大麻はどのようなケース(所持、使用)で違法とされるのか? 弁護士が解説

2021年04月26日
  • 薬物事件
  • 大麻
  • 違法
大麻はどのようなケース(所持、使用)で違法とされるのか? 弁護士が解説

大麻は覚せい剤などの薬物犯罪と異なり、「使用しても違法とはならない」ことをご存知でしょうか。

本記事では、大麻取締法の仕組みや、実際に逮捕されるケース、逮捕された場合の対応などについてベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が詳しくご説明します。

1、大麻とは?

  1. (1)「大麻は人体に悪影響がない」は本当か?

    近年、インターネット上で大麻は身体への悪影響はなく、依存性も低いなどの誤った情報が見受けられます。しかし、実際は、大麻も、その他の違法薬物と同様に人体に深刻な影響を及ぼす違法で毒性のある薬物です

    大麻による悪影響としては、脳機能の障害による記憶力や学習の低下、慢性気管支炎などの呼吸器の障害、人格変容、やる気がでないなどの精神障害、薬物依存症などが挙げられます。
    ただし、大麻は、覚醒剤やヘロインなどと比べると比較的毒性が弱いと考えられています。

    そのため、大麻の規制の範囲は国によって大きく異なります。たとえばアメリカでは州によって大麻の使用が合法か否か異なります。

    2020年11月にはニュージャージー州が新たに大麻の合法化を決定しており、医療的な理由以外で大麻を使うことのできる地域に住む人は、全米人口の3分の1にも達するといわれています。しかし、日本では、「大麻取締法」という法律で、大麻の所持が厳しく規制されています。

  2. (2)被害者がいないのに規制される理由

    大麻所持などの薬物犯罪は、直接の被害者がいない、いわゆる「被害者なき犯罪」のひとつです。

    窃盗や傷害事件などは相手に何らかの被害を与えることから当然そのような行為は禁止されます。一方で、薬物犯罪は、使用した本人の心身に悪影響が出ますが、第三者の財産や身体を侵害するわけではありません。

    それにもかかわらず大麻取締法が存在する理由は、大麻が、まわりまわって社会的に大きな弊害をもたらし得るからです。

    つまり、薬物使用が広がれば、使用者の精神的・身体的な生産能力が低下し、結果として社会秩序の悪化や医療費の増大などの問題に発展する可能性が高くなります。そのような退廃的な社会へ変容してしまう可能性を避けるためにも、大麻を法律で規制しているともいえます。

2、大麻取締法について

  1. (1)大麻の成分

    大麻取締法の大麻とは、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)」およびその製品をさします。

    ただし、「大麻草の成熟した茎およびその製品(樹脂を除く。)ならびに大麻草の種子およびその製品を除く。」とされています。大麻草のうち、成熟した茎と種子は規制から外れていることが分かります。このように、大麻草の全てではなく一部を規制しているのは、大麻草すべてに有害物質が含まれているわけではないからです。

    大麻に含まれる主な成分はCBD(カンナビジオール)やTHC(テトラヒドロカンナビール)の2つです。このうちTHCだけが有毒で、妄想や幻覚など、大麻特有の障害を引き起こす原因となっています。

    THCは大麻草の花や葉の樹脂に多く含まれており、成熟した茎や種子にはほとんど含まれていません。実は、大麻の種子は七味唐辛子に使用されており、普段から摂取している安全なものです。

  2. (2)規制される行為とは

    大麻取締法の具体的な用途の制限としては、大麻の所持・栽培・譲受・譲渡・研究目的の使用が原則として禁止されています(大麻取締法第3条)。

    また、前述の通り大麻の輸入・輸出については、大麻研究者が厚生労働大臣の許可を受けて行う場合を除き禁止されています(同法第4条第1項第1号)。さらに、医療大麻の施用・交付、医療用大麻の施用を受ける行為、大麻に関する広告をする行為は、すべて禁止されています(同項第2号から第4号)。

  3. (3)大麻所持等が許される場合

    例外的に、大麻の所持・栽培・譲受・譲渡が法律で認められる場合もあります。

    それは、麻栽培者または大麻研究者として、厚生労働省令の定めによって都道府県知事の免許を受けた場合です(同法第2条、第3条第1項)。

    ただし免許を受けたとしても、その目的以外の目的で大麻を使用することは禁じられています(同法第3条2項)。

3、大麻の「使用」が処罰対象にならない理由

前項で示した通り、大麻取締法は、大麻の所持・栽培・譲受・譲渡・研究だけを禁止しています。「所持」は違法なのに、なぜ「使用」については言及されていないのでしょうか。

それは大麻が一般の生活に存在するものであるため、やむを得ず成分を吸引してしまう、つまり使用した場合と同じ状態になる場合があるからです。

たとえば、大麻取締法の規制外である茎は、麻織物や麻縄の材料として今でも利用されています。これらの製品の制作者、あるいは大麻草の合法的な栽培者が尿検査を受けると、自然と吸引した大麻成分が検出される可能性があります。

この場合、その成分が大麻取締役法で禁止されている行為をしたために検出されたのか、それとも規制外の行為で摂取したものなのか判別するのは困難です。仮に規制外の適法な行為であった場合に、間違って処罰してしまうようなことはあってはなりません。

そのため、覚せい剤等とは異なり、大麻において「使用罪」は存在しないのです。もっとも、産業用ではなく吸引目的で大麻を使用する前には、大麻の所持や譲渡などに関わっていることがほとんどです。そのため、大麻を使用したこと自体が違反でなくとも、それ以外の行為が処罰の対象となっているのです。

4、大麻で逮捕されるケースや問われる罪

このように、大麻取締法では所持のみが違法とされています。では、具体的に、どのような経緯で逮捕されるのかを解説します。

  1. (1)大麻の所持で逮捕されるケース

    大麻の所持で逮捕される発端は、職務質問や、別の大麻事件の捜査、知人からの通報による家宅捜索が一般的です。

    職務質問は警察官が挙動等について不審だと感じた場合に行われる任意の手続きです。その際に、持ち物の提示を求めることもできます。そこで大麻らしきものが見つかった場合、その場ですぐに簡易検査が行われます。

    通報などによる家宅捜索でも、大麻らしきものが見つかれば、簡易検査を実施します。見つかった大麻らしきものは警察に押収されます。簡易検査により大麻と認定された場合は、大麻を所持していたものとして、現行犯逮捕されます。

    また、簡易検査とは別に尿検査を求められる場合もあります。前述の通り、尿検査により大麻成分が検出されたとしても、規制適用外の行為で吸引した可能性があります。したがって、尿検査により大麻成分が検出されたからといって、必ずしも逮捕されるわけではありません。大麻の使用は禁じられていないからです。ただし、体内から大麻成分が検出されれば、大麻の所持が強く疑われ、逮捕につながる可能性は高まります。

  2. (2)大麻所持により問われる罪

    営利目的での大麻所持の場合は、7年以下の懲役または懲役と200万円以下の罰金の併科です。

    一方、営利目的ではなく、単に大麻を所持していただけの場合は、5年以下の懲役となります。営利目的の所持のほうが罪が重いのは、社会的な影響力がより大きいからです。

  3. (3)大麻の譲渡・譲受で逮捕されるケース

    大麻の譲渡・譲受による逮捕のきっかけは、大麻の売人の逮捕時に押収された顧客名簿や、メールの履歴などです。

    それらの証拠から購入者を特定し、令状によって家宅捜索が行われ、大麻が発見されればその場で現行犯逮捕となります。その場で大麻が発見されなかったとしても、別件で逮捕された売人や別の譲渡者の自供や、メールなどのやりとりから逮捕に至る場合もあります。

  4. (4)大麻の譲渡・譲受により問われる罪

    営利目的での大麻の譲渡・譲受は5年以下の懲役刑となります。また、営利目的の場合は、7年以下の懲役または懲役と200万円以下の罰金の併科です。

    営利目的の場合は、非常に罪が重いとされ、基本的には初犯であっても実刑判決になることが多いとされています。

  5. (5)大麻の輸入・輸出で逮捕されるケース

    大麻の輸入・輸出は、国際空港の税関にて発見されるケースが一般的です。

    インターネット取引で海外から購入されたものが多く、主流である乾燥大麻のほか大麻を加工した食品などもあります。税関から警察に通報され、荷物の送主および受取人が、大麻輸入あるいは輸出の被疑者として特定され、家宅捜索による捜査が行われます。

  6. (6)大麻の輸入・輸出により問われる罪

    営利目的の場合は、10年以下の懲役または懲役と300万円以下の罰金の併科です。また、営利目的ではない場合は、7年以下の懲役刑となります。

    大麻の所持や譲渡などに比べて、輸入・輸出のほうが重い罪を問われます。大麻取締法が、安定した社会を守るために規定されたものであるということが、罪責の軽重にあらわれていると言えるでしょう。大麻の輸入・輸出で起訴された場合も、初犯でも実刑判決となることが多いでしょう。

5、薬物事件で弁護士ができること

  1. (1)勾留中でもすぐに面会できる

    大麻は、他の犯罪に比べて逮捕や勾留などの身体拘束を受けやすい犯罪類型です。これは大麻は容易に処分できるため、証拠隠滅の恐れが高くなるためです。

    逮捕拘留されると、外出はもちろん、自分で外部に連絡することが一切できなくなります。時には、家族との面会も禁止されることもあります。

    その際に被疑者と必ず会うことができるのは弁護士だけです。勾留中の被疑者と弁護士が面会することを「接見」といいます。そして、弁護士と早い段階で接見することで、その後の取り調べにおけるアドバイスを受けることができ、家族への伝言を預かることができます

  2. (2)取り調べに対して適切なアドバイスを受けることができる

    逮捕されると、すぐに取り調べが始まります。

    取り調べの時のおける警察や検察への対応は非常に重要です。対応次第で、その後の身柄拘束期間に差が出る場合があるからです。

    たとえ身に覚えがない容疑でも、捜査機関からの取り調べの中で、警察からの強い態度から、事実と異なる話でもイエスと答えてしまうことも多くあります。

    しかし、後の裁判で、取り調べの時にした供述を覆そうにも、難しくなるケースがほとんどです。逮捕時や逮捕直後に話したことは、信ぴょう性が高いと考えられるからです。

    弁護士と逮捕後すぐに面会すれば、取り調べで話すべき内容や、とるべき態度など取り調べに関する適切なアドバイスを受けることができます。

    また、容疑を否認した場合、身柄拘束の期間が長引くこともあり、精神的な負担が増えますが、弁護士との接見が精神的な支えとなります。

  3. (3)再犯防止の徹底についてアドバイスを受けることができる

    薬物事犯は再犯率が高い犯罪類型とされています。

    実際に、本当はやめたいけれどもやめられないという人も多くいます。刑事裁判では、今後は薬物に手を出さないこと、つまり、更生の可能性が高いことを証明しなければなりません。

    更生の余地を認められれば、実刑ではなく執行猶予がつくこともあります。そのためには、本人の反省、医療機関や専門機関との連携、家族の協力があることを積極的にアピールすることが非常に重要となるのです。

    たとえば、本人作成の反省文を裁判所に提出したり、家族の協力を得て、引っ越しなども含めた生活の再建を図ったり、病院や専門機関のセラピー、自助グループへの参加を促すなどが該当します。

    弁護士に依頼することで、これらの手順を適切に進めていくことが可能です。これらは、刑事裁判でも有利に運ぶ要素ですが、大麻に手を出してしまった本人のこれからの人生を、良いものにするというのが本来の目的となります。

6、まとめ

大麻をはじめとする薬物事犯は、逮捕や裁判後にも依存症との長い闘いが続きます。

ご自身が大麻の所持や栽培などにより逮捕、あるいはご家族が逮捕された場合には、できるだけ早期に弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士へ依頼することで、不起訴処分や執行猶予つき判決を得られる可能性が高くなります。また、これからの社会生活の中での更生を目指すこともできます。

大麻について気がかりのある方は、ぜひベリーベスト法律事務所 新潟オフィスへの相談をご検討ください。薬物事犯に関する実績が豊富な弁護士があらゆる面から全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています