微罪処分とは何か? 処分の影響や微罪処分とするために家族ができること
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平成30年版警視庁犯罪白書によると、平成29年における新潟県の刑法犯検挙人員は3667人となっています。中でも特に多いのは窃盗犯の1993人ですが、窃盗と聞くと置き引きや万引きなど、「犯罪の中でも軽い方では?」と感じる方が少なからずいるのではないでしょうか。
実際に罪を犯して逮捕されたとしても、「微罪処分」として警察だけで処理が終わることがあります。それでも、そもそも微罪処分とはどのようなものなのか、詳しくわからない方も多いのではないでしょうか。そこで本コラムでは、微罪処分の概要を説明するとともに、処分が与える影響やご家族の対処法についても解説します。
1、微罪処分とは
「微罪処分」とは、検察へ送致せず、警官による厳重注意や書類の手続きのみで事件の対応を完了させることを指します。罪を犯して警察へ連行されたものの厳重注意で済み、自宅へ帰されるようなケースが該当します。
一般的に、罪を犯して逮捕されれば、警察署で取り調べを受けたあと検察庁へ送られます。これを「送致」と呼びますが、微罪処分となったときは、送致は行われません。検察へ事件を送る前の段階で、警察官の裁量によって例外的に行える措置こそが微罪処分なのです。
では、なぜ、もしくはどのようなとき「微罪処分」となるのかについて解説します。
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(1)処分の存在理由
すべての事件は大小の区別なく罰せられるべきだと思うかもしれません。しかし、検察官や裁判所が処理できる件数や時間が限られていますし、本人が深く反省し、賠償も行い、被害者が許しているケースなどにおいては処罰を受ける理由が薄くなります。また、収容施設の問題もあるでしょう。
さらには、「軽微なものまで送致すると逮捕された者の精神的負担が大きくなることを配慮している」という考え方もあります。たとえば、友人同士がケンカして双方が逮捕されたとしましょう。逮捕後、互いにケガもなく、許しあっているケースであっても、ケンカをしたことは事実だからとすべて身柄の拘束を行い、収容し、厳しい処罰を下すことは非現実的です。そこで、警察によって「次から気をつけてください」と注意を受けて釈放できる、「微罪処分」が可能となっているのです。 -
(2)法的根拠
微罪処分は心情的なものや状況的な理由だけでなされる措置ではありません。もちろん、法的根拠があります。
まず、国家公安委員会により定められた警察の規則「犯罪捜査規範第198条」には、「捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続きをとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。」と定められています。これが微罪処分の根拠です。
ただし、刑事訴訟法第246条においては、警察官が事件の捜査をした際には検察官へ送致する旨が示されています。そこで、犯罪捜査規範第199条には微罪処分をしたことを検察へ報告することや、200条には、微罪処分が決定して送致しない場合の手続きの方法が明示されているのです。
これらの法文から、微罪処分を行うかどうかの判断は警察官が行うことがわかります。ただし、警察から検察に送られたあとについては、検察官が「起訴して処罰を科すかどうか」を決定することになります。
2、微罪処分となる事件とは?
どのような事件が微罪処分となるのか、基準や該当する罪名はあるのかについて解説します。
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(1)処分の基準
基準は管轄地域内の検事正が定めているため、地域によって若干の違いがあります。一般に公開されているわけでもありません。ただし、前例などから次のような要素が影響しているとみられています。
- 被害の状況……金額はおおむね2万円以下、ケガはおおむね全治1週間以内が目安と考えられています。
- 被害回復の有無、程度……弁済が済んでいるか、被害者の精神的苦痛が緩和されたのかといった点です。
- 処罰感情……被害者が処罰を望んでいるときは、微罪処分になりづらいでしょう。
- 素行不良ではない……警察の世話になることが多かった場合や、いつも刃物を持ち歩いていたような場合、前科や前歴があるケースはもともと素行不良だったといえます。
- 偶発的犯行か……動機からして再犯のおそれがないということです。たとえばそそのかされて、脅されるなどをしてやむをえずなどのケースです。
- 身元引受人がいる……親や勤務先の社長などの身元引受人がおり、身柄釈放後にしっかりと監督してくれるかどうかは非常に重要な要素です。
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(2)該当しやすい罪名
上記のとおり処分決定にはさまざまな要素が考慮されるため、罪名によって一律に判断することはできません。それでも、微罪処分になるだろう状況であったとしても「自分は微罪処分になるから大丈夫」などと考えてしまうことは早計です。
微罪処分になりやすい犯罪として、一例を挙げるとすれば、万引きなどの窃盗罪、少額の横領罪、暴行罪などです。酔った勢いでのケガをしない程度のケンカをしてしまったケースなどが典型例だと考えられます。
ただし、悪質性や被害の度合いが低いと感じられる事件であっても、被害者の処罰感情が強ければ、微罪処分となることは難しくなります。たとえば万引きですが、昨今は営業被害が大きいことから厳しく処罰を望む店舗が多くあるのです。
3、微罪処分となったあとはどうなる?
微罪処分のあと、身柄はどうなるのか、前科はつくのかといった点を確認しましょう。
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(1)処分後の影響
結果として微罪処分になるようなものであれば身柄を拘束される可能性は低く、社会生活への影響が少ないと考えられます。会社や学校へもすぐに行くことができますし、しばらく身柄を拘束されることで周囲の人から怪しまれることもないでしょう。
警察官から犯した罪の重大性を指摘されるとともに、被害者への弁済や謝罪を尽くすようにさとされるはずです。 -
(2)前科前歴や今後の捜査について
微罪処分となった場合、裁判により有罪判決が下ったわけではないため、「前科」はつきません。ただし、「前歴」が残ります。
「前科」とは起訴され有罪になったこと、「前歴」は逮捕され捜査対象になったことを示すものです。前科者などのレッテルを貼られなくて済むわけですが、警察や検察の記録には残ることになります。
ただし、過去に前科や前歴があると、原則として微罪処分が認められません。次に事件を起こすと厳しい結果になり得ることも知っておきましょう。
警察での取り調べを受けたあと、身柄を解放したまま捜査される「在宅事件扱い」と、「微罪処分」の違いも気になる方がいるでしょう。「在宅事件扱い」の場合、呼び出しを受けて引き続き取り調べされることになります。在宅事件の場合は、取り調べの結果によっては起訴され、有罪になる可能性もあるのです。したがって、「微罪処分」と「在宅事件扱い」は根本的に異なるものと考えてください。
4、微罪処分となるために家族ができること
最後に、微罪処分となるために家族は何ができるのかを紹介します。
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(1)罪を認めて反省させる
微罪処分となっても罪を犯したことに変わりはありません。次は悪さをしないと思われるから、今回に限り送検しないという例外的な措置がとられるわけです。そのため、罪を認めて反省していることが大切になります。
ただし、逮捕段階でご家族が本人に会うことはできません。弁護士を通じて反省するように伝えてもらいます。弁護士には、ご家族が身元引受人となり、今後はしっかり監督していく用意があることも伝えておくとよいでしょう。 -
(2)被害者と示談する
微罪処分とするには被害者の処罰感情も大きな要素となります。被害者がいる事件であれば、示談が重要な鍵を握るといっても過言ではないでしょう。謝罪を尽くし、示談金を支払うことで許してもらう必要があります。
しかし、逮捕された本人はもとより、そのご家族が示談を申し込んでも拒否されるおそれがあります。場合によっては法外な示談金を請求されてしまうケースも考えられます。そのような事態を避けるためにも、示談交渉は弁護士へ依頼することが大切です。
5、まとめ
今回は、微罪処分の基準や影響を中心に解説しました。微罪処分はさまざまな点が考慮されて処分が決まります。前述のとおり、いくら軽微な犯罪でも必ずしも得られる処分ではありません。しかし、前科がつかず身柄も早期に釈放されますので、逮捕後にまずは目指すべきは微罪処分であるといえるでしょう。
本人の反省や示談が重要になりますので、ご家族は速やかに弁護士へ相談し、本人へのアドバイスや示談交渉を進めてもらいましょう。もし、身元引受人がいない場合は弁護士がなることも可能です。ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士も、過剰に重い罪を科されることがないよう、力を尽くします。まずはご相談ください。
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