結婚前の浮気が発覚! これを理由にした離婚と慰謝料請求はできる?
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新潟県が公表した「令和5年人口動態統計(概数)の概況(新潟県版)」によると、離婚数は2511組で、離婚率(人口千対)の全国順位は46位と、新潟県は離婚する夫婦が非常に少ないという傾向が見られました。一方で婚姻数は6262組、婚姻率(人口千対)は全国順位42位と、婚姻数が少ないという課題も見られます。
もしあなたの配偶者が結婚前に浮気していたと知ったら……。あなたはどう思いますか? 結婚前の浮気を理由に離婚したり、慰謝料を請求したりすることはできるのでしょうか。
この記事では、結婚前の浮気で慰謝料請求や離婚ができる可能性についてベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
1、結婚前の浮気に対して慰謝料請求することは原則不可能
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(1)例外的に結婚前の浮気に対して慰謝料を請求できるケース
本来、結婚前の浮気に対して慰謝料や離婚を求めることはできませんが、一部例外があります。それが以下の2つの場合です。
●ふたりが婚約関係にあった場合
ふたりが客観的に見て「婚約状態」にあったにもかかわらず浮気をした場合には、慰謝料の請求ができるケースもあります。ただし、客観的に見て婚約状態であることが明らかな証拠と、浮気の証拠が必要です。
●内縁関係だった場合
内縁関係とは、婚姻届は提出していないものの夫婦同然の関係性がある状態を指します。内縁関係であれば、慰謝料請求や財産分与などの結婚している夫婦と同様の権利を主張することが可能です。
ただし、「長く付き合っていること」や「一緒に暮らしていること」だけでは内縁関係とは認められません。あくまでも自分たちが事実婚であることを合意していること、夫婦と同じ共同生活を送っていることが条件になります。
原則として、たとえ配偶者が「結婚前に浮気をしていた」という事実が判明したとしても、慰謝料を請求することはできません。また、これを理由に相手の合意を得ないまま離婚することも難しいでしょう。
夫婦は不貞行為をしてはならないとされていますが、夫婦でなければ恋愛は自由であると考えられるためです。
民法において不貞行為を禁じられている根拠は、民法第770条にある、以下の記述です。
民法第770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
●配偶者に不貞な行為があった場合
ここで明記されている「不貞な行為」とは、原則、性交渉が伴う交際であることが前提です。あなた以外の異性と手をつないだ、キスをした、食事をしたにとどまる場合は不貞行為ではありません。もっとも、結婚している場合は、程度によっては慰謝料請求をできる場合もあります。
したがって、婚姻していないときの浮気については不法行為ではありません。繰り返しになりますが、結婚前に浮気をしていたことが結婚後に判明したとしても、慰謝料を請求したり、離婚を要求したりすることは難しいでしょう。
2、慰謝料を請求するために必要な証拠とは
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(1)婚約や内縁関係を証明する証拠
結婚前の慰謝料を請求するためには、婚約関係にあること、もしくは内縁関係にあることを証明しなければなりません。
婚約関係だったことを証明するためには、「結納した」「婚約指輪を受け取った」などの客観的事実が必要です。「いつか結婚しようね」などと結婚の約束をしている程度では婚約とは認められません。
内縁関係も、自分たちだけでなく周囲も夫婦と認めている必要があるため、証明のハードルが高いといえます。内縁関係を証明する証拠は、同居していることや社会保険の扶養に入っていることなどを挙げられるでしょう。 -
(2)不貞行為を証明する証拠
さらに、不貞行為があったことを証明する証拠が必要です。基本的には、性交渉がなければ不貞行為とみなされないため、性交渉をしていたことが推定できる証拠を集める必要があります。
具体的には、ラブホテルにふたりで入る写真などが一般的な証拠となるでしょう。上半身裸のふたりがホテルの1室で撮影した写真や、SNSなどの「○○ちゃんとホテルに泊まっています」という投稿も不貞行為の証拠となります。発見したら確実に撮影して保存しておきましょう。
しかし、実際には過去の不貞行為について、今から性交渉の証拠を撮影するのは難しいものです。証拠がない場合は、どちらかの証言を証拠とすることもできます。ボイスレコーダーを用意して浮気をしていたことを認めている音声を残したり、証言を得たら念書を自筆で書いてもらったりすることもひとつの手です。
慰謝料を請求するために必要な証拠は大きく2つあり、それぞれについて解説します。
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3、結婚前の浮気が原因で離婚するための条件
結婚前の浮気が原因で離婚することは、民法では認められていません。しかし、双方が合意すればどのような理由であっても離婚できます。
また、相手が拒否していると離婚できないのかというとそうでもありません。民法第770条で定められた、裁判で離婚ができる条件を確認してみましょう。
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
これらの条件に合致していれば、相手が拒否していても裁判になれば離婚を認めてもらえる可能性が高いでしょう。ただし、結婚前の浮気に該当する項目はありません。場合によっては、5番目の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と、主張できる可能性もあるでしょう。
その他婚姻を継続し難い重大な事由はとても幅広く解釈されており、「性格の不一致」も婚姻を継続し難い重大な事由のひとつとされています。これ以外にも、暴力や暴言、性的な異常や不満、親族との関係、宗教上の対立、犯罪、家事や育児への協力がみられない、病気、長期の別居などが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると解釈されています。
裁判所は、結婚前の浮気がこちらに該当するかどうかを画一的に「この中に含まれていないからだめ」と判断をするのではなく、個々の事件ごとに判断します。まずは離婚問題の実績がある弁護士に、離婚できるかどうかを相談することをおすすめします。
4、結婚前の浮気で離婚&慰謝料を請求するための5ステップ
結婚前の浮気を原因に離婚して、慰謝料を請求するための手順を解説します。
① 浮気の証拠を確保する
離婚の原因である結婚前の浮気について、証拠を確保しておかなければなりません。また、慰謝料を請求するためにも証拠は必須です。浮気の証拠となるものは前述のとおりです。
② 婚約や内縁関係の期間を証明する証拠
次に、婚約していたこと、内縁関係にあったことを証明する証拠も必要となります。この2つのいずれかがなければ、慰謝料は請求できません。婚約していた期間内に浮気をしていたことを証明する必要があります。結納の日付がわかる資料や婚約指輪のレシートなどを探しましょう。
③ 相手と話し合う(協議離婚)
証拠を確保したら、相手と話し合います。離婚したいこと、慰謝料を請求したいことを伝えましょう。相手が了承すれば、慰謝料を受け取って離婚届を提出すれば完了です。
相手が認めないようであれば、次のステップに進みます。
④ 調停離婚
話し合いで、離婚に応じてもらえなければ「調停」で離婚や慰謝料について争います。争いといっても、調停とは、調停員と呼ばれる専門知識を持っている人たちを通じた話し合いです。それぞれが顔をあわせることなく離婚の話し合いを進めることができます。
調停をせずに裁判で決着をつけたいと考える方も少なくありません。しかし、法律上、離婚をする際は、原則として裁判の前に調停で話し合う必要があります。したがって、話し合いで決裂をした場合は、まずは調停の申し立てを検討しましょう。
調停で離婚や慰謝料の支払いの合意ができれば、「調停証書」という、裁判の判決と同じ効力を持つ書類を作成してもらえます。慰謝料を支払わない場合は、差し押さえの手続きを行うことも可能です。
⑤ 裁判離婚
調停で折り合いがつかない場合は、訴訟へとステップを進めます。訴訟は提起するだけでも手続きが複雑で、訴訟や調停不成立調書、戸籍謄本などの書類を用意して裁判所に行く必要があります。そのため、裁判になる頃には夫婦のそれぞれが弁護士に交渉を一任していることがほとんどです。
裁判では、月に1回のペースで口頭弁論が開催され、平均すると1年から2年ほどで判決が出ます。判決が出る前に、和解したり訴えを取り下げしたりすることもあります。
5、まとめ|慰謝料を請求したい場合は弁護士への相談がおすすめ
原則として、結婚前の浮気では離婚や慰謝料の請求は認められません。しかし、結婚前の婚約期間や、内縁関係にあったことを証明する証拠があれば認められるケースもあります。
特に慰謝料を請求したいのであれば、まずは離婚を検討している時点で弁護士に相談することをおすすめします。
離婚できるかどうか、慰謝料は本当に請求できるのかなど、気になることがあれば、まずはベリーベスト法律事務所 新潟オフィスへご相談ください。離婚問題の経験豊富な弁護士が最適な解決策を親身になってアドバイスします。
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