資源ゴミの持ち去り行為で逮捕!? 対処法について新潟の弁護士が解説

2020年02月26日
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資源ゴミの持ち去り行為で逮捕!? 対処法について新潟の弁護士が解説

近年資源ゴミの持ち去り問題に対して、多くの自治体が対策をとり始めていることはご存じでしょうか。新潟市においても、条例でゴミ集積所に出されたゴミや資源物を持ち去る行為を禁止しています。
禁止命令に従わなければ警察署に告発され、逮捕される能性があります。「どうせ捨てた物だから持ち去っても問題ないだろう」などと軽い気持ちで行ったとしても、人生に重大な影響を及ぼしてしまうことも考えられます。

本コラムでは、資源ゴミの持ち去り行為をしてしまった場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、ゴミの持ち去りは罪になる?

各家庭などから出されるゴミの中でも資源物である「資源ゴミ」の持ち去りは、条例違反として厳しく規制する自治体も少なくありません。

  1. (1)ゴミの持ち去り問題の背景

    現在は、家庭などから出るゴミは資源ゴミも含めて行政回収されることがほとんどですが、以前は古紙などの資源ゴミの回収は、民間の事業者が回収する方法が主となっていました。

    しかし資源ゴミの一部で価値が下がり、むしろお金を支払わないと引き取ってもらえない状況が発生したのです。そのため、民間の事業者はビジネスとして回収を行うことが難しくなり、資源となるはずのものがゴミとして大量に排出されるようになりました。
    このような状況を受けて、行政が資源回収に乗り出すことになり現在に至っています。

    ところが、近年古紙などの資源価格が上昇して再び資源物が価値のある物となったために、集積所から大量に資源ゴミを持ち去ってその利益を得ようとする業者などが横行するようになりました。

    このようなゴミの持ち去り問題は、地域の治安の悪化やゴミの収集を担う自治体の信頼低下、経済的損失につながるといった指摘がなされています。

  2. (2)ゴミの持ち去りは罪になる?

    ゴミの持ち去りは、「ゴミステーションにあるゴミは誰の物か」という点の解釈で、犯罪が成立するかどうかは分かれます。

    簡単にいえば「廃棄物だから誰の物でもない」と考えれば犯罪は成立しませんが、「ゴミを出した人または回収する自治体の物である」と考えれば犯罪は成立します。
    この点の解釈に曖昧な部分があるため、特に資源ゴミに対しては「ゴミの所有権は自治体に帰属する」旨を条例で定めている自治体もあります。
    また所有権を自治体に帰属させることはなくても、集積所からゴミを勝手に持ち去った場合の罰則を定めている自治体もあります。

    結論としては、具体的に適用される条例はお住まいの地域によって異なりますが「ゴミの持ち去りは罪になる」可能性があるといえるでしょう。
    続いて、新潟市のゴミの持ち去りに関する条例をみていきます。

2、新潟市の資源ゴミの持ち去りへの対応は?

新潟市では、「新潟市廃棄物の減量及び適正処理に関する条例」の中でゴミの持ち去りについての規定を設けています。

  1. (1)条例による規制内容

    新潟市の条例では、市が認めた業者や個人以外がゴミ集積所に出されたゴミや資源物を持ち去る行為を禁止しています。
    持ち去りの行為者に対しては禁止命令を出し、命令に従わずに引き続き持ち去りを続けた場合には、20万円以下の罰金を科すことが明記されています。
    具体的な対応としては、まず持ち去り行為の通報などを受けた市が、行為の現場を確認して口頭や文書で行為者に注意・警告を行います。注意・警告に従わない場合には禁止命令書を交付し、命令書に従わない場合には所轄の警察署に告発するものとされています。

  2. (2)告発事例

    新潟市は、平成27年7月6日に新潟市中央区の無職の男性を告発し、男性は送致されています。25件の持ち去り行為が発覚しており、警告書や禁止命令書を二度交付しているにもかかわらず、男性が依然として2キロ超の空き缶入りビニール袋の持ち去り行為をしたとされています。

    再三再四の行政指導や警察との連携を図った取り締まりにも対応しなかったため、市が告発に踏み切ったと考えられる事例です。
    しかし条例で規定されているのですから、このような極端な事案に限らずゴミの持ち去りによって告発・逮捕される可能性があるこということを理解しておく必要はあるでしょう。

3、逮捕後の流れとは

告発され逮捕されると、一般的には次のような流れで手続きが進みます。

  1. (1)警察による取り調べ

    逮捕された場合には、被疑者として身柄を拘束され警察による取り調べを受けることになります。警察は逮捕時から48時間以内に、被疑者と事件を検察官に送致するかどうかを判断します。

    なお、告発状を受理した事件については、警察は速やかに書類と証拠物を検察官に送致します。

    ただし、犯罪が極めて軽微であり送致する必要がないと判断された場合は、事件を送致せず警察で事件が終了するケースもあります(微罪処分)。

  2. (2)検察官による取り調べ・勾留

    送致されると、検察官による取り調べが行われます。
    検察官は送致後24時間以内に、勾留を裁判官に請求するかどうかを判断します。
    勾留が認められた場合には、原則として10日以内の身体拘束が続くことになります。なお、延長請求がなされると、さらに10日間、つまり最大で20日間にわたって身体拘束が続く可能性があります。

  3. (3)検察官による起訴・不起訴の判断

    検察官は、最終的には起訴するか不起訴にするかを決定します。
    起訴された場合には刑事裁判が開かれ、裁判官が言い渡す判決によって「有罪か無罪か」や「刑罰の内容」などが決まることになります。
    罰金刑の場合には、公判は開かれず書面審理によって略式命令を言い渡すことも少なくありません(略式手続き)。

    一方、不起訴と判断された場合には釈放されます。

4、逮捕されたら前科がついてしまう?

ゴミの持ち去り行為で逮捕された場合には、前科がついてしまうのかが気になるところでしょう。
前科は刑事罪を犯した経歴で、起訴された場合につきます。
そのため、たとえばゴミの持ち去り行為で逮捕されたとしても「不起訴」を獲得すれば前科はつきません。また、前述した「微罪処分」の場合も前科はつきません。ただし、逮捕され捜査対象になったという記録が警察や検察に残る「前歴」がつきます。

一方、起訴された場合には、たとえ略式手続きになったとしても前科がつきます。
前科がついてしまえば人生に大きな影響を与えかねないので、可能な限り起訴されないように早期の段階で弁護士へ相談し対処することが大切です。

5、ゴミの持ち去りは条例違反だけでない?

ゴミの持ち去りは条例違反だけでなく、次のような罪にも該当する可能性があります。

  1. (1)窃盗罪

    窃盗罪は、他人の財物を摂取した場合に成立する犯罪です。
    窃盗罪の刑罰は、10年以下の懲役または50年以下の罰金です。

  2. (2)業務妨害罪

    業務妨害罪は、虚偽の風説を流布しまたは偽計を用いて人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した場合に成立する犯罪です。
    自治体は市民が排出した指定排出物を適正に収集運搬する責務があるため、持ち去り行為によって妨害すれば、業務妨害罪に該当する可能性があると考えられます。
    業務妨害罪の刑罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

  3. (3)軽犯罪法違反

    「関係者以外立ち入り禁止」の看板のあるマンションのゴミステーションに入り、ゴミを持ち去った場合には軽犯罪法違反に問われる可能性があります(軽犯罪法第1条第1項32号)。入ることを禁じた場所に正当な理由がなく入った者は、拘留または科料に処されます。

6、まとめ

本コラムでは、ゴミを持ち去った場合に問われる可能性がある刑罰と逮捕された場合の流れについて解説しました。
新潟市においても条例で持ち去り行為を禁止しており、対策に乗り出しています。持ち去り行為をしてしまい逮捕される可能性がある場合には、早期に弁護士に相談して対策をとることが非常に重要になります。
ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでは、刑事事件にも迅速に対応して最善の解決になるように尽力します。
ひとりで悩むことなく、まずはご相談ください。

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