法定相続人が姪甥となるケースと争いになったときの対応方法
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新潟県が公表している人口・世帯の市町村別データによると、令和元年10月1日から令和2年9月30日までの新潟市内での死亡者数は、8892人でした。前年同期の死亡者数が9224人であったことからすると、若干の減少となっていますが、毎年9000人前後の方が亡くなられていることがわかります。
相続は、人の死亡によって開始し、相続人の範囲については、民法によって定められています。
被相続人の配偶者や子どもが相続人になるケースが多いですが、場合によっては、被相続人の甥(おい)や姪(めい)が相続人となることもあり得るかもしれません。一般的に、甥や姪は、被相続人との関係が希薄なことが多いため、甥や姪が法定相続人になる場合には、特別な配慮が必要になることがあります。
今回は、法定相続人が甥姪となるケースと争いになったときの対応方法について、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
1、法定相続人の範囲と姪甥が相続人となるケース
甥姪が法定相続人になるのはどのようなケースなのでしょうか。法定相続人の範囲に関する基本的事項を説明しながら、甥姪が相続人になるケースを紹介します。
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(1)法定相続人の範囲
被相続人が死亡(相続が発生)した場合に、被相続人の遺産を取得する人のことを法定相続人といいます。誰が法定相続人になるかについては、民法が明確に法定相続人の範囲と順位を規定していますので、その規定に従って法定相続人を判断していくことになります。
民法では、法定相続人の範囲と順位について、以下のとおり規定しています。
① 配偶者
被相続人に配偶者がいる場合には、配偶者は「常に相続人」になることができます(民法890条)。被相続人の子ども、直系尊属、兄弟姉妹については、決められた順位に従って相続人になることができるに過ぎませんが、配偶者は“常に”相続権が認められるのが特徴です。
② 被相続人の子ども(第1順位)
被相続人に子どもがいる場合には、被相続人の子どもは第1順位の相続人になります。
③ 被相続人の直系尊属(第2順位)
被相続人直系尊属(父母、祖父母など)がいる場合には、被相続人の直系尊属は第2順位の相続人になります。
なお、被相続人の直系尊属が複数人いる場合には、被相続人からみて近い親等にある方が相続人となります。
④ 被相続人の兄弟姉妹(第3順位)
被相続人に兄弟姉妹がいる場合には、被相続人の兄弟姉妹は第3順位の相続人になります。被相続人の兄弟姉妹は、第3順位の相続人ですので、被相続人に子どもや直系尊属がいない場合に限って、相続人になることができます。 -
(2)甥姪が相続人となるケース
民法が規定する法定相続人の範囲と順位は、上記のとおりですので、甥姪は被相続人の法定相続人にならないようにも思えます。
しかし、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるケースで、被相続人の兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡していた場合にはその子ども、つまり「被相続人の甥姪」が相続人になることができます。これを“代襲相続”といいます。
代襲相続とは、被相続人が死亡した時点において、本来相続人になるはずだった人が被相続人よりも先に死亡している場合などに、本来相続人になるはずだった人の子どもが代わって相続人になることを認める制度です。
なお、代襲相続人が被相続人よりも前に死亡していた場合には、代襲相続人の子どもが被相続人の相続人になることができます。これを“再代襲”といいます。
たとえば、被相続人の子ども、孫が被相続人よりも先に死亡しており、被相続人の「ひ孫」が相続する場合です。しかし、民法の規定では、甥姪が代襲相続人になるケースでは、再代襲は認められていませんので、注意が必要です。
2、姪甥が相続人となったときの遺産の分け方
甥姪が相続人となったときの遺産の分け方(相続分)については、被相続人に配偶者がいる場合といない場合で異なります。以下では、被相続人に配偶者がいる場合といない場合に分けて説明します。
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(1)被相続人に配偶者がいるとき
被相続人に配偶者がいるときには、相続人は、配偶者と甥姪になります。
代襲相続人である甥姪の相続分は、被代襲者である兄弟姉妹の相続分が引き継がれることになります。そして、代襲相続人である甥姪が複数人いる場合には、兄弟姉妹から引き継いだ相続分を甥姪の人数で均等に分けて分割することになります。
したがって、配偶者の相続分は、4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1となりますので、甥姪が1人ずついる事例では、甥姪の相続分は、各8分の1(4分の1×2分の1)となります。 -
(2)被相続人に配偶者がいないとき
被相続人に配偶者がいない場合には、「甥姪のみ」が相続人になります。この場合には、甥姪の人数に応じて遺産を分けることになります。
たとえば、被相続人に兄Aと姉Bがいたとします。兄Aと姉Bは、ともに被相続人よりも先に死亡し、兄Aには、子どもが2人(C、D)、姉Bには子どもが1人(E)いたとすると、C、D、Eの相続分はどうなるのでしょうか。
代襲相続人は、被代襲者の相続分をそのまま承継することになりますので、以下のような相
続分になります。C、D、Eで均等に遺産を分けるわけではない点に注意が必要です。C:4分の1
D:4分の1
E:2分の1
3、一般的な相続の流れ
相続が開始した場合には、一般的に以下のような流れで被相続人の遺産を分割することになります。
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(1)相続人調査
相続が開始した場合には、まずは誰が相続人になるかを調べなければなりません。これを相続人調査といいます。
遺産分割協議を成立させたとしても、相続人に漏れがあった場合には、遺産分割協議は無効となってしまい、再度やり直しをしなければならない手間が生じます。そのため、有効な遺産分割手続きを行う前提として、相続人調査が非常に重要となります。
一般的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本を取得し、配偶者の有無、第1順位から第3順位までの相続人の有無を確定させていきます。
甥姪が相続人になるケースでは、必要となる戸籍も多くなりますので、見落としがないように注意しなければなりません。 -
(2)相続財産調査
相続人調査が完了した場合には、次は、被相続人の遺産の内容を明らかにしていきます。これを相続財産調査といいます。
相続財産調査に漏れがあった場合には、漏れた遺産を対象として、再度遺産分割協議を行わなければなりません。
また、「後日発見された遺産は○○が取得する」という内容で遺産分割協議を成立させることもできますが、高額な遺産が漏れていた場合にも、当該遺産分割協議が無効となり、遺産分割協議を最初からやり直さなければならないというリスクも生じます。
さらに、被相続人に借金があったような場合には、相続放棄をするかどうかを正確に判断するためにも、相続財産調査が重要となります。
相続財産調査は、預貯金については金融機関への照会、不動産については名寄帳や登記簿の確認、株式については証券会社への照会や証券保管振替機構に登録済加入者開示請求などによって行います。 -
(3)遺産分割協議
相続人および相続財産の調査が完了した場合には、相続人全員で、遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」が行われます。
遺産分割協議では、遺産をどのように評価するのか、分割するのかを話し合います。
また特別受益や寄与分がある場合には、それを踏まえて相続分を修正していく必要もあります。
遺産分割協議によって、具体的な遺産の分割方法が決まった場合には、必ず、「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議書は、後日の相続人同士の争いを防止するという目的だけでなく、預貯金の払い戻し手続きや不動産の相続登記の手続きの際に必要になります。
(参考:遺産分割協議書の書き方とは? 記載すべき7つのポイントを新潟県の弁護士が解説) -
(4)遺産分割調停・審判
相続人同士の話し合いで具体的な遺産の分割方法などが決まらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
遺産分割調停では、2名の調停委員が間に入って、遺産分割に関する紛争の解決に向けて調整を行ってくれます。ただし、遺産分割調停も基本的には話し合いの手続きになりますので、相続人同士で合意ができないときには、調停は不成立となります。
調停が不成立となった場合には、自動的に審判という手続きに移行します。審判では、調停でのやりとりや新たな主張立証を踏まえて、裁判官が妥当だと考える分割方法を決定します。
(参考:いきなり遺産分割審判できる? 調停と審判の違いや弁護士に依頼すべきタイミングとは)
4、弁護士に相談すべきケース
甥姪が相続人になるケースでは、被相続人との関係が希薄であったことから、各種調査や遺産分割協議において通常の相続よりも複雑になることがあります。そのような場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)相続人や遺産の範囲に不安がある場合
甥姪が相続人になるケースでは、被相続人との関係が希薄であったために、被相続人の家族関係や財産関係を正確に把握していないことが多いです。
被相続人が死亡したとの連絡を受けたとしても、何から手を付けてよいのかわからない方も多いでしょう。被相続人が遠方に住んでいる場合には、さらに手掛かりが少なく、困惑してしまう方もいるかもしれません。
そのような場合には、弁護士に相続人調査や相続財産調査を依頼することを検討するとよいでしょう。弁護士であれば、全く手掛かりがない状態からでも、正確に相続人となるべき方を特定することができますし、弁護士会照会などの弁護士にしかできない照会方法を用いるなどして、被相続人の財産関係も明らかにすることができます。
相続人調査や相続財産調査に漏れがあった場合には、すでに成立した遺産分割協議が無効になるリスクもありますので、正確な調査を希望する場合には、弁護士に依頼するとよいでしょう。 -
(2)相続人同士で争いがあるケース
具体的な遺産分割の場面で、相続人同士で争いがあるケースでも弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
遺産分割の場面では、遺産の評価、遺産の分割方法、特別受益や寄与分の有無など各相続人が自己に有利な主張を繰り広げる結果、なかなか話し合いがまとまらないことがあります。
弁護士が相続人の代理人として話し合いに関与をすることによって、法的観点から妥当な解決方法を提案することができます。きちんと根拠に基づいて分割方法を提示することによって、他の相続人からの納得も得やすいといえるでしょう。
仮に、話し合いによって解決しなかったとしても、弁護士であれば遺産分割調停や審判も引き続き任せることができますので安心です。
5、まとめ
甥姪が相続人となるケースでは、相続人調査をするにあたり、収集すべき戸籍が膨大な数となる場合もあります。また、相続財産を調査しようと思っても、被相続人がどのような財産を有していたのかまったく把握していないというケースも珍しくありません。
遺産分割手続きを適切に行うためには、弁護士のサポートが必要になるでしょう。ベリーベスト法律事務所では、弁護士だけでなく税理士も所属していますので、相続税などの税務に関してもワンストップでサポートすることができます。
遺産分割などでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスまでお気軽にご相談ください。
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