ネットで会社やお店が風評被害にあったときに損害賠償請求するには?
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近年では、あらゆる人がSNSを利用して情報を発信受信できるようになりました。こうした便利さの反面、平成19年7月に発生した新潟県中越沖地震のあと、風評被害により県内の旅館やホテルではキャンセルが相次ぐ事態となったのです。
これは、新潟県中越地震が原因で、原子力発電所で放射能漏れの事故が起こりました。漏れた量はわずかで、近隣の海水浴場などにおいても、放射性物質は検出されませんでした。
このように、自身が経営・勤務している会社やお店が風評被害に遭い、売り上げが激しくダウンするなどの損害が発生した場合、損害賠償請求はどのようにすればいいのでしょうか。ここでは、風評被害に対する損害賠償請求などを中心に、ベリーベスト新潟オフィスの弁護士が解説していきます。
1、そもそも風評被害とはどういうもの? 悪口とは違う?
風評被害とは、近年よく耳にするようになった言葉で、法律用語ではありません。そのため明確な定義はありませんが、正確でないあいまいな情報によって、企業などの団体や個人が社会的・経済的に損害を受けることをいいます。
根も葉もないうわさという方が分かりやすいかもしれません。伝言ゲームをしたことがある方は分かるかもしれませんが、うわさというものは、人から人へ伝わる際に間違った情報や大げさな情報になってしまう傾向があります。そのため、たとえ悪口でなくても、根も葉もないうわさを流す行為は風評被害にあたります。
もっとも、「あの人は詐欺行為で捕まったことがあるから、お金の話には注意しよう」といううわさでも、本当に以前詐欺行為で捕まっていたのならば、風評被害にあたりません。事実に基づいているからです。
しかし、本来詐欺行為などをしたこともなく、犯罪行為もないにもかかわらず、特定の個人についてそのようなうわさを流し、相手が会社をクビになったなどといった損害を被った場合は、風評被害にあたります。
会社の場合は、たとえばハンバーガーチェーン店に対し「ハンバーグの材料にミミズを使用している」といった根拠のないうわさを流し、結果、店の売り上げが著しくダウンしたなどという行為は風評被害になるのです。
2、会社が風評被害を受けた場合、損害賠償請求は可能?
自身が経営する会社が風評被害に遭った場合、その損害を賠償請求することはできるのでしょうか。
民法上の不法行為(709条)に該当する場合、損害賠償請求が可能になります。具体的には、風評被害の原因となった行為に対し、以下の5つの要素が立証された場合に、損害賠償請求ができるようになるのです。
- ① 故意・過失があること
- ② 法律上保護された利益が損害を受けたこと
- ③ 利益を侵害する行為があること
- ④ 損害が発生したこと
- ⑤ 行為と損害の発生との間に因果関係があること
因果関係といっても、厳密に証明する必要はなく、一般人からみて、あのうわさからこうなった、と思えるような蓋然(がいぜん)性があれば認められる可能性が高くなっています。
請求する相手が地方公共団体や公務員の場合は、国家賠償請求をしていくことになります。
3、風評被害に対する損害賠償の手順・方法
それでは具体的に、風評被害に対して、どのように損害賠償請求をしていくのでしょうか。流れをみていきましょう。
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(1)投稿の削除依頼
まず、風評被害の元となるうわさの書き込みなどを削除する必要があります。どんなに嘘の情報だとしても、情報が残っていると信じてしまう方も多いためです。これ以上うわさによって、被害が拡大しないようにする必要があるのです。
投稿などの削除依頼は、書き込まれたブログや掲示板、SNSなどの管理人に削除依頼を出します。各サイトによって、削除依頼をする様式などが異なっています。よく分からない場合は、弁護士などに相談することをおすすめします。 -
(2)発信者を特定する
次に、そのうわさを発信した人を特定します。特定できないと損害賠償請求ができないためです。また、これ以上、こうしたうわさを流さないように書き込みをやめてもらう必要もあるからです。発信者は、ブログを管理している人がそのままブログに書き込んでいるような場合は、ブログサービスやプロバイダーなどから特定することが可能です。SNSなどの場合も、サービスの管理者から開示してもらう必要があります。
こうした行為を発信者情報開示請求といいます。個人で請求しても情報が開示されず、弁護士が対応することによってのみ開示される場合もあります。 -
(3)損害賠償請求
発信者に損害賠償請求を行います。示談交渉をする方法や裁判手続きを利用して請求する方法があります。
示談交渉は、一般人からすると相場などが分かりにくいため、弁護士に依頼するケースが多くなっています。裁判上の手続きも、決められた書式を提出する必要などがあるため、弁護士に依頼して行うのが一般的です。
また、風評被害だけでなく、その行為が営業妨害行為を満たしているような場合などは、刑事告訴も可能になっています。悪質なケースの場合は、警察へ相談することもできます。
4、実際に風評被害を受けて損害賠償請求したケースは?
実際には、どのようなケースで風評被害による損害賠償請求がされたのでしょうか。
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(1)ダイオキシン報道による営業被害
テレビの報道番組で、ダイオキシン濃度に関する問題が取り上げられました。そのとき、埼玉県所沢市の野菜にダイオキシン濃度が高い旨を報道したところ、その地で採れた野菜の値段が大暴落したというケースです。実際には濃度は高くなかったのですが、スーパーマーケットなどで自主回収などが行われ、農家に大損害が発生しました。農家側から損害賠償請求がなされましたが、最終的に和解が成立しました。(最高裁平成15年10月16日)
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(2)カイワレ大根業者への営業被害
大阪府堺市の小学校でO-157という食中毒が大発生した原因について、「カイワレ大根の可能性を否定できない」と国が公表したために、カイワレ大根の売り上げが著しく落ちたというケースです。これは、国が相手だったため、国家賠償請求訴訟で争われました。カイワレ大根業者などの原告の請求が認容されました。(東京高裁平成15年5月21日)
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(3)工場ダイオキシン排水被害
工場からダイオキシンなどの排水が川に流されているという報道のために、河口付近で漁業を営む業者に損害が発生したという事案です。被害を受けた漁業関係者らは、その工場を訴え、損害賠償請求の一部が認容されています。(横浜地判平成18年7月27日)
5、風評被害を受けたとき、どこに相談する?
風評被害を受けた場合、情報発信者の特定などは早く行う必要があります。日々膨大な情報がインターネット上では取り扱われているため、発信者などの記録は流れて削除されてしまうおそれがあるからです。また、情報が拡散していくことによって、誰が一次発信者なのか、時間がたてばたつほど特定が難しくなってしまうという危険もあります。
風評被害を受けていると認識した場合、迅速に弁護士に相談することをおすすめします。損害賠償請求だけでなく、情報に対する対処法についてのアドバイスなども受けることができます。
6、まとめ
日々膨大な情報が流れるインターネットでは、ちょっとしたクレームなどでは被害が生じない場合もあります。他方、根も葉もないうわさが拡散されてしまい、大きな被害を受けてしまうこともあります。「人のうわさも75日」ということわざがありますが、インターネットの場合は、情報が残ってしまうと、いつまでもそのうわさが消えず、損害を受け続けてしまう場合もあるのです。
こうしたことから、風評被害に対しては、迅速な対応が必要になるとともに、被った損害を賠償請求することも可能になっています。
風評被害でお困りの場合は、ベリーベスト 新潟オフィスまでご連絡ください。ベリーベスト新潟オフィスの弁護士が力を尽くします。ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています