小学校で子どもが怪我をした場合、損害賠償請求は可能か? 弁護士が解説
- 学校事故
- 学校
- 怪我
- 損害賠償
小学生の子どもが学校で怪我をして帰ってくることは珍しくないでしょう。実際に、新潟市が発表している平成28年度新潟市学校保健統計によると、新潟市内の小学校で災害共済が給付された負傷は、2827件も報告されています。
しかし、大怪我ともなれば話は別です。ましてや同じ学校の児童から暴力を振るわれたなら、「何としても損害を賠償してもらいたい」と考える方のほうが多いのではないでしょうか。
では、もしわが子が学校で子どもに怪我を負わされたら、損害賠償を請求する相手は一体だれになるのでしょうか。また、どんな費用を請求できて、どれくらいの金額で請求できるものなのかを、ご存じですか。
今回は、小学校で子どもが怪我をした場合の損害賠償について、新潟オフィスの弁護士が解説します。請求できる費用や金額、請求するまでの手順について、ぜひ参考にしてください。
1、小学校で起こった事故の損害賠償請求先
まずは、小学校で起こった事故の場合、どこへ損害賠償を請求すればよいのかという点から解説しましょう。
-
(1)学校へ損害賠償請求できるのか
小学校で起こった事故の場合、基本的には学校へ損害賠償を請求します。
しかし、賠償請求を行う際は、まずは民法第709条、民法710条に規定された損害賠償が行える根拠を満たす必要があります。そのうえで、請求する側が「怪我をした原因は学校に責任がある」という証拠を明示することが求められることになるでしょう。
単純に「怪我をした現場が学校だったから、学校に対して損害賠償を請求できる」というわけではない点に注意が必要です。 -
(2)先生へ損害賠償請求できるのか
前提として、公立小学校の教師は公務員にあたるため、子どもが怪我をした小学校が公立であるときは先生個人への賠償請求は行えません。国家賠償法第1条1項によって、公務中に他人に損害を与えたときは、国または公共団体が賠償する責を負うことになっているためです。よって、公立小学校の先生に対して損害賠償請求を行いたいときは、市町村や都道府県などの自治体に対して損害賠償請求を行うこととなります。
なお、私立小学校の先生に対して損害賠償請求することは可能です。ただし、新潟県下には私立小学校は存在しません。よって、新潟県内の小学校で子どもが怪我をして、先生に対して責任を問いたいときは、原則、自治体に対して損害賠償を行うことになるでしょう。 -
(3)生徒個人に対する損害賠償請求は?
法律においては、だれかがだれかに怪我を負わせた場合、怪我を負わせた本人に責任を取ってもらうことが原則としています。しかし、未成年者の責任能力について記した民法第712条にのっとり、特に12歳未満の子どもに対しては、責任能力を問うことができない可能性があります。
したがって、たとえ子どもの同級生によって負傷したことが事実だとしても、怪我を負わせた本人が小学生で責任能力がない場合、本人は責任を負わなくてもよいということになります。では、小学生が小学生へ怪我を負わせた場合に責任を負うのは、だれになるのでしょうか。
原則的に、怪我を負わせた本人が小学生だった場合に責任を負うのは、その子どもの親、もしくは保護者です。ただし、「責任無能力者の監督義務者等の責任」について定めた民法第714条第2項にもとづくと、子どもが学校にいる間の監督者は、親ではなく学校(または先生個人)となります。したがって、学校で起こった事故の場合は、加害生徒の親へ損害賠償請求を行うのではなく、学校に対して行うことになるでしょう。
学校には、子どもたちが安全に過ごせるよう配慮する義務や、子どもへ指導する義務があります。授業中などに起きた事故によって怪我をしたときは、やはり学校に対して損害賠償請求を行うことになるでしょう。
ただし、放課後や休日に起こった事故の場合、学校に責任はないと考えられます。学校に監督義務があるのは、あくまで授業中やクラブ活動などの時間のみであるためです。もし、子どもが怪我をした原因となる事故が、これらの時間以外に起きた場合は、怪我を負わせた本人の親もしくは保護者へ損害賠償を請求することになります。
損害賠償を請求する相手は、時間帯によっても変わりますので注意する必要があるでしょう。
2、請求できる費用や金額
損害賠償請求を行うとして、実際に請求できる費用や金額についてご存じでしょうか。
一般的に、小学校で児童が児童に怪我をさせた場合の損害賠償に含まれるのは、以下のとおりです。
●治療費(自己負担分)
たとえば、後ろから押されて子どもの歯が折れてしまった場合、歯を元どおりにするために必要ならセラミックの歯を入れる料金も治療費として請求できます。
●親の付き添い費
子どもの治療や入院のために親が付き添った場合に請求できるのが、付き添い費です。親が仕事を休んで入院に付き添った場合は1日あたりで換算し、付き添い費を請求できることがあります。
●通院や帰省にかかった交通費
交通費とは、通院に伴ってかかった交通費(電車代やタクシー代)のことです。ほかにも、単身赴任で遠方に暮らす親が子どもを心配して帰省した際の交通費も、損害賠償へ含められます。
●慰謝料
慰謝料の請求額に関しては、怪我の度合いや完治までにかかる期間、後遺症の有無や精神的苦痛の度合いなどによるものとなります。したがって、一概に「○万円が妥当」とは言えません。なお、顔に大きな傷跡が残る可能性が高いケースや、後遺症によって身体が不自由になる可能性が高いケースでは、高額になる可能性もあります。状況を顧みながら交渉していくことになるでしょう。
3、損害賠償を請求する手順
損害賠償を請求する手順を知っておきましょう。
まず、子どもが学校で怪我を負った場合は、病院での治療を優先させましょう。治療費を請求するのは、治療が終わって(完治して)実費が明らかになってからになります。子どもの今後のためにも、まずは治療を進めることが大切です。
治療を進めながら、学校とのコンタクトを取ります。まずは学校で怪我をしたことについて報告し、担任の先生から詳しい事情を聞きましょう。この際、学校(先生)がしっかりと子どもの安全に配慮していたのかという点にも注目して、詳しく聞いてください。
たとえば、先生が間に入って止めたにもかかわらずケンカがエスカレートしたといったケースの場合、「学校や先生は責任を果たしていた」と認められる可能性があります。その場合は学校に対して損害賠償請求をすることは難しいでしょう。反対に、問題を起こしがちな生徒を放置していて、一方的な暴力を受けたことが明らかであれば監督責任を果たしていたとは言えません。
また、相手の子どもが事実を認めなかったり、お互いに言い分が食い違ったりすることも考えられます。当事者同士で話し合うとトラブルが大きく発展する可能性がありますので、なるべく学校を通して間接的に話を聞きましょう。
「怪我が完治したら治療費や交通費などを連絡する」と学校へ伝え、学校に支払い意思があるのか、学校が支払わないのであればどこへ請求すればよいのかを確認します。
治療費に関しては、日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度により、災害共済給付(医療費、障害見舞金および死亡見舞金の支給)が行われるケースが中心です。おそらく学校から連絡をもらっているのではないでしょうか。
しかし、この給付金だけでは治療費も足りない場合があります。そのようなケースでは、不足分を学校や自治体、または先生個人や加害者の親へ請求することとなるでしょう。
どんな事情があったにせよ、怪我をした事実がある限り損害賠償請求は可能です。もしも学校や加害者の親が一切の責任を認めない場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。
4、まとめ
今回は、小学校で起こった事故の損害賠償請求について新潟の弁護士が解説しました。ひとくちに小学生の起こした事故と言っても、小学校の中で起こったのか外で起こったのか、放課後に起こったのか休憩時間に起こったのかなどによって、損害賠償を請求する相手が変わります。
ケース・バイ・ケースではありますが、十分な慰謝料までをも保険でまかなわれるケースはそう多くありません。子どもの記憶が薄れたり証拠が無くなったりする恐れもあります。しっかりと損害賠償を請求したい人は弁護士への相談も視野に入れたほうがよいでしょう。示談交渉の経験が豊富な弁護士であれば、スムーズな解決ができる可能性が高まります。
新潟県内の学校事故に関しては、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスで相談してください。損害賠償請求はもちろんのこと、豊富な経験に基づいた示談交渉にも尽力いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|