整形が離婚の原因に……!? 離婚を拒否したいあなたに弁護士がアドバイス

2019年08月20日
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整形が離婚の原因に……!? 離婚を拒否したいあなたに弁護士がアドバイス

厚生労働省が発表している「人口動態総覧」によると、平成29年における新潟県の離婚率は1.29(人口1000対)と、47都道府県の中でもっとも低い数値を示しています。真偽のほどはわかりませんが、お隣の富山県・山形県とともに例年離婚率が低いことから、「日本海側の降雪が多い地域は離婚が少ない」などと言われることもあるようです。

しかし、いくら離婚率が低い新潟県であっても、同年の1年間で約2900組の夫婦が離婚しています。離婚には至らなくとも、問題や悩みを抱えている人の数はこれをはるかに超えることでしょう。

夫婦の間で起きる問題にはさまざまなものがありますが、その中のひとつとして、配偶者への“隠し事”や“ウソ”が原因でもめるケースが挙げられます。

たとえば、結婚後に発覚した “妻の整形”。整形の是非については人それぞれの価値観によるところかと思いますが、結婚後に明らかになることで大きな問題に発展することがあります。 隠していた整形がバレて起き得る問題として、今回は、「結婚前に行っていた自身(妻)の整形を理由に、夫から離婚したいと言われてしまった……」そんなケースを考えてみましょう。

そもそも、相手の整形を原因として離婚することは可能なのでしょうか? また、整形していた事実を隠していたことで慰謝料を請求される可能性はあるのでしょうか? 法律で認められている離婚理由と合わせて、新潟オフィスの弁護士が解説いたします。

1、整形は離婚の理由になるか?

妻の過去の美容整形を理由に、離婚することは可能なのでしょうか?

  1. (1)離婚自体は可能

    大前提として、結婚や離婚は当人同士の意思に基づいてするものですから、理由が何であれ、夫婦双方が納得しているのであれば離婚すること自体は可能です。ただし、「夫は離婚したいが、妻はしたくない」というような場合には、もちろん、夫だけの意思で勝手に離婚することはできません。この場合(話し合いだけでは離婚が成立せず、最終的に裁判となった場合)には、「妻が不倫をしているから」「著しい暴力があるから」など、法律で認められている離婚の理由(法定離婚事由)が必要になります。

  2. (2)整形は法的な離婚理由としては認められない

    お伝えしたように、夫か妻どちらか一方が離婚に反対しているのであれば、法律に定められた理由がなければ離婚できません。法定離婚事由(民法770条)には、

    • 配偶者に不貞行為があったとき
    • 配偶者から悪意で遺棄されたとき
    • 配偶者の3年以上、生死が分からないとき
    • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
    • その他、婚姻生活の継続が難しい重大な事由があるとき

    以上の5つがありますが整形はどれにも当てはまりません。結婚当時にはすでに整形後の顔であり、なおかつ相手の容姿だけを好きになったわけではないはずですから、整形を原因とした離婚は(裁判では)認められないと言えるでしょう。

    「整形の事実を隠していた=うそをついていた」として、法定離婚事由5点目の「婚姻生活の継続が難しい重大な事由」にあたるのではないか? と感じる方もいらっしゃるかと思いますが、夫が「整形手術をしていないこと」を結婚条件にしていたなど特別な事情がない限り、過去の整形が離婚理由として認められることはほぼないと考えられます。

    ただし、相手(夫)が整形を嫌っていることを知っていて、意図的に相手を欺くような行為をしていた場合には、裁判離婚の原因になる可能性があると言えます。たとえば、整形の事実を隠すために加工した写真を見せる、他人の画像を自身と偽って見せるなどの行為です。

    そのほか、整形手術に多額の費用がかかり家計を圧迫しているようなケースでも、離婚が認められる可能性があると考えられます。

2、整形を隠していたことを理由に慰謝料を請求される可能性は?

結論から言いますと、通常、整形を隠していたことを理由とした慰謝料請求は認められません。たしかに、夫(隠されていた側)の立場からすると、「整形自体が許せないわけではなく、ウソをついていたことに憤っている」「妻に似た子どもが欲しい」などの言い分があるでしょう。しかし、整形そのものは問題行為ではありませんし、法的にみても結婚生活の継続が難しくなる理由とも言えません。整形を理由とした慰謝料請求が認められる可能性はとても少なく、また、慰謝料請求をされたとしても支払い義務はないと考えられます。

ただし、いくら整形自体が離婚の理由にはならないと言っても、整形がバレたことで夫婦関係に溝ができ、そこから破綻に至る可能性は考えられます。そうならないためにも、「整形を原因とした離婚や慰謝料は認められないのだから、何を言ってもムダ!」「皆やっていることでしょう!」などと開き直ることなく、夫婦で冷静に話し合うことが大切です。

3、学歴や年収を偽っていた場合は?

ここまでの内容から、基本的に整形を原因とした離婚は認められないことがおわかりいただけたと思います。ときに、「付き合っていた彼女が整形をしていた。詐欺だ!」などと言う声を聞くことがありますが、法律は容姿についてそこまで重要視していないと言えるでしょう。整形の事実を話していないことが詐欺・詐称に当たることもないと考えられます。ただし、前述のように、加工した写真を見せるなど積極的にウソをついていたような場合には例外もあり得ます。

それでは、「学歴」や「職業」、「年収」などを偽っていた場合はどうでしょう?

  1. (1)学歴詐称での離婚・慰謝料請求の可能性

    「学歴詐称」と聞くと、とても重大なことのように感じます。実際、相手が企業などであれば、学歴や職歴の詐称を理由に解雇されることがあり、過去には学歴・職歴のウソを理由とした解雇を有効としている裁判例もあります。

    では夫婦の場合ではどうでしょう? この点、学歴はウソであっても収入などに影響がないようであれば、離婚や慰謝料請求の理由として認められにくいと考えられます。反対に、学歴詐称が夫婦の財産に影響を及ぼし、結婚生活の継続が難しくなるような場合には、認められる可能性があると言えるでしょう。学歴詐称が法定離婚事由にある「婚姻生活の継続が難しい重大な事由」に該当するかは、あくまでもケース・バイ・ケースです。

    ただ、整形の場合とは違い、学歴のケースでは「相手に伝えていない」だけでなく、明らかに「ウソをついている」状況にあると考えられます。また、学歴が結婚の条件になっていることもあるでしょうから、整形のケースよりは離婚や慰謝料が認められる可能性が高いと言えるでしょう。

  2. (2)年収詐称での離婚・慰謝料請求の可能性

    「年収詐称」の場合も、それが「婚姻生活の継続が難しい重大な事由」に当たるようであれば、離婚や慰謝料が認められる可能性がありますが、こちらも状況によるでしょう。

    たとえば、結婚前に夫から「年収が1000万円ある」と聞いていて、それをもとに二人で結婚生活のプランを立てていたような場合や、年収が結婚の決め手になっていて、妻がその旨を夫に伝えていたような場合には、婚姻の継続が難しい重大な事由があると認められる可能性があります。一方で、相手の年収をあまり気にしていなかったような場合には年収詐称を離婚の理由とすることは難しいと言えるでしょう。

    学歴詐称と年収詐称、いずれの場合でも、それ自体を理由に直ちに離婚が認められるとは考えにくいと言えますが、ウソが原因で夫婦間の信頼関係が壊れることは十分に考えられます。結果として別居に至り、その別居期間が長く続けば、夫婦関係がすでに破綻しているとして(婚姻の継続が難しい重大な事由があるとして)離婚が認められる可能性が出てきますから、早めの対策が大事になるでしょう。

4、離婚を拒否したいとき

過去の整形・学歴・年収など、原因が何であれ当事者(夫と妻)が納得しているのであればいつでも自由に離婚することができます。もちろん、特段の理由がなくても二人の合意があれば離婚はできます。

ただ、今回ご紹介しているように、一方(夫)は整形を理由に離婚したいがもう一方(妻)は離婚したくないといったケースでは、妻が離婚届にサインをしなければ、離婚が成立することはありません。しかし、夫が妻に「離婚したい」と申し出ること自体は自由ですから、それに対する対応が必要になります。

  1. (1)勝手に離婚届を提出されないようにする

    こちらは物理的な対策になりますが、離婚を望む夫が勝手に離婚届を提出してしまわないよう、役所の戸籍係に離婚届の「不受理申出書」を提出しておくことができます。「不受理申出制度」といって、相手の同意なく離婚届を出されるなどの事故を防ぐために用意されている制度です。夫が勝手に離婚届を出してしまう恐れが少しでもあるようでしたら、利用することをおすすめします。

  2. (2)離婚を拒否したいときの相談先

    自身が夫に隠し事をしていたとしても、望まぬ離婚を切り出されたらパニックになって当然でしょう。ただそれは、夫も同じかも知れません。これまで知らなかった妻の過去を知り、パニック状態に陥っている可能性もあるのです。ですから、まずは夫婦で冷静に話し合うことが大切でしょう。

    ただ、一人では対応が難しいときには、弁護士に相談するのも一つの手段です。離婚問題の経験が豊富な弁護士に相談・依頼することで、個人で対応するよりも早期の事態解決が期待できます。ベリーベスト法律事務所でも離婚拒否の相談をお受けしています。さまざまな夫婦の問題に寄り添ってきた弁護が多数在籍していますので、ぜひお問い合わせください。

5、まとめ

今回は、整形が原因の離婚問題について解説しました。過去の整形を秘密にしておきたかったのであれば、知られたことを今はマイナスと感じているかも知れません。ただ、これを機に夫婦のあり方を二人で話し合うこともできるはずです。お互いに落ち着いた状態で話し合いをしてみましょう。

それでも解決が難しい場合やどうしたら良いかわからないときには、お気軽にベリーベスト法律事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士があなたの力になります。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています