共有名義で不動産を相続! 知っておきたい メリット・デメリット
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相続は、誰しもが関わる可能性がある身近な法律問題です。新潟市のホームページに掲載されている「よくある相談Q&A」にも、相続・遺言に関する質問が掲載されています。
相続手続きの中でよく起こるトラブルのひとつに、不動産を共有名義で相続したことによって発生するものがあります。土地や建物などを複数の相続人で共有すると、勝手に売却・取り壊しできない、次の相続でさらに共有者が増え話し合いが難航するなど、単独の相続と比べ、さまざまな問題が生じる可能性がでてきます。
そこで今回は、不動産を共有名義で相続する場合のメリットやデメリット、そして対処法について、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
1、相続不動産の共有名義とは
「共有」とは、複数の人がひとつの物を共同で所有していることです。複数人の名義で登記することを「共有名義」、反対に単独の名義で登記することを「単独名義」と言います。
相続では、複数の相続人で遺産の不動産を共有するケースがあります。遺産の中に、同じ価格の不動産がいくつも含まれていれば、それをひとつずつ分け合うことができます。しかし、自宅とその敷地だけが唯一の相続不動産であることも少なくありません。
土地や家は、物理的に切り分けることができないため相続人の間で分配するのが難しく、しばしばトラブルの種となるのです。
不動産を共有する場合、当事者間で持分を自由に決められますが、相続では法定相続分に応じて共有することが多いでしょう。
また、不動産の使用は持分に関係なく平等ですが(民法第249条)、賃料収入の取り分や管理の権限は持分の割合に準じます。また売却・取り壊し等をするためには、共有者全員の同意が必要です。その他、賃貸・改良などの「管理」には、持分の過半数の決定が必要です。
詳細は、後述します。
不動産の共有状態は、法務局の登記簿で確認することができます。
2、共有名義のメリット
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(1)遺産分割協議がスムーズになる
不動産の共有はトラブルの種になることが多いとお伝えしましたが、メリットもあります。
ひとつ目は、遺産分割協議が比較的スムーズに進むことがあげられます。
相続税の申告は、相続開始(被相続人の死亡)から10ヶ月以内に行う必要があります。それまでに死亡届の提出、遺言書の検認、相続人の確定、相続財産の調査などの手続きを完了しなければなりません。
不動産の分配方法に時間を割いていられないという場合は、いったん、法定相続分に応じて共有名義にしてしまう方法が対応のひとつとして考えられます。 -
(2)節税効果が期待できる
共有不動産が居住用建物で、売却することを検討している場合は、全ての共有者がマイホームを譲渡したときの特別控除を利用することができます。
いわゆる「マイホーム特例」と言われる特別控除は、居住用住宅(マイホーム)を売却したときに得られる譲渡所得について、最大3000万円までは譲渡所得税が課税されないという制度です。
所定の要件を満たす必要がありますが、各相続人が特例を利用することで、節税が期待できます。
3、共有名義のデメリット
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(1)売却・取り壊し等に共有者の同意が必要
共有不動産の変更や管理をする場合は、共有者全員で集まって話し合いをし、同意を得る必要があります。
- 共有不動産の「変更」……共有者全員の同意が必要
- 共有不動産の「管理」……持分価格の過半数の同意が必要
- 共有不動産の「保存」……各共有者が単独で可能
共有不動産の「変更」とは、不動産全体の売却・取り壊しなどを意味します。
「管理」は、賃貸借契約の締結・解除などがあげられます。管理の過半数とは、人数のことではなく、持分であることに注意が必要です。たとえば、2人が反対しても、持分が2人の合計より多い1名が賛成すれば、同意したとみなされます。
最後の「保存」は、共有物の清掃・修繕などです。「保存」だけは、各共有者が独断で自由に行うことができるとされています。
なお、共有不動産の賃貸は、一定の条件を満たす場合のみ管理行為となり、多くの場合は変更行為に該当します。変更か管理なのかの判断は複雑になるので、迷われたときは弁護士へ相談することをおすすめします。 -
(2)他の共有者との間でトラブルが発生しやすい
原則として他の共有者と話し合いをしなければ不動産を変更・管理できないため、トラブルが発生しやすいのがデメリットです。
人数が増えるほどに、全員の意見や意向を統一することは、大変難しくなります。そのため、財産であるはずのものが、トラブルの種になってしまう可能性もあるのです。 -
(3)共有持分がさらに相続されると権利関係が複雑化する
各共有者の持分が、さらに次の代に相続されると、問題がさらに複雑化する恐れがあります。相続人が増えていくことで、話し合いが複雑化するだけではなく、共有者同士に面識がないといった事態が発生する可能性もあります。
持分が細分化されると、共有不動産の「変更」について全員の合意を得るのが、ますます難しくなるでしょう。こういった事態にならないためにも、できるだけ速やかに共有状態を解消するのが望ましいでしょう。
4、共有名義の対処法
トラブルを避けるためには、共有で相続した場合は、速やかに共有状態を解消することが大切です。では、共有状態を解消するには、どのような方法があるのでしょうか。
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(1)単独名義にする
単独名義にする代わりに、他の相続人に持分の代償を金銭で支払う「代償分割」という方法があります。
ただし、単独の所有者になった相続人が、十分な代償資金を持ち合わせていないことも考えられます。その場合は、被相続人の生命保険金を充てるという選択肢もあります。生命保険金を代償資金に充てるためには、生前からしっかりと対策しておくことが大切です。
家を継ぐ相続人を生命保険金の受取人にしておく、遺言書に「生命保険金を代償資金にすること」等と明記しておく、などがあげられます。 -
(2)売却して、お金を分け合う
不動産全体を売却して、その対価を法定相続分に応じて分配するのが「換価分割」です。思い出がつまった自宅を手放すことにはなりますが、相続分を平等に分配できる方法です。特に、相続人全員が遠方に住んでいる場合には、適しています。
しかし、前述したマイホーム特例が使用できないと譲渡所得税が課税されること、その他に登記手続きの費用や仲介手数料などがかかることは留意すべきです。 -
(3)土地の場合は分筆する
登記簿上、1個の土地として登録されている土地を、物理的に分割することを「分筆」と言います。共有不動産が土地である場合は分筆することで、それぞれについて独立した所有権を取得できます。分筆して別々の土地にしてしまえば、変更・管理行為にも他の共有者の同意を要しません。
ただし、手続きには土地の調査が必要です。そのための費用がかかることと、数か月程度の期間が必要になることを覚えておきましょう。
5、まとめ
相続手続きのタイムリミットや遺産分割協議の難しさ、そして代償資金の不足などから、一時的な対応として、共有名義にしてしまうケースは少なくありません。しかし、根本的な解決を先延ばしにしてしまうと、後々トラブルに発展することは想像に難くないでしょう
相続した不動産が共有名義になりそうな場合、または、すでに共有名義になってしまった場合は、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。共有名義の対応はもちろんのこと、相続関係の手続きなど、最良の方法を検討できます。また、複数名が絡む話し合いは、往々にしてスムーズに進まないことがあります。しかし、第三者である専門家が介入することで、冷静な話し合いになることが期待できるでしょう。
共有名義の相続など、相続問題の対応に苦慮されている方は、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスまでご連絡ください。状況を伺った上で、最適な解決手段をアドバイスします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています