児童買春をしてしまったら自首した方がよいといえる理由を弁護士が解説
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平成29年11月、新潟県警は、18歳未満と知りながら、当時12歳の少女に対し金銭を渡す約束のもとみだらな行為をしたとして、強姦および児童買春・児童ポルノ禁止法違反の容疑で会社社長の男性を逮捕したというニュースが流れました。
この事件の少女と容疑者は、会員制交流サイト(SNS)を通して知り合ったといいます。昨今では、近所に住んでいなくてもインターネット上で簡単に男女が知り合うことができるようになり、お互いの素性をよく知らず、相手の正確な年齢を知らぬまま性行為におよび、児童買春になってしまうケースも少なくありません。
相手の年齢が判明し、児童買春をしてしまったことに気がついた場合、果たして自首した方がよいのでしょうか。
本記事では、児童買春と自首のメリットなどについて弁護士が解説します。
1、そもそも自首とはどういうものか?
自首が成立するためには条件を満たさなくてはなりません。ただ「私がやりました」と警察署へ行って告白したとしても自首には該当しないことがあるのです。
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(1)自首が成立するための要件
自首が認められるためには、申告の際に以下の要件を満たす必要があります。
- 罪を犯した者
- 捜査機関に発覚する前
- 自発的に自己の犯罪事実を告白
- 自己の処罰を求める
- 捜査機関に申告する
まず、申告した人が罪を犯した本人である必要があります。他人の犯罪を告白するのは告訴や告発になるので、自首とは異なります。
そして、自分の犯罪が捜査機関に「発覚する前」に自首することが必要です。
発覚する前とは、犯罪事実や犯人が発覚していない状態を指しています。そのため、事件がすでに発覚し、容疑者として追跡され苦しくなって警察署に出頭するといった行為は自首に該当しないのです。
さらに、「自発的に」自分の犯罪事実を告白する必要もあります。
どういうことかといえば、捜査機関に追われている、職務質問中や取り調べ中に観念して罪を認める行為は自首には該当しないということです。
また、この自発的というのは後悔や反省に伴うものでなくても成立します。逃亡するのが苦しいという理由でも自分で犯罪を告白しようと思えば、該当するのです。
そして、自己の処罰を求めるとは、自首した際には、自己の犯罪について罰則や処分を求めていることが条件ということです。当然、他の犯罪を隠すため、罪が軽い犯罪を告白するなどという場合は、自首が成立しません。
捜査機関への申告とは、司法警察員と検察官を指しています。一般的になじみがある交番勤務のいわゆる巡査は司法巡査とされ、捜査機関には該当しないので、厳密にいえば自首する先ではありません。ただし、巡査に自首しても、その上席である司法警察員に伝えられますので、間接的に捜査機関に申告するということにはなります。 -
(2)あとから気がついた場合は自首にならない
児童買春における自首の注意点としては、犯罪行為をしている時点で、相手が18歳未満の児童であるという認識が必要な点があります。
帰宅後に実は相手が18歳未満であったということに気がついた場合が、そもそも児童買春の故意が認められませんので、犯罪が成立しないのです。
このような場合、犯罪に該当していないため自首することはできないのです。
もっとも、相手の児童が18歳未満であることを当時告げていたなどと証言したような場合、逮捕や家宅捜索などが行われるリスクは存在しています。刑事事件となってしまった場合は、証拠とともに、相手が18歳未満であることを知らなかったという証明しなければならなくなります。
2、どうして自首した方がいいのか?
刑事事件のドラマなどを見ていても、頻繁に犯人に対し自首することをすすめる場面が多くあります。これはどうしてなのでしょうか。
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(1)自首した場合のメリット
自首した方がいいという最大の理由は、メリットが大きいことです。
メリットはいくつかありますが、もっとも重要なのは逮捕されにくくなるという点です。刑事事件として処理されるのは同じですが、在宅事件として処理されることになれば、逮捕を回避することができるのです。
さらに、自首をすることは、自分の犯罪を告白し、その処遇などを捜査機関に求める行為ですので、逃亡や証拠隠滅行為をしないものと判断されやすいでしょう。
もし逃亡や証拠隠滅行為を行った場合は、せっかくの自首の成立が否定されてしまうことになりかねません。
こうしたことから、自首をすれば、在宅事件として扱われる可能性が高まるのです。
さらに、自首することは、反省しているという印象を持たれるため、刑事事件に発展しても、量刑が軽減される可能性が高まります。 -
(2)逮捕されることのデメリット
自首をすると逮捕されるリスクが低くなると前述しましたが、一方で、実際逮捕された場合は、どのようなデメリットがあるのでしょう。
逮捕されるということは、身柄を一定期間警察署などに拘束されるということを指します。
つまり、外部との連絡を取ることができなくなるということです。
逮捕されてから48時間以内に検察官へ送検するかどうか決定され、そこから24時間以内に勾留請求するかどうか判断されます。
勾留が認められると延長も含めると最大20日間、身柄を拘束されてしまうのです。
このように最大23日あまりにわたって、社会と断絶することになります。もちろん学校や会社に行くことはできず、会社は欠勤扱いになってしまいます。
さらに、逮捕されてしまうと、特に地方紙では氏名と容疑名が掲載されてしまうおそれがあります。逮捕された事実だけでも会社に知られたくないと思うでしょう。これは、会社の規定で、懲戒の対象にしているところが多いからです。
懲戒処分のもっとも重いものは懲戒解雇処分です。特に犯罪行為については就業規則により、懲戒解雇処分を科している企業も少なくありません。また、逮捕されても会社に知られなければ、解雇されずに済むと考える方もいるかもしれません。
しかし、逮捕されて報道されてしまえばもとより、家族が会社へ欠勤の連絡を取った際に、理由を求められる場合もあります。
こうしたことから、逮捕されることはデメリットがかなり大きいといえることができるのです。
3、児童買春が他の犯罪と異なる点とは
児童買春という行為は、以下の点で他の犯罪と異なります。
- 複数の法律違反になること
- 相手から持ちかけられても自分の犯罪となること
- 示談は児童の親権者としなければならないこと
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(1)複数の犯罪が該当する
児童買春は、児童ポルノ禁止法に違反する児童買春罪に該当します。さらに、強制わいせつ罪が成立することもあります。特に、13歳未満の児童を買春した場合、たとえ児童本人の同意があったとしても、刑法上の強姦(ごうかん)罪に該当し、犯罪が成立することになってしまいます。
児童買春罪は、5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金ですが、強制わいせつ罪の場合は6か月以上10年以下の懲役、強姦(ごうかん)罪は3年以上20年以下の懲役と罰金刑がありません。
そのため、児童ポルノ禁止法に違反するというだけを考えて、罰金刑で済めばいい、と軽く考えていたら、強制わいせつ罪が成立し懲役刑になった、ということもあるのです。 -
(2)相手から持ちかけられても犯罪になる
児童買春は、児童本人から持ちかけられる場合もあります。しかし、それに応じた場合でも児童買春罪が成立してしまうのです。また、もしかしたら18歳未満かもしれないという疑いがあった場合も、故意が認められてしまいます。そのため、知らなかったから大丈夫とはいえないのです。
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(3)児童の親権者と示談成立が必要
児童買春の場合、被害者は児童本人ですが、示談はその親権者である親としなければなりません。大切な子どもを傷つけたとして、示談に応じてもらうのは簡単ではありません。
児童買春は、他の犯罪と異なり、以上のような特殊性があります。
特に示談に関しては、第三者である弁護士などに依頼する方が早期に示談が成立しやすくなる可能性が期待できます。
4、逮捕されたらどうなる?
逮捕された場合の流れは、デメリットの部分でざっと解説していますが、さらに逮捕後の具体的な手続きとしては、以下のようになります。
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(1)逮捕後の手続き
逮捕されてからは警察署などで取り調べを受けることになります。
この取り調べで供述した内容は、のちに裁判などになってから自白の扱いにもなります。
そして、逮捕から48時間以内に検察官に送検するかどうか判断されます。当然、この間は家族と接見することはできず、弁護士だけがそれを許されます。また、家族と会えないだけでなく、連絡を取ることもできません。
検察官に送検が決定した場合、今度は検察官の取り調べを受けます。検察官は、送検から24時間以内に勾留するかどうかを検討します。勾留が妥当だと判断した場合、勾留請求をします。
勾留請求が認められると10日間勾留されることになります。そこでも取り調べなどを受けることになります。さらに10日間の延長も認められると、最大20日間勾留されることになります。勾留の際には、家族との面会も認められます。 -
(2)自首している場合の影響とは?
自首した場合は、逮捕されないケースがあります。もちろん逮捕されることもありますが、勾留が短くなったり、早期に釈放されたりする傾向があります。
自分が犯した犯罪行為について深く反省している場合、自首して処遇を求めることが、実はもっとも自らが被るデメリットを軽減させて、早急社会な社会復帰への第一歩となるのです。
5、弁護士に依頼するメリットとは?
それでは、自首を考えたとき弁護士に依頼するメリットはあるのでしょうか。
まず、ひとりで自首するのが不安だという場合に、弁護士に同行してもらうことができます。そして、どの担当者のところへ行けばよいのか素早く分かり、自首の手続きに手間取っている途中で、犯罪が捜査機関に発覚することなどが防止できます。
さらに、弁護士の同行は、身元を保証しているため逃亡のおそれがないとして、在宅事件で処理してもらう可能性が高まります。
また、被害者側と示談が成立している場合、不起訴になったり、起訴されても量刑が軽くなったりする可能性を高めることもできるといわれています。
児童買春の示談交渉は、本人ではなく第三者の弁護士に依頼する方が、相手方も冷静に対処できるため、示談が成立しやすくなるのです。
そして、仮に逮捕されたとしても、どう取り調べに臨めばいいのかなどのアドバイスを受けることもできます。
こうしたことから、弁護士に依頼するメリットはとても大きいということができます。
6、まとめ
児童買春をしてしまい、逮捕されることに不安を感じている場合は、発覚をおそれているよりは自首してしまうことをおすすめします。
これまで説明したように、自らの行為を大きく反省し自首することは、在宅事件で処理されるなどの他、たくさんのメリットがあるからです。そして、自首については弁護士に相談することもでき、不安であれば同行してもらうなど、必要に応じた依頼が可能です。
児童買春をしてしまい自首したいけれどどのようにすすめればよいのか分からないなどお困りの場合、ベリーベスト新潟オフィスまでお気軽にご相談ください。経験豊富な弁護士が力を尽くします。
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