任意整理はしない方がいい? 正しく判断するために知っておきたいこと
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令和2年において、全国の裁判所が取り扱った破産事件(個人・法人の自己破産を含む)の件数は7万8104件で、前年(令和元年)と比較して2.6%の減少を示しています。この内、新潟県の破産事件は999件でした。
任意整理には、メリットとともにデメリットも存在するため、状況によっては「任意整理をしない方がいい」場合もあります。任意整理をすべきかどうか、他の債務整理手続きに切り替えるべきかどうかなどについては、弁護士のアドバイスを受けながらご検討されることをおすすめいたします。
この記事では、任意整理しない方がいいケースや、任意整理のメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「令和2年度司法統計」(最高裁判所))
1、任意整理とは?
任意整理とは、債権者と直接交渉を行い、債務の減額や返済スケジュールの変更を認めてもらう手続きです。任意整理は「債務整理」と呼ばれる手続きの一種で、自己破産や個人再生と比べて簡易・迅速かつ柔軟性が高い点に特徴があります。
債権者としても、このまま厳しい取り立てを続けて、債務者を自己破産に追い込んでしまい、債権を回収できないよりは、少しずつでも着実に債権を回収しようという思惑が働き、任意整理に応じるケースも多いです。
月々の返済額の負担が重いと感じている場合には、弁護士にご相談のうえで任意整理を検討してみることをおすすめいたします。
2、任意整理しない方がいいケースとは?
任意整理には多くのメリットがある一方で、決して万能な手続きではなく、デメリットも存在します。
そのため、債務者の状況によっては、そもそも任意整理を含めた債務整理をすべきでない場合や、自己破産や個人再生といった他の手続きを選択した方がよい場合もあるのです。
以下では、「任意整理をしない方がいい債務者の特徴」を解説します。
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(1)事故情報の登録を回避したい場合
任意整理をすると、個人信用情報機関のデータベースに事故情報(債務不履行などに関する情報)が登録されます。
個人信用情報機関のデータベースは、金融機関やクレジットカード会社などが与信審査を行う際に参照しています。そのため、事故情報が登録された債務者は、おおむね5年間程度、新規借り入れやクレジットカードの利用などができなくなってしまうのです。
なお事故情報は、任意整理以外の債務整理を行った場合にも登録されます。したがって、事故情報の登録を回避したい場合には、任意整理を含めた債務整理を一切利用せずに、収支の見直し等を行って債務の完済を目指すことになるでしょう。
ただし、収支状況が極めて悪く、完済の見込みが立たない場合、事故情報の登録ばかりを嫌がって任意整理を避けるのは悪手と言わざるを得ません。
このような場合には、事故情報の登録は覚悟したうえで債務整理を行い、早期の生活再建を目指すことをおすすめいたします。 -
(2)多重債務状態の場合
あちこちから借金をしている多重債務者の場合、任意整理は効果が薄い・手間がかかるなどデメリットが多いです。
任意整理はあくまでも、個別交渉の末に債権者の承諾を得て、和解により債務負担の軽減を目指す手続きです。
したがって、債権者が多数の場合には、それぞれの債権者に連絡をとって、個別に任意整理の交渉を行わなければなりません。
当然ながら、すべての債権者が任意整理に応じてくれるとは限らず、任意整理が一部の債務にしか成立しないという事態も考えられます。
そうなると、多重債務の状態を抜本的に解決することにはつながらないおそれがあるのです。
また、多数の債権者との間で個別に任意整理の交渉を行うことは、物理的な手間もかなり多くなってしまうでしょう。
以上の事情を考慮すると、多重債務者の方は任意整理ではなく、全債権者との間で一括して債務整理を行うことができる「自己破産」や「個人再生」を選択した方がよいでしょう。 -
(3)収入が不安定または無職の場合
収入が不安定な方や、無職の方の場合、債権者が任意整理に応じてくれる可能性が低いです。
債権者が任意整理に応じる場合、手続き後の返済計画がきちんと立てられることが前提となります。
しかし、収入が不安定な方や無職の方は、たとえ債務の減額や返済スケジュールを変更しても、その後きちんと返済を続けられるという信用を得ることが難しいのです。
収入の不安定さなどを理由として、債権者が任意整理に応じてくれない場合には、自己破産などの代替手段をご検討ください。
3、任意整理のメリットは?
任意整理には、状況によって向き不向きはあれども、多くのメリットがあることも事実です。
具体的には以下のメリットが得られるので、債務の負担に苦しむ方は、積極的に任意整理を検討してみましょう。
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(1)月々の返済額を大きく圧縮できる可能性がある
任意整理を行うと、主に「利息・遅延損害金のカット」と「返済スケジュールの変更(延長)」の二つにより、月々の返済負担を減らすことができます。
月々の返済負担が減少すれば、可処分所得が増え、生活はかなり楽になります。
「借金を返すための借金」をする必要もなくなりますので、債務の完済も見えてくるでしょう。 -
(2)簡易な手続きにより債務の負担を減らせる
他の債務整理手続きと比較した場合の、任意整理の大きな特徴は、手続きが簡易であるという点です。
自己破産や個人再生は裁判所で手続きを行う必要がある反面、任意整理は債権者との個別交渉によります。
そのため任意整理では、裁判所への提出書類を整える必要がなく、手間がかからないメリットがあります。
また、債権者が合意さえすれば、非常に短期間で債務負担の軽減を実現できる点も、任意整理の大きなメリットのひとつです。 -
(3)財産を処分せずに債務の負担を減らせる
任意整理の場合、債務者の財産を処分する必要がありません。
自己破産では、自由財産(破産手続きにおいて処分しなくて良く、破産者が自由にできる財産のことをいいます。)を除く財産がすべて処分されてしまいますし、個人再生の場合も、担保権付きの財産は原則として処分されてしまいます(住宅ローン付きの不動産については例外あり)。
これらの手続きに比べると、財産処分の必要がなく、生活に与える影響が少ない点は、「任意整理の長所」と言えるでしょう。 -
(4)整理対象の債務を選べる|保証人に迷惑をかけずに済む
任意整理では、整理対象とする債務を、債務者自身が選ぶことができます。
これは、基本的にすべての債務が強制的に整理対象となる自己破産・個人再生とは大きく異なる特徴です。
たとえば、保証人付きの債務を任意整理の対象から除外すれば、保証人に迷惑をかけることを回避できます。
4、任意整理の流れと弁護士ができること
任意整理の流れの中では、弁護士がサポートできることがたくさんあります。
円滑に任意整理を行い、債務の負担を軽減したい場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
以下では、任意整理の手続きの流れに沿って、弁護士が行うサポートの内容を解説します。
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(1)債権者に対して受任通知を発送する
任意整理を弁護士に依頼した段階で、弁護士は債権者に対して受任通知を発送します。
受任通知を受け取った貸金業者は、原則としてそれ以降、債務者に対する直接の取り立てが禁止されます。
もし債権者からの過酷な取り立てに悩まされている場合には、弁護士に任意整理を依頼すると、生活の平穏を取り戻すことができるでしょう。 -
(2)任意整理の交渉を行う
受任通知の発送後、債権者との間で任意整理の交渉を行います。
任意整理の交渉では、債権者に対して、債務者側の希望や返済計画の概要を説明し、債務の減額などに応じてもらえるように説得することが必要です。
弁護士は、債務の状況や債務者の収入などから、実現可能性の十分ある返済計画を作成したうえで、債務者の代理人として債権者と交渉いたします。
弁護士が債務者の代理人として債権者と交渉した結果、無理のない返済条件にて、円滑に任意整理が成立する可能性が高まるのです。 -
(3)和解合意書を締結する
任意整理の内容につき、債権者・債務者間で合意に至った場合、和解合意書を締結します。
和解合意書の中では、締結後の返済条件などを明確にまとめ、債権者・債務者間でトラブルが起こらないようにしておくことが大切です。
弁護士へご依頼の場合、和解合意書についても弁護士がドラフトを作成しますので、債務者本人の負担が軽減されるとともに、トラブル防止に役立つ書面に仕上げることができます。
5、まとめ
任意整理にはメリット・デメリットの両面があり、状況によっては任意整理しない方がいい場合もあります。
そもそも債務整理をすべきなのかどうか、またどの債務整理手続きを選択すべきかについては、債務者の状況に応じてケース・バイ・ケースで判断しなければなりません。
ベリーベスト法律事務所は、債務者の状況を丁寧に分析したうえで、どの方法を採れば債務負担の問題を効果的に解決できるかにつき、親身になってアドバイスを差し上げます。
月々の借金の返済の負担が重すぎるとお感じの方、なかなか借金の元本が減らずにお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所 新潟オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています