養育費は離婚後にも請求できる? 養育費請求調停の進め方と内容
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「人口動態総覧」(厚生労働省)にみる平成28年の新潟県の離婚率は1.31(人口1000対)と、47都道府県のなかで2番目に低い数値を示しています。
新潟県の離婚率が低いことについて、「日本海側の雪が多い地域は離婚率が低い」などといわれることもあるようですが、その真偽や正確な理由はわかっていません。ただ、そんな新潟においても、離婚や夫婦間のことで多くの方が悩んでいるのは確かでしょう。
特に子どもがいる場合には、話し合うことや決めなければならないことが多くなるため、悩みも大きくなると考えられます。
子どもがいる夫婦が離婚をするにあたって、決めなければならないことのひとつに「養育費」に関することがあります。
養育費に関する取り決めは、離婚前にしておくのがベストです。しかし、一刻も早く離婚をしたかったなどの事情で、「養育費のことを決めないまま離婚をした」というケースもあるでしょう。
子どもの養育費についての取り決めがなされないまま離婚をし、養育費が支払われていない状態の場合、離婚後に元配偶者に対して支払いを求めることはできるのでしょうか?
1、養育費とは?
「養育費」というのは、未成熟の子どもを監護・教育するために必要な費用のことです(子どもの生活費や医療費、教育費など)。親権者となって子どもを育てている一方の親(子どもの父か母)が、もう一方の親に対して支払いを求めます。
経済的・社会的に自立していない未成熟の子どもに対する養育費の支払いは強い義務とされており、支払いをする親自身の生活に余裕がなくても養育費の負担義務はなくならず、たとえ自己破産をした場合でもその義務は消えません。
夫婦が離婚したとしても子どもの親であることに変わりはないわけですから、当然の義務といえるでしょう。子どもの成長を支えるものであり、離れて暮らす親子をつなぐ絆でもある、とても大切な費用です。
2、離婚後に請求する場合、養育費請求調停を申し立てる
養育費は、離婚時に取り決めをしていなくても、必要に応じていつでも請求することができます。その場合、裁判所に「調停(養育費請求調停)」を申し立てるのが有効な方法となります。
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(1)養育費請求調停とは?
養育費請求調停とは、家庭裁判所で調停委員(2名)立ち会いのもと行われる養育費の支払いに関する話し合いです。
「実際に養育費がどのくらいかかっているか」、「申立人(調停を求めた人)と相手方(申立人の夫または妻)にどのくらいの収入があるか」など、一切の事情について、双方から事情を聞いたり、資料の提出を求めるなどして把握したうえで、調停委員が解決案の提示や解決に向けた助言などを行います。調停は、あくまでも双方の合意が目的ですから、調停委員が当事者の意思に反して養育費の内容などを決めることはありません。
調停における話し合いで双方の合意が得られなかった場合には、自動的に審判手続きが開始され、裁判官が判断(金額などを決める)をすることになります。
なお、調停や審判で決まった内容については強制執行(相手方の給料などを差し押さえて強制的に養育費を支払わせること)も可能となります。この点が口約束との大きな違いといえるでしょう。 -
(2)養育費請求調停の申し立て費用と必要な書類
申し立てにかかる費用は以下となります。
- 収入印紙(子どもひとりにつき1200円分)
- 連絡用の郵便切手(各裁判所によって異なるため、申し立てをする家庭裁判所に確認をとると良いでしょう)
必要な書類は以下のものです。
- 調停申立書とその写し
- 未成年者の戸籍謄本
- 申立人の収入に関する書類(源泉徴収票写し、給与明細写し、確定申告書写し、非課税証明書き写しなど)
その他、必要な書類があれば裁判所から追加で求められることがあります。
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(3)調停を利用するのはどのようなケース?
養育費請求調停が行われるのは主に以下のようなケースです。
- (元)夫婦だけでは話し合いがまとまらないとき
- どちらかが応じないなど、話し合いができないとき
- 収入が減ったなどの事情によって支払う側が養育費の減額を望む場合
- 支払う側の収入が増えたなどの事情により、受け取る側が養育費の増額を望む場合
- すでに決まっている養育費の滞納が続く場合
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(4)養育費請求調停の流れ
養育費請求調停は、相手方(元配偶者)の住所地の家庭裁判所か、双方が合意して決めた家庭裁判所に申し立てることから始まります(申立人が家庭裁判所に出向き、申立書や必要な書類を提出)。
その後、裁判所から、申立人と相手方それぞれに調停期日呼出状が届き、期日に調停(調停委員同席で実際に話し合いを行う)が開かれます。
第1回目の調停で双方が合意しなければ、第2回目、第3回目と調停を重ねます(何回調停が開かれるかは事案によって異なります)。調停が開かれるペースについては、1ヶ月に1回くらいとなるのが一般的です。
そして、調停は「成立」・「不成立」・「取り下げ」の3つの場合に終了します。
養育費の金額などにつき、話し合いで双方合意に至った場合には調停成立となり終了、話し合いで双方が合意するのは困難だと家庭裁判所が判断した場合には調停不成立となって終了します。不成立の場合には、自動的に審判手続きへと移行します。
また、申立人が申し立てを取り下げた場合にも調停は終了となります。取り下げるのに相手方の同意は不要です。 -
(5)養育費請求調停で決める内容
養育費請求調停では、話し合いのうえ次のような内容を決めます。
- そもそも養育費を支払うのか
- (支払うと決まった場合)養育費の金額
- (短期間でまとめて支払う、長期で支払うなど)養育費の支払い方法
- 子どもが何歳になるまで支払うのか
養育費を子どもが何歳になるまで支払うかについては、法律では定められていません。「成人になるまで」とされることが多いのですが、子どもが大学に進学する場合は22歳まで、高校を卒業してすぐに働く場合には18歳までなど、当事者間で約束することもあります。
3、養育費の金額はどのようにして決まるのか?
養育費を決めるにあたっては、どのような事情が考慮されるのでしょう? また、金額はどのようにして算出されるのでしょうか?
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(1)考慮される事情
養育費の金額は、一般的には、双方の収入状況や子どもの人数、年齢などの事情を考慮して決めることとなります。
義務者(養育費を支払う側)の収入が多ければ養育費の金額は高くなり、申立人(請求する側)の年収が多ければ低くなるのが一般的といえるでしょう。サラリーマンと自営業者では年収の計算方法が異なるため、同じ年収であっても養育費の金額に違いが出ることに注意が必要です。
また、未成熟の子どもの人数・年齢によっても金額が変わります。子どもの人数が多ければ支払われる金額も高くなるのですが、子どもが2人なら2倍、3人なら3倍という単純計算ではなく、専門の算定式によって計算されます。 -
(2)養育費の計算方法
養育費の計算方法については、裁判所のホームページに「養育費・婚姻費用算定表」が掲載されています。
ベリーベスト法律事務所では、裁判所の算定表を参考に、子どもの人数や年齢、両親の職業や収入などを選択するだけで簡単に養育費の金額を計算できる「養育費計算ツール」を用意していますのでご活用ください。
養育費計算ツール
4、調停で養育費の減額を申し立てられる場合もある
養育費は、一度決めた金額であっても変更することが可能です。つまり、元配偶者から、調停(養育費減額請求調停)で減額を求められるということも考えられるのです。養育費減額請求調停の手続きや流れについては、養育費請求調停とほぼ同じで、調停で合意に至らない場合には自動的に審判手続きが行われます。
減額を請求されるパターンとしては、「解雇などにより養育費を支払う側の収入が減った」、「就職・転職などにより養育費を受け取る側の収入が増えた」、「支払う側が再婚した(新たな扶養家族ができて、養育費を支払う余裕がなくなった」といった理由が考えられます。
養育費を受け取る側からすると減額は好ましいものではありませんが、減額を回避する方法というのはあるのでしょうか?
この点について、残念ながら確実に回避する方法はありません。強いていうならば、「調停委員の理解を得る」ということがポイントとなるでしょう。「養育費を減額されたら子どもを育てることができない」という状況であれば、証拠を交えてしっかりと調停委員に伝えることが大切です。審判に移行した場合にも、裁判官は調停委員の意見を重視することが多いため、減額されずに済む可能性が高まるでしょう。
5、まとめ
今回は、離婚後の養育費請求について解説いたしました。
養育費は、子どもの心身の成長を支える大切な費用ですから、それを支払うことは親として当然の責任といえます。できる限り、双方が納得するかたちで支払われるのが理想ですが、なかなか難しいケースもあるでしょう。
そのような場合には、おひとりで悩まずに経験豊富な弁護士に相談していただきたいと思います。ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでは、離婚問題や養育費請求に詳しい弁護士が、それぞれの事案に合わせてアドバイスや対処法の提案をしています。無料相談も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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