債権譲渡とは? 債権譲渡による債権回収のメリット・流れ・注意点
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新潟日報のニュースによると、2020年度上半期(4月から9月)の新潟県内における企業倒産件数(負債額1000億円以上)は、前年同期比6件減の37件でした。
新型コロナウイルスの影響により企業倒産の増加が懸念されましたが、補助金などが奏功し、現段階では企業倒産はある程度落ち着いているようです。
取引先に対する売掛金債権などを早期に現金化したい場合は、債権譲渡を行うこともひとつの手段です。
債権譲渡は、企業の資金繰りを安定させるための有効な方法になり得るため、法律上の留意点を正しく理解しておきましょう。
この記事では、債権譲渡に関する基本的な事項や、債権譲渡によって債権回収を行うことのメリット・流れ・注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「倒産37件 30年で最少」(新潟日報モア 2020年10月11日))
1、債権譲渡とは?
まずは、債権譲渡とは何なのか、法律上どのような場合に行えるのか、対抗要件を具備するにはどうすればよいのかなど、基本的な事項について解説します。
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(1)債権者から第三者に債権を譲渡すること
債権譲渡とは、文字通り、債権者から第三者に対して債権を譲渡することをいいます。
債権譲渡に関するルールは、民法第466条以下に規定されており、最近、法改正もされました。 -
(2)債権譲渡は原則自由に行える
民法第466条第1項本文により、債権譲渡は原則として自由に行うことができます。
ただし、一身専属的(権利または義務が特定人に専属し、他の者に移転しない性質)な債権など、債権の性質上譲渡が許されないものも一部存在します(同項ただし書き)。 -
(3)譲渡が制限されている債権もある
債権譲渡は原則自由ですが、債権者と債務者の合意により、債権譲渡には債務者の承諾を必要とする旨を定めている場合があります。
このような債権者・債務者間の合意を、一般的に「譲渡制限特約」と呼んでいます。
譲渡制限特約の付された債権の譲渡も法的には有効です(民法第466条第2項)。しかしながら、譲渡制限特約の存在を知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人や転得者(第三者が取得した権利や物を、転売によって購入した者)に対しては、債務者は債務の履行を拒むことができます(同条第3項)。 -
(4)債権譲渡の対抗要件について
債権譲渡が行われた場合、それ以降債務者は債権の譲受人に対して債務を負うことになります。
しかし、債務者の視点からは、債権の譲渡人・譲受人の合意が有効に成立しているのか、本当に有効な債権譲渡が行われたのかどうかが判然としません。
そこで、債務者その他の第三者に債権譲渡を対抗するためには、以下のいずれかの方法により対抗要件を具備する必要があります(民法第467条第1項)。- ①譲渡人が債務者に対して債権譲渡の事実を通知する
- ②債務者が債権譲渡を承諾する
なお、債務者以外の第三者に対して債権譲渡を対抗するためには、上記の通知・承諾を確定日付のある証書(内容証明郵便など)によって行うことが必要です(同条第2項)。
2、債権譲渡により債権を回収するメリット
債権譲渡は、債権者が債権回収を行うための手段として、有効に機能する場合があります。
債権譲渡により債権を回収することには、以下のメリットがあります。
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(1)弁済期よりも前に債権を現金化できる
弁済期が未到来の債権を第三者に譲渡した場合、債権譲渡の時点で第三者が債権者に対して、対価(現金)が支払われるので、弁済期よりも早く債権を現金化できます。
売掛金の支払いサイクルが長期または不安定の企業にとっては、売掛金債権を第三者に譲渡することによって、資金繰りを改善できる場合があるかもしれません。 -
(2)債務者の倒産リスクから解放される
債権譲渡を行った場合、譲受人からの債権譲渡代金の支払いによって、事実上債権回収が完了します。
自分が債権者である状態では、債務者が弁済期にきちんと債務を支払ってくれないリスク(倒産リスク)を抱えることになります。
債権譲渡をすれば、このような債務者の倒産リスクから解放されるメリットがあります。 -
(3)そのままでは回収不能の債権も現金化できる可能性がある
すでに債務者が倒産状態に陥ってしまい、債権の回収が見込めない場合でも、債権回収業者に債権を譲渡することにより、債権の一部を回収できる可能性があります。
債権回収業者は、回収見込みの薄い債権を格安で買い取ったうえで、法的な手段を講じたり、債務者の経営を立て直させたりして、より多くの債権を回収するビジネスを展開しています。
このような性質上、債権の額面の金額よりはかなり安くなってしまいます。しかしながら全く債権を回収できないよりは、債権回収業者への債権譲渡により、債権額の一部でも回収する方がよいというのもひとつの考え方です。
3、債権譲渡の手続き・流れ
債権者が債権譲渡を行おうとする場合は、通常以下の手続き・流れを踏むことになります。
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(1)譲受人との間で債権譲渡の条件を話し合う
債権譲渡を行うに当たっては、
- 債権譲渡の対価
- 債権譲渡の実行時期
- 債権譲渡に当たって引き渡すべき書類
- 債権譲渡の実行前に満たしておくべき条件
などについて、譲渡人・譲受人の間で事前に決めておく必要があります。
そのため、まずは上記の条件面について、譲渡人・譲受人の間で話し合うことになります。
なお、債権譲渡の対価については、弁済期以前に債権を買い取ることや、譲受人が債務者の倒産リスクを背負うことなどに鑑みて、額面金額よりも数%から20%程度ディスカウントされるのが通常です。 -
(2)債権譲渡契約を締結する
債権譲渡に関する条件について譲渡人・譲受人間で合意に至ったら、その内容を債権譲渡契約のなかに反映させる必要があります。
債権譲渡契約は、債権譲渡に関する合意内容を証明する客観的な証拠として機能するため、契約書を計2通作成したうえで、譲渡人と譲受人が各自大切に保管しておきましょう。 -
(3)債務者に対して債権譲渡を通知する
債権譲渡をした際には、対抗要件を具備する手続きを忘れてはなりません。
対抗要件具備は譲受人のための手続きですが、譲渡人に対しても、債権譲渡契約の中で協力義務が規定されるのが通常です。
債務者および第三者に対する対抗要件を具備するため、譲渡人は内容証明郵便により、債務者に対して債権譲渡の事実を通知します。
債務者にその通知が到達した段階で、債権譲渡に関する対抗要件の具備は完了です。
4、債権回収のために債権譲渡を行う際の注意点
債権回収を目的として債権譲渡を行う場合、弁護士に相談して注意深く対応することをお勧めいたします。
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(1)債務不履行が発生した債権の譲渡先は限られる
譲渡対象の債権について、すでに債務不履行が発生している場合には、当該債権を回収するために債権譲渡を受ける行為は、弁護士法第72条に規定される「法律事務」に該当します。
他の法律で規定される例外も含めると、債務不履行が発生した債権の譲渡先は、以下の主体に限られます。- ①弁護士
- ②認定司法書士
- ③サービサー法上(債権管理回収業に関する特別措置法)の債権回収会社
現実的には、債務不履行が発生した債権を買い取ってくれる主体は少ないため、債権譲渡以外の方法で法的に問題を解決することも視野に入れましょう。
もし債務者に資力があるにもかかわらず、債務を任意に支払わないという場合には、弁護士に債権回収の督促を依頼するのがスムーズです。
これに対して、債務者に資力がない場合は、債権を回収できる見込みはかなり減ってしまいますが、債務者の倒産手続きへ参加する場合などには、弁護士に相談するメリットがあります。 -
(2)通常の債権譲渡の場合も弁護士に相談するのがおすすめ
特に債務不履行が発生しておらず、通常どおり支払われる見込みの債権を第三者に譲渡する場合にも、弁護士に相談することをおすすめします。
債権譲渡の条件は契約交渉によって決まるので、どの程度のラインまでは譲歩できるか、またどこまでの要求を相手方に伝えてよいかなどについて慎重な検討を要します。
また、契約書の中に債権譲渡契約の文言が正確に取引の内容を反映しているかどうかについても、弁護士の視点からのチェックを受けておけば安心です。
経験豊富な弁護士にご依頼をいただければ、上記の各点について、専門的な視点からバックアップいたします。
債権譲渡を検討中の事業主の方は、一度弁護士へのご相談をおすすめします。
5、まとめ
債権譲渡は、債権を早期に回収し、かつ債務者の倒産リスクから解放されるメリットもある債権回収手段です。
債権譲渡を行う際には、条件面での契約交渉が難航するおそれもありますので、ベリーベスト法律事務所に一度ご相談にいらっしゃることをおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所では、債権回収を専門的に取り扱うチームが、依頼者の経済的状況や相手方の反応を勘案しつつ、債権回収がスムーズにいくようにお手伝いいたします。
会社の資金繰りを改善したい方、債務者の倒産リスクの大きさが気になるという方は、ぜひベリーベスト法律事務所 新潟オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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