新潟で家族が放火罪で逮捕された! 家族ができることや失火罪との違いは?
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平成30年2月、新潟にある神明神社が全焼、放火とみられ捜査が行われているという報道がありました。怖いもののたとえとして「地震・雷・火事・親父」と昔からいわれているとおり、火事は日本人にとって被害が大きくなりがちな災害のひとつです。
もし、あなたの家族が放火の疑いで逮捕されてしまったら、どうすればよいのでしょうか。他方、放火する気がなかったにもかかわらず、たとえば、いらない書類を燃やしていたら火が他人の家に燃え移ってしまい、火災になってしまったという場合は、どのような扱いがなされることになるのかを、ご存じですか?
今回は放火罪や失火罪の違い、家族が火事を引き起こした場合の対処法について、弁護士が解説します。
1、放火罪と失火罪の違いとは
放火とは、嫌がらせや面白半分、ちょっとボヤを出して困らせてやろうなどの思いから火をつけてしまうことです。
日本の住宅は木造が多く、火がつくと思ったよりも被害が大きくなってしまうことがあります。放火は、居住者や不特定多数の人の命を危険にさらすおそれが極めて高い行為です。このような理由から、放火に関する刑罰は重いものが設定されています。
他方、自分で火をつけるつもりがなかったのに、結果的に火事になってしまい、大惨事になってしまうケースがあります。こちらは「失火」に該当します。たとえば、同じく新潟で平成28年12月に起きた糸魚川の大火を思い出す方も多いでしょう。店舗が火元となり、周りの建物にも燃え広がってしまったことで、被害が甚大なものになりました。
「放火」と「失火」で問われることになる罪の違いについて、もう少し具体的にみていきましょう。
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(1)もっとも大きな違いは行為態様
放火罪は、「放火して」、建物などを「焼損」することで成立する犯罪です。刑法上では3つの条文に分類され、燃やした対象物や状況によって問われる罪が異なります。
具体的には、人がいない建物などに放火したときは刑法第109条「非現住建造物等放火」が問われることになります。人がいる建物を放火したときは刑法第108条「現住建造物等放火」に該当することになり、より罪が重くなります。
また、刑法第108条や第109条で定められたもの以外のものに放火したときは、刑法第110条の「建造物等以外放火」に該当します。自身が所有する建物ならば、延焼の有無で公共の危険性の有無によって量刑が変わることが刑法第111条で定められています。
放火罪は故意に火を放った場合を指すほか、自分の意思で火をつけるのと同じような場合も該当します。たとえば、発火装置などを使って火を出した、火がついているのに倒れそうなストーブを認識していながら、そのままにして家を出た場合などで、放火罪が問われることがあります。危険を認識していた以上、故意と同等の悪質性があったと判断されるわけです。なお、未遂罪が刑法第112条で、さらに予備罪が刑法第113条で設定されているため、放火しようとしたことやその準備をしていたことが立証されれば刑罰に処せられることになるでしょう。
他方、失火罪は「失火により」建造物などを「焼損」することで成立する犯罪です。刑法第116条で定められていて、不注意で火が出てしまった場合などが該当します。同じ失火でも、業務上で必要な注意を怠り失火させてしまった場合や、重大な不注意によって失火させた場合は、刑法第117条に設定された「業務上失火等罪」と呼ばれる、通常の失火罪よりも重い刑罰が科される罪が成立します。 -
(2)放火罪と失火罪の刑罰について
放火罪の刑罰は、以下のように複数の種類があります。
- 現住建造物等放火罪:死刑または無期懲役、もしくは5年以上の懲役
- 非現住建造物等放火罪:2年以上の有期懲役、自己の所有の場合は6ヶ月以上7年以下の懲役
- 建造物等以外放火罪:1年以上10年以下の懲役、自己の所有の場合は1年以下の懲役または10万円以下の罰金
失火罪の刑罰は、以下になります。
- 失火罪:50万円以下の罰金、自己の所有物を焼損し公共の危険を生じさせた場合も同様に50万円以下の罰金
- 業務上失火罪:3年以下の禁錮または150万円以下の罰金
放火罪に比べて、失火罪はかなり軽いということが分かります。しかし、これは刑事上の責任だけに限った話です。もちろん、放火でも失火でも、火事を起こしてしまったときは、民事上の責任が発生することになります。民事上の損害賠償請求の金額が膨れ上がるケースは少なくないことは、覚えておきたいポイントです。
2、放火罪で逮捕された後の流れは?
一例として、あなたの家族が他人の家に火をつけてしまい、逮捕されたケースについて考えてみましょう。
前述のとおり、放火罪には未遂罪も予備罪も規定されています。たとえ火をつけて実際に放火していなくても、逮捕の対象となりえます。もし、あなたの家族が放火罪で逮捕されたときは、刑事訴訟法で定められた手順に準じて、刑事手続きを経ていくことになります。
まず、逮捕されるとあなたの家族は「被疑者」として警察官による取り調べを受けることになります。警察は、逮捕から48時間以内に送検するか、釈放するかを検討します。
もし罪を問えるだけの証拠がなかったり、無罪であることが明らかになったりすれば、釈放され、自宅に戻ることができます。釈放されず被疑者の事件と身柄が検察官に送られると、検察官は、送検から24時間以内に、引き続き身柄を拘束したまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」を請求するか、在宅事件扱いに切り替えるかを判断します。
勾留請求を行うのは検察ですが、最終的な許可は裁判官が行います。勾留が決定されると、まずは10日間、状況によって合計20日間もの間、拘置所か留置場で過ごすことになります。
勾留中であれば勾留期間が終了するまで、在宅事件扱いであれば捜査が終わったタイミングで、検察は起訴・不起訴を判断します。検察に起訴されれば、裁判手続きに移行します。不起訴となれば、前科がつくことはありません。
3、放火罪で逮捕されたときの対処方法。家族は何ができる?
本人にとっては放火行為ではなく、ほんの少し燃やしただけのつもりでも、結果的に被害が大きくなってしまったということもあるかもしれません。たとえば、夜の公園で自分の物を燃やしただけなのに、たまたま風が強くて、公園の木に燃え移り、大火事になってしまった……などのケースです。このようなときは公共の危険が生じた結果となるため、当然、逮捕されることになります。
家族が逮捕された身になれば、多くの方がとまどいつつも、いち早く会いたいと考えるでしょう。なぜそのようなことをしたのか知りたいと考えることはごく自然なことです。
しかし、逮捕されてから取り調べが行われている段階、勾留か在宅事件扱いかが決定するまでは、たとえ親であっても家族は面会することができません。逮捕された息子は、あなたが思う以上に不安な気持ちになっているかもしれません。
逮捕から勾留までの間、自由な面会が許可されている者は、唯一、弁護士だけとなります。弁護士に面会を依頼することで、法的なアドバイスやどうして逮捕されたのか説明を受けることが可能になります。逮捕された本人にとっても、心理的な不安が軽減されるでしょう。
家族ができることは、弁護士に面会を依頼し、逮捕された家族の不安を取り除いてもらうことです。さらに、弁護士には被害者との示談交渉をしてもらうこともできます。放火によって損害を受けた被害者との間に示談が成立すれば、起訴・不起訴の判断や、起訴後の量刑判断の際にも参考にされ、罰が軽く済む傾向があります。
また、放火ではなく失火によって逮捕されるケースも考えられます。このときは、放火ではなく失火を主張するなどの活動をする必要性が考えられます。このようなときも弁護士による、法的なアドバイスを受ける必要があるだけでなく、適切な弁護活動を行ってもらう必要があるでしょう。
万が一、あなたの家族が放火の疑いで逮捕されたときは、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することおすすめします。
4、まとめ
放火罪は焼損してしまった対象によって被害状況が大きく違うことから、成立する犯罪名、量刑が、大変幅広いものになっています。
当然のことですが、放火は絶対にしてはならない犯罪です。万が一、罪を犯してしまったときは、まずは深く反省することと、不当に重い刑罰を科されないよう、弁護士による刑事弁護活動を利用することをおすすめします。
家族が放火罪の疑いで逮捕されてしまったときは、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスへ相談してください。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています