子どもが募金詐欺で逮捕された! 未成年の処分内容や逮捕の影響はどうなる?
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未成年の子どもが募金詐欺容疑で逮捕されてしまった……。
新潟市内で平穏な生活を送る中、自分の子どもが詐欺事件の加害者として逮捕されたと聞けば、不安な気持ちになるでしょう。まさか自分の子どもが事件を起こすはずはないと思うかもしれません。
募金詐欺とはどのような詐欺なのか、未成年が詐欺罪で逮捕されるとどのような扱いとなるのか、ご家族として知りたい点が多くあるはずです。本コラムでは、未成年が起こした募金詐欺事件について、逮捕後の流れや処分内容、逮捕の影響などを解説するとともに、ご家族ができることにも触れていきます。
1、募金詐欺とは?
募金詐欺とはどのような詐欺をいうのか、問われる罪や特徴を解説します。
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(1)募金詐欺で問われる罪
募金詐欺とは、募金を名目にして他人をだまし、金銭を奪い取る犯罪です。詐欺罪のひとつの形態であり、寄付金詐欺、寸借詐欺などとも呼ばれます。募金詐欺は、まず募金者を信頼させる立場を装い、次に何のための募金なのかを偽り、人の善意につけこみ、金銭を回収しようとします。街頭募金や戸別訪問など、回収方法はさまざまです。未成年の場合は街頭で募金活動を担うなど、末端者や実行部隊として活動するケースもあるでしょう。
このような犯罪は刑法によって裁かれるケースがほとんどです。ただし、「募金詐欺罪」と個別に条文が定められているわけはありません。募金詐欺という手口を使った「詐欺事件」であることから、有罪になれば、刑法第246条に定められた詐欺罪として罪を裁かれることになります。 -
(2)わずかな額の募金でも詐欺で逮捕される?
募金詐欺は、1人あたりから回収できる金銭の額が少ない点が特徴的です。たとえば街頭募金の場合、1人あたりの募金額は数十円や数百円といったケースも多いでしょう。その程度の軽微な金額でも詐欺罪で逮捕されてしまうのだろうかと、疑問に思うかもしれません。
お考えのとおり、かつて募金詐欺事件では、ひとりひとりの募金者に対する個別の立件が必要とされていました。しかし、平成22年3月17日の最高裁判決で「包括一罪」が認められています。
「包括一罪」とは、複数の行為に連続性や一体性が認められる場合に、それらをひとつの罪として扱うことをいいます。
したがって、1人あたりからだまし取った額が少なくても逮捕されるおそれがあるといえるでしょう。たとえ1件あたりの被害金額が少なくても、募金詐欺はひとつの詐欺として立件されやすくなっています。さらには、総額によって量刑が重くなるリスクも生じることになりました。
2、未成年が募金詐欺で逮捕されるとどうなるのか
たとえ未成年でも、14歳以上の方が募金詐欺を行えば逮捕されます。ここでは、逮捕後の流れや処分内容、逮捕の影響などを確認しましょう。
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(1)募金詐欺で逮捕された後の流れ
募金詐欺で逮捕された後、48時間以内に警察の取り調べを受け、必要に応じて送致されます。送致後は検察官の取り調べを受け、24時間以内に勾留または勾留に代わる観護措置が必要かどうかを決定し、必要なときは裁判所の許可を請求します。もし、勾留もしくは勾留に代わる観護措置が裁判所に認められれば、引き続き身柄を拘束されることになるでしょう。
なお、少年事件は捜査が終了すると家庭裁判所へ送られます。その後、在宅審判や審判不開始となるか、少年審判によって処分が決まる流れとなります。 -
(2)未成年の処分内容
詐欺罪の刑罰は10年以下の懲役です。罰金刑がありませんので、成人であれば執行猶予がつかない限りは刑務所に収監されます。
他方、14歳以上の未成年が募金詐欺事件を起こした場合は、通常、刑事裁判ではなく少年審判を受けることになります。殺人などの重大犯罪を除き、成人と同じような刑罰を科されることはありません。少年事件では、処罰ではなく少年自身の更生を目的として審判が行われているためです。
少年審判では、次のいずれかの処分が決定されます。- 不処分
- 保護観察(保護観察官の監督のもと日常生活を送りながら更生を図る措置)
- 少年院送致、児童自立支援施設等送致
- 都道府県知事または児童相談所長送致
- 検察官送致
未成年が逮捕されたとき、たとえ少年院に送致されても前科はつきません。しかし、前歴といい、捜査機関から捜査を受けたり逮捕されたりした履歴は残ります。今後何か事件を起こしたときには照会されることがあるでしょう。さらに、日常に戻るタイミングが遅くなればなるほど将来におよぼす影響が大きくなってしまう可能性は否定できません。
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(3)学校や会社へ知られてしまう可能性
子どもが学生だからといって、捜査機関が逮捕の事実を積極的に学校へ連絡するわけではありません。しかし、学校警察連携制度によって知られることがあります。
会社員の場合も、通常警察から会社へ連絡がいくことはありませんが、逮捕などによって身柄を拘束されたケースでは報道によって発覚してしまう可能性があるでしょう。いずれにしても、警察が捜査のために必要であると認めた場合や、家庭裁判所の調査段階で連絡されることがあります。 -
(4)退学・解雇処分について
退学や解雇のおそれについては、学校や会社の判断によって異なります。
少年院や児童自立支援施設などに送られた場合には、学校や会社を長期間欠席・欠勤することになります。しかし、早期に身柄を釈放されたケースでは、逮捕が必ずしも退学や解雇に直結するとは限りません。
対策としては、警察から学校へ連絡することや、家庭裁判所の照会を控えてもらうことで、逮捕の事実を学校や会社に知られないよう働きかけることが考えられます。また、逮捕の事実が知られていても、本人の反省や今後の見通しを伝え、退学や解雇処分には不相当であると主張することもひとつ方法です。
ただし、ご家族が直接交渉しても思うような結果にならないケースがほとんどです。刑事事件や少年事件に対応した経験が豊富な弁護士によって、働きかけや交渉を行ったほうがよいでしょう。
3、募金詐欺で逮捕された未成年のために家族ができること
逮捕されてしまった子どものために、家族として何ができるのでしょうか。
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(1)速やかに弁護士へ相談する
刑事事件で早期の身柄釈放、処分の軽減につなげるためには、初期活動が非常に重要となります。速やかに弁護士へ依頼しましょう。
逮捕後おおむね72時間はたとえご家族であっても本人と面会できません。しかし、弁護士から本人へ、取り調べに際したアドバイスをしたほうがよいものです。特に未成年の場合は、法的知識に乏しいうえに精神面の未熟さもあり、ウソの証言をしたり反省の態度を示せなかったりして、処分に影響をおよぼしてしまうおそれがあります。
捜査機関への働きかけや学校・会社との調整、示談交渉など、弁護士が行うからこそ希望の結果につながる活動が多数あります。 -
(2)親として示談を成立させるべきか
被害者との示談が成立していることは、少なくとも一定範囲の責任をとったこと、責任をとれる家庭環境に置かれていることの証明となります。したがって、示談を成立させる意味は間違いなくあるといえるでしょう。
ただし、募金者が不特定多数にのぼる募金詐欺の場合には、被害者の特定と示談は難しい側面があります。また少年事件の処分決定においては、少年の心理面や友人関係、家庭環境などさまざまな要素が考慮されることになります。
なお、被害者が特定されている場合でも、被害者感情を考慮し、加害者のご家族が直接示談交渉をすることは避けるべきです。弁護士を通じた交渉が望ましいでしょう。 -
(3)本人の精神的なサポートと監督
逮捕された本人を精神的にサポートすることは、ご家族の大きな役割です。逮捕されると外部と一切の連絡ができなくなり、本人は大きな不安を抱えているはずです。しかし、弁護士を依頼していれば、逮捕直後のタイミングであっても、弁護士を通じて伝言や差し入れをすることができます。
また、どのような処分となっても、今後二度と同じ過ちを繰り返さないように本人を監督することが重要です。本人の更生を目指すことは当然のことながら、保護観察中に事件を起こせば少年院送致となったり、今後別の事件を起こした場合に処分が重くなったりする可能性が考えられます。このような事態を避けるためには、家庭環境を整え、本人に犯した罪の重大性を認識させること、必要な監督を行うことが大切です。
4、まとめ
今回は、未成年の子どもが募金詐欺を行い逮捕されたケースを想定し、処分内容や逮捕の影響など、ご家族が知っておきたい点を解説しました。
募金詐欺は人の善意につけこむ悪質性が高い犯罪です。したがって、未成年であっても逮捕され厳しい処分を受けるおそれがあります。しかし、早期の身柄釈放や処分軽減のために具体的な活動ができるのは弁護士だけに限られてしまいます。子ども本人の将来に過剰な影響を残さないようにするためにも、ご家族は速やかに弁護士へ相談することが大切です。
ベリーベスト法律事務所・新潟オフィスの弁護士も全力でサポートします。あなたの家族が募金詐欺によって逮捕された、されそうなどの状態であれば、まずはご相談ください。
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