家族が罪を犯してしまったとき逮捕を回避するためにできることは?
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平成29年7月、新潟地検は、平成28年12月に大規模火災を起こした当時ラーメン店主を業務上失火の罪で在宅起訴したと発表しました。この大規模火災は、計146棟に延焼し焼損させ、総額30億円もの損害が発生したとされています。これほど大きな被害を出していながら、火災を出した人は逮捕されず、書類送検、在宅起訴で処理されており、最終的に執行猶予つきの有罪判決が出されています。
たとえ犯罪行為に該当することをしてしまったとしても、逮捕されない場合があります。
本コラムでは、家族が罪を犯してしまったとき、身柄拘束をともなう逮捕を回避するにはどのような方法があるのか、家族にできることを中心に解説します。
1、逮捕とは?
そもそも逮捕とはどのようなものなのでしょうか。
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(1)逮捕の手続きは3種類ある
逮捕と聞くと、手錠をはめられ、警察署に連れて行かれる、もしくは警察官から取り調べを受けている、といった漠然としたイメージを思い浮かべるかもしれません。
しかし、どれも正しいようで異なっているといえます。逮捕というのは、「捜査のために身柄を拘束されること」を指しているからです。
警察などの捜査機関側としては、真犯人を逮捕し、捜査を行い、有罪のための証拠をきちんと集めたいという目的があるため、被疑者の身柄を拘束し、連日取り調べなどの捜査を行うのです。
他方、そもそも警察官など公的な機関の職員が、一般人を簡単に身柄拘束できてしまうならば、一般人は安心して暮らすことができなくなるという見方もあります。
そこで、逮捕については憲法や刑事訴訟法で定められているのです。
その逮捕の手続きには、現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕の3種類があります。 -
(2)現行犯逮捕
現行犯逮捕は、ひったくり行為など、いままさに犯罪が行われており、すぐに逮捕しないと逃げられてしまうような場合に認められている逮捕です。この逮捕は、警察官などの公権力を持った人だけでなく、一般の人も可能になっており、逮捕状も必要ありません。
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(3)通常逮捕
通常逮捕は、捜査機関が、特定の犯罪行為に対する容疑者を特定し、逮捕状を請求し、その逮捕状を根拠に逮捕することができるものです。犯罪行為の後日に逮捕されることから、後日逮捕とよばれることもあります。
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(4)緊急逮捕
緊急逮捕は、重大な罪を犯した人に対して、緊急的に逮捕が必要な場合に、逮捕することができるというものです。具体的には、指名手配されている人を街中で警察官が発見したような場合に逮捕するものになります。逮捕したあとに逮捕状が請求され、逮捕状の発行により、その逮捕の正当性が裏付けられるという特徴があります。
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(5)逮捕状が発行される要件
そもそも逮捕状は、裁判官が発行します。それは、一般人の身体を拘束するという自由を奪う行為だからです。そのため、逮捕状が発行される要件として、逃亡や証拠を隠滅するおそれがあることが必要となります。
逮捕は一般人が身柄を拘束されることを指します。したがって、「話を聞きたいから来てほしい」と言われ警察署に出向くことや、家に来て事件について聞かれることは逮捕には該当しないのです。
2、逮捕されないまま罪に問われることはある?
他方、罪を犯した場合、必ず逮捕されるのでしょうか。実は逮捕されないまま起訴され、刑事裁判手続きを受けるケースが少なくありません。これは在宅事件と呼ばれるものです。
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(1)在宅事件の流れ
在宅事件と逮捕、拘束された場合の手続きはどのように異なるのでしょうか。
まず大きく異なるところは、身柄を拘束されずに、取調べなどの捜査を受ける在宅事件では、任意で取調べを受ける点になります。
一方、通常の刑事手続きの場合、逮捕されてから72時間以内に勾留請求するかどうか決定され、勾留請求が認められれば最大20日間、逮捕から最大23日間、身柄を拘束されることになってしまいます。
在宅事件として処理されれば、警察署などからの呼び出しに応じて出頭し、取り調べを受けるなどすればよくなります。社会人や学生であれば、その他の日は会社や学校に通うことができます。 -
(2)在宅事件のデメリット
在宅事件は逮捕された場合のような期間が決められていないので、すべての手続きが終了するまでの時間が多くかかる場合がほとんどだといわれています。
このように在宅事件には、処理期間の増加という時間的コストがかかるというデメリットがあります。しかし、それを負って余りある、「社会生活から離れずに刑事手続きを受けられる」という大きなメリットが得られるのです。
3、逮捕された時に受ける可能性がある不利益とは
逮捕され、通常の刑事手続きになった場合、どのような不利益があるのでしょうか。具体的にみていきましょう。
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(1)長期間身柄を拘束されてしまう
起訴された場合は、通常であれば逮捕、拘束され、すぐには自宅に戻ることができません。したがって学生や社会人であれば、通常の刑事手続きに沿って行われた場合、会社や学校に通うことができなくなってしまいます。
長期間拘留された場合には、本人から直接外部へと連絡をとることができません。結果的に家族から休養の旨を伝えてもらうことになり、逮捕やその容疑について、会社や学校に知れ渡る可能性が高まります。 -
(2)解雇や退学処分のおそれがある
会社の内部規定や校則によって異なりますが、罪を犯した場合には、解雇や退学処分になる規定を設けているところもあります。逮捕が会社や学校に知れてしまうと、解雇や退学処分のリスクが高まります。
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(3)逮捕を回避する必要性
前述したように在宅事件の場合は、社会生活をおくりながら刑事事件手続きを受けることになります。たとえ在宅起訴されても、裁判の期日に出頭すればよいということになります。
しかし、有罪判決が下され、なおかつ執行猶予がつかない場合は、決められた期日に刑務所に入所しなければなりません。
こうした場合でも、それまでの期間の身柄拘束がないないため、さまざまな準備などが可能になります。
在宅事件として処理され、有罪判決が出ても執行猶予がつけば、社会生活を営みながら、罪を償うことができます。
4、逮捕回避のためにできることは
それでは、逮捕をできる限り回避するためにはどうしたらよいのでしょうか。
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(1)在宅事件としてもらうこと
前述したとおり、逮捕、拘束を回避するためには書類送検、いわゆる在宅事件として処理されることが必要です。
在宅事件として検察庁に送致される(書類送検)ケースとしては、以下のようなものが挙げられます。- 被疑者が死亡している
- 被疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがないこと
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(2)在宅事件となるためには弁護士に相談を
逮捕などの身柄拘束を免れるためには、被疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがないことが必要です。そのためには、被害者と示談が成立していることも重要な要素といわれています。被害者と示談が成立しているというのは、被害者がその損害について、償ってもらう約束をしたことになるのです。示談が成立していると、たとえ起訴されたとしても、刑が軽くなるともいわれています。
この示談は、弁護士に依頼することが可能です。弁護士が早急に動くことで、起訴までに示談が成立すれば、不起訴処分の可能性が高くなります。
また、弁護士に相談のうえで、自首することにより、書類送検となる可能性もあります。自首は自分の罪を捜査機関に申告し、その処遇を委ねる行為です。このようなケースでは逃亡や罪証隠滅のおそれがないとされるからです。なお、自首の際は弁護士に付き添ってもらうことも可能です。
いざ書類送検になったとしても、必要な取り調べなどについては、警察署などへ出頭する必要があります。会社や学校を極力休まないようにするための日程についても、弁護士に調整を依頼することができます。
弁護士への相談依頼は、本人だけでなく家族も可能です。また、弁護士は守秘義務がありますので、犯罪行為について相談したとしても、警察へ告発されることはありません。むしろ、どのように行動し、手続きを行えばいいのかアドバイスを受けることができます。
このように、自ら犯罪を犯してしまった場合や家族が犯してしまった場合に、身柄を拘束される逮捕を避ける可能性を高めるためには、弁護士への相談をおすすめします。 -
(3)軽微な犯罪
犯した犯罪が軽微なもの、いわゆる「微罪」である場合も、勾留による身柄拘束をされないケースが一般的です。決められた基準のようなものはありませんが、万引きなどの窃盗や無銭飲食などの詐欺や暴行、賭博などで軽微なものであれば、在宅事件として処理されることが多いです。
しかし、軽微な犯罪といえども、繰り返したり悪質であると判断されれば、逮捕、拘留のうえ、検察に送致されます。
5、まとめ
犯罪を犯した際に、警察から逃亡や証拠隠滅のおそれがないなどの判断がされた場合、逮捕されて身柄を拘束されることなく取り調べや操作の手続きを進めることが可能です。
在宅事件として扱われるには、弁護士に相談して示談を成立させたり、逃亡や罪証隠滅のおそれがないことを真摯(しんし)に伝える必要があります。
また、いざ在宅事件とされた場合であっても、最終的に軽い処罰で済むという保証はありません。処罰をできるだけ回避するためにも、早い段階で弁護士へと相談することが解決への第一歩となるでしょう。
家族が罪を犯してしまい、逮捕、身柄の拘束を回避にするためにはどうしたらいいのか悩んでいる場合は、ベリーベスト新潟オフィスにお問い合わせください。経験豊富な弁護士が力を尽くします。
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