個人間の借金の取り立てが過激化してしまった……対処法はある?
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個人間の借金は、時に家族のきずなや理性をも壊してしまう危険をはらんでいます。平成30年7月、新潟県警新潟西署などは、新潟市内で17歳の児童に対してみだらな行為をした容疑によって、48歳の男性が逮捕しています。実はこの男性、児童の家族にお金を貸しており、児童の母親は、借金の返済の代わりに娘を差し出したとのこと。男性は「家族の借金を返済するために何でもできるか」と児童を脅したと報道され、話題になりました。
個人間の借金には、貸金業法が適用されません。そのせいか、違法な取り立てが行われることが少なくないようです。冒頭の事件のような事態に陥る前に、個人間であろうと借金問題を解決しなければならないといえるでしょう。
ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が、個人間の借金問題についてわかりやすく解説いたします。
1、個人間の借金で適用される法律とは?
個人間でお金を借りた場合に適用される法律は、通称「出資法(正式名称は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」)」と、「利息制限法」です。いずれも、金利の部分が個人間の借金に適用できます。
出資法第5条では、年間109.5%を超える利息(2月29日を含む1年については年109.8%とし、1日あたりについては0.3パーセント)の契約をすると、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金という罰則が設けられています。
利息制限法は、文字通り利息に制限を設ける法律です。具体的には、借入金額が10万円未満の場合は年利20%、10万円以上100万円未満の場合は年利18%、100万円以上の場合は年利15%とし、これを超過した分は無効とすることが定められています。
したがって、これを超える金利で借りていた場合は、払い過ぎた利息を元本に充てることができます。つまり、支払い過ぎた利息分だけ借金を減らすことができるのです。最初に借りたお金以上に上限以上の金利を支払い過ぎてしまっていれば、利息の返還を求めることも可能です。
2、個人間の借金でも違法になる取り立てはある?
金融機関からお金を借りた場合は、「貸金業法」という法律が適用されます。つまり、貸金業法で認められた範囲でしか取り立てを行うことはできません。貸金業法21条では、消費者金融や銀行に対し、具体的に10種の取り立て行為を規制しています。
たとえば、映画やドラマなどでみられる次のような取り立て行為は、現在、規制対象となっているのです。
- 深夜に債務者(お金を借りた人)に電話やFAX、訪問による督促を行うこと。
- 正当な理由がないのに、勤務先などを訪問して督促すること。
- 勤務先や自宅などを訪れた際に、「帰ってほしい」と頼まれても滞在すること。
- 張り紙などを用いて、借金のことや私生活のことを書いて掲示すること。
- 借金に関係ない人に返済を求めること。
- 債務者(お金を借りた人)が弁護士や司法書士などに債務整理を委託したことを通知された後に、債務者に督促すること。
ただし、個人間で借金をした場合、これらの取り立て行為を取り締まる法律が存在しません。
しかし、いくら個人とはいえ行き過ぎた取り立ては、違法となるケースもあります。たとえば、勤務先に取り立てに来た場合は、名誉毀損(きそん)や業務妨害罪が成立する可能性があります。「返済しなければ殴る」などと、脅されたときは脅迫罪や恐喝罪に問えるかどうかも検討できるでしょう。また、自宅に入ってきて、頼んでも出ていかない場合は、住居侵入や不退去罪が該当するケースもあります。
したがって、個人間の借金とはいえ、不当な取り立てを我慢する必要は一切ありません。万が一、上記のような違法な取り立てを行われたときは、警察への通報も辞さない態度をとっても問題ないと考えられます。その際、違法行為があったことがわかるように、動画撮影や音声の録音を行っておいたほうがよいでしょう。
その上で、これ以上激しい取り立てに発展してしまう前に、弁護士など、債務整理問題に対応した経験が豊富な専門家に今後の対応を相談することをおすすめします。
3、個人の借金を円滑に解決する方法とは
個人間の借金は、返済しなければ人間関係を壊してしまうため、できればきちんと返済したいところです。しかし、お金がなければ返済することはできません。
話し合いで返済時期を伸ばしたり月々の返済を減らしたりすることも不可能ではありませんが、激しく取り立てるようになってしまった知人に、このような交渉は難しいでしょう。その場合は、債務整理を検討するしかありません。
個人間の借金は貸金業法の対象にはなりませんが、債務整理を行うことはできます。つまり、合法的に借金を減額したり、ゼロにしたりすることができるということです。
債務整理を行うためにとれる法的な手段は、過払い金請求、任意整理、債務整理、自己破産の4種類があります。個人間の借金で有効なのは債務整理と自己破産です。
「個人再生」とは、裁判所に認められれば借金を月々支払える金額に減額できる仕組みです。個人再生のメリットは財産を処分することなく、借金だけ整理できる点です。家や車などの財産を手放すことなく借金だけ整理できるので、現在の生活に影響をきたすことなく立て直すことが可能です。個人再生は、裁判所に申し立てて手続きを行わなければなりません。
「自己破産」とは、裁判所に申し立てて認められた場合は、すべての借金が返済不要になる制度です。金融機関だけでなく、個人間の借金も対象です。ただ、自己破産が認められると借金がゼロになるだけでなく、自分名義の家や車などの財産も処分しなければなりません。また、自己破産したことが官報に掲載されてしまいます。
4、個人間の借金問題を弁護士に相談するメリット
繰り返しになりますが、個人間の借金でも債務整理が可能です。もし、知人以外にも借金をしている場合は、それらの借金もまとめて債務整理を行えます。まとめて対応することで、借金の総額を圧縮して、返済負担を大幅に減額することができるでしょう。
また、債務整理はしたくないものの、「過激な取り立てをやめてほしい」、「月々の返済を返済可能な金額に減らしてほしい」などの要望を相手に伝えたい場合も弁護士は有効です。あなたが借金を返せないことで、相手はあなたに対する悪感情を持っているケースがほとんどです。しかし、あなた自身と交渉をすることは難しい状態になっていたとしても、弁護士から連絡があれば、交渉に応じる可能性もあります。
弁護士は法的な手続きだけでなく、あなた自身に変わって相手との交渉を行うことができます。知人からの取り立てがあまりにも激しい場合は相談してみるとよいでしょう。
5、まとめ
前述のとおり、個人間の借金には貸金業法が適用されません。したがって、激しい取り立てを取り締まる法律はないともいえます。しかし、脅したり会社に来たりするような取り立て行為は、恐喝罪や名誉毀損(きそん)などの罪に問える可能性があります。あまりにも激しい取り立てをしてきた場合は、録音や録画をして証拠を確保しておきましょう。
個人間の法的なトラブルは、個人や家族だけで抱えがちです。法律などの知識がない状態では、対応がより困難となるでしょう。まずは勇気を出して弁護士に相談してください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています