運転中に呼気検査を拒否すると逮捕されるか? 新潟オフィスの弁護士が解説

2019年05月14日
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運転中に呼気検査を拒否すると逮捕されるか? 新潟オフィスの弁護士が解説

飲酒運転は数々の悲惨な事故をもたらしています。新潟県警は、平成30年4月、過去5年間に飲酒運転で検挙した人数を新潟県内30市町村別にまとめて発表しました。結果、免許保有者1万人あたり換算で県内1位となったのは鷹の巣温泉で有名な関川村であり、新潟市はワースト8位だったと報道されています。

飲酒運転の取り締まりでは、検問や呼気検査が行われることが一般的です。では、検問や呼気検査を断ったらどうなるのでしょうか。素朴な疑問に、ベリーベスト法律事務所新潟オフィスの弁護士が回答します。

1、呼気検査と酒気帯び・酒酔い運転

飲酒検問における呼気検査は、「酒気帯び運転」にあたるかどうかを確かめる上でも重要なものです。まずは呼気検査の内容や方法についてみておきましょう。

  1. (1)呼気検査と検査方法

    呼気検査はアルコール呼気検査とも呼ばれています。自動車の運転や輸送に携わる運転手が運転の妨げとなるような一定以上の酒気を帯びていないかを確かめるため、呼気中にどれだけのアルコールが含まれているかを測定する検査です。主に2つの方法があります。

    1つは、かつて主流だった「風船」と称される方法です。これは風船を膨らませ、その中にアルコール検知器を入れることで検査を行うやり方で、正確性に欠けるため現在は少なくなっています。

    もう1つは、アルコールチェッカーによる方法です。これはアルコール検知器のセンサーもしくはマウスピースに、息を吹き掛けるか吹き込むかすることで検査を行うやり方です。現在は、アルコールチェッカーによる呼気検査が行われることが一般的です。

  2. (2)酒気帯び運転・酒酔い運転とは

    飲酒運転は、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」とに分類されています。いうまでもなく、いずれも犯罪です。後述するように、行政処分および刑事罰の対象となる行為でもあります。

    「酒気帯び運転」とは、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上でありながら運転をすることです。

    他方、「酒酔い運転」とは、アルコールの影響により客観的に見て正常な行為や判断のできないおそれがある状態で運転をすることです。

  3. (3)酒気帯び運転と酒酔い運転の罰則

    行政処分において、酒気帯び運転の違反点数は、呼気中アルコール濃度によって2つの段階にわけられます。

    まず、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上0.25mg未満の場合は13点であり、違反の前歴がない状態でも90日間の免許停止処分となります。次に、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mg以上の場合は25点であり、免許取り消しになるだけでなく、免許の再受験が認められない欠格期間も2年間となります。

    酒酔い運転の行政処分は35点であり、免許取り消しに加え、欠格期間は3年間となります。

    他方、刑事処罰は、酒気帯び運転で有罪になったときは3年以下の懲役または50万円以下の罰金が処されます。酒酔い運転であれば、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が処されることになるでしょう。

  4. (4)酒気帯び運転と酒酔い運転の違い

    酒気帯び運転は検出される数値という形式的な基準があります。しかし、酒酔い運転のほうは真っすぐに歩けるか、ものが見えているか、話や受け答えができるかといった点から総合的に判断されます。

    前述のとおり、行政処分でも刑事罰でも、酒気帯び運転より酒酔い運転のほうが罰則は重くなっています。しかし、アルコールに弱い体質の方であれば、酒気帯びに満たない程度のアルコール濃度であっても酒酔いと見なされる可能性があるのです。

    酒気帯び運転はあくまでも呼気中のアルコール濃度による判定です。そのため、飲酒してから十分な時間が経過したと思っていても、体調などによってはアルコールが抜けきらないことがあるでしょう。その場合、検査によって酒酔い運転に該当する可能性があるため気をつける必要があります。

2、呼気検査を拒否したらどうなるか

飲酒運転による重大な事故を防ぐためにも、飲酒検問や呼気検査は重要な公務です。しかし、急ぎの用事があった、警察官の対応が横柄に感じられたといった理由で、検査を拒否したくなることもあるかもしれません。

そこで、呼気検査を拒否した場合の罰則の有無について確認しましょう。

  1. (1)呼気検査の拒否と道路交通法

    結論から言いますと、呼気検査の拒否は罪にあたり、処罰されることがあります。根拠となる条文は、道路交通法(以下、道交法)にあります。

    まず前提として、道交法第65条1項には、酒気帯びでの運転の禁止が定められています。これを受けて同法第67条3項では、酒気帯び運転禁止違反のおそれがあるとき、アルコールの程度を調査するため、警察官に呼気検査の権限を付与しています。

    その上で、同法第118条の2において、呼気検査の拒否や妨害をした者は3月以上の懲役または50万円以下の罰金に処されると規定されているのです。

    これは呼気検査拒否罪と呼ばれるもので、検査の必要性があるかどうかの判断は警察官に委ねられます。つまり、「自分は酒気帯び運転なんて行っていないので、呼気検査を拒否します」と主張したとしても、通用しないということです。無理に検査を拒否しようとすれば、公務執行妨害罪に問われる可能性もあります。

  2. (2)呼気検査の拒否で逮捕された場合

    呼気検査の拒否というケースでは、基本的にその場での現行犯逮捕となるでしょう。その後、そのまま警察へと連行されます。

    令状が発行されると、医者によって血液を採取され、血中アルコール濃度検査が行われることになります。血液検査は身体に直接的な作用を及ぼすことになるため、専用の令状が必要となるでしょう。検査の結果、血中アルコール濃度が血液1ミリリットル中に0.3mg以上との結果が出れば、飲酒運転と判断されます。

    したがって、呼気検査を拒否しても警察に連行され医者に採血されます。そして検査結果によっては、飲酒運転としての処罰が呼気検査拒否罪に上乗せされることになるということです。

  3. (3)逮捕されたら弁護士に相談を

    もちろん、呼気検査の時点で素直に協力することが賢明です。しかし、万が一断ってしまい、逮捕されることになったときは、地方紙に掲載されてしまう可能性もあるでしょう。また、逮捕後のあなた自身の対応によっては身柄の拘束が長引くこともあります。

    早期釈放を目指すためにも、なるべく早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

3、まとめ

飲酒運転による数々の事故を受けて、罰則は次第に重くなってきています。車中で仮眠をとって帰るという状況であっても、アルコールが残っているケースが少なくありません。酒を飲む機会があるときは、最初からタクシーや代行を頼んでおくことや、公共交通機関を使用することを強くおすすめします。

また、検査拒否することは避けるべきです。急いでいたり警察の態度が気に食わなかったりといった理由のときはもちろん、検査に引っ掛かるかもしれないというおそれがある場合であっても、素直に受けましょう。拒否をしたとしても、飲酒運転の罪に呼気検査を拒否した罪が加わるだけで、あなた自身に一切のメリットはありません。拒否の際、激しく抵抗した、暴言を吐いた、物にあたったときなどは、公務執行妨害罪に問われてしまう可能性もあるでしょう。

逮捕されてしまった場合は、初動が大事です。すみやかに弁護士に依頼し、反省の意を示すことで、早めに身柄拘束からの解放を目指しましょう。

飲酒運転や呼気検査の拒否で逮捕の不安を感じておられるなら、まずはベリーベスト法律事務所 新潟オフィスで相談してください。適切な対応をアドバイスするとともに、早期釈放を目指して迅速に弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています