離婚と再婚に伴う年金分割の支給はどうなる? 新潟オフィスの弁護士が解説
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厚生労働省の公開する平成29年「人口動態統計の概況」によれば、新潟県の離婚率は47都道府県中で47位であり、非常に少ないといえるでしょう。それでも、新潟市の離婚件数は年1081件あり、悩んだ末に離婚を選択する方もいるのです。
離婚に際しては財産の分け方でもめてしまうケースが多々あります。中でも将来の生活を見据えた場合に気になるのが、年金についての問題です。今回は離婚や再婚をした場合の年金分割に関して、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
1、年金分割とはどういうものか
平成19年に厚生年金法が改正され、年金分割の制度が導入されました。それから10年以上がたち、制度の利用者も次第に増えてきています。そこで、まずは年金分割の制度内容と利点を確認しておきましょう。
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(1)3階建ての年金と年金分割
離婚したときや離婚の後には、配偶者の厚生年金を分割して、もう一方の配偶者が受け取れます。これを年金分割といいます。
そもそも公的年金制度は3階建ての構造になっています。1階部分は20歳以上60歳未満の全国民に共通する「国民年金」です。2階部分は「厚生年金保険」、3階部分は「国民年金基金」と「厚生年金基金」です。なお、平成27年10月からの被用者年金制度の一元化により、かつて公務員や私学教職員が加入していた共済年金は厚生年金に統一されています。
これらのうち年金分割の対象となるのは、2階部分の「厚生年金保険」です。
年金額は、保険料をどれだけ納付してきたかという実績に基づいて算出されます。中でも年金分割ではこの実績、つまり標準報酬(標準報酬月額と標準賞与額)を分割することになるのです。ただし、年金の算定基礎となる標準報酬の分割であり、年金額そのものを分割するわけではありません。
年金分割の制度は、専業主婦などのように家庭内を取り仕切っていた配偶者が経済的に苦しい立場に置かれるという社会的背景を踏まえ、そうした方々を救済するために設けられたものです。年金分割を受けた側は将来的な年金の増額が見込めますが、他方で年金分割をされた方の年金額は減少することになります。 -
(2)2種類の年金分割
年金分割には、「合意分割(離婚分割)」と「3号分割」という2つの制度があります。
「合意分割」とは、離婚する夫婦が合意または裁判手続きによって、保険料納付記録をどう分けるかの割合を決めた上で年金事務所に請求し、標準報酬額の多い当事者の保険料納付記録を少なかった側へ分割するという制度です。なお、保険料納付記録を分けるときの割合は、最大で2分の1とされています。
「3号分割」とは、国民年金の第3号被保険者からの請求により、婚姻している間の配偶者の厚生年金記録を2分の1ずつ分割できる制度です。第3号被保険者というのは、第2号被保険者(厚生年金に加入している会社員や公務員など)の配偶者で、年収130万円未満の者を指します。主に専業主婦などをイメージするとよいでしょう。
合意分割と3号分割の違いは、分割に夫婦間の合意が必要かどうかという点にあります。合意分割では分割割合を合意によって決めなければなりませんが、3号分割は合意不要で2分の1となります。
また、平成20年3月31日以前の厚生年金記録については3号分割の対象とならないため、合意分割をする必要がある点に注意が必要です。
2、再婚や死亡に伴う年金分割
年金分割は離婚に伴って行われるものですが、再婚や死亡をした場合にはどうなるのでしょうか。再婚して再び被扶養者になったときや、分割をした側が亡くなったときの年金の算出方法が問題となります。 以下では、
- 元夫を「年金分割をした側」
- 元妻を「年金分割を受けた側」
として、年金分割の仕組みをみていきましょう。
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(1)年金分割した側(元夫)の死亡・再婚
元夫が死亡ないし再婚をした場合、元妻の受給できる年金には影響がありません。ただし、元夫が再婚してから死亡したケースにおいて、再婚相手の妻からみると話は別です。
再婚相手である妻は配偶者の死亡によって遺族厚生年金を受給できます。この遺族厚生年金の額は、亡くなった方の厚生年金加入期間と報酬に基づくものです。したがって、元妻へ年金分割していれば、遺族厚生年金が減ることになります。 -
(2)年金分割を受けた側(元妻)の死亡・再婚
元妻が死亡ないし再婚をした場合、もはや年金を分割する必要性は消失し、元夫の年金額は減らなくなるのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この場合でも年金分割が行われていれば、元夫の年金には影響が生じません。
元妻が再婚した後に死亡した場合には、再婚相手である夫に遺族厚生年金が支払われることとなります。これは、遺族厚生年金の支給要件である、老齢厚生年金の受給権者が死亡したという場合に該当するためです。 -
(3)当事者の死亡・再婚と年金分割の趣旨
こうして死亡ないし再婚のケースをみると、年金分割をした側は損をし、年金分割を受けた側は得をしているようにも思えます。どうしてこのような仕組みとなっているのでしょうか。
年金の受給権や年金の算定基礎となる標準報酬は、夫婦が共同して形成された資産と同様にとらえることができます。たとえば離婚時には、夫婦が結婚後に形成した財産をふたりの協同によるものととらえ、財産分与請求ができます(民法第768条第1項)。
これと似て、年金制度においては、被扶養者の側も年金に対する権利はあり、それを分けたのだというように考えるわけです。
夫側からみれば、専業主婦は財産の形成に寄与していないと考えるかもしれません。しかし、夫が働くことに注力できるのは、家事や育児など専業主婦による内助の功があったためともいえます。そこで、たとえ実質的な収入を得ることはない専業主婦であっても、財産の2分の1を受け取る権利があると考えられています。3号分割の際、自動的に2分の1ずつ分割されることになるのはこのためです。
3、年金分割をするときの注意点
年金分割をする場合、請求が必要であること、そして請求には期限があることに注意しなければなりません。年金分割は、「離婚をしたとき」もしくは「婚姻を取り消したとき」の翌日から数えて、2年以内に請求する必要があります。また、事実婚関係にある場合は、事実婚関係が解消して第3号被保険者ではなくなったと認められるときから2年以内の請求が必要です。
離婚にあたってはいろいろと考えなければならないことも多く、年金のことまで気が回らない場合もあります。しかし、合意分割のように相手との話し合いが必要となることもあるため、早めに考えておくほうがよいでしょう。
協議などでもめるような場合には、弁護士に相談の上、適切な手続きをとることをおすすめします。
4、まとめ
今回は、離婚や再婚に伴う年金分割について解説しました。合意分割を行う場合、相手方との話し合いが必要となります。それでも合意に至らなければ、調停や審判、離婚訴訟なども行わなければなりません。
特段の事情がなければ分割の割合は2分の1と定められますが、トラブルが生じるような場合には、早めに弁護士に相談し、適切な手続きをとることをおすすめします。
離婚・再婚に伴う年金分割に関してトラブルになりそうなときは、ひとりで悩まず、まずはベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士にご相談ください。まずは現状へのアドバイスを受けるつもりで、お気軽にご一報ください。依頼をいただいた際は、あなたの代理人として交渉し、適切な分割ができるよう力を尽くします。
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