子どもが学校で体罰を受けた。加害者の教員や学校に対してとるべき対応とは?
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新潟県の調査によると、新潟県内の小中学校・高校などにおいて、平成30年度中だけでも91件の体罰に関する県教育委員会への報告が行われています。
そのうち体罰と認定されたのは6件のみですが、これらは氷山の一角であり、まだまだ体罰の問題は根強く残っている可能性が高いでしょう。
学校での教職員による体罰は、児童虐待などと並んで、子どもに対するきわめて重大な問題行動とみなされています。
法律的な観点から見ても、体罰は違法であり、断じて許されるべきではありません。
この記事では、学校で子どもが体罰を受けた場合にとることができる対応について、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「体罰の実態把握に係るアンケート調査の結果について」(新潟県))
目次
1、どこからが体罰にあたるのか?
学校教育に関するルールを定める学校教育法では、体罰に関して以下のように定めています。
第十一条 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。
(学校教育法第11条)
このように、「体罰」は法律上も明文で禁止されている違法行為です。
その一方で、生徒指導のために教育上必要な「懲戒」は認められています。
また、児童・生徒・学生の側から教員に対して危害を加える行為があった場合に、それに対処するための行為についても「正当行為」として認められます。
では、どのような行為が違法な「体罰」にあたり、どのような行為が「懲戒」や「正当行為」にあたるのでしょうか。
以下、具体例を見ていきましょう。
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(1)体罰にあたる行為の例
教員の側から児童・生徒・学生に対して暴力を振るう行為は、いかなる場合であっても違法な体罰として許されません。
また、児童・生徒・学生の側からの暴力などに対処する目的であっても、必要な範囲を超えて過度な暴力を加えた場合には、違法な体罰に該当します。
さらに、直接暴力を振るうわけではなくても、児童・生徒・学生に対して肉体的な苦痛を与えるような行為は、違法な体罰に該当する可能性があります。
体罰にあたる行為の一例としては、以下のようなものが挙げられます。- 反抗的な言動をした子どもの頰を平手打ちする
- ふざけている子どもに対して、ボールペンやチョークなどの物を投げつける
- 子どもが先に教員に対して1発蹴りを入れたところ、教員がそれに反撃して子どもの顔面を複数回殴打し、重傷を負わせる
- トイレに行きたいという子どもの要求を拒否して、教室の中にとどめる
- 子どもに対して強制的に長時間正座をさせる
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(2)通常の懲戒として認められる行為の例
一方、教育上の必要性や配慮から児童・生徒・学生を叱る行為は、暴力や肉体的苦痛を伴わない限り、通常の懲戒として認められます。
通常の懲戒として認められる行為の例は、以下のとおりです。- 放課後に説教をするため、教室内に少しの時間残留させる
- 立ち歩きの多い子どもに対して口頭で注意する
- 部活動の練習に遅刻した生徒を、試合に出さず見学させる
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(3)正当防衛などの正当行為として認められる行為の例
教員自身が児童・生徒・学生から危害を加えられた場合に、当該児童・生徒・学生に対して必要最小限度の抵抗を行うことは、教員自身の権利です。
また、児童・生徒・学生が別の子どもから暴力行為を受けた際に、これを制止することも教員の責務といえます。
これらの場合、教員の行為は、正当防衛をはじめとする正当行為として認められます。
正当行為として認められる行為の例は、以下のとおりです。- 子どもが教員に暴力を振るってきたところ、教員がこれを取り押さえる
- 子ども同士のけんかの場面に遭遇した教員が、両者の肩をつかんで引き離す
2、学校での体罰について教員や学校(国や地方公共団体等も含む。)に対して問うことのできる責任は?
教員が学校で行った違法な体罰行為に対しては、法律上の制裁が設けられています。
以下では、学校での体罰について、教員や学校に対して問うことのできる法的責任の内容を解説します。
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(1)教員に対する懲戒処分
公立学校や国立学校の教員が体罰を行った場合、職務上の義務違反として、地方公務員法第29条第1項第2号に基づき、戒告・減給・停職・免職の懲戒処分を受ける可能性があります。
また、私立学校の教員の場合には、その学校の就業規則などに定められる懲戒規定に基づき、同様の懲戒処分を受ける可能性があります。 -
(2)民事上の損害賠償・使用者責任・国家賠償
公立や国立の学校の教員による体罰によって子どもが肉体的・精神的損害を被った場合、基本的には、加害者である教員の個人責任ではなく、国や地方公共団体の賠償責任を追及していくことになります。
これは、法制度の仕組みとして、原則として、公立や国立の学校の教員が不法行為によって、子どもに損害を与えた場合、教員の民事上の個人責任は問われない仕組みとなっていることが理由です。
ただ、例外的に公立や国立の学校の教員による個人責任を追及できる場合もありますので、弁護士に相談すると良いでしょう。
また、私立学校の場合は、教員個人に対し、不法行為責任(民法第709条)や安全配慮義務の不履行(民法第415条)を理由に損害賠償請求をすることもできます。
また、教員を雇用する学校側も、被害者に対して「使用者責任」に基づく損害賠償責任を負います(民法第715条第1項)。 -
(3)刑事責任
違法な体罰は、傷害罪(刑法第204条)や暴行罪(刑法第208条)などの刑事責任を問われる可能性もあります。
3、学校での体罰に関する相談先は?
もし子どもが学校で体罰を受けてしまった場合、一刻も早く適切な機関や専門家に対して相談を行いましょう。
以下では、体罰に関する相談を受け付けている機関や専門家を紹介します。
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(1)文部科学省・教育委員会の相談窓口
文部科学省では、体罰を含めて、子どもが抱える悩みを相談できる24時間対応の相談窓口を設けています。
(参考:「子供(こども)のSOSの相談窓口(そうだんまどぐち)」(文部科学省))
また、各都道府県の教育委員会においても、体罰問題に特化した相談窓口を設けているケースがあります。
文部科学省や教育委員会は、各学校の上位に位置する機関です。
そのため、これらの機関に相談をすることで、学校に対する調査・監督・指導が行われることにより、体罰問題が解決することも考えられます。 -
(2)弁護士
文部科学省や教育委員会への相談という形をとると、必ずしも迅速な対応が期待できないこともあります。この場合、子どもが体罰を受けた学校に対して、連絡をすることが直接的な解決につながりやすいといえます。
しかし、子ども自身や両親が体罰の被害を訴えたとしても、学校側が十分な対応をしてくれないケースがあることも事実です。
このような場合、弁護士に相談をすることをおすすめいたします。
弁護士は法律の観点から、学校側に対して体罰への厳正な対処を求めます。
弁護士から話をすることで、学校側も体罰の問題の深刻さを正しく認識し、結果として、体罰問題の解決が期待できるでしょう。
4、学校での体罰に関して弁護士ができること
学校で起こった体罰について、弁護士が問題解決に向けて被害者をサポートできることの内容を以下にまとめます。
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(1)学校や教育委員会に対して直接連絡する
前述のとおり、体罰問題を迅速に解決するためには、弁護士から学校に対して直接連絡をし、体罰問題について適切に対応するよう申し入れることが有効です。
また、学校が適切な対応をとらない場合には、教育委員会に対して、弁護士が意見書や抗議文を提出することも考えられます。 -
(2)民事上の責任を追及する
体罰によって子どもが肉体的・精神的損害を被った場合、加害者の教員や学校(自治体・国)に対して損害賠償を請求できる場合があります。
弁護士は、交渉や訴訟などを通じて、被害者が適切な損害賠償を獲得できるように最大限の支援を行います。 -
(3)加害者の教員を刑事告訴する
もし被害者が、加害者の教員に対する刑事処分を望むならば、刑事告訴を行うための手順などについてもアドバイスを行います。また、弁護士が刑事告訴のお手伝いをすることもできます。
実際に刑事処分が行われるかどうかは捜査機関の判断になりますが、刑事告訴も有効な手段になり得るでしょう。
5、まとめ
学校における体罰は、法律上明文で禁止された違法行為です。
体罰を行った教員は、懲戒処分・民事上の損害賠償・刑事罰などの法律上の制裁を受けることになります。
もし学校で体罰を受けてしまった場合には、一刻も早く、学校、文部科学省・教育委員会といった機関や、弁護士に相談することが大切です。
特に弁護士に依頼をすれば、体罰の起こっている現場である学校に対して直接申入れをしたり、民事上の責任を追及することを通じて、より直接的かつ迅速な体罰問題の解決が期待できます。
ベリーベスト法律事務所では、子どもに対する体罰を重要な問題と捉え、体罰の被害者に対するサポートを積極的に行っております。
子どもに対する学校での体罰に悩んでいるという方は、ご家族だけで悩むことなく、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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