被害届と告訴状の違いとは? 捜査機関側の義務・書き方なども解説

2021年01月12日
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被害届と告訴状の違いとは? 捜査機関側の義務・書き方なども解説

新潟県のデータによると、2019年中の新潟県内における刑法犯認知件数は1万743件で、前年と比べて394件の減少となっています。

犯罪被害に巻き込まれた場合、捜査機関に刑事事件として捜査をしてもらうためには、その犯罪事実を捜査機関に対して申告する必要があります。
その際に捜査機関に対して提出されるのが、「被害届」または「告訴状」です。

両者は似ているようですが、法的な位置づけは全く異なります。
犯罪の内容(罪名)によってどちらを提出すべきかが異なるため、ご自身の受けた被害の内容を法的にきちんと分析したうえで、どちらを提出するか決めましょう。

この記事では、被害届と告訴状の違いを中心に、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「新潟県内における刑法犯認知件数」(新潟県ホームページ))

1、被害届・告訴状はどういうもの?

被害届と告訴状は似ているようで、その意味や、受理した捜査機関に課される義務などの観点から大きな違いがあります。

まずは、被害届と告訴状がどのようなものであるかについて、基本的な知識を押さえておきましょう。

  1. (1)被害届とは

    被害届は、犯罪に遭った被害者が、捜査機関に対して被害事実を申告する書面をいいます。

    警察への被害届は口頭でも可能ですが、この場合はその場で被害届への記入をするか、警察官が代書をすることになります(犯罪捜査規範第61条第2項)。

  2. (2)告訴状とは

    告訴状は、犯罪の被害者が、捜査機関に対して被害事実を申告し、犯罪加害者(被疑者)の処罰を求める意思を表示する(告訴する)書面をいいます。

    なお法律上、告訴は口頭でも可能となっています(刑事訴訟法第241条第1項)。
    口頭での告訴が行われた場合、捜査機関側で告訴に関する調書を作成します(同条第2項)。

    ただし、捜査機関側に被害者の伝えたいことが正確に伝わらないリスクもあるので、被害者側で告訴状を作成するほうが望ましいでしょう。

  3. (3)告訴と告発は異なる

    告訴とよく似た概念として、「告発」というものがあります。

    告発は、告訴と同様に、捜査機関に対して犯罪事実を申告するものであるという点で共通しています。

    しかし、告訴は被害者またはその代理人のみが行えるのに対して、告発は誰でも行うことができるという違いがあります。

    また、後で解説するとおり、親告罪について犯人を訴追するには、あくまでも告訴権者による告訴が必要です。したがって、告発を告訴の代わりとすることはできません。

  4. (4)被害届と告訴状の違いについて

    被害届と告訴の主な違いは以下のとおりです。

    ①犯人の処罰を求める意思表示が含まれているかどうか
    被害届は、被害の事実を申告するものであるのに対して、告訴には犯人を処罰してほしいという被害者の意思表示が含まれているという違いがあります

    この意味で、被害届よりも告訴のほうが、より強力に被害者としての被害意識を訴える書面であるといえるでしょう。

    ②告訴は捜査機関に一定の義務を課すことになる
    告訴を受けた捜査機関は、告訴調書を作成する義務を負います(刑事訴訟法第241条第2項)。
    さらに、犯罪事実に関する捜査を尽くしたうえで、事件に関する書類および証拠物を速やかに送付しなければならないとされています(同法第242条)。

    これに対して、被害届が提出されただけの場合は、捜査機関に上記のような義務は課されていません。

    告訴は、被害者が犯人の処罰を求めているという点で、単なる被害届よりも深刻に受け止められるべきものといえます。
    そのため、告訴を受けた捜査機関には、事件の真相を明らかにするために、一定の義務が課されているのです。

    ③親告罪の訴追には告訴が必要
    犯罪の中には、「親告罪」と呼ばれるタイプのものがあります。

    親告罪とは、被害者またはその代理人による告訴がなければ、犯人を刑事訴追することができない犯罪をいいます。
    犯罪が親告罪とされる理由はさまざまですが、一例として以下の理由が考えられます。

    • 配偶者、直系血族又は同居の親族以外の親族が犯した窃盗罪、詐欺罪及び横領罪については、基本的に家族同士の問題なので、捜査機関の介入を許すかどうかを被害者の意思に委ねる
    • 軽微とされる犯罪であること


    親告罪の被害を受けた場合、犯人の処罰を求めるためには、単なる被害届を提出するだけでは足りず、捜査機関に対する告訴を行うことが必要です。

2、被害届と告訴状、どちらを提出すべき?

犯罪被害に遭った場合に、被害届と告訴状のどちらを提出すべきかについて解説します。

  1. (1)親告罪の場合は告訴状の提出が必要

    問題となっている犯罪が親告罪の場合には、告訴が行われない限り、捜査機関による捜査は開始されません。

    したがって、親告罪の捜査を開始してほしい場合には、被害届を出しても意味はなく、告訴状の提出が必須となります。

  2. (2)非親告罪の場合は処罰を求める意思があるかどうかで決める

    一方、窃盗・傷害などの非親告罪の場合には、必ずしも告訴がなかったとしても、捜査機関が事件性ありと判断すれば、逮捕・起訴などが行われます。

    よって、「処罰は捜査機関の判断に委ねます」というスタンスであれば、被害届を提出すれば足ります。

    ただし、告訴を行うことにより、捜査機関に法令上の捜査義務が発生するため、単に被害届を提出した場合よりも充実した捜査が行われる可能性が高くなります
    そのため、被害者が強く犯人を処罰することを望む場合は、告訴を行ったほうがよいでしょう。

3、示談で告訴を取り下げる場合の注意点

特に親告罪の場合には、犯人側から示談の条件として、告訴の取り下げを求められることがあります。

示談の条件が満足のいくものであり、これ以上の処罰は求めないという気持ちになった場合には、告訴の取り下げに応じても問題はないでしょう。

ただし、告訴を取り下げた場合には、改めてもう一度告訴をすることはできません(刑事訴訟法第237条第2項)。したがって、告訴の取り下げは、よく検討の上、行うことが大切です。

4、被害届・告訴状の書き方や提出方法は?

犯罪被害者が被害届や告訴状を提出したい場合の、それぞれの書き方や提出方法について解説します。

  1. (1)被害届には様式がある

    被害届には、犯罪捜査規範によって様式が定められています。

    (参考:被害届様式(別記様式第6号))

    被害届を作成する際には、受けた犯罪被害の内容をできる限り具体的に記載しましょう

  2. (2)告訴状の書き方には特に決まりがない

    一方、告訴状については特に様式が定められておらず、書き方についてのルールは決まっていません。

    告訴は、犯罪事実の申告と処罰の意思表示を内容とするため、この二つを具体的かつ明確に記載することがポイントになります。
    特に犯罪事実の内容については、犯罪被害当時の時系列や心情なども交えて、臨場感のある記載にするよう心がけるとよいでしょう。

  3. (3)いずれも警察に提出すればOK

    被害届・告訴状は、いずれも捜査機関に対して提出する必要があります。

    具体的には、検察官または司法警察員(警察)に提出することになりますが、通常は警察署や交番に出向いて、警察官の指示に従えばOKです。

5、犯罪被害に遭ってしまった場合は弁護士に相談を

思いがけず犯罪被害を受けてしまった場合には、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめいたします。

被害者としては、捜査機関に被害届や告訴状を提出することによって、捜査機関に速やかに捜査へと着手してもらうことが大切です。
早期に捜査が開始されれば、証拠の散逸を防ぐことができ、犯人検挙が容易になるからです。
弁護士に相談をすれば、被害届や告訴状の書き方・提出方法を含めたアドバイスを受けられるため、迅速に捜査機関に対して犯罪被害を申告することが可能です

また、犯罪により受けた被害については、犯人側から示談の申し入れが行われる場合があります。
その際、示談金その他の条件を提示されます。ただ示談などの条件提示の内容が妥当かどうかは、法律や被害賠償の実務を踏まえて判断しなければなりません。
弁護士は、犯罪に関する被害賠償の実務に精通していますので、被害者が不利益を受けることがないよう、犯人側との示談交渉についても全面的にバックアップすることができます。

6、まとめ

被害届は犯罪被害の事実を捜査機関に申告するものですが、告訴状はこれに加えて、被害者としての処罰意思を表明するという内容を含んでいます。

つまり、被害届よりも告訴状のほうが、被害をより強く訴える書面という性質を有しています。そして、告訴状には、被害届にはない法律上の効果が与えられています。

もし犯罪被害に遭ってしまった場合には、一刻も早く捜査機関に対して被害届や告訴状を提出して、早期に捜査へと着手してもらうことが大切です。

ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでは、刑事事件の経験豊富な弁護士が、感情面のケアも含めて、被害者を全面的にサポートいたします。

犯罪の被害に遭ってしまったという方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています