子どもを置いて家出してしまっても離婚するとき親権は取り戻せる?

2023年07月20日
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子どもを置いて家出してしまっても離婚するとき親権は取り戻せる?

暴力などに耐え切れず夫婦生活に耐えられずに家出をしてしまうことは、必ずしも責められることではないでしょう。しかし、子どもを置いて家出している状態のまま離婚が成立したら、子どもを取り戻して親権を得ることはできるのか、そもそも家出したことが離婚するときに不利になるのかどうかなど、気になるかもしれません。
そこで本コラムでは、子どもを置いて家出した状態での離婚と親権獲得の是非やその進め方を、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、子どもを置いて家出した場合は親権を取りづらいのか?

子どもを置いて家出をした場合、その期間が長ければあなたからの申し出で離婚しづらくなり、親権をめぐる争いで不利になります。別居期間が長期になればなるほど親権の判断にあたっては不利になります。

  1. (1)親権とは?

    親権とは親が子どもに対して持つ権利、あるいは法的な権力です。婚姻中は両親どちらも親権を持っていますが、離婚すると片方だけが親権を持つことになります。親権には身上監護権と財産管理権の2つがあります。

    身上監護権とは、一部の行為に対して子どもの法定代理人となる権利、子どもの居所を指定する権利、子どもの世話や教育をする権利など、子どもを実際に育てることを認めたものです。親権者とならなかった方はこの権利が失われるので、親権喪失後の介入が難しくなります。

    財産管理権とは文字通り財産を管理する権利です。法律行為もお金を支払うことになるため、その同意権を持つことも財産管理権といえますね。

    簡単に説明すると、親権とは「これまで通り子どもと接する権利」です。親権がなくなると法的には他人として子どもと接することになりますので、これは大きな違いですね。

  2. (2)親権は子どもの福祉最優先で決まる

    親権をめぐる争いでは「親権を得る」とか「親権を奪われる」という言葉をよく聞きますね。しかし、本来親権は子どもが健やかに育つための権利ですから、親の都合で決めることは望ましくないのです。そのため、裁判においては離婚について夫が悪い・妻が悪いという事情をさておき、子どもの福祉を最優先して親権を決めます。

    そして親権を持つ方は、子どもの利益のために身上監護権や財産管理権を行使しなくてはいけません。

    裁判で親権が決まるときの基準は、子どもへの愛情があること、そして実際に子どもを育てられること(仮に一人での子育てが難しくても助けてくれる人がいること)、生活状況などが問われます。あくまでも子ども目線なのです。

  3. (3)家出するに相当の事情がある場合

    おそらくこの記事をご覧になっている方は「家出している状態だと育児放棄と捉えられるんじゃないか」という不安を持っていると思います。しかし家出にはいろいろな事情があるものですし、短期間の家出だけで直ちに育児放棄だとはならないでしょう。もっとも、両者親権を譲らない場合、争いは裁判までいくことになり、離婚と親権の判断が出るまで相当の期間を要します。その期間、相手方が子どもを監護しており、その期間が長くなればなるほど、子どもを現に監護している者が親権の判断にあたっては有利になります。
    したがって、家出するに事情があったとしても、親権の判断には不利になることが予想されます。

  4. (4)家出以外にも親として不適格な点があると親権が認められづらい

    もちろん、子どもをないがしろにするような理由で家出をしている場合は親権が認められづらくなります。これはその人が悪いからではなく、そんな人に親権を残すと子どもに不利益だからです。

    家出以外にも普段から家庭に支障をきたすようなことや、虐待やネグレクトをしている場合は、親として不適格とみなされる可能性が高いです。

    親権の争いは離婚とセットで行われるため、どうしても法定離婚事由と親権の正当性を一緒に考えてしまいがちですが、これらは全く別の問題として捉えた方がよいでしょう。

  5. (5)家に帰れないときは弁護士へ相談を

    離婚をするためには配偶者と話し合うことになります。最初から裁判を起こす場合でも、いろいろと面倒な手続きがあるためやはり配偶者と向き合うことは避けられません。配偶者が怖くて家に帰れないときはすぐに弁護士へご相談ください。

2、親権はどのように決めるのか

子どもを置いて家出したときも、それ以外の場合も、裁判における親権の基準は子どもの利益です。たとえ配偶者に家出のことを叱責されたからといって諦めないでください。

次に、親権をどのように決めるのかを紹介します。ここでは裁判の他に、協議離婚や調停離婚で親権について決める方法も紹介します。

  1. (1)まず親権をどちらに帰属させるか話し合う

    離婚は夫婦の合意で行うことができます。お互いに離婚に合意している場合、離婚の理由は問われません。話し合いで離婚した場合は協議離婚といい、その結果を離婚協議書にまとめます。親権についても、離婚の論点として話し合います。親権は父母いずれかになるため、それを保留して離婚を先にすることはできません。

    親権が決まると戸籍の問題も出てきますが、子どもが戸籍を移る場合は、氏の変更と戸籍の変更という2つの手続きが必要です。

    子どもは親にとって大切な存在ですから、大きな争点となることが予想されます。

  2. (2)面会権や養育費について話し合う

    親権者が子育ての全てができると限らないし、親権を失った側の親がずっと子どもと会えないことは、子どもにとっての利益といえないのが原則です。そのため親権を失った側の親には面会する権利があります。また、養育費の支払いについても具体的に決めましょう。

    離婚後の親権者を決めるにあたっては子どもの意思も尊重されます。もっともどの程度子どもの意思が重視されるかは子どもの年齢によるところです。

  3. (3)協議がまとまらないときは離婚調停

    離婚協議がまとまらないときは裁判所で調停を行います。調停は調停委員の立ち会う話し合いで、夫婦間で話すよりも冷静に結論を出すことができます。調停調書はそれを根拠に強制執行する力を持っています。

  4. (4)話し合いでの解決が難しければ裁判で離婚を決める

    調停も話し合いのひとつですから、まとまらないことがあります。そのときは離婚や親権についての訴訟を起こします。多くは家庭裁判所で審理が行われ家事審判が出されます。離婚の可否と、親権やその他の論点に対する判断がまとめてなされますが、前述しているように離婚原因と親権は直結しません。

    家庭裁判所調査官の調査に対しては、特に警戒することなく誠実に応えるようにしましょう。自らが親権者としてふさわしいことを立証すれば、親権を得られる可能性が高まります。

  5. (5)なぜ母親の方が親権を得やすいのか

    男性も女性も親であることに変わりありません。それに男性が女性からのDVで離婚することだって珍しくないのが現状です。しかし、実際の親権について事案を見たとき、親権者が母親となっている場合が多いです。令和4年度司法統計によると、「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち「子の親権者の定め」をすべき件数は19915件あったうち、母親が親権者となったケースは18678件ありました。これは、実際に子どもを世話しているのが母親であることが多いことが理由です。

    逆にいえば母親が育児放棄の意図で家出した、父親の子育てを協力する人がいるといった事情がある場合は、父親が親権を得られる可能性が十分にあります。

3、親権の他に離婚で話し合うべき点は?

親権の他にも離婚はいくつか話し合うべき点があります。これらも知っておきましょう。

  1. (1)子どもの次に優先したいのはお金の問題

    あなたにとっておそらく最優先事項である親権の次に優先した方がよいのがお金の問題です。結婚生活によって仕事が制限されていた場合は離婚後の生計を立てられなくなってしまうでしょうし、扶養していた側であれば不当な財産分与でお金を失わないよう注意すべきです。

    財産分与は夫婦で築いた財産について適用され、結婚前などにそれぞれが単独で稼いだお金や財産には適用されません。

  2. (2)場合によっては慰謝料も請求できる

    もし、不貞行為や家庭内暴力があった場合は、それに対する慰謝料の支払いを求められる可能性があります。特に離婚との因果関係がある場合はそうでない場合に比べて高額になりやすいです。

  3. (3)お互いのプライバシーを守ること

    離婚した後の関係についても決めておきましょう。実は、離婚した配偶者がまるで関係が続いているかのように干渉してくる場合があるのです。他には離婚に際して配偶者の名誉を傷つけることも考えられます。

    そのような事態に対応できるようにあらかじめ離婚協議書に対処法を決めておくのです。

4、まとめ

子どもを残して家出したから親権を得られないのでは……と不安を抱く気持ちはわかります。ここまで説明したように親権は子どもの利益に基づいて決められますから、家出が直接の原因で親権が決まることはめったにありません。逆に子どもが心配だからと連れ去りに走ると心証を悪くする可能性があります。

親権についての交渉が不安であるときはベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでご相談ください。経験豊富な弁護士があなたのサポートをします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています