再逮捕とは? 再逮捕が行われるケースと再逮捕の流れについて解説
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平成30年に発生した新潟女児殺害事件について、同年5月に死体遺棄・死体損壊の容疑で逮捕された男が、翌月6月に殺人の容疑で再逮捕されたという報道がありました。衝撃的な事件で、連日多く報道されたため、耳にした方も多いでしょう。
この報道で気になるのは、再逮捕という言葉ではないでしょうか。
すでに逮捕されて警察署などで取り調べを受けているはずの容疑者が、釈放されたわけではないのに、再び逮捕されるというのはどういうものなのか、と疑問が生じます。
本コラムでは再逮捕とはどういうものか、家族が再逮捕された場合、残された家族ができることは何か、を中心に弁護士が解説します。
1、再逮捕とは?
再逮捕とは、逮捕された者が、逮捕されている犯罪とは別の犯罪事実で再度逮捕されること、という意味で一般的には理解されていると思います。
しかし、刑法学上などにおける再逮捕の定義は、逮捕されている犯罪事実において、再度逮捕することを指しています。
刑事訴訟法では「一罪一逮捕一勾留の原則」という決まりが定められています。
「一罪一逮捕一勾留の原則」とは、同じ罪については、一回の逮捕と一回の勾留しか認めないという原則をいいます。これは、逮捕や勾留が身柄拘束という、人権をおびやかす行為につながっているため規定されているのです。
具体的には、逮捕されてから48時間以内に検察官へ送致し、それから24時間以内に勾留請求をするか判断、勾留は最大20日までという身柄拘束の決まりがあります。何回でも逮捕・勾留ができてしまうと、被疑者の身体的な拘束は長期間に及んでしまいます。それでは、人権は保安の名の下に侵害されてしまうことになるのです。
こうしたことから、ひとつの犯罪については、通常1回しか逮捕や勾留が認められません。つまり、再逮捕は認められていないと解釈できます。
しかし、前述したように報道などで使用されている「再逮捕」という意味においては、逮捕された被疑者について取り調べや捜索活動などをしていたら、新たな犯罪が発覚し、それについて逮捕をすることと解されています。
本コラムでは、一般的に使われている「再逮捕」について解説していきます。
2、どのような場合に再逮捕されるのか?
再逮捕される場合は、基本的に重大事件や余罪がみつかった場合、複数の事件に関係しているケースです。
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(1)重大事件の場合
前述した新潟の事件のように世間の関心事が高い重大事件の場合、まずは立証できる罪で逮捕し、その後捜査を続けて再逮捕する、という手法がとられることがあります。
たとえば、殺人の容疑を立証するのは現時点では難しいものの、死体遺棄容疑は立証できるといった場合、死体遺棄容疑で逮捕し、その後殺人の容疑で再逮捕します。
なぜ、このような流れになるかというと、逮捕状の発付を裁判所に請求する際は、罪を犯したと疑うに足りる理由が必要となります。つまり、この理由が明確でなければ逮捕状が発布されないので、逮捕することもできないのです。
ほぼ犯人であることは間違いない状況だとしても、逮捕ができるまでの証拠がそろっていないという場合、そのまま放置したことで逃亡される可能性もあります。そういったリスクを避けるため、まず逮捕状の発付が間違いない容疑において逮捕し、その後も捜査を続け、証拠がそろった状況において最終的な容疑で逮捕します。
また、関係者が複数いるような事件の場合にも、同様の手法がとられることがあります。 -
(2)余罪がみつかった場合や事件数が多い場合
詐欺事件や盗難事件など、犯行の数が多すぎて十分な証拠を見つけることができなかった場合、再逮捕して取り調べなどを延長するケースがあります。また、逮捕された容疑で複数の事件を起こしているといった余罪が判明した場合にも、再逮捕が行われます。
たとえば、詐欺事件は加害者、被害者ともに関係者が複数にわたるケースも少なくありません。証拠集めや、被害状況を調べるのに膨大な時間を要する場合、逮捕から勾留までに許されている23日間の身柄拘束期間では捜査が終わらないというケースもあるのです。
こういった場合、まずはひとつめの容疑での勾留期間が満了する直前に別の容疑で逮捕状を発付し、再逮捕がなされることになります。
3、再逮捕に関わる手続きの流れ
再逮捕される場合、どのような手続きになるのでしょうか。通常の逮捕と異なる点があるのでしょうか。
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(1)再逮捕後の流れ
再逮捕後になされる手続きは、通常の逮捕と変わりはありません。
通常の逮捕の流れとしては、逮捕されてから48時間以内に検察官へ送致するかを判断され、検察官へ送致されると24時間以内に勾留請求するかどうかが判断されます。勾留が決定すると引き続き10日間にわたって身柄を拘束されます。延長請求が認められた場合は、さらに10日間期間が延長されるので、最大20日間にわたって身柄が拘束される可能性があります。
この間に、逮捕容疑に関して起訴するかどうか検察官が判断し、起訴された場合は、刑事裁判を受けることになります。 -
(2)再逮捕によって勾留期間は延長される?
余罪で再逮捕される場合、先に逮捕されている犯罪事実とあわせて捜査が進められることも少なくないので、勾留期間が延びないこともあるでしょう。
他方、逮捕の中心となっている犯罪に関して、複数の罪状が絡むケースで再逮捕された場合は、勾留期間が終了する間際に再逮捕を行い、勾留期間が延長されることもあります。
また、勾留期間が終了したあと、すぐに再逮捕されるケースもあります。
私物が返却され留置場から一歩でたところで再び逮捕されるので、精神的な負担はとても大きいでしょう。このケースは、黙秘を続けていたものの捜査機関が証拠を握っていた場合などに、捜査手法のひとつとして使われることがあります。 -
(3)起訴後の手続き
本来逮捕されていた犯罪事実とともに、再逮捕の犯罪事実においても起訴される、いわゆる「追起訴」の状況になると、複数の起訴がなされたことになります。これらの裁判については、「弁論の併合」といって、別々に行われるのではなく、同じ裁判所で同じ裁判官が審理することとなります。
審理においては、それぞれ個別になされるのが通常ですが、判決はひとつになります。なお、この場合は併合罪で処理されるため、刑罰の上限が重くなります。懲役刑や禁錮に処される場合は、罪が重いほうの刑期を1.5倍した長さになります(刑法第45条、第47条)。
4、再逮捕は何回でも可能なのか?
複数の犯罪に手を染めてしまえば、犯罪の数だけ逮捕される可能性はあり、逮捕の回数に制限はありません。
しかし、逮捕をし、取り調べをしたり捜査を行ったりするには、人員が必要です。そのため、主となる犯罪に関して起訴し、その他は余罪として扱い量刑で考慮するのが一般的です。
5、再逮捕を回避するために家族ができることは?
再逮捕を回避するために家族ができることは、弁護士に相談することです。最初に逮捕された時点で弁護士に依頼している場合は、再逮捕の回避にむけてサポートを受けることができます。もし、弁護士を選任していない状況であれば、早急に依頼することが得策といえます。
弁護士は捜査機関へ働きかけを行い、早期の釈放や再逮捕の回避、不起訴獲得のために弁護活動を行います。その他、被害者がいる場合は示談交渉を進めます。示談が成立すれば、起訴や再逮捕の回避できる可能性が高まるためです。
逮捕や勾留は身体拘束を伴うため、社会的な不利益を被ることは避けられないでしょう。逮捕された初期段階での弁護活動が、その後の流れを左右するといっても過言ではありません。家族が逮捕されてしまった場合は、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。
6、まとめ
再逮捕されるケースや、再逮捕の流れについて解説しました。再逮捕されてしまうと、身体拘束の期間が長期にわたる場合もあり得ます。また、起訴された場合は、複数の罪について刑事裁判にかけられるため、量刑が重くなる可能性も高まるでしょう。
ご家族が逮捕された上に、再逮捕されてしまった場合は、早急に弁護士へ相談して対策を講じることをおすすめします。
家族が逮捕されてしまった、再逮捕されそうでどうしたらいいのかわからないと不安を抱えている方は、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスまでご相談ください。刑事事件の経験豊富な弁護士が迅速に対応し、早期解決にむけて力を尽くします。
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