「症状固定」を判断するのは誰? 注意すべき点を新潟の弁護士が解説

2020年05月25日
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「症状固定」を判断するのは誰? 注意すべき点を新潟の弁護士が解説

新潟市では平成31年1月だけで130件の交通事故が発生し、156人が怪我を負っています。
交通事故の怪我は、事故の規模の大小を問わず完治しづらいものが多く、つらい症状に悩み続ける方が少なくありません。治療のかいなく、症状がこれ以上改善しない場合「症状固定」と判断されて、治療を継続できなくなることもあります。損害賠償の場面では、「症状固定」後は、原則として治療費や休業損害などの項目を請求できなくなるため、症状固定の時期は慎重になる必要があります。
今回は交通事故の被害者が知っておくべき「症状固定」について、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

1、症状固定って何?

そもそも症状固定とは「これ以上治療を続けても症状が改善される見込みがない」と医師が判断することを言います。これ以上状態が悪くなることもないけど、治療してもよくなることもない、と医師が判断された場合に言い渡されることが多いでしょう。

交通事故の怪我の場合、発生直後から治療を継続することで少しずつ症状が緩和するケースが多くを占めます。しかし、一定の期間が経過すると、「不快な症状が残り、全然よくならない」という時期が訪れる場合があります。症状が残っていれば、完治させたいと考えるのが当然ですが、医学的に「これ以上治る見込みがない」と判断されると、治療をやめることを提案されてしまいます。

この「症状固定」を判断するのは医師です。しかし、保険が支払われている場合など、保険会社は、支払保険金を減らしたい、長期間解決できない案件を早く解決したいなどの思惑から、「そろそろ症状固定しましょう」、「治療を打ち切りませんか」と言った提案をしてくることが少なくありません。

2、症状固定と判断されるタイミングはいつ頃?

医師が症状固定を判断するタイミングは怪我の種類や程度によって異なります。

  1. (1)むち打ち症は6か月前後

    「むち打ち症」とは、診断書場では「頚椎(けいつい)捻挫」、「頚部捻挫」などと記載される怪我のことです。追突や衝突により、頭や腰が前後に大きく動かされたことで、首や腰などの筋肉や靭帯、神経などが損傷し、頭痛やめまい、首の痛み、手足のしびれや吐き気など人によってさまざまな症状が発生します。

    むち打ち症で通院している場合、保険会社からは早くて3か月、医師からも6か月程度で治療をやめるように提案されることが少なくありません。症状が改善されなければ、後遺障害の認定を受けることができる可能性がありますが、最低でも6か月は通院を継続していなければ、認定されにくい傾向にあるようです。

  2. (2)骨折は3か月から6か月

    骨折は剥離骨折や開放骨折(皮膚が破れ、骨が外に露出するような状態)など、重症度によって大きく異なり、治療法もさまざまなので一概にはいえません。たとえば、ギプスで固定して骨の癒合(ゆごう)を待ち、その後リハビリを必要とするような骨折の場合、元の機能が回復した頃、もしくはリハビリを続けてもこれ以上動作などが改善しない場合に症状固定となります。

    それに対して、開放骨折など、手術が必要な場合は、骨にプレートやネジなどを装着して癒合を促し、癒合後にプレート等を取り外すなどの治療が必要で、症状固定までの期間が長くかかります。

    骨折の際に周囲の組織も大きく損傷している場合は、機能の回復に時間がかかるため6か月以上を要することもあります。

  3. (3)醜状障害

    醜状障害とは、人に見られる箇所に傷痕が残ってしまうことをいいます。顔だけでなく、手、首、足なども含まれます。傷痕だけでなく、顔面麻痺による歪みや耳や鼻がかけてしまった場合も、醜状障害です。

    醜状障害にもさまざまな種類がありますので、一概にはいえませんが、切り傷を縫合した場合は、手術後6か月で状態が安定すると言われていますので、その頃に症状固定となるケースが多い傾向にあります。

    ただ、レーザー治療や移植等の治療により、時間がかかるものの状態が改善する場合はそれ以上の期間が治療期間として認められることもあります。

3、症状固定と判断された後の流れ

医師に症状固定と判断され、被害者側も納得したら「後遺障害等級の認定」を行う必要があります。被害者が症状固定に納得できない場合は、しかるべき対応が必要になります。ここでは2つのケースに分けて解説します。

  1. (1)後遺障害等級の認定を受ける場合

    症状固定の診断を受けたということは、何かしらの痛みや不快な症状が残っているということです。交通事故の怪我の場合、痛みや不快な症状が残り、治療しても改善の見込みがなく、業務や家事などに支障をきたす場合は「後遺障害」の認定を受けることができます。後遺障害は症状に応じて1級から14級に分類されています。

    後遺障害等級の認定を受けると、「通常の慰謝料」とは別に、「後遺障害の慰謝料」と「逸失利益」を受け取ることができます。後遺障害の慰謝料とは、症状が残ったことによる精神的苦痛に対しての補償です。逸失利益とは、後遺障害によって、将来発生する不利益を補償するものです。

    たとえば、後遺障害の度合いによっては業務に支障をきたし、配置転換されて給与が減額されてしまうこともあります。そのような不利益を将来にわたって補償するのが逸失利益です。

    後遺障害が認定された場合の、慰謝料や逸失利益の計算方法には「自賠責保険基準・任意保険基準・裁判基準」の3種類があり、自賠責保険が一番低額で、裁判基準が高額になります。保険会社に後遺障害の認定手続きを依頼する場合は、自賠責保険基準や任意保険基準で計算されますが、弁護士に交渉を依頼すると裁判基準で計算されます。

  2. (2)症状固定を拒否する場合

    保険会社が症状固定をすすめてきた場合は、医師の判断ではないため従う必要はありません。しかし、保険会社が治療費を支払っている場合は、一方的にその打ち切りを行うことがあるため注意が必要です。

    このような場合は、提案を受け入れる前に交通事故の取り扱い実績が豊富な弁護士に相談して、適切な対応をアドバイスしてもらうことを強くおすすめします。

4、後遺障害等級認定の流れ

後遺障害認定を受けると決めたら、後遺障害等級の認定を受けるための手続きが必要です。後遺障害等級認定の手続きの方法は大きく分けて「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。

事前認定とは、任意保険会社が被害者の代わりに手続きを行うもので、被害者本人はほとんど何もする必要がないというメリットがあります。しかし、任意保険会社は被害者の利益を最優先するわけではないので、後遺障害の認定が受けられるように手続きをしてくれないこともあり、認定されにくい傾向にあります。

それに対して被害者請求とは、被害者が直接自賠責保険会社に後遺障害の等級認定を依頼する手続きです。自分で書類を用意しなければならないなどのデメリットがあるものの、弁護士に手続きを依頼すれば、後遺障害の認定が下りやすくなるなどのメリットがあります。後遺障害等級の認定を受けたい、あるいは認定が受けられる確率を上げたいと考える方は弁護士に相談するとよいでしょう。

事前認定の手続きは、保険会社に後遺障害等級の認定を受けたいと伝えるだけで進みますので、ここでは被害者が自分で行う「被害者請求」の流れを解説します。

① 医師に後遺障害診断書を作成してもらう
症状固定を受け入れたら、主治医に後遺障害の診断書を作成してもらいましょう。どういう症状が残っているのか、客観的に後遺障害を認められるような所見があるのかが重要です。診断書だけでなく、後遺障害が生じていることがわかる画像資料があるとより認定されやすくなる可能性があります。

② 自賠責保険会社に書類を送付する
診断書や画像、などの必要な書類を用意したら、自賠責保険会社に送付します。

③ 自賠責保険会社が「損害保険料率算出機構」に書類を送付する
自賠責保険会社は、自ら後遺障害について判断するのではなく、損害保険料率算出機構という機関に後遺障害に該当するかどうか、そしてその等級の判断を依頼します。損害保険料率算出機構では、提出された資料をもとに判断します。

④ 損害保険料率機構、自賠責保険会社から被害者に結果が通知される
損害保険料率算出機構が、後遺障害に該当するかどうかを判断したら、結果を自賠責保険会社に通知します。自賠責保険会社は、被害者にその結果を知らせます。

⑤ 不服がある場合は、異議申し立てを行う
決定に納得できない場合は、自賠責保険会社に対して異議申し立てを行います。

これらの手続きを行うことで、後遺障害等級の認定が決定します。明らかにレントゲンなどで症状が残っていることがわかればよいのですが、たとえば他覚所見が少ないむち打ち症などでは、後遺障害等級が認定されにくい傾向にあります。しかし、後遺障害等級の認定の際に、さまざまな資料や検査結果などを準備、提出することで、認定されやすくする可能性があります。このあたりは被害者自らが行うことは難しいケースも多いので、専門家に依頼することをおすすめします。

5、まとめ

医師に症状固定を通知されたら、後遺障害等級の認定を検討しましょう。条件を満たしていれば、後遺障害の慰謝料と逸失利益を受け取れる可能性があります。

後遺障害の認定を受けるためには、適切な書類を作成する必要がありますので、後遺障害認定の実績が豊富な弁護士に相談しましょう。依頼すれば、今後は保険会社と直接交渉することなく、日常生活を送ることも可能です。また、弁護士に依頼することで、通常の慰謝料や後遺障害慰謝料、逸失利益の交渉もできるので、結果的に受け取る賠償金が大幅に増額する可能性もあります。

ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスには交通事故の交渉実績が豊富な弁護士が在籍しています。交通事故の被害にあわれたら、一刻も早くご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています