょう。
他方、反対者がいれば再協議ができません。まずは何を根拠にやり直しを主張するのかが問題となります。当初の協議が無効であるケースはかなり限定されますし、すでにトラブルとなっているケースも多いでしょう。
この段階にあれば、裁判所に再協議を申し立てることも現実策です。たとえば協議書が偽造されていたのであれば、遺産分割協議不存在確認訴訟を、法的に無効であると主張するのであれば、遺産分割協議無効確認訴訟を起こすことになります。
4、遺産分割協議のやり直しはここに注意
協議のやり直し自体は可能ですが、安易に行うと想定外のリスクを背負ってしまうことがあります。注意点を確認しましょう。
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(1)税金の負担が生じる
特に注意すべきは税金の問題です。再協議によって得た財産は、税法上は相続ではなく、贈与や売買・交換とみなされ、贈与税や譲渡所得税の負担が発生することがあります。
特に贈与税は税率が高いため、贈与を受けた側が大きな税負担を抱えることになってしまいかねません。さらには、遺産が不動産だった場合には、再協議によって名義変更をすることで不動産取得税や登録免許税もかかります。弁護士だけでなく、税理士に相談しながら進めることをおすすめします。 -
(2)第三者の権利関係は保護される
当初の協議にもとづき取引した第三者は、原則として保護されます。たとえば、当初の分割によって不動産の名義人となった相続人が、不動産を売却した場合における買い主です。
買い主の権利は再分割によって基本的に影響を受けないよう、法で定められています。したがって、「やり直しになったから不動産を戻してくれ」とは言えません。再分割はすべてを原状に戻すものではないということを、念頭に置いておく必要があるでしょう。
もっとも、協議が強迫によって成立したなど特殊な事情があれば、取り消しを主張できるケースはあります。ただし、詐欺によって遺産分割協議が成立していた場合には、詐欺に遭ったという事実に一定の落ち度があるとみなされ、取り消しの主張は難しくなることがありえます。
5、やり直しを回避するために気をつけたいポイント
再協議になってしまった方は、今度こそやり直しが生じないためにも次の点に留意しましょう。
- 相続人や財産調査をしっかり行う
- 不明点を曖昧にしたまま協議を進めない、合意しない
- 相続に関する情報を相続人全員で共有しておく
- 協議書を確実に作成する
- 協議書の中に、あとのトラブルに備えた文言を入れておく(例:新たな遺産が見つかったら○○が相続する)
ただし、どのような事態が想定できるのかは個別の事情により異なるため、すべてのケースに対処することは難しくなります。しかし、あらかじめ弁護士に依頼しておくことで、法律上の問題点を洗い出し、相続人同士の争いが極力生じないように手続きを進めることが可能となるでしょう。
6、まとめ
一度は遺産分割協議に合意した場合でも、事情があればやり直しできることがあります。しかし、あくまでも一定の場合に限られ、単に不満が残ったという理由では難しいということを知っておきましょう。また、再協議にはデメリットもありますので、熟考したうえで臨む必要があります。
遺産分割協議のやり直しにはトラブルが起こる可能性があります。多くのケースで弁護士などのサポートが不可欠となりますので、できるだけ早い段階で相談しておくことをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでは、遺産相続に関する知見が豊富な弁護士がアドバイスを行います。状況によっては、グループ法人の税理士などとも連携し、ワンストップで手続きを進めることができます。まずはご相談ください。
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