ストーカー加害者として慰謝料請求されたら? 対応方法や逮捕の可能性を解説

2025年01月29日
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ストーカー加害者として慰謝料請求されたら? 対応方法や逮捕の可能性を解説

新潟県が公表した「令和5年中の新潟県の犯罪概況」によると、令和5年のストーカー規制法の検挙件数は37件と、前年より4件増加しています。

加害者がストーカー行為をしたと思っていない場合でも、状況によっては法律で罰せられたり、被害者から慰謝料を請求されたりする可能性があります。

本コラムでは、ストーカーの加害者として慰謝料請求されてしまった方向けに、慰謝料や逮捕の可能性などについてベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。


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1、つきまとい等・ストーカー行為に該当する行為とは?

ストーカーにあたる行為は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下、ストーカー規制法)」という法律で、「つきまとい等」と「ストーカー行為」の2つが定められています。

  1. (1)つきまとい等

    つきまといに類する行為には、相手への恋愛感情や好意を満たす目的や気持ちが通じないことへの恨みを晴らす目的で、相手やその家族などに対して行う、次の8つの行為が該当します。

    【つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、うろつくなど】
    相手を尾行したり待ち伏せたりする行為や、自宅や学校、会社などに押しかける行為が該当します。押しかけるだけでなく、見張りや周囲をむやみにうろつく行為も含まれるため、偶然を装って出くわそうとする行為もストーカーに該当する可能性があります。

    【監視していると告げる】
    相手の行動や服装を電話やメモで伝えるなど、監視していることに気づかせるような行為のことです。相手をねぎらう目的で、相手が帰宅した瞬間を監視して電話をかけるような行為もストーカーとして認定されます。

    【面会、交際の要求】
    相手が拒否しているのに面会や交際、復縁、プレゼントを受け取るよう求めるような行為です。相手が嫌がっていることを照れ隠しなどと勘違いして、しつこく行為に及ぶとストーカー規制法違反に問われてしまう可能性があります。

    【乱暴な言動など】
    自宅前で大声を出したり、ののしるなど粗野な言葉を吐いたり、クラクションを鳴らすなどの乱暴な行為をすることです。場合によってはストーカー規制法ではなく軽犯罪法違反に問われることもあります。

    【無言電話、連続した電話、ファクス、メールの送信、SNSなどへの書き込みなど】
    相手が拒否しているのに何度も連絡をする行為です。相手のブログやSNSにメッセージを送る・コメントする行為も含まれます。

    【汚物などの送付】
    汚物や動物の死体など、相手が不快に感じるようなものを、自宅や職場に送りつける、相手が気づく場所においておく行為が該当します。

    【名誉を傷つける行為】
    相手を直接、もしくは文書やメール、SNSによるメッセージ送信や拡散などによって誹謗中傷する行為が該当します。被害届を出されると、ストーカー規制法違反だけでなく名誉毀損(きそん)罪に問われる可能性もあります。

    【性的羞恥心の侵害】
    わいせつ写真を自宅に送りつける、ネットの掲示板にさらす、電話や手紙で卑わいな話をするような行為が該当します。

  2. (2)ストーカー行為

    ストーカー行為とは、上記8つのつきまとい等にあたる行為を、特定の人に繰り返すことを指します。ただし、メールについては、生活や名誉が脅かされたり不安を感じたりするような方法に限ると規定されています。

2、ストーカー行為の罰則を受けるまでの流れ

ストーカー規制法に違反してストーカー行為をすると、すぐに告訴される場合と段階に応じて対応が厳しくなっていくケースがあります。
以下では警告、禁止命令、逮捕、裁判の流れについて解説します。

  1. (1)警告

    被害者が警察に相談し、警告を申し出ると、ストーカー規制法第4条に基づき、警察署長などが「つきまとい等、ストーカー行為をやめるよう」警告します。警告は、加害者本人を警察署へ呼び出し書面を渡したり、電話で連絡したりするなど、さまざまな方法がとられています。

  2. (2)禁止命令

    警告が出されても「つきまとい等」の行為を続けた場合は、公安委員会が被害者の申し出や職権によって禁止命令が出されます。なお、緊急時には警告をしていなくても禁止命令を出すことが可能です。

    原則として、加害者側からも意見を聞くこと(聴聞)にはなっていますが、ストーカー被害による殺人事件が多々発生している状況を顧みて、被害者保護を優先しています。緊急の措置で、聴聞前に禁止命令が出されたときは、後で意見を聞けばよいことになっています。

    なお、禁止命令は1年間有効で、1年ごとに更新されることもあり得ます。

    いずれにしても、警告や禁止命令が出された時点で、警察はあなたをストーカーの可能性がある者として認識していることになります。相手にはあなたとの対話をする余地がないことも明らかであるため、たとえ用事があったとしても、直接連絡を取ろうとすることや、会おうとすること自体が、あなた自身の立場を不利にします。

    たとえばお金を貸していて返却を求めていた最中など、どうしても相手と連絡を取らなければならない正当な理由がある場合は、弁護士などを通じて公的な手続きを行ったほうがよいでしょう。

  3. (3)逮捕

    被害者から告訴された、もしくは、禁止命令を無視して連絡を取ろうとするなど、ストーカー行為とみなされる行動をすると、ストーカー規制法違反で逮捕される可能性が高まります。

    逮捕されると身柄を拘束され、警察で48時間以内の捜査・取り調べを受けることになります。その後、検察に送られ、24時間の捜査・取り調べを受けます。

    ストーカーの加害者は被害者につきまとい行為をしているため、証拠隠滅の可能性や逃亡の恐れがあると認められる場合が多く、さらに原則10日、最長20日の拘留を受ける可能性があります。その後、起訴されるかどうかが決定されます。

  4. (4)裁判

    裁判で有罪判決が下された場合、罰則が科され、前科がつくことになります。

    ストーカー行為をした場合は、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑」に処されます。なお、禁止命令などに従わずにストーカー行為をした場合は、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金刑」に処される可能性があります。

    被害者が警告の申請をせずに、ストーカー行為を告訴した場合は、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金刑」の判決を受ける恐れもあるでしょう。

    過去の事例として、新潟の市議が交際女性の車にGPSをつけて位置情報を調べてつきまとっていたケースでは、ストーカー規制法違反の略式起訴(正式裁判が開かれることなく刑が確定する裁判)によって50万円の罰金刑が科される結果となったと報道されています。

    なお、平成28年の法改正で、ストーカー行為は本人の告訴がなくても裁判にかけることができる非親告罪に変更されたため、被害届が出されていないからといって逮捕されないとは限りません。

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3、ストーカー行為の慰謝料額はどう決まる?

つきまとい等の行為やストーカー行為をした場合、刑事罰とは別に被害者から慰謝料を請求される可能性があります。

慰謝料とは、精神的苦痛という損害をお金で補償するための賠償金のことで、罪を軽くしてもらうための「示談」の一環として被害者に慰謝料を支払うことが一般的です。
金額は事件や実際の犯行などによって異なります。ストーカー事件の場合は、つきまとい等の行為の程度や相手との関係性、警察の関与の程度によっても変わることになります。

具体的には、上司と部下といった地位を利用したり、被害者に全く落ち度がなかったり、被害者が精神疾患を負って生活が難しくなった場合などは、慰謝料が高額になる傾向があります。
具体的な金額は加害者の支払い能力などの状況によって異なるため、弁護士に相談したほうがよいでしょう。弁護士に交渉を依頼すれば、過剰に多額な慰謝料を請求されたとしても退けることが可能です。

また、告訴や前科がつくことを避けるために、示談内容に被害者から事件を許してもらう「宥恕(ゆうじょ)」を盛り込んでもらい、示談金といって慰謝料を多めに支払うこともあります。

4、ストーカー行為をしてしまったらすぐに弁護士に相談すべき理由

ストーカー事件の加害者として、被害者から慰謝料請求されたときや、警告や禁止命令を警察から受けたとき、動揺したり、冷静な判断が難しくなってしまったりするものです。このようなときは、適切な判断をするためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)被害者から慰謝料請求された場合

    ストーカー行為をしたことを認め、謝罪とともに慰謝料を支払うと決めたとしても、被害者によっては慰謝料を追加で請求することや、警察には申告しない約束だったのに反故にされて逮捕されるケースもあります。

    慰謝料は示談の一環として支払われるのが一般的で、謝罪の意思や今後つきまとい行為はしないことの約束に加えて、被害者にストーカー事件のことを口外したり訴えたりしないこと、これ以上お金を請求しないことなどの約束事も含めておくことが重要です。

    示談する際は、示談書に合意の内容を記し、当事者が署名押印したものをそれぞれが保管します。ストーカー事件を円満に解決するためにも弁護士に相談して手続きに漏れや不足がないように示談を進めることが大切です。

    また、ストーカー行為をしていないにもかかわらず慰謝料を請求されたときは、速やかに弁護士に相談し、身の潔白を証明する準備を始めておいたほうがよいでしょう。そのためにも、自分自身で、相手と直接交渉しようとすることは避けたほうが賢明です。

  2. (2)被害届を出された場合

    つきまとい等の行為やストーカー行為で警察に被害届を出された場合や告訴された場合は、前科がついたり、身柄拘束によって生活に影響が生じたりする前に、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

    弁護士を介して被害者と示談交渉することによって事態の悪化を防ぎ、罪を軽くできる可能性が高まります。
    なお、被害者は加害者と会いたくないと考えているからこそ、警察に被害を訴えているケースが多数を占めます。あなた自身やあなたの家族が直接交渉しようとしても、事態が悪化する可能性が高いと考えてください。示談交渉は弁護士に任せることをおすすめします。

    もし、身に覚えがない被害を訴えられているケースであれば、警察や検察にそれを証明する必要があります。万が一逮捕されてしまえば、あなた自身が行動することはできなくなりますので、やはり弁護士の力に頼る必要があるでしょう。

5、まとめ

あなた自身がストーカー行為をしていると考えていなくても、気がつかないうちにストーカー行為に発展してしまっていたというケースがあります。一方で、無実を証明できる状態なのにストーカー扱いされているケースもあります。

いずれにしても、それぞれ対策が必要です。相手から慰謝料請求されたり、警告や禁止命令を受けたりした場合は、相手に接触するのは直ちにやめて、弁護士に相談してください。

ストーカー行為で逮捕されるかもしれないと不安な方は、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスまでご相談ください。新潟オフィスの弁護士が、状況に適した弁護活動に尽力します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています