交通事故を起こして逮捕されるケースとは? 適用される罪名や逮捕の要件を解説

2021年06月07日
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交通事故を起こして逮捕されるケースとは? 適用される罪名や逮捕の要件を解説

交通事故は、道路で自動車やバイクなどを運転する限り、誰にでも起こりうるものです。新潟県警察が公開している「令和元年の交通事故発生状況」によると、令和元(平成31)年中に新潟県内で発生した交通事故の件数は3484件でした。交通事故は誰もが「起こしたくはない」と考えているはずなのに、殺人や傷害などの事件と同様に逮捕されることがあります。

令和2年10月には、同年7月に上越市内で交通事故を起こし同乗者を死亡させたとして、男性が逮捕されました。同月には、新潟市内で歩道を通行し衝突事故を起こした男性も現行犯逮捕されています。

交通事故を起こして逮捕されるケースと逮捕されないケースにはどのような違いがあるのでしょうか?このコラムでは、交通事故による逮捕の可能性を、交通事故によって問われる罪との関係を見ながら、新潟オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、交通事故で問われる罪と刑罰

ここでは、交通事故で問われる罪と刑罰について確認しましょう。

  1. (1)過失運転致死傷罪

    交通事故で問われる罪のうち、もっとも多いのが「過失運転致死傷罪」です。
    令和元年版の犯罪白書で公開されているデータによると、平成30年中に過失運転致死傷罪で検挙された人員は41万7254名にのぼります。

    過失運転致死傷罪は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称:自動車運転処罰法)」の第5条に規定されています。
    自動車の運転において必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に問われる罪で、相手を死亡させた場合は「過失運転致死罪」、相手を負傷させた場合は「過失運転致傷罪」に問われます。

    法定刑は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
    ただし、傷害の程度が軽い場合は情状によって刑罰が免除されます。

  2. (2)危険運転致死傷罪

    「危険運転致死傷罪」は自動車運転処罰法第2条・第3条に規定されており、一定の危険な状態で自動車を運転して人を死傷させた場合に適用されます

    第2条では、次の8つの行為が掲げられています。

    • アルコールや薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
    • 進行の制御が困難な高速度で自動車を走行させる行為
    • 進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
    • 人または車の通行を妨害する目的で、割り込みや幅寄せなど、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
    • 車の通行を妨害する目的で、走行中の車の直前で急停車するなど、著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
    • 高速道路・自動車専用道路において、車の通行を妨害する目的で、急停車・幅寄せなどによってほかの車を停止・徐行させる行為
    • 赤色信号などを殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
    • 通行禁止道路を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為


    これらの行為によって事故の相手を死亡させた場合は1年以上の有期懲役に、事故の相手を負傷させた場合は15年以下の懲役が科せられます

    第3条では、アルコール・薬物・政令で定められている病気の影響によって、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、相手を死傷させた場合の罰則を規定しています。
    相手を死亡させた場合は15年以下の懲役、負傷させた場合は12年以下の懲役です。

  3. (3)そのほかの道路交通法違反

    人の死傷という重大な結果が生じた交通事故に限らず、自動車などの物が損壊しただけの交通事故でも、道路交通法違反が成立して罪に問われるケースがあります。

    ここでは一部の道路交通法違反を挙げましょう。

    • 飲酒運転(道路交通法第65条1項)
      酒酔い運転……5年以下の懲役または100万円以下の罰金
      酒気帯び運転……3年以下の懲役または50万円以下の罰金
    • 過労運転(同法第66条)
      5年以下の懲役または100万円以下の罰金
    • 無免許運転(同法第64条第3項)
      2年以下の懲役または30万円以下の罰金

2、交通事故を起こして逮捕されるケース

交通事故を起こしても、ニュースなどで報道されるように当事者が逮捕されるケースがあれば、逮捕されず事故処理を受けるだけで済まされるケースもあります。
交通事故における逮捕は、どのような条件でおこなわれるのでしょうか?

  1. (1)「逮捕」の意味と要件

    逮捕とは、刑事訴訟法の定めに従って「犯罪の被疑者の身柄を拘束する手続き」をいいます。
    逃亡または証拠隠滅のおそれがある被疑者を取り調べるための手続きなので、逮捕された時点では「犯人」と断定されたわけでも、刑罰が確定したわけでもありません

  2. (2)人身事故は逮捕されやすい

    交通事故のなかでも、重大な結果が生じている場合は逮捕されやすいでしょう。
    ここでいう「重大な結果」とは、交通事故の相手が死傷した場合、つまり「人身事故」を指します。

    ただし、人身事故のすべてで逮捕されるわけではありません
    むちうちや打撲・擦り傷程度の軽症で逮捕されるケースは多くありませんが、相手が死亡した、意識不明の重体に陥っている、骨折などの重傷を負っているといった状況であれば逮捕されやすくなります。

  3. (3)悪質な違反による事故も逮捕の可能性がある

    交通事故が起きた原因が悪質な違反によるものであれば、警察が逮捕に踏み切るおそれが高まります。

    ひき逃げのように悪質な違反であれば、たとえ相手の負傷程度が軽くても「逃走または証拠隠滅のおそれ」が高いと判断されてしまうでしょう。

    また、飲酒運転・無免許運転・スピード超過など、危険性が高く悪質な違反では、相手に死傷の結果が生じなくても逮捕される可能性があります

3、交通事故の刑罰が下されるまでの流れ

交通事故が刑事事件となり、刑罰が下されるまでの流れを見ていきましょう。

  1. (1)逮捕されなかった場合

    交通事故を起こしても逮捕されなかった場合は、任意による取り調べや実況見分などを経たあと、在宅のまま検察庁に送致されます。
    書類のみの送致となるため、この手続きを「書類送検」と呼ぶのが一般的です。

    送致後は検察官の取り調べがおこなわれ、起訴・不起訴が判断されます。
    起訴されれば刑事裁判に発展しますが、不起訴処分が下されれば刑事裁判は開かれないため、刑罰が下されることはありません。

    なお、交通事故が刑事事件に発展した場合でも、事故の形態が単純で負傷の程度が軽く、当事者に事実を争う意思がない場合は「略式手続」が採用されやすくなります
    略式手続とは正式な裁判を開かず裁判官が書面のみで判決を下す手続きです。
    裁判で事実を争うことはできませんが、必ず罰金刑で済まされるため、事故後の社会生活に対する影響は最小限に抑えられるでしょう。

  2. (2)逮捕された場合

    警察に逮捕されると、直ちに身柄が拘束されて自由な行動が制限されます。
    警察署の留置場に拘束されたうえで取り調べがおこなわれ、48時間以内に検察官へと送致されます。
    これが、ニュース報道などで「送検」と呼ばれる手続きです。

    送致を受けた検察官は、送致後24時間以内に起訴・不起訴の判断を下します。
    ただし、この段階で捜査が進んでいないため、判断を下す材料が足りません。
    そこで検察官は、裁判所に対して身柄拘束の延長を求める請求をする場合があります。
    この手続きを「勾留請求」といい、裁判官がこれを認めた場合は原則10日間、延長によって最長20日間の「勾留」による身柄拘束を受けます。

    勾留が満期を迎える日までに、検察官は再び起訴・不起訴を判断することになります。
    勾留が20日間を超えることはありません。

    検察官が起訴すると、刑事裁判が開かれます。
    刑事裁判の結審では判決が下され、有罪か無罪かの判断、有罪の場合はどの程度の刑罰であるのかが告げられます。

4、交通事故を起こして弁護士に相談すべき理由について

交通事故を起こして逮捕されてしまった、あるいは、逮捕されなかったが任意での取り調べが続いているといった状況があれば、直ちに弁護士に相談しましょう。

  1. (1)被害者との示談成立が期待できる

    「示談」とは、トラブルの当事者同士が裁判所の手続きを経ることなく、話し合いで解決する手続きをいいます。

    加害者が任意保険に加入している場合、被害者の治療費、車の修理費、入通院の慰謝料などについては、保険会社が負担してくれるのが一般的です。ただし、保険会社による示談とは別に、弁護士を通して被害者の方に示談の申入れをするケースもあります。

    加害者が任意保険に加入していない場合、被害者に発生した損害のうち、一定額までは加害者の自賠責が支払い、それを超える金額については、加害者が負担することで、被害者との示談が成立する可能性もあります。

    いずれにせよ弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉を進めることが可能です。

    金銭的な負担はありますが、示談が成立し、示談書の内容から被害者の許しを得たと評価される場合には、検察官が不起訴処分の判断をする場合もあります

    交通事故の被害者は加害者に対して強い怒りを感じていることも多く、加害者個人による示談交渉は容易ではありません。
    また、相場を大幅に超えた高額な示談金を提示してくる被害者も少なからず存在するので、交通事故トラブルの解決実績が豊富な弁護士に一任するのが最善策です。

  2. (2)早期釈放に向けたサポートが得られる

    警察に逮捕されてしまうと、逮捕から起訴までの間に最長で23日間にわたる身柄拘束を受ける可能性があります。
    会社や学校に行けない期間が長引けば、社会復帰が難しくなるケースも出てきます。

    弁護士に依頼することで、捜査機関に対して身柄拘束が不要であることを主張する、勾留の決定に対して取り消しを請求するなど、早期釈放に向けたサポートが期待できます。

  3. (3)処分の軽減に向けた弁護活動が得られる

    交通事故で相手に重大な被害を与えた場合は、厳しい刑罰が下されるおそれがあります。

    弁護士に依頼すれば、危険運転ではないことや悪質性が低い事故であるといった主張を裏付ける証拠収集などの弁護活動も期待できます

    示談が成立しなかった場合でも、日弁連交通事故相談センターや交通遺児の支援団体への贖罪(しょくざい)寄付などで、処分の軽減を目指します。

    有罪が免れない状況でも、刑の減軽による執行猶予の獲得や罰金刑で収まる可能性があるので、あきらめることなく弁護士に相談しましょう。

5、まとめ

交通事故を起こしてしまい、その形態が悪質で、相手が死傷するなど重大な結果が生じてしまった場合は、警察に逮捕されるおそれがあります。

不注意による事故でも検察官が起訴するまでに最長で23日間の身柄拘束を受けることがあるので、警察に逮捕されてしまったら直ちに弁護士に相談してサポートを依頼しましょう。
また、事故直後に逮捕されなかった事故でも、在宅のまま検察官が起訴するおそれもあります。

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