子どもを置いて家出してしまっても離婚するとき親権は取り戻せる?

2025年03月24日
  • その他
  • 子どもを置いて家出
  • 親権
子どもを置いて家出してしまっても離婚するとき親権は取り戻せる?

暴力などに耐え切れずに家出をしてしまうことは、必ずしも責められることではないでしょう。しかし、子どもを置いて家出している状態のまま離婚が成立したら、子どもを取り戻して親権を得ることはできるのか、そもそも家出したことが離婚するときに不利になるのかどうかなど、気になるかもしれません。

本コラムでは、子どもを置いて家出した状態での離婚と親権獲得の是非やその進め方を、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。


離婚・男女問題を新潟の弁護士に相談 離婚・男女問題を新潟の弁護士に相談

1、子どもを置いて家出した場合は親権を取りづらいのか?

子どもを置いて家出をした場合、その期間が長ければあなたからの申し出で離婚しづらくなり、親権をめぐる争いで不利になります。別居期間が長期になればなるほど親権の判断にあたっては不利になります。

  1. (1)親権とは?

    親権とは親が子どもに対して持つ権利、あるいは法的な権力です。
    簡単に説明すると、親権とは「これまで通り子どもと接する権利」です。親権がなくなると法的には他人として子どもと接することになります。

    婚姻中は両親どちらも親権を持っていますが、離婚すると片方だけが親権を持つことになります。親権には身上監護権と財産管理権の2つがあります。

    身上監護権とは、一部の行為に対して子どもの法定代理人となる権利、子どもの居所を指定する権利、子どもの世話や教育をする権利など、子どもを実際に育てることを認めたものです。親権者とならなかった方はこの権利が失われるため、親権喪失後の介入が難しくなります。

    財産管理権とは、文字通り財産を管理する権利です。法律行為もお金を支払うことになるため、その同意権を持つことも財産管理権といえます。

  2. (2)親権は子どもの福祉最優先で決まる

    本来、親権は子どもが健やかに育つための権利であるため、親の都合で決めることは望ましくありません。そのため、裁判においては子どもの福祉を最優先して親権を決めます。
    そして親権を持つ方は、子どもの利益のために身上監護権や財産管理権を行使しなくてはいけません。

    裁判で親権が決まるときの基準は、子どもへの愛情があること、そして実際に子どもを育てられること(仮に一人での子育てが難しくても助けてくれる人がいること)、生活状況などが問われます。このように、子ども目線の基準となっています。

  3. (3)家出するに相当の事情がある場合

    家出している状態は育児放棄と捉えられるかもしれないと不安に思っている方もいるでしょう。しかし、家出にはいろいろな事情があるものですし、短期間の家出だけで直ちに育児放棄だとはならないでしょう。

    もっとも、両者親権を譲らない場合、争いは最終的に裁判で決定することになり、離婚と親権の判断が出るまで相当の期間を要します。その期間、相手方が子どもを監護しており、その期間が長くなればなるほど、子どもを現に監護している者が親権の判断にあたっては有利になります。

    したがって、家出するに事情があったとしても、親権の判断には不利になることが予想されます。

  4. (4)家出以外にも親として不適格な点があると親権が認められづらい

    普段から家庭に支障をきたすようなことや、虐待やネグレクトをしている場合は、親として不適格とみなされる可能性が高いです。

    離婚と親権の争いは同時に行われるため、どうしても法定離婚事由と親権の正当性を一緒に考えてしまいがちですが、これらは全く別の問題として捉えた方がよいでしょう。

  5. (5)家に帰れないときは弁護士へ相談を

    調停を行ったあとでないと裁判はできないため、配偶者と向き合うことは避けられません。配偶者が怖くて家に帰れないときはすぐに弁護士へご相談ください。
    弁護士が代理人となって配偶者と交渉を行うことができます。

2、親権はどのように決めるのか

子どもを置いて家出したときも、それ以外の場合も、裁判における親権の基準は子どもの利益です。たとえ配偶者に家出のことを叱責されたからといって諦めないでください。
次に、親権を決める手続きについて解説します。

  1. (1)まずは夫婦で話し合う

    離婚は夫婦の合意で行うことができます。お互いに離婚に合意している場合、離婚の理由は問われません。話し合いで離婚した場合は協議離婚といい、その結果を離婚協議書にまとめます。親権についても、離婚の論点として話し合います。親権は父母いずれかになるため、それを保留して離婚を先にすることはできません。

    親権が決まると戸籍の問題も出てきますが、子どもが戸籍を移る場合は、氏の変更と戸籍の変更という2つの手続きが必要です。
    子どもは親にとって大切な存在ですから、大きな争点となることが予想されます。

    親権者が子育ての全てをできるとも限りませんし、親権を失った側の親がずっと子どもと会えないことは、子どもにとっての利益といえないのが原則です。そのため、親権を失った側の親には面会する権利があります。また、養育費の支払いについても具体的に決めましょう。

    離婚後の親権者を決めるにあたっては子どもの意思も尊重されます。もっとも、どの程度子どもの意思が重視されるかは子どもの年齢によるところです。

  2. (2)協議がまとまらない場合は離婚調停に進む

    離婚協議がまとまらないときは裁判所で調停を行います。調停は調停委員の立ち会う話し合いで、夫婦間で話すよりも冷静に結論を出すことができます。調停調書はそれを根拠に強制執行する力を持っています。

  3. (3)離婚調停で決まらない場合は裁判に進む

    調停で合意できない場合は、は離婚や親権についての訴訟を起こします。多くは家庭裁判所で審理が行われ家事審判が出されます。離婚の可否と、親権やその他の論点に対する判断がまとめてなされますが、離婚原因と親権は直結しません。

    家庭裁判所調査官の調査に対しては、特に警戒することなく誠実に応えるようにしましょう。自らが親権者としてふさわしいことを立証すれば、親権を得られる可能性が高まります。

    なお、離婚調停や裁判手続きは、家庭裁判所にて行われます。新潟県内の主な家庭裁判所は以下です。詳細や最新情報は、裁判所ホームページをご確認ください。
    裁判所ウェブサイト(管内の裁判所の所在地)

    ■新潟家庭裁判所
    〒951-8513
    新潟市中央区川岸町1-54-1

    支部:三条、新発田、長岡、高田、佐渡
    出張所:村上、十日町、柏崎、南魚沼、糸魚川

3、母親の方が親権を得やすい理由

男性も女性も親であることに変わりありません。また、男性が女性からのDVで離婚するケースもあります。

しかし、実際の親権について事案を見たとき、親権者が母親となっている場合が多いです。令和5年度司法統計によると、「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち「子の親権者の定め」をすべき件数は16103件あったうち、母親が親権者となったケースは15128件と約94%を占めています。

これは、実際に子どもを世話しているのが母親であることが多いことが理由です。
逆にいえば母親が育児放棄の意図で家出した、父親の子育てを協力する人がいるといった事情がある場合は、父親が親権を得られる可能性が十分にあります。

4、親権の他に離婚で話し合うべき点は?

親権の他にも離婚はいくつか話し合うべき点があります。これらも知っておきましょう。

  1. (1)財産分与などのお金の問題

    離婚後の生活を考えると、お金の問題も重要です。離婚後の生計を立てることに苦労したり、不当な財産分与でお金を失ったりすることがないよう注意すべきです。
    なお、財産分与は夫婦で築いた財産について適用され、結婚前などにそれぞれが単独で稼いだお金や財産には適用されません。

  2. (2)場合によっては慰謝料も請求できる

    もし、不貞行為や家庭内暴力があった場合は、それに対する慰謝料の支払いを求められる可能性があります。特に離婚との因果関係がある場合は、そうでない場合に比べて高額になりやすいです。

  3. (3)お互いのプライバシーを守ること

    離婚した後の関係についても決めておきましょう。実は、離婚した配偶者がまるで関係が続いているかのように干渉してくる場合があるのです。他には離婚に際して配偶者の名誉を傷つけることも考えられます。

    そのような事態に対応できるように、あらかじめ離婚協議書に対処法を決めておくと安心です。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ
営業時間外はメールでお問い合わせください。

5、まとめ

子どもを残して家出したとしても、親権は子どもの利益に基づいて決められるため、家出が直接の原因で親権が決まることはめったにありません。逆に子どもが心配だからと連れ去りに走ると心証を悪くする可能性があります。

親権についての交渉が不安であるときはベリーベスト法律事務所 新潟オフィスへご相談ください。経験豊富な弁護士があなたのサポートをします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています