窃盗罪の初犯でも実刑になる? 不起訴を勝ち取る方法を解説

2024年09月25日
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窃盗罪の初犯でも実刑になる? 不起訴を勝ち取る方法を解説

令和5年3月、新潟県内にある複数の店舗に侵入し、現金などを盗んだ容疑で男性が逮捕され、執行猶予付きの判決が言い渡されました。

バイト先のお店のレジからお金を取ってしまった場合など、他人やお店のものを盗むと「窃盗罪」が成立してします。窃盗罪で初犯のケースでも前科がついてしまうのか、また、実刑になってしまう可能性があるのでしょうか? 家族が窃盗を行った場合は心配になってしまうでしょう。

今回は、初犯の窃盗罪のケースで実刑になる可能性を含めた量刑の問題や、逮捕後の手続きの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。


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1、初犯でも実刑となる可能性

窃盗罪で初犯の場合でも、実刑になる可能性はあります。

まず、「実刑」とは、懲役刑や禁錮刑を言い渡されて、執行猶予がつかず、刑務所に行かなければならない場合のことです。現実に刑を受けなければならないので「実刑」といいます。

窃盗罪の初犯の場合、多くのケースで罰金刑となり、懲役刑が選択されても執行猶予がつく可能性が高いです。
しかし、以下のような場合には、初犯でも実刑になる可能性があります。

・被害額が大きい場合
まず、被害額が大きい窃盗被害事件の場合には、初犯でも実刑になりやすいです
たとえば、3000万円分の財物を盗み、被害弁償も一切できていない、などという場合には、たとえ窃盗が初犯とはいえ、実刑になるリスクが非常に高いと言えます。

・犯行に業務性や反復継続性がある場合
次に、窃盗の犯行に業務性や反復継続性がある場合、初犯でも実刑判決を受けやすいです
たとえば、仲間と一緒に何度も窃盗行為を繰り返している場合などには、初犯であっても執行猶予はつきにくいでしょう。
特に、被害者に対する被害弁償ができていないと、初犯でも実刑になるリスクが高まります。

2、窃盗罪とは?

万引き、お店のレジからの現金持ち帰り、空き巣行為やスリ行為などをすると「窃盗罪」が成立する可能性が高いです。
そもそも「窃盗罪」とはどのような犯罪なのか、理解しておきましょう。

  1. (1)窃盗罪が成立する要件

    窃盗罪は、「他人の財物を窃取」したときに成立する犯罪です。

    「窃取」とは、「盗み取る」ということです。
    窃盗罪が成立するには「他人のもの」を窃取することが必要です。
    はじめから自分が占有しているものを自分のものにしてしまった場合には窃盗罪にはならず、横領罪が成立します。

    ただし、自分が所有権を有するものであっても、他人に貸しているときに勝手に取り返すと、窃盗罪が成立する可能性はあります。

    また、窃盗罪には故意と不法領得の意思が必要です
    故意とは、相手からものを盗むという認識だけではなく、それを「自分のものにしてやろう」という領得の意思まで必要となるのです。
    不法領得の意思がなく、嫌がらせ目的で相手のものを盗み,壊した場合などには、窃盗罪ではなく器物損壊罪の問題となります。

    窃盗罪には未遂罪もあるため、他人のものを盗もうとして失敗したとしても、窃盗未遂罪として処罰されることになります

  2. (2)窃盗罪の刑罰

    初犯の場合、窃盗罪の刑罰はどのくらいになるのでしょうか?
    刑法では、窃盗罪の刑罰について、以下のように定められています。

    10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑(刑法235条)


    窃盗罪の「初犯」というのは、「窃盗罪で立件されたのが初めて」という場合ですが、初犯でも2度目以降の窃盗犯の場合でも、適用される法律自体は同じであるため、上記の範囲内で、刑罰が決定されます。

    ただし、どのような犯罪にもいえることですが、初犯の場合、刑罰は軽くなることが普通です。
    窃盗罪の場合にも、初犯であれば上記の法定刑のなかでも、軽い罪が選択される可能性が高くなります。

    刑罰には、重い方から死刑、懲役刑、禁錮刑、罰金刑、拘留、科料がありますが、窃盗罪には懲役刑と罰金刑があります。この2つを比べると、罰金刑の方が軽い罪だと考えられているため、初犯の場合は罰金刑が適用される可能性が高くなります。

    たとえば、冒頭の例のように、「勤務先のお店のレジから現金を盗んだ」という程度であれば、多くのケースで罰金刑になるでしょう。罰金刑が適用される場合には、「略式起訴」が選択されて、裁判所には出頭しなくてよいケースも多いです

    ただし、窃盗罪の初犯であっても、悪質なケースや被害額が多額に上るケースなどでは、懲役刑が選択される可能性が出てきます。そうなると、今度は執行猶予付き判決になるのか実刑判決になるのかという問題になります。

    執行猶予判決とは、たとえ懲役刑や禁錮刑が選択されてもその刑の執行を猶予してもらえて、執行猶予期間中に新たに罪を犯さなければ、実際には刑務所に行かなくてもよい、というものです。

    窃盗罪の初犯の場合であれば、たとえ懲役刑が選択されるとしても、よほどのことがない限り執行猶予がつくでしょう。
    たとえば、何度もレジからお金を取り続けて、被害金額が多額になってしまった場合などには、懲役刑が選択される可能性も出てきます。

  3. (3)窃盗罪の時効

    次に、窃盗罪の「時効」について、見ておきましょう。

    罪を犯したときには「公訴時効」が問題となります。公訴時効とは、犯罪が起きてから一定期間が経過すると、起訴できなくなるという制度です。
    これは、民間人が自分の権利を行使できなくなる「民事的な時効」とは異なります。

    公訴時効は犯罪の種類によって期間が異なり、窃盗罪の公訴時効の期間は7年間です。初犯でも再犯でも、公訴時効の期間は同じです。
    初犯の窃盗行為から7年間起訴されなければ、その窃盗行為で裁判になったり刑罰を科されたりするおそれはなくなります。

    なお、公訴時効は「起訴されるまで」の期間を言います。そのため、公訴時効の完成直前に逮捕されたとしても、起訴に間に合わなければ釈放されます。
    刑事ドラマなどで、公訴時効ぎりぎりで犯人を逮捕して終わるパターンがありますが、その場合は実際には起訴できないため、犯人を釈放せざるを得なくなってしまいます。

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3、初犯の窃盗罪で逮捕されるパターンは?

窃盗罪が初犯の場合、どのようなケースで実際に逮捕される可能性があるのでしょうか? 逮捕されるパターンには「現行犯逮捕」と「通常逮捕」のケースがあります。

  1. (1)現行犯逮捕

    現行犯逮捕とは、罪を犯したときに、その場で逮捕されることです
    たとえば以下のようにケースがあります。

    • レジからお金を盗んでいるところを店主や他の従業員に見つかって取り押さえられて、警察を呼ばれた
    • 空き巣に入って居住者に見つかり、警察を呼ばれた
    • 下着泥棒が見つかってその場で取り押さえられて現行犯逮捕された


    現行犯逮捕は警察官でなくてもできるため、店主や目撃者によって取り押さえられるとそれが逮捕となり、「逮捕状」も不要です。

    現行犯逮捕されたら警察署に連れて行かれて、そのまま警察の留置場で身柄拘束されてしまうことが一般的です。

  2. (2)通常逮捕

    通常逮捕とは、その場では逮捕されず、後日に犯罪が発覚して逮捕されることです

    たとえば、レジからお金を盗んだ場合、そのときには見つからなかったものの、後に店主が気づいて警察に被害届を提出し、捜査が進んで逮捕される場合などです。
    最近では、監視カメラの映像がもとで犯行が発覚し、通常逮捕につながるケースも多いです。

    通常逮捕が行われるときには、警察は裁判所に逮捕状を請求し、交付を受けなければなりません。窃盗行為を起こしてからしばらくすると、警察が逮捕状を持って自宅などを訪ねてきて逮捕されてしまう、という流れになります。

    ただし、窃盗罪の初犯のケースでは、事件が軽微で犯人による証拠隠滅の可能性が低い場合、警察もあえて逮捕状を請求せず、任意同行を求めることが多いです。

    逮捕状を請求されるのは、被疑者が任意同行を何度も拒絶したり、明らかな被疑事実を不合理に否定していたり、共犯者が多数存在して証拠隠滅のおそれがあったり、何度も窃盗行為を繰り返していたりして悪質な場合などです。
    つまり、証拠隠滅や逃亡のおそれが高いケースでは、初犯であっても通常逮捕される可能性が高くなります。

  3. (3)逮捕後の流れ

    次に、窃盗罪の初犯で逮捕された後の流れを見てみましょう。

    どのような犯罪であっても(初犯でも再犯でも同じです)、逮捕されると、その後48時間以内に検察官に身柄を送られます。
    引き続いて身柄拘束の必要性があれば、その後24時間以内に「勾留決定」されます。
    勾留期間は原則として10日間ですが、10日で捜査が終わらなければ、さらに10日間勾留期間を延長されます。
    勾留期間が満期になれば、検察官が起訴するか不起訴にするかを決定します。

    逮捕後、勾留されずに在宅捜査になっていた場合には、捜査が終わった段階で検察官に呼び出されて取り調べを受け、その結果をもとに、検察官が起訴処分か不起訴処分かを決定します。

    起訴猶予などの判断となって「不起訴処分」となればそのまま釈放されますが、起訴されると刑事裁判となります

    刑事裁判のなかでも「略式起訴」であれば、身柄を解放されて自宅で過ごすことができます。そのうちに自宅宛てに起訴状と罰金の納付書が届くので、罰金を支払ったら刑を終えたことになります。
    略式起訴では、懲役刑になることはありません。初犯の場合、起訴されても略式起訴になる例が多いです。

    これに対し、通常の公判請求の場合には公開法廷での刑事裁判となり、裁判官の面前で裁かれて、判決を言い渡されます。この場合には、初犯でも懲役刑や実刑の可能性も出てきます。

4、窃盗罪で逮捕されても不起訴になるケース

窃盗罪で初犯の場合、逮捕されても「不起訴処分」を目指すとよいでしょう。
不起訴処分とは、起訴されずに窃盗事件を不問にされることです。不起訴になったら刑事裁判は開かれないため、実刑どころか罰金刑にもならず、前科もつきません。

過去にベリーベスト法律事務所に依頼された方のなかでも、不起訴処分を勝ち取られた方は多く、一部をご紹介します。

  1. (1)ケース1:国選弁護人からベリーベスト法律事務所の弁護士が私選弁護人となったケース

    この方は、窃盗の初犯で、当初は国選弁護人を選任されていましたが、国選弁護人との折り合いが悪く、効果的な弁護活動ができていませんでした。
    ご家族が心配されて当事務所に相談され、当事務所の弁護士を私選弁護人として選任したことによりご本人も前向きな気持ちになり、被害者との示談も成立させることができて、不起訴処分を勝ち取りました。
    参考:財布を盗んだ容疑で逮捕。国選弁護人から私選弁護人にしたことによって前向きになり、被害者との示談もまとまり、不起訴処分

  2. (2)ケース2:前科があり、初犯ではなかったケース

    この方は、永住権を持った外国人でしたが、自宅近くのスーパーで万引きをしてしまいました。このとき盗んだものは500円とわずかなものでしたが、以前にも万引きで前歴2件、前科1件があり、初犯ではなかったため、前科による影響が心配でしたし、永住権が取り消される危険性もありました。

    当事務所の弁護士が弁護人に就任し、被疑者の方が事件当時薬とお酒の影響で意識が薄れていることを主張し、検察官を説得することにより、不起訴処分を獲得することができました。
    参考:複数前歴前科ありの窃盗事件について、不起訴処分となりました。

  3. (3)ケース3:余罪があったケース

    この方は、夜間に人のいない建物に侵入して物品を盗み、すでに起訴されていました。
    また、起訴されている事件以外にも別の窃盗余罪がありました。

    当事務所では、まずは余罪の事件については被害者との示談を成立させて、不起訴処分を獲得しました。
    起訴された事件については、再犯防止策を検討して実行し、再犯可能性がないことを強く主張して、執行猶予判決となりました。当事務所における、「依頼者と一緒に検討するスタンス」が被疑者の更生につながり、執行猶予や不起訴処分を獲得できた事例です。
    参考:起訴後に依頼。余罪あるものの追起訴前に示談し不起訴。

    以上のように、窃盗罪で逮捕された場合には、初犯・2回目以降いずれしても、不起訴処分や執行猶予を獲得するための弁護活動が極めて重要となります。効果的に弁護活動を展開して、不利益を最小限に止めるためには、法律の専門家である弁護士の力を借りることをおすすめします。

5、窃盗罪の初犯で、弁護士に依頼して不起訴処分を勝ち取る方法

初犯の窃盗罪の場合、不起訴処分を勝ち取るためにはどのような方法をとればよいのでしょうか? 以下で、具体的な対処方法、弁護活動の内容を紹介します。

  1. (1)窃盗罪の被害者に対する弁償、示談

    まずは、窃盗の被害者との示談交渉を進めて、なるべく全額の被害弁償を行います。

    窃盗被害が発生しても、被害弁償ができていたら被疑者に対する情状がよくなるため、刑事処罰が軽くなり、初犯の場合は特に、起訴猶予などの不起訴処分になる可能性が高くなります。

    被害届を取り下げてもらうことも効果的ですし、被害者から「嘆願書」を書いてもらうことも考えられます。
    被害者と話し合いをしてきちんと示談金を支払い、示談書を作成して嘆願書を書いてもらうことができれば、ほとんどのケースで不起訴処分を獲得できるでしょう。

  2. (2)再犯可能性を否定する

    次に、再犯可能性を否定することも大切です。

    初犯の場合、再犯のケースと違って「次も同じ犯罪を行うかもしれない」とは思われにくいです。
    ただし、その場合であっても、家族による監督が期待できることや、これまで真面目に生きてきたこと、更生に向けたプログラムを組んで実践していること、しっかり反省していることなどが重要なポイントとなります。

    こういったことすべてについて、弁護人を通じて主張・立証できれば、初犯のケースなら多くの場合、不起訴処分となります。

  3. (3)解決に向けて共に全力を尽くす弁護士の存在

    最後に、解決に向けて全力を尽くす弁護士の存在が重要です。

    いかに被疑者本人が反省していても、刑事事件では、弁護人がいないと被疑者ひとりでできることは限られています。本人のために全力を尽くす弁護人がいてこそ不起訴処分を獲得して、不利益な刑事処罰を最小限に止めることができる可能性が高くなります。

    ベリーベスト法律事務所では、窃盗罪を始めとした刑事事件の被疑者・被告人への弁護活動に積極的な取り組みを進めています。
    初犯のケースであれば、多くの場合、不起訴処分や執行猶予を狙えます。ただし、そのためには、早い段階から専門の弁護士に対応を依頼することをおすすめします

6、まとめ

窃盗罪で初犯の場合、多くのケースで罰金刑など比較的軽い処分で終わりますが、被害額が高額な場合には、懲役刑など重い罰が科される可能性があります。

ご自身や身内の方が窃盗罪の初犯や再犯で逮捕されてしまったら、お早めにベリーベスト法律事務所 新潟オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています