債務整理(任意整理)後に住宅ローンや車のローンは組めるか?
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新型コロナウイルス感染症拡大にともなう影響で収入が減少し、借金返済や住宅ローン返済が難しくなるなどの問題が生じています。
新潟県では「個人向け緊急小口資金等の無利子の貸付」を行うなどさまざまな対策を講じています。
しかし、このような制度を利用しても、借金や住宅ローンの返済のめどがつかないような場合には、「債務整理」を検討することも選択肢のひとつです。
「債務整理」のひとつの方法として「任意整理」がありますが、任意整理を行った後に、「住宅ローンや車のローンなどは組めなくなるのではないか」と心配する方も少なくありません。
本コラムでは、「債務整理(任意整理)後の住宅ローンや車のローン」について、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説していきます。
1、債務整理(任意整理)とは
まず債務整理(任意整理)についてご説明していきます。
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(1)任意整理とは
債務整理には、「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の四つの方法があります。
「任意整理」は、借入金の返済先である金融業者に交渉をして、将来利息や遅延損害金などを免除してもらい、毎月の支払額を減額の上で分割して支払っていく方法です。
「任意整理」は、ほかの三つの方法と違って、裁判所が関与することなく進められる方法です。そのため借金の返済に悩んだ時には、まず初めに「任意整理」の方法から検討していくことになります。
ただし、債権者である金融業者にとっては、将来利息などを得られなくなる不利益が生じるため、債務者自らが交渉しても任意整理を受け入れてもらえないことが一般的です。
そのため、基本的に任意整理は弁護士などに依頼して進めると良いでしょう。
※債務整理のうち、「特定調停」「個人再生」「自己破産」の概要について知りたい方は、以下をご参照ください。
「借金の放置は危険! 裁判になる前に解決する具体的方法とは」 -
(2)任意整理のメリット・デメリット
任意整理のメリットとデメリットを簡単に確認しておきましょう。
メリットは、裁判所が関与しない手続きなので、簡単で周囲に知られる心配があまりないことが挙げられます。また任意整理では、対象の債権者を選ぶことができるので、特定の財産を残すこともできる可能性があります。
依頼した弁護士からの受任通知(弁護士が介入したことを知らせる通知文のことです。)を債権者が受け取った場合、債権者は、直接債務者に取り立てを行うことができなくなります。そのため債務者にとっては、弁護士に依頼し、債権者に受任通知を送付することで、債権者からの督促がストップするメリットもあります。
一方、デメリットには、債権者から裁判を起こされるリスクや、抵当権などの担保権を実行されるリスクがあることなどが挙げられます。
また、大きなデメリットといえるのが、「信用情報機関に情報が登録される」ことです。この信用情報機関の登録情報の有無は、金融機関などのローン審査に大きな影響をあたえます。 -
(3)信用情報機関に登録される情報
では、信用情報機関には、どのような情報が登録されるのでしょうか。
信用情報機関には、クレジットやローンなどの契約内容、返済、支払い状況、取引事実などの信用情報が登録されます。
任意整理をすれば、その事実が事故情報として信用情報機関に登録されます。このことは、「ブラックリストに載る」と表現されることもあります。
そして、事故情報が登録されると、数年間は、新たなお金を借り入れやクレジットカードの作成ができず、住宅ローンなどを組めなくなる可能性が高くなります。
具体的にどれぐらいの期間、住宅ローン審査などに通らないのかについては、後ほどご説明いたします。
2、債務整理(任意整理)すると自宅や車はどうなる?
「債務整理後に住宅ローンや車のローンは組めるか」を検討する前に、現在ある家や車が任意整理によってどうなるかを知っておくことは大切です。
債務整理というと、家や車を任意売却して債権者に返済しなければならないと思うかもしれません。
しかし、任意整理のメリットの項目で触れたように、任意整理する債権者を選択できるので、住宅ローンや車のローンを任意整理の対象から外し、自宅や車を残すこともできる可能性があります。
3、任意整理後ローンは組める?
では、本題である「任意整理後に住宅ローンや車のローンは組めるか」について、解説していきます。
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(1)信用情報の登録がなくなればローンは組める
前述の通り、任意整理をすると、信用情報機関にその事実が登録されます。
住宅や車のローンを組むときには、信用情報機関の登録情報も参照して審査が行われるので、登録がある限りローンを組むことはできません。
しかし、信用情報機関の登録情報は任意整理で減額してもらった借金を完済した後、一定期間が経過すれば削除されます。削除された信用情報までは、ローン審査をする金融機関等は見ることができません。したがって、信用情報の登録がなくなればローンを組める可能性があります。 -
(2)任意整理後どれぐらいの期間でローン審査に通るか
信用情報機関に信用情報が登録される期間については、法律の定めがあるわけではなく、機関ごとに異なる取り扱いがなされています。
たとえば、信用情報機関のひとつである「日本信用情報機構(JICC)」では、契約日が2019年10月1日以降の契約について債務整理をしたときには、「契約継続中及び契約終了後5年以内」の期間、その事実を個人信用情報として登録するものとしています。
一般的には、5年程度とされることが多いようですが、詳しくはそれぞれの信用情報機関のホームページなどで確認するとよいでしょう。
4、債務整理(任意整理)後にローンを組むときの注意点とは
任意整理後、住宅ローンや車のローンを組むためには、次のような点にも注意する必要があります。
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(1)事故情報が削除されているか自分でも確認する
任意整理後に住宅ローンなどを組むときには、審査の前にご自身で信用情報の開示請求をすることをおすすめします。
信用情報機関は全国に三つありますが、それぞれの機関にご自身の信用情報の開示請求をして事故情報(ブラックリスト)が削除されていることを確認する必要があります。
なお、開示請求の方法については、各機関のホームページなどで簡単に確認することができます。 -
(2)信用情報以外の理由で審査に落ちる可能性はある
信用情報から任意整理の事実が削除されていても、審査に通らないこともあります。
したがって、事故情報が削除されていれば必ず審査に通るということではないので、注意が必要です。
なお、住宅ローン審査では、次のような項目をチェックされることが一般的とされています。- 安定した収入があること
- 正社員など安定した雇用形態か
- 勤続年数が長いか
- 信用情報に事故情報がないか
- 健康状態は良いか
- 税金の滞納はないか
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(3)任意整理した金融機関以外でローンを組む
信用情報機関から事故情報が削除されていても、ローンを組む際には、任意整理した金融機関は避ける方が無難です。
なぜなら、任意整理した金融機関には、過去に任意整理したという情報が社内に残っていて共有されている可能性も高いからです。情報が残っていれば、ローン返済が再び滞り債務整理する可能性もあるものと判断され、ローン審査が通らない可能性が高くなります。
したがって、任意整理した金融機関以外を選択して、ローンを組むことが大切です。
5、債務整理(任意整理)は弁護士に相談を
債務整理を検討している場合には、まずは早期に弁護士に相談することがおすすめです。
ローンなどの返済が苦しくなってもそのままにしておけば、利息や遅延損害金などで返済総額が膨らみ返済がさらに難しくなる可能性があります。
また、早期に対応すれば、任意整理で家や車などの財産は残すことができたにもかかわらず、自己破産を選択せざるを得なくなり、家や車などの財産を手放さざるを得ない可能性も高くなります。
任意整理をすれば、信用情報機関に事故情報が登録されるというデメリットが気にかかり相談することをためらう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、返済が数回滞れば、任意整理しなくても信用情報機関に登録される可能性が高くなります。そのため、結果が同じであれば、任意整理をして、将来的な見通しを持ちながら、借入金を完済する計画を立てた方が建設的であるともいえるでしょう。
6、まとめ
「債務整理(任意整理)後に住宅ローンや車のローンは組めるか」について解説していきました。
任意整理をすれば、信用情報に登録されることになり、その結果5年程度は住宅ローンや車のローンは組めなくなる可能性が高くなります。
しかし、信用情報の登録が削除された後には、ローン審査の際にその点で落ちる心配はなくなります。
任意整理をするためには、できるだけ早期に弁護士に相談する必要があります。
ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでも、弁護士が任意整理をはじめとする債務整理のご相談に応じています。ご相談者に合った債務整理の方法をご提案し、生活を再建できるよう全力でサポートします。お一人で悩むことなく、お気軽にご相談ください。
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