成人した子どもにお金をたかられる! 親子の縁を切ることはできる?
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子どもが成人したのにさまざまなトラブルを起こしたり、お金の無心などで手間をかけられたりしていると「なんとかならないだろうか」とひどく悩むことでしょう。なかには、子どもの要求に従わないと暴力をふるわれてしまうケースもあり、法的な解決が必要となることもあります。
新潟市のホームページでは、さまざまなトラブルの相談先として新潟市内にある「心配ごと相談所」を案内しています。家族関係の問題などを、民生委員や弁護士が無料で相談に応じてくれるそうです。
成人した子どもからの要求がエスカレートしてしまい、暴力をふるわれたり、勝手に財産を処分されたりするような事態になっている場合、誰に相談し、どのように解決すれば良いのでしょうか?
ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
1、成人した子どもからの要求がエスカレートしたらどうなる?
親からみれば、子どもはいつまでたっても子どもです。
とはいえ、成人して自分の責任をとることができる年齢になった子どもの世話や生活費の面倒をみているわけにはいかないでしょう。
ところが、現代の社会では「成人した子どもによる家庭内暴力」が問題視されています。
学校や会社に適応できず強いストレスを感じている、子どもへの過干渉や無関心、精神的な疾患や障害、幼少時に受けた虐待からくる復讐(ふくしゅう)心や反抗心など、さまざまな原因が考えられるでしょう。
成人した子どもによる家庭内暴力は、突如として発現するわけではありません。
最初のうちは自分勝手な時間や場所で食事をしたがる、自分のものに触れられると怒るなどの軽度なわがままに始まるケースが多いでしょう。ところが、必要な支払いを援助してほしいなどのお金の無心が始まると、次第に要求がエスカレートし、仕事をせず飲酒やギャンブルなどの遊興費まで求めだすケースも少なくありません。
過度の要求に応えられなくなると「思いどおりにならない」という歯がゆさと「思いどおりにしてくれない親が悪い」という身勝手な解釈から行動が暴力的になり、家庭内暴力へと発展することもある深刻な問題です。
2、家庭内の問題では済まされない? 暴力や脅迫がある場合
もし、成人した子どもの行動がエスカレートしてしまい、要望が聞き届けられないときに暴力や脅迫行為があるとすれば、家庭内の問題というだけでは済まされません。
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(1)暴行・傷害罪が成立する
相手が子どもであっても、殴る・蹴るなどの暴力行為があれば刑法の暴行罪が成立します。もし暴行によってケガを負わされてしまえば傷害罪が適用されます。
暴行・傷害の被害が発生したときに警察に通報すれば、加害者となった子どもは警察官によって現行犯逮捕されてしまう可能性があります。 -
(2)窃盗・恐喝罪は責任を問われない
成人した子どもが家計からお金を盗む、または「金を渡さないと殴る」などとお金を脅しとるといったケースでは、刑法の窃盗罪や恐喝罪の適用が考えられるでしょう。
ところが、成人した子どもによる窃盗罪や恐喝罪は、刑法に定められた「親族相盗例」の規定によって罪に問われません(刑法第244条)。親族相盗例は、不動産侵奪罪にも適用されます。
成人した子どもが親名義の土地・建物を勝手に売却してしまった、実家を占拠して親の立ち入りができないようにしてしまったなどのケースでも、やはり罪には問われません。
ただし、窃盗の機会に暴行を加えたなどのケースでは、窃盗罪ではなく強盗罪が適用される可能性があります。暴行によって負傷していれば強盗致傷罪です。
強盗罪は親族相盗例の適用外であるため、この場合はたとえ実の子どもであっても罪に問うことが可能です。 -
(3)刑事事件になっても根本的な解決にはならない
親子間であれば、窃盗罪や恐喝罪で罪に問うことはできませんが、暴行罪・傷害罪・強盗罪が適用されるケースでは刑事責任を追及できます。
では、刑事事件として扱われれば、成人した子どもが暴力をふるう、お金の無心ばかりしてくる、家のお金を盗むなどの問題が解決できるのでしょうか?
まず、刑事事件として扱われるべきケースでも、最後まで厳しい対応ができないという実情があります。被害を受けた直後は感情が高ぶって被害届を提出しても、少し時間をおけば「わが子が処罰されるのを望むわけではない」と取り下げてしまうケースは少なくありません。
また、たとえ親を被害者として事件を立件し、成人した子どもが処罰されたとしても、根本的な問題は解決しません。事件になったことを反省し、子どもが改心してくれれば問題は解決ですが「親に事件化された」という事実が怨恨(えんこん)を生み、事態がさらに悪化するおそれもあります。
暴力行為が親に向いている間は事件が大きくならないとしても、第三者に矛先が向けられれば厳しい処分となることは避けられません。
問題が刑事事件に発展してしまう前に解決への対処が必要となるでしょう。
3、「勘当」はできる? 法的に子どもと縁を切ることは可能か?
では、トラブルを起こす成人した子どもと縁を切ることはできるのでしょうか。親子の縁を切るといえば「勘当」というイメージをもつ方も多いでしょう。しかし、現行の民法では勘当という制度はありません。たとえ「勘当する」と申し渡しても、自発的に付き合いをもたないというだけに過ぎず、法的にみれば親子の縁が切れるわけではないのです。
養子縁組であれば、役所で養子離縁届を提出することで離縁できますが、実の親子関係であればどのような手続きをとろうとも関係が解消されることはないのです。
法的に子どもとの縁を切ることは現実的には不可能ですが、ただし、財産の相続については「相続させない」という手続きが存在します。
●推定相続人の廃除
推定相続人とは、将来的に相続を受ける可能性がある人のことです。親に対して日常的に暴力をふるっていた、親の財産を無断で処分したなどの著しい非行がある場合に限って、家庭裁判所に請求することができます。
●遺言書を残す
生前に遺言書を残しておけば、暴力や脅迫などを繰り返す子どもに財産を相続させないことができます。最低限の法定相続分を認める遺留分についても、一定の金銭を生前贈与することを条件に遺留分を放棄させるという方法もあります。
4、親としてとるべき対処方法
成人した子どもからお金の無心を受ける、要求に応えないと暴力をふるわれるといったケースでは、親としてどのような対応をとるべきなのでしょうか。また、何らかの対処方法はあるのでしょうか。
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(1)厳然とした態度で接する
まず大切なのが、親として厳然とした態度で接することです。
おびえた態度やこびた態度で接していると、成人した子どもの要求や行動はますますエスカレートしてしまいます。たとえ「望みどおりにしてあげたい」という親心からの態度・行動でも、すでに成人している子どもにとっては本人のためになりません。
威圧的な態度や暴力で脅されても、決して屈しないという態度で接することが大切です。 -
(2)弁護士に相談する
弁護士は、暮らしのなかで起きるさまざまなトラブルを法的に解決する専門家です。法的な視点をもった第三者から、的確なアドバイスが受けられます。
特に、家庭内のできごとは外部と比較しにくいため、正常な判断ができなくなることも少なくありません。第三者である弁護士へ相談し一度状況を整理することで、解決への近道につながることが期待できます。弁護士が立つことで、冷静な話し合いの場をもてるようになる可能性もあるでしょう。
その他、弁護士は、財産に関わる手続きもサポートすることが可能です。前述した推定相続人の廃除手続きや、法的に有効な遺言書の作成も相談することができます。
また、状況によっては精神保健福祉センターへの相談や援助要請に向けたアドバイスや、精神疾患を理由とした措置入院を目指す方法などのアドバイスを受けられます。 -
(3)裁判所で親族関係調整調停を申し立てる
成人した子どもとの関係が修正不能にまで陥っている場合は、裁判所に「親族関係調整調停」を申し立てることで解決を目指す方法があります。
親族関係調整調停とは、感情的な対立や財産管理などの争いによって悪化した親族関係を円満な状態に回復するための話し合いをする手続きです。裁判所の調停委員を介して双方の事情を聴き、解決策の提案や必要な助言をします。
成人した子どもとの話し合いが親子間だけでは成立しない、子どもが聞く耳をまったくもたないといったケースでは、親族関係調整調停を活用すると良いでしょう。
申し立ての際に弁護士の助言、サポートがあるとスムーズかつ、安心です。
5、まとめ
血縁のある親子は、たとえ子どもが成人しようとも、成人後にもかかわらずお金の無心や暴力・脅迫などを繰り返そうとも、法的に縁を切ることはできません。弁護士や公的機関へ相談をしてアドバイスを受けるほか、家庭裁判所の親族関係調整調停で話し合いの場を設けて解決をはかると良いでしょう。
親族関係調整調停の申し立てや調停に向けた対応は、家族関係トラブルといった民事問題の解決実績が豊富な弁護士のサポートを受けるのが賢明です。
ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでは、成人した子どもとの関係にお悩みの方が抱える問題の解決に向けて全力でサポートします。成人した子どもにお金の無心をされている、子どもからの暴力・脅迫などに悩んでいるという方は家庭内だけで悩まず、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスまでご相談ください。一緒に、問題を解決していきましょう。
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