弁護士による「接見」とは? 家族の面会との違いやメリットを弁護士が解説

2020年09月23日
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弁護士による「接見」とは? 家族の面会との違いやメリットを弁護士が解説

家族や友人などが事件を起こして逮捕されてしまうと、まずは「面会して無事を確かめたい」と考えるでしょう。
ドラマなどでは薄暗い面会室で透明なガラスごしに逮捕されてしまった家族などと面会するシーンが描かれているので、自由に面会できるイメージがあるのも当然です。
ところが、実際には家族などの面会にはさまざまな制限が設けられており、思いどおりの自由な面会はかなわないでしょう。

新潟県弁護士会は、ホームページで「刑事事件(逮捕されたら)」と題したページを開設し、逮捕直後の面会についてガイドしています。
当番弁護士制度についても紹介しているので、参考になるはずです。

家族など一般の方は、自由な面会ができません。
一方で、弁護士には自由な「接見」が認められています。
弁護士による「接見」とはどういうものなのでしょうか?

本コラムでは「弁護士による接見」について解説しながら、一般の方による面会のルールや注意点などを新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、「接見」とは

「接見」という用語は少し特殊なものです。
特に、家族などが突然逮捕されてしまって動揺している方にとっては、意味がわかりにくく混乱してしまうでしょう。

まずは「接見」の意味や役割について見ていきます。

  1. (1)一般的には「面会」と同じ意味

    「接見」とは、逮捕によって身柄を拘束されている被疑者や起訴されて刑事裁判の被告人となっている人が、外部の人と面会することをいいます。
    刑事手続きについてさまざまな規定を定めている刑事訴訟法という法律で「接見」という用語が使われているため、法律用語として「面会」のことを「接見」と呼んでいると考えればよいでしょう。

    つまり「接見」と「面会」は、呼び方が違うだけで意味は同じです。
    あまり難しく考える必要はないので、ここからの解説も「接見」を「面会」と読み替えればわかりやすく感じるでしょう。

  2. (2)接見の役割

    刑事事件の被疑者として逮捕された人は、検察官に起訴されるまでの最長23日間にわたって自由な行動が制限されます。
    この間は自宅に帰ったり仕事に行ったりすることはもちろん、家族への電話なども許されません。
    不安な状況を解消したいのに、誰にも会いに行けず、連絡も取れないのだから、身柄拘束が長引けば不安はより強くなるでしょう。
    特に、未成年者が逮捕されてしまった少年事件では、強い不安感が未成年者の精神状態を強く圧迫してしまいます。

    接見は、家族などと会って必要なことを伝えるだけでなく、逮捕された被疑者と残された家族や友人などの両方に精神的な安定をもたらします。

    また、接見を通じてさまざまなアドバイスを受けることや差し入れも可能なので、容疑をかけられているとはいえ、できる限り不自由や苦痛の少ない身柄拘束が実現します。

  3. (3)「接見交通権」とは

    接見に関する用語として「接見交通権」という権利があります。
    接見とは面会を指すものですが、さらに「交通」とは「書類や物品の授受」を意味しています。

    刑事訴訟法第39条1項には「被疑者は弁護人と立会人なくして接見し、または書類もしくは物の授受をすることができる」という規定があります。
    弁護人とは、被疑者や被告人からの依頼によって刑事事件の弁護活動をする人のことです。
    つまりは弁護士のことですが、刑事事件においては正しくは「弁護人」と呼びます。

    弁護人には、自由な接見と交通が認められています。
    これを「接見交通権」と呼び、弁護人がもつ独自の権利として保護されているのです。

2、一般の接見におけるルールや制限

逮捕された被疑者の家族や友人・知人といった一般の方でも接見は可能です。
ただし、自由な接見交通権が認められている弁護士とは異なり、一般の方による接見には一定のルールと制限が設けられているので注意が必要でしょう。

  1. (1)逮捕後72時間は接見できない

    犯罪事件の被疑者として逮捕された人は、逮捕された時点から48時間以内に警察による取り調べを受けて検察官に送致されます。
    さらに、送致を受けた検察官は、送致から24時間以内に被疑者を起訴・不起訴にするかどうか、それとも、勾留請求をして捜査を継続するかどうかを判断します。
    この48時間+24時間=72時間の期間は、たとえ家族であっても接見が認められません。
    刑事ドラマやサスペンスなどでは、逮捕された直後の被疑者と面会をするようなシーンが描かれていますが、現実としてはあり得ないものなのです。

  2. (2)接見が禁止されるケースもある

    逮捕後の72時間が過ぎても接見が禁止されることがあります。
    刑事訴訟法第81条は「逃亡または罪障を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合」において接見を禁じることができると定めています。

    次のような事情があれば、接見が禁止されるおそれがあるでしょう。

    • 住居不定や定職についていないなど、逃亡のおそれがある場合
    • 捜査機関がまだ重要な証拠を確保できていない場合
    • 共犯者がいる場合や暴力団関係者などの場合
    • 被害者に対して口封じなどを企てるおそれがある場合


    特に、恐喝罪のように他人を威圧するような罪や、振り込め詐欺のように組織的におこなわれた罪においては、接見が禁止されるおそれがあります。
    ただし、弁護士からの接見禁止の一部解除の申立によって、家族については接見が認められることもあります。

  3. (3)曜日・時間・回数などに制限がある

    一般の方による接見には、曜日・時間・回数などの制限が設けられています。

    まず、接見可能なのは警察署や留置施設の開庁日に限られています。
    つまりカレンダーの「平日のみ」です。
    土曜日・日曜日・祝祭日は接見できません。

    さらに、開庁時間に従って時間も制限されており、おおむね「午前の部」が午前9時ころから午前11時ころまで、「午後の部」が午後1時ころから午後5時ころまでに限られています。
    留置されている被疑者は、朝食や洗顔などの身支度、昼食、夕食や就寝といったタイムテーブルに従って生活することになるため、接見できる時間に制限があるのです。

    また、ひとりの被疑者に対する接見は1日1回のみで、たとえば会社の上司などが午前の部で接見していれば、同日中に家族が訪れても接見させてもらえません。
    1回の接見時間も15~20分程度に制限されるほか、警察官が立ち会います。

3、弁護士による接見のメリット

一般の方による接見にはさまざまなルールや制限が設けられていますが、弁護士による接見にはこれらの制限がありません。

  1. (1)時間や回数などの制限がない

    弁護士には自由な接見交通権が認められているので、接見の時間や回数などの制限がありません。
    被疑者が「弁護士を呼んでほしい」と求めればいつでも接見可能です。
    弁護士が呼び出しに応じる限り、1日のうちに何回でも接見できます。
    弁護士が突然訪れた場合でも、警察官は特段の事情がない限り取り調べを中断して接見を優先させます。

  2. (2)警察官の立ち会いがない

    弁護士の接見では、刑事訴訟法第39条1項の規定によって「立会人なくして接見」が認められます。
    警察官による立ち会いがないので、弁護士の接見では警察官に聞かれていては話しにくいような内容を遠慮なく相談できるでしょう。

  3. (3)取り調べなどの捜査への対応を相談できる

    弁護士と接見することで、取り調べなどの捜査についてどのような対応をとるべきかのアドバイスが得られます。
    暴力的・誘導的な取り調べを受けている場合や、留置施設で人権を無視した処遇を受けたなどの場合は、すぐに弁護士による接見を求めて対処してもらうことが可能です。

4、逮捕されたら直ちに弁護士の接見を依頼すべき理由

家族などの親しい方が刑事事件の被疑者として逮捕されてしまった場合は、直ちに弁護士に相談して接見を依頼しましょう。
事件の概要や逮捕の状況などを詳しく聞き取ったうえで、最善の方法を目指すためのアドバイスが得られます。
残された家族としても、逮捕されてしまった本人の状況を知るためには弁護士による接見が一番の近道といえるでしょう。

  1. (1)刑事弁護は逮捕後72時間の対応が重要

    刑事事件の弁護活動は「逮捕後の72時間が勝負」といわれています。
    この期間のうちに被害者との示談が成立すれば、その後の最長20日間にわたる勾留や起訴を回避できる可能性が高まるでしょう。
    弁護士によるアドバイスなしで取り調べを受けていれば、暴力的・誘導的な取り調べによって不利な供述調書が作成されてしまうおそれがあります。
    ひとたび署名・押印してしまった供述調書の内容をくつがえすのは困難なので、早い段階で弁護士からアドバイスを受けておくことが大切です。

  2. (2)不当な処遇や違法捜査が防げる

    弁護士が接見することで、捜査機関に対して「弁護士がサポートについている」とアピールできます。
    留置施設における不当な処遇や、取調室における暴力行為などのような違法捜査の抑止が期待できるでしょう。

  3. (3)弁護士費用に不安がある場合の対応

    弁護士による接見には、1回の接見ごとに弁護士費用がかかるのが一般的です。
    弁護士費用が不安な場合は、まず初回の接見に限って「当番弁護士」の制度を活用するとよいでしょう。
    弁護士会から無料で弁護士が派遣されるので、ごく初期段階に必要なアドバイスは十分に得られるでしょう。
    ただし、当番弁護士は「初回の1回のみ」の対応なので、継続した弁護活動は期待できません。
    また、資力に不安がある場合は、国が弁護士費用を負担する「被疑者国選弁護人制度」の利用も可能ですが、弁護人を指定できないため満足な結果を期待できないというデメリットもあります。

    充実した弁護活動を望むなら「私選弁護人」を選任するのがベストです。
    弁護士事務所によって対応は異なりますが、クレジットカード決済による分割払いが可能な場合もあるので、まずは弁護士事務所に相談してみることをおすすめします。

5、まとめ

接見とは、一般的にいう「面会」と同義です。
ただし、家族など一般の方による接見にはさまざまな制限が設けられているので、アドバイスやサポートがしづらいという面があります。

家族や友人・知人など、大切な方が逮捕されてしまった場合は、直ちに弁護士に相談して接見を依頼しましょう。
ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスは、逮捕されてしまった方への迅速な接見を約束します。
刑事事件で最善の結果を得るためには逮捕後72時間以内の対応が重要です。
「まずは弁護士に会いに行ってもらう」ことから弁護活動がスタートするので、いますぐベリーベスト法律事務所 新潟オフィスへご一報ください。

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