【後編】離婚したら子どもの名前は変わる? 自分と同じ苗字にするには
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新潟県は、非常に離婚する夫婦が少ないことが統計上明らかな県です。そのためか、離婚すると決めてから成立するまで、非常に悩む方が少なくないように感じます。そこで前編では、離婚したあと、まずはあなた自身の苗字や戸籍がどうなるのかについて解説しました。
後半は、離婚後、子どもの戸籍はどうなるのか、自分と同じ名前、苗字を名乗ることができるのかどうか、そのための手続きについて、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
3、子どもの苗字と戸籍は原則どうなる?
続いて、離婚したときの子どもの苗字と戸籍についてご説明しましょう。
ここでは、離婚前の戸籍の筆頭者は配偶者であり、あなたが子どもの親権を得たうえで戸籍から出るケースを前提にご説明します。
この場合、たとえ離婚後の子どもの親権者が自分になったとしても、何も手続きしないままでは子どもの戸籍および苗字は別れた配偶者のままになります。なぜなら、戸籍法では子どもの親権者と戸籍および苗字は別のものと考えるからです。
したがって、もし別れた配偶者が再婚した場合、あなたの子どもと再婚相手が同じ戸籍に入ることになります。親権者としてこのような状態が心情面で好ましくないとお考えであれば、民法および戸籍法に基づく所定の手続きを行う必要があります。
4、子どもの苗字や戸籍を変えるとき、どのような手続きが必要?
本項ではもっとも多いと考えられるパターンとして、父親(戸籍の筆頭者)と母親が離婚し、母親が子どもの親権者となったケースを前提に説明します。
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(1)母親も子どもも父親の苗字のままにするパターン
子どもの学校生活などを考慮し、離婚後も子どもに父親の苗字を名乗らせるという方もいらっしゃいます。それでも子どもの戸籍を母親が作った新しい戸籍に入れたい場合は、母親が婚氏続称することが前提です。なぜなら、ひとつの戸籍の中に異なる苗字の人がいることは戸籍法上あり得ないためです。
そのうえで、以下のような所定の手続きをとる必要があります。
まず、民法第791条2項および戸籍法第98条の規定に基づき、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に、「子の氏の変更許可」を申し立てます。これが認められると、申し立てから1週間程度で家庭裁判所から「審判書」の謄本が交付されます。
審判書の謄本を受け取ったら、それを添付して現住所または本籍地の市町村役場宛てに子どもの「入籍届」を提出します。これで子どもは母親の新しい戸籍に入ることになります。
子の氏の変更許可の申し立ておよび入籍届の際の必要書類は、母親の新しい戸籍と現時点の子どもの戸籍(父親の戸籍)の戸籍謄本(全部事項証明書)です。
なお、父親が子ども親権者である場合は、仮に母親と子どもが同居していたとしても、母親による子の氏の変更許可の申し立ては認められません。 -
(2)母親が旧姓に戻し、子どもの苗字を母親と同じにするパターン
もしあなたが自分の戸籍を婚姻前のまま両親の戸籍に戻して、自分自身と子どもの苗字を変えたいと考えても、子どもについては両親の戸籍に入れることはできません。なぜなら、ひとつの戸籍に3世帯が入ることは戸籍法第6条で認められていないからです。
したがって、子どもを別れた配偶者の戸籍から出すためには、あなたが新しい戸籍を作ったうえで婚姻前の苗字に戻し、そのうえで子どもを新しい戸籍に入れることになります。
5、子どもの年齢で手続きは変わる?
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(1)子どもが15歳未満の場合
15歳未満の子どもに親権(身上監護権)を有している親は、民法第791条3項の規定に基づき法定代理人として子どもに代わり、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申し立てを行うことになります。
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(2)子どもが15歳以上の場合
子どもが15歳以上であれば、子ども自身の自由な意思に基づき、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申し立てを子ども自身で行うことができます。
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(3)子どもが成人したら?
子どもが15歳未満のとき、親権者(法定代理人)が「子の氏の変更許可の申し立て」に基づき戸籍を移したとしても、民法第791条4項の規定にあるとおり、もとの戸籍に戻せるチャンスが一度だけあります。もちろんそのためには、家庭裁判所に再度の許可を得る必要があります。
具体的には、15歳未満の子どもが親権者の申し立てで子の氏の変更を許可する審判を受けたあと、成人した日から1年以内であれば、市町村役場に復氏届を提出することでもとの戸籍に戻ることができるのです。
ただし、たとえば離婚した母親の戸籍に入っていた場合で、子どもの成年時すでに父親が死亡していたなどの理由で、戻りたい戸籍が「除籍」されていることもあります。この場合、戸籍法19条1項の規定に基づき成年に達した子どもの新しい戸籍が作成されることになります。
6、まとめ
これまでお読みいただいたとおり、離婚して親権を得たからといって、必ずしも子どももあなたと同じ苗字になるわけではありません。親権を得たからといっても何もしないなままでは、法律上子どもの戸籍の苗字は離婚前のままになってしまうことがあるのです。
離婚したあとの戸籍や苗字については、民法や戸籍法などが複雑に絡みあっています。ご自身の考える形にするためには家庭裁判所への手続きが必要な場合もあるのです。子どものことを含め、苗字や戸籍について後々の後悔を防ぐためには、離婚届を提出する時点で慎重な判断を出しておくことが重要です。
苗字だけの手続きであれば、裁判所の窓口で聞きながら個人でも対応が可能です。仕事や身体上の理由で自ら手続きすることが難しいときや、どうしたらもっともよいのかについてしっかり考えたいときは、あらかじめ弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでは、離婚問題にかぎらず、戸籍や苗字の法的な側面について豊富な知見を持つ弁護士に相談すれば、あなたの立場に立った適切なアドバイスを行います。お悩みごとやご不明な点がおありの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています