会社の休業で働けない! 休業手当について新潟の弁護士が解説
- その他
- 休業手当
2020年4月、新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の発令を受けて、新潟県でも県民に対して、外出の自粛や娯楽施設への出入りや繁華街での会食などを自粛するよう強い要請がなされました。そしてこの要請に自主的に応じる形で、休業に踏み切った会社も少なくありません。
会社側としても苦渋の選択であったことは確かでしょう。しかしそこで働く従業員も、休業中の収入確保の問題を抱える可能性があります。
休業中の収入を確保できるかどうかは、休業手当の支給の有無によって大きく違ってきます。
本コラムでは休業手当について、新型コロナウイルス感染症関連の情報も含めて、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説していきます。
1、そもそも休業手当とは?
まず休業手当の概要について、ご説明します。
-
(1)休業手当とは
休業手当とは、「会社側の都合により労働者を休業させた場合」に会社が労働者に対して支払わなければならないと法律で定められている手当のことです。
休業手当の金額は、休業させた所定労働日につき平均賃金の60%以上と定められています。
そのため会社によって70%・80%などと、割合は変わる可能性はあります。
休業手当が支給される「会社側の都合」については、一般的にはストライキを理由としてストライキに参加していない社員も休ませたといったケースや企業の資金難などが該当します。
しかし「会社側の都合」ではなく「不可抗力」によって休業するときには、休業手当の支払いは基本的に不要とされています。 -
(2)新型コロナウイルスによる休業は対象になる?
新型コロナウイルスによる休業と休業手当の関係については、厚生労働省の見解をもとにお伝えします。
・感染した従業員を会社が自宅待機させる場合
会社側の都合による休業には該当しないと考えられ、休業手当の支払い義務はないとされています。
・従業員の発熱をもって一律に会社の自主的な判断で自宅待機させる場合
一般的には、会社側の都合による休業に該当し、休業手当は支払われると考えられます。
・緊急事態宣言や要請・指示を受けて休業した場合
この場合に不可抗力による休業に該当すると判断できるときには、休業手当の支払い義務は生じません。不可抗力による休業に該当すると判断するためには、「①その原因が事業の外部より発生した事故であること」「②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること」の二つの要素を満たしていなければなりません。
①は、緊急事態宣言や要請などの事業運営を困難にする要因が挙げられます。
②は、会社が「テレワークなどを十分に検討したか」「労働者を他の業務で就業できるか検討したか」といった事情によって該当の有無が判断されるとしています。
そのため会社側が従業員を可能な限り就業させるよう努力したと判断できなければ、休業手当の支払いが認められる余地もあるとはいえるでしょう。
2、休業手当はいくらもらえる? 計算方法とは
休業手当が支給される可能性があるときには、いくら位もらえるのかでしょう。
先ほどご説明したように、休業手当は休業した所定労働日につき平均賃金の60%以上とされています。そのため会社の就業規則などの規定で、何%に設定されているのかを確認する必要があります。
平均賃金は、平均賃金を算定すべき事由が発生した日以前3か月間に労働者に対して支払われた賃金の総額をその期間の総日数で割って算出します。なお賃金の総額には、通勤手当などの各種手当も含まれます。
たとえば1月から3月まで(総日数89日)の賃金の総額が66万円であり、4月10日に休業したとします。
平均賃金は、66万円(3か月間の総賃金)÷89(総日数)=約7416円と算出できます。そのため休業手当が平均賃金の60%とされている会社であれば、4月10日分の休業手当は7416円×0.6=約4450円と計算することができます。
3、アルバイト・パート従業員も休業手当の対象に含まれる?
アルバイトやパートで働く従業員も、休業手当の支給対象になるのでしょうか。
-
(1)正社員でなくても休業手当は支給される
休業手当は、雇用形態に関係なく支給されるものです。
そのためアルバイトやパートとして働く労働者も、休業手当の支払いを受けられる可能性があります。また出社予定であった内定者も労働契約が成立していれば、休業手当の支給対象になりえます。
なお派遣社員は、勤務先の会社ではなく、派遣元の会社から休業手当が支給される可能性があります。 -
(2)時間給または出来高給の休業手当の計算方法
時間給や出来高給で働くときには、ご説明した計算方法で算出した金額と最低保障による計算方法で算出した金額のいずれか多い方を平均賃金とします。
最低保障による計算方法は、平均賃金を算定すべき事由が発生した日以前3か月間に支払われた賃金総額をその期間の労働日数で割った金額の6割とされます。
平均賃金は、原則として期間の総賃金を総日数で割って平均賃金を算出します。しかしそれでは労働日数の少ないアルバイト・パート従業員にとって酷なこともあるので、期間の総賃金を労働日数で割った金額の6割が最低保障として設定されています。
こうして算出した平均賃金に60%以上の割合をかければ、日ごとの休業手当の金額になります。
4、休業手当以外にもらえる手当や制度はある?
休業手当の支給が受けられないときでも、次のような手当などの支給を受けられる可能性はあります。
-
(1)健康保険の傷病手当
加入している健康保険によっては、病気や仕事以外の怪我で療養休業することになったときに要件を満たせば、傷病手当を受給できる制度があります。
傷病手当金は、連続して3日間仕事を休んだ後の4日目以降の休業日に対して支給されます(最長1年6か月)。直近12か月の平均の標準報酬日額の3分の2が補償されうるので、当面の生活を支える大きな柱になりうるものでしょう。 -
(2)病気休暇・有給休暇
有給休暇制度は、使用者が条件を満たす労働者に取得させる必要がある労働基準法上の休暇のことです。有給休暇中でも100%の賃金が支給されるため、休業した日を有給休暇扱いとしてもらう方法もあります。
そのほか会社によっては、病気休暇など独自に福利厚生の一環として休暇制度が設けられている場合もあります。会社の就業規則などを自分で、あるいは総務担当者などに確認してみるとよいでしょう。 -
(3)労災保険の休業補償
メディアの報道では、休業手当と同じ意味で休業補償という用語が使用されることもあります。しかし労災保険における「休業補償」は、労働者が労働災害によって休業した場合にその治療費や生活費を補償するために支払われる給付金のことをいいます。休業補償の支給要件に該当すれば、休業1日あたり給付基礎日額の80%が支給されます。
たとえば業務または通勤が原因となって新型コロナウイルス症を発症したようなケースでは、労災保険から休業補償給付金が支給される可能性があります。
ちなみに休業補償は所得として扱われないので、所得税の課税対象には含まれません。
一方休業手当は給与所得とみなされ、所得税の課税対象になるという違いがあります。
5、休業手当など労働問題のご相談は弁護士に!
「休業手当について会社と交渉しても話がまとまらず揉めてしまった」。
特に新型コロナウイルスの感染拡大にともなう休業要請が出されているような状況下では、使用者側も冷静な対応ができないケースも多いでしょう。そのようなときには弁護士に相談すれば、弁護士が代理人として会社と交渉することができます。
また「休業手当の支払いを求めたらその場で解雇された」。このようなケースも見受けられるようです。
解雇の有効性や未払い残業代の請求についても、弁護士が力になることができます。
休業手当などに関する労働トラブルにお悩みのときには、第三者である弁護士に相談することも選択肢のひとつとして検討されるとよいでしょう。
6、まとめ
本コラムでは、新型コロナウイルス関連の情報も含めた休業手当についてご説明していきました。
休業手当は、「会社側の都合で休業したといえるかどうか」によって支給義務の有無が変わります。しかし、会社に支給義務はなくても、交渉によって休業手当の支給を受けられるように話を進められる可能性もあります。
交渉をうまく進めるためには、会社側に雇用調整助成金の活用を促すなど専門家の知識や経験があることがポイントになります。
ベリーベスト法律事務所では、社会保険労務士などとも連携してお悩みを解決できるようサポートいたします。新潟市周辺にお住まいの方で休業手当のトラブルなどでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士までお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています