悪質な訪問販売に困っている! 違法になるケースと対処法を弁護士が解説
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押しかける、居座る、強引な販売や勧誘をするなど、悪質な訪問販売トラブルに困っている方は少なくありません。
新潟市は、市のホームページで「強引な訪問販売に関する注意喚起」として、トラブルの事例や相談先をアナウンスしています。事例と似たケースでお困りの方にとっては良い参考となるでしょう。
特定の業者からしつこい訪問販売を受けていると、営業活動がエスカレートしてくるだけでなく、いつの間にか脅しまがいのセールスに発展することもあります。いくら丁重に断っても引き下がってくれないと「契約したほうが楽になれるのでは」と感じてしまうこともあるかもしれません。
しつこい訪問販売は、違法行為にあたらないのでしょうか。また、悪質な販売業者への対抗策はあるのでしょうか。新潟オフィスの弁護士が解説します。
1、悪質な訪問販売は違法
日本訪問販売協会が公開している統計によると、平成30年中における訪問販売業界の売上高は145兆2260億円にものぼります。便利な商品や魅力的なサービスを自宅にいながら購入・契約できる機会が得られるのは、消費者としては大きなメリットでしょう。
ただし、悪質な業者による訪問販売によって、消費者トラブルに発展してしまうことも少なくありません。
国は、消費者保護を目的として昭和51(1976)年に「訪問販売等に関する法律」を制定し、悪質な訪問販売業者の規制に乗り出しました。さらに、昭和末期から平成にかけてセールスの形態が著しく変化したため、規制内容を改正して名称も「特定商取引に関する法律(通称:特定商取引法)」に変更されました。
何度かの改正を繰り返しながら、平成21(2009)年には大きな法改正が加えられて現在に至っています。
特定商取引法で、規制・禁止行為とされている行為が認められる訪問販売は違法です。
違法な訪問販売をした業者には、業務改善指示・業務停止命令・業務禁止命令などの行政処分が科せられます。
2、「訪問販売」に該当する行為
「訪問販売」とはどのような形態の商売を指すのでしょうか?
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(1)特定商取引法における定義
特定商取引法第2条1項では「訪問販売」について次のように定義しています。
販売業者または役務の提供の事業を営む者が、営業所・代理店など以外の場所において、売買契約の申し込みを受け、もしくは売買契約を締結して、商品・役務を有償で提供すること
訪問販売における「営業所・代理店など以外の場所」とは、消費者の自宅を指すと考えれば良いでしょう。また、喫茶店やファミリーレストラン、ホテルの一室、公民館を一時的に使用するほか、路上における販売行為も、店舗外であれば訪問販売とみなされることがあります。
さらに、営業所や代理店の店舗内で交わされた契約であっても、店舗外で呼び止めて店舗に同行させるなどの方法であれば、訪問販売に該当する可能性があります。 -
(2)訪問販売に該当するセールス形態
訪問販売に該当するセールス形態としては、次のようなものが考えられます。
●一般的な「訪問販売」
消費者の自宅に飛び込みでセールスし、商品を販売する
●キャッチセールス
路上などで通行人を呼び止めて、店舗や喫茶店などに誘導し契約を迫る
●アポイントメントセールス
販売の目的を隠してアポイントメントをとり、店舗などに誘い出して契約を迫る
●催眠商法
無料プレゼントや破格の激安販売をネタにして会場に消費者を集め、最終的には高額商品の契約を迫る -
(3)規制を受ける商品・役務(サービス)
訪問販売においては、原則、すべての商品・役務(サービス)が規制の対象です。
ただし、次のような商品・役務は除外されます。- 化粧品や健康食品などの消耗品を使用した場合
- 生鮮食品など、数日で商品価値が著しく損なわれる商品
- 自動車など契約の締結に一定の時間がかかる商品
- 現金取引で3000円に満たない商品・役務
- 飲食店など、契約を結ぶと即時で役務の全体が提供される場合
- 葬儀など、すみやかに提供されないと消費者に著しい不利益を与える役務
平成21年の改正以前は、特定商取引法において対象となる商品・役務を指定していたため、法律によって保護できないトラブルも発生していました。現在は指定商品・役務が撤廃されたため、対象外のものをのぞく原則すべての商品・役務が規制対象となっています。
3、訪問販売に対する8つの規制・禁止行為
特定商取引法では、次の8つの行為を規制・禁止行為としています。
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(1)氏名などの明示
訪問販売業者は、勧誘にせんだって次の事項を消費者に告げる必要があります。
- 事業者の氏名・名称
- 商品・役務の販売契約について勧誘する目的であること
- 販売する商品・役務の種類
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(2)再勧誘の禁止
平成21年の改正によって加えられた禁止行為が「再勧誘」です。
訪問販売トラブルによる相談で件数が多いのは「しつこい勧誘」です。あまりにも引き下がってくれないために、本当は必要のない商品まで購入してしまうといったケースも多発していました。
特定商取引法では、まず消費者に対して「勧誘を受ける意思はあるか」を確認し、そのうえで消費者が「いりません」「必要ありません」と断った場合の再勧誘を禁止しています。 -
(3)書面交付の義務
訪問販売業者は、契約の申し込みを受けたときと、契約を締結したときに、次の内容を記載した書面を交付する義務を負います。
- 商品・役務の種類
- 販売価格、支払い時期、支払い方法
- 商品の引き渡し時期
- クーリングオフに関する事項
- 訪問販売業者の名称、住所、電話番号
- 契約担当者の氏名
- 契約の申し込み、締結の年月日
- 商品名、型式、数量
- 商品に瑕疵(かし)があった場合の定め
- 契約の解除に関する定め
- そのほか特約事項
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(4)不実の告知
勧誘のため、または契約撤回を妨げる目的で、事実と異なる内容を告げる行為は禁止されています。「このサプリメントを飲めばガンが完治する」などの虚偽を伝えて、購入を迫る行為は違法です。
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(5)事実の不告知
勧誘の際に、故意に事実を伝えないことは「事実の不告知」として禁止されています。
たとえば、格安で浄水器などを販売する際に「月々◯万円の維持費がかかる」などの事実を隠していれば違法になります。 -
(6)威迫の禁止
勧誘・契約撤回の妨害を目的として、消費者を威迫し困惑させる行為は禁止されています。
脅し文句だけでなく、威圧的な言葉遣いや態度によって消費者が恐怖心を抱いた場合は違法です。 -
(7)クーリングオフ妨害の禁止
「クーリングオフはできない」「セール価格なのでクーリングオフは対象外だ」などの説明を聞かされると、消費者は「できないから仕方ない」と諦めてしまうことも少なくないでしょう。
クーリングオフを妨害する目的で虚偽を伝える、クーリングオフをさせないように脅すなどの行為は違法です。 -
(8)過量販売の禁止
平成21年の改正で追加された禁止行為のひとつが、生活に不必要な量の商品を売りつける「過量販売の禁止」です。
たとえば、独居の高齢者に高級な布団セットを何組も売りつけるなどの行為は違法となります。
どの程度が「過量」とみなされるのかは、消費者の生活状況によって異なります。日本訪問販売協会がホームページで例示している情報が参考となるでしょう。- 健康食品……ひとりが使用する量として1年間に10か月分
- 下着……ひとりが使用する量として1年に2セット
- 寝具……ひとりが使用する量として1年に1組
- 浄水器……1世帯に1台
- 住宅リフォーム……築年数10年以上の住宅1戸につき1工事
4、契約を解除したい! クーリングオフは可能?
しつこい勧誘を受けて不必要な商品を購入してしまった、違法な訪問販売業者と契約を結んでしまったなどのケースでは、一定の条件を満たしていれば契約を解除できます。
これを「クーリングオフ」と言います。
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(1)期間内であればクーリングオフできる
特定商取引法の定めに従って交付された書面の交付日から8日間以内であれば、消費者はクーリングオフによって契約を解除できます。
クーリングオフとは「冷却期間」という意味です。しつこい勧誘や、お買い得感を強調されたことで冷静な判断ができずに契約を結んでしまった消費者を保護するための制度です。
法改正以前はクーリングオフの対象が「役務」に限られていたため、商品を購入したケースではクーリングオフが適用されませんでした。
平成21年の改正によって商品もクーリングオフの対象となり、たとえ消費者がすでに商品を使用していたとしても、販売業者は代金を請求することはできなくなりました。
つまり「開封したのでクーリングオフはできない」「かなりの量を使っているのに、クーリングオフなんて認めない」と反論してくる業者は違法と言えるでしょう。
ただし、消耗品(健康食品や化粧品など)を使ってしまった場合や、現金取引の場合に総額が3000円未満の場合は、クーリングオフの規定は適用されないため注意が必要です。 -
(2)クーリングオフ期間が延長されるケース
クーリングオフができる期間は書面交付から原則8日間以内ですが、次のような状況があれば延長されます。
- マルチ商法・内職モニター商法などの場合……20日間以内
- 過量販売の場合……1年間以内
- 訪問販売業者がクーリングオフを妨害した場合……期限の定めなし
- 事実と異なることを言われた場合や重要な事実を故意に言わなかった場合……事実と異なることに気が付いてから1年以内、または契約締結時から5年以内
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(3)「クーリングオフできない」と言われた場合の対処法
訪問販売業者から「クーリングオフできない」と言われて、契約解除や返金に応じてもらえない場合は、すぐに弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士は消費者トラブルといった、日常で起こりうるトラブルを法的に解決するプロフェッショナルです。
本当にクーリングオフできない状況なのか、訪問販売業者に違法行為はないのかなどを冷静に判断して、クーリングオフ可能な状況であれば消費者に代わって訪問販売業者にクーリングオフを申し入れます。
違法とみなされる行為を繰り返している訪問販売業者であれば、トラブルが表ざたになることを避けたいと考えるため、弁護士が介入することでクーリングオフに応じる可能性が高まります。
5、まとめ
悪質な訪問販売をめぐるトラブルが、さまざまな機会で広報されてきたおかげで賢い消費者が増えた反面、賢い消費者さえも言いくるめられてしまうほどに悪質な業者も、いまだに存在しています。
自治体や各種団体の相談窓口にトラブルを相談しても、アドバイスが受けられる、業者へ是正勧告を行うなどに留まることが多いでしょう。
個人ではどうしようもない状況になる前に、弁護士へ相談してください。状況を整理して法的に対応ができるかをアドバイスします。また、対応を一任すれば、訪問販売業者とのやり取りも任せることができるので、精神的な負担が軽減されます。
しつこい勧誘に負けて高額な商品を契約してしまった、クーリングオフ期間内なのに訪問販売業者から「クーリングオフできない」と断られたなどのトラブルでお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスにご相談ください。新潟オフィスの弁護士が、トラブル解決のために力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています