無断キャンセルでキャンセル料を請求された! 支払い義務はある?
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- 無断キャンセル
- 請求
新潟市のホームページに公開されている資料によると、新潟県内の宿泊業・飲食サービス業の事業所数は1万3424件にのぼるそうです。
新潟に限らず、多くの飲食店などが集中する地域では、予約のキャンセルによるトラブルもめずらしくありません。宴会の無断キャンセルに対して店舗が損害賠償を請求し、裁判所が客側に支払いを命じたという事例も報告されています。
飲食店やホテルなどの予約を無断でキャンセルした場合、キャンセル料などの支払い義務を負うのでしょうか?
無断キャンセルに対する店舗側の請求は認められるのか、キャンセル料の請求に対してどのように対処すべきなのかについて、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
1、飲食店やホテルにおける無断キャンセルの実態
近年、無断キャンセルは「No show(ノー・ショー)」とも呼ばれ、業界内だけではなく社会全体の問題として取りあげられるようになりました。
飲食店の予約管理システムなどを手がける会社が独自におこなった「飲食店の無断キャンセルに関する消費者意識調査」によると、無断キャンセルの理由は次の2点に集中していました。
- 取りあえず場所を確保するために予約した……34.1%
- 人気店なので取りあえず予約した……32.5%
この2つの理由を挙げた回答者がもっとも多く、日にち間違えといった合理的なものはわずかだったとされています。
また、無断キャンセルをした際に使用した予約手段の50.8%は、大手グルメサイトの予約システムを利用したものだったそうです。
なお、同じ調査のなかで、回答者の72.5%が「キャンセル料の支払いは妥当」と答えています。
これは、SNSやネットニュースなどでさかんに無断キャンセル問題が取りあげられていることにより、客側にも倫理違反であるという一定の認識があることが垣間見える結果と言えます。
2、無断キャンセルは損害賠償請求を受けるおそれがある
飲食店・ホテルの無断キャンセルについては、店舗側が客に対して損害賠償を請求し、裁判所が支払いを命じる事例も発生しています。
無断キャンセルをしてしまうと必ず損害賠償の義務を負うのでしょうか?
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(1)損害賠償とは
「損害賠償」とは、自分の行為によって相手に損害が発生した場合に、これを償うことです。
相手から支払いを求められた場合は「損害賠償請求」をされることになります。 -
(2)無断キャンセルは「債務不履行」にあたる
民法上における損害賠償の義務が生じるケースは、主に次のとおりです。
- 債務不履行に基づくもの(民法 第415条)
- 不法行為に基づくもの(民法 第709条)
債務不履行は、契約の当事者が契約内容に従った義務を履行しない場合に生じるものです。
一方、不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や利益を侵害した場合に生じます。
この関係に照らすと、無断キャンセルは債務不履行にあたると考えられます。
たとえばレストランに電話で予約したとすれば、レストラン側は予定の日時に席を確保して料理を提供する義務を負います。
それと同時に、消費者である客には「予定の日時に予定の人数で来店する」という義務が生じます。
このように、電話などによる口頭の約束はもちろん、インターネットを利用した予約などもすべてが「契約」として扱われるため、契約に反して無断キャンセルする行為は「債務不履行」にあたるのです。
なお、嫌がらせ目的で「最初から当日にキャンセルするつもりで予約した」「無断キャンセルが前提だった」という場合は、故意によって利益を侵害したことになります。
この場合は、不法行為の損害賠償請求の対象にもなります。 -
(3)予約内容によっては高額になることもある
無断キャンセルに対して損害賠償請求を受けた場合、問題となるのは「賠償額がいくらになるのか?」という点でしょう。
少額であればいざ知らず、高額になれば「サービスを受けてもいないのになぜ?」と納得できない方も多いはずです。
賠償額でポイントとなるのは、実際にいくらの損害が発生したのかという点です。予約の席を確保するために入店を断った客がいる、予約がなかった場合の見込みの売上額、廃棄することになった食材の価格などを元に判断することになるでしょう。
店を貸し切りにしたり、コース料理を大人数分予約したりしていたケースでは、高額な支払いになるおそれもあります。
3、無断キャンセルが犯罪になることはあるのか?
無断キャンセルが社会問題として取りあげられるなかで「無断キャンセルで罪に問われた」という事例も報じられています。
無断キャンセルで逮捕されることはあるのでしょうか?
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(1)故意であれば逮捕されることもある
嫌がらせや面白半分で、そもそも店舗を利用する意思もないのに予約を入れて無断キャンセルする行為は、相手に錯誤を生じさせ業務を妨害したとして、刑法 第233条に規定されている「偽計業務妨害」が成立する可能性があります。
偽計業務妨害は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
複数回の無断キャンセルを繰り返しており、被害額が甚大になっているなどの状況があれば逮捕されるおそれがあるでしょう。 -
(2)故意でなければ犯罪にはならない
「急な予定が入ってしまい連絡もできなかった」「キャンセルを伝えるのが申し訳なくてつい放置してしまった」などの理由で無断キャンセルに至ったのであれば、民事上の債務不履行にあたるものの、逮捕される可能性はまずないでしょう。
ただし、複数回にわたって同様の行為を繰り返していた場合は、故意であったとみなされる可能性もあります。
4、キャンセル料を請求されたときにとるべき行動
飲食店やホテルに対して無断キャンセルをしてしまい、キャンセル料を請求された場合の解決法は2つ考えられます。ひとつずつ見ていきましょう。
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(1)店舗側と話し合う
まずは、誠意をもって素直に謝罪することが大切です。
無断キャンセルを受けた店舗側は、予約をキャンセルされた痛手があるうえに「せめて連絡ひとつもらえれば損害は広がらなかった」という怒りの感情を抱えています。
これを放置していると、個人を特定されて損害賠償請求の訴訟を起こされてしまうおそれがあるため、早い段階で謝罪し、話し合いの場を設けましょう。
予約の段階で「キャンセル料は◯%」という合意がある場合は、その内容に従うことになります。
ただし、ホテルの予約などでは一般的でも、飲食店において事前にキャンセル料が取り決められることは、まだ少ないかもしれません。
具体的な賠償額は双方の納得があって決まりますが、店舗側が強硬な姿勢をみせる可能性は高く、交渉は難航することが予想されます。
なお、電話がかかってきたときに、無視することは得策とは言えません。電話番号だけであれば、個人が特定できないと考えるかもしれませんが、それは間違いです。弁護士や警察は、正当な理由があれば、個人情報の開示を請求することができます。電話にでないことによって、店側が強固な対応をとることも考えられるので、まずはしっかりと対応することが大切です。 -
(2)弁護士に相談する
個人が店舗側と話し合っても、店舗側が主張を譲らず交渉が難航した場合や、納得できないほどの高額な請求をされているような場合は、弁護士へ相談することが得策です。
弁護士に依頼すれば、代理人として示談交渉の遂行を任せられるだけでなく、実際に発生した損害を算出して適切な賠償額に落ち着くことが期待できます。
無断キャンセルによるトラブルでは、見込みの売上額を大きく加算して、実際の損害額以上の高額請求を受けるおそれもあるので、店舗側への謝罪にせんだって弁護士へ相談すると安心です。
5、まとめ
飲食店・ホテルなどへの無断キャンセルは、単にその分の売り上げが得られなかっただけでなく、予約対応のための準備などで、店舗側に大きな損害を与えてしまいます。
忙しくてキャンセルの連絡ができなかった、キャンセルを伝えるのが申し訳なくて無断キャンセルになってしまったなどの事情があっても、店舗側は「無断キャンセルをされた」という事実しか把握できません。
できるだけ早い段階で謝罪の意を伝えて、穏便かつ負担の少ない解決法に着地させることが大切です。
無断キャンセルをしてしまい、飲食店やホテルなどへの謝罪や賠償でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスにご相談ください。
無断キャンセルに対する損害賠償トラブルをはじめとした、消費者契約に関する法的な困りごとに関して、新潟オフィスの弁護士が最適な解決法を提案します。まずは、状況をお聞かせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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