離婚時の財産分与で家はどうする? トラブルなく住み続ける方法とは?
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新潟県は、日本でもトップクラスの低離婚率を誇っています。平成29年の統計によると、人口1000人に対する離婚率は1.29で、全国順位は47位です。つまり日本一離婚率が低い自治体であるといえるでしょう。しかし、それでも平成29年の離婚件数は2902組。1日に8組弱の夫婦が離婚していることになります。
離婚の際、問題になることのひとつが財産分与です。財産は夫婦で半分ずつ分けるのが基本ですが、家のような資産は半分には分けられません。また、住宅ローンが残っている場合は、複雑な手続きになってしまい、問題のある分与をして後からトラブルが発生する可能性もあります。そこで、今回は、ベリーベスト法律事務所・新潟オフィスの弁護士が、財産分与の際の家の処分方法について解説していきます。
1、財産分与における家の基本的な処分方法とは
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(1)財産分与の対象となる家とは
そこで、まずはどのような家が財産分与の対象になるのかを確認していきましょう。財産分与の対象になる家は、夫婦の共同の財産で購入したものや、結婚期間中に住宅ローンで購入したものです。これらの条件を満たしていれば、家や土地の名義は関係ありません。
ただし、以下のケースでは財産分与の対象にならないので注意が必要です。
- 親から相続した家
- 結婚前、内縁関係になる以前に購入した家
- 夫婦いずれかの親族が全額負担して購入した家
- 夫婦いずれかが結婚前にためた貯金で購入した家
上記のように、相続した家や婚前にためたお金で購入した家は財産分与の対象にはなりません。自分で判断が難しい場合は弁護士へ相談してもよいでしょう。
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(2)財産分与の大まかな手順
次に、財産分与の大まかな流れについて確認していきましょう。居住用不動産の財産分与は次のような手順になります。
①ローン残額を確認する
まずは住宅ローンの残額をチェックしましょう。借入先金融機関に問い合わせると確認できます。
②現在の不動産の価値を調べる
不動産の価値は購入価格やローン残高とは異なります。家の価値は流動的なので、不動産鑑定士などに依頼して調べる必要があるでしょう。不動産の価値がわかったら、ローン残高と比較します。
③話し合い、調停、裁判
オーバーローンかアンダーローンかわかったら、いよいよ話し合いを始めます。話し合いでは以下のいずれの方針にするかを決めていきます。
- 妻が住み続ける
- 夫が住み続ける
- 売却する
また、話し合いで双方が合意できなければ、調停や裁判を行います。
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(3)家の処分方法は、売却して現金化するか、片方に譲るかの2種類
前述のように、家の処分方法は不動産を売却して現金にするか、どちらかが住み続けるかの2種類です。
●売却
離婚時にもっともスッキリと別れられるのが、売却して現金化することです。現金にしてしまえば、2等分にするのも簡単になります。ただし、売りに出した場合、いつ売れるかは誰にもわかりません。したがって、財産分与ができる時期が判明しないという点がデメリットとなります。
●片方に譲る
離婚後もどちらかが住み続けることもあります。子どもの環境をこれ以上変化させないために引っ越しはしないという方も少なくありません。どちらかが家を保持する場合は家の評価額を鑑定士に算出してもらい、評価額の半分を一方が受け取ることで、半分ずつに分けることができます。
注意点はローンの残債です。たとえば、名義が夫だとしても、離婚後も払い続けてくれるとは限りません。
2、オーバーローンとアンダーローンについて
不動産価値を調べた結果、ローンよりも不動産価値のほうが大きければアンダーローン、ローンのほうが大きければオーバーローンになります。
オーバーローンの場合はさまざまな点で注意が必要です。
不動産価格は購入直後に下落するのが一般的です。そして、長期のローンでは元本はなかなか減らないので、多くの家がオーバーローンの状態でしょう。オーバーローンになっている住宅は基本的に財産分与の際の「マイナスの資産」として分割されます。家しか資産がない場合は、マイナスの資産のみになるので財産分与の対象にならないこともあります。
オーバーローンの不動産は売却しても、ローンが残ってしまうため、夫婦でローンを支払わなければなりません。引き続きどちらかが居住する場合は、ローンを誰が支払うのか、などの問題でもめるケースが多い傾向にあり、裁判に発展することもあります。
3、妻が住宅に住み続ける場合のローンの支払い方法とは
現状、住宅そのものやローンの名義が夫の身としているケースが少なくありません。では、いずれも名義を持たない妻や子どもが住宅に住み続けるときは、どうすればよいのでしょうか。
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(1)住宅の名義も住宅ローンの債務者も夫のままにする
住宅の所有者も離婚後のローンの支払いも夫が行う方法です。一見すると、妻にとってはメリットしかありませんが、夫がローンを支払い続けてくれる保証はありません。
このようなリスクを回避するために、公正証書を作成しておきましょう。公正証書については後ほど説明いたします。 -
(2)住宅の名義と住宅ローンの債務者を夫のままにし、妻が夫に家賃を支払う
毎月妻が夫に家賃を支払う方法です。一般的には家賃額はローン額よりも少ない傾向にあります。子どもがいるなど、事情がある場合に有効な方法です。事前に賃貸借契約を結んでおけば、急に退去を求められる心配もありません。
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(3)住宅の名義を妻に変更し、残りの住宅ローンの債務者は夫のままにする
妻が所有し、夫がローンを支払う方法です。アンダーローンの場合、不動産はプラスの財産として考えられます。そのため、不動産価値からローン残債を差し引いた額の半分は妻が夫に支払う必要があります。
ただし、ローンが残っている間は名義変更が認められないケースもあります。金融機関に相談してみましょう。 -
(4)住宅の名義も残りの住宅ローンの債務者も妻にする
住宅ローンの名義を変更する場合は、妻の収入・資産状況などから、債務者の変更を金融機関に認められることが前提です。妻の収入等によっては認められないケースもあります。
アンダーローンの状態であれば、妻から夫に、評価額からローンの残債を差し引いた額の2分の1を支払わななければならない可能性もあります。
4、夫がローンを払い、妻が家に住み続ける場合に考えられるトラブルと対処法
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(1)ローンの支払いが滞ると家が競売にかけられる
名義人によるローンの支払いが滞ると、たとえ妻が住み続けていたとしても、対象の住宅が競売の対象になります。そして、買い取り人が決まってしまったら立ち退かなければいけません。
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(2)強制執行を行えるように離婚協議書を公正証書にしておく
競売を避けるためには、ローンを払い続けてもらわなければいけません。その際に有効な方法が、離婚協議書を公正証書にすることです。
公正証書とは、民法などの法律に基づいて公証人が作成する文章です。債務者が金銭債務の支払いを怠れば強制執行を行えるようになります。公正証書があることで、ローンの支払いを遅延させてはならないと自覚できますので、延滞を防止する役割を担うこともあるでしょう。 -
(3)競売にかけられてしまったら
競売にかけられてしまった場合は次のような対処法があります。
●任意売却
任意売却とは、競売でもローンが残ってしまう場合に、金融機関に許可をとって裁判所の介入なしに家を売る方法です。任意売却では競売よりも高額で家を売買できるほか、立ち退き時期にもある程度の余裕ができます。ただし、家の所有者である夫の同意が必要です。
●自分で落札する
競売にかけられた家を自分で落札することも可能です。管轄の裁判所の不動産競売所に行き、落札するための情報を確認しましょう。
5、まとめ
今回は財産分与における家の処分について説明しました。売却する、片方が住み続ける、どちらを選ぶにしても夫婦でよく話し合う必要があります。また、妻が住み続ける場合は夫のローンの不払いにも注意が必要です。
のちのちのトラブルを避けるため、離婚協議の際にしっかりと話し合っておきましょう。家の扱い方など、財産分与についてお悩みの方、疑問点のある方はぜひ、ベリーベスト法律事務所・新潟オフィスで相談してください。豊富な財産分与の取り扱い実績がある弁護士が、あなたの状況をきちんと確認した上で最適なアドバイスを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています