子どもが逮捕された! 逮捕後の流れと将来の影響について弁護士が解説

2019年07月17日
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子どもが逮捕された! 逮捕後の流れと将来の影響について弁護士が解説

平成31年3月、傷害の容疑で新潟市内の少年4人が逮捕されたという事件がありました。日本では、20歳未満の未成年を「少年」として扱い、逮捕された場合には成人とは異なる刑事手続きが行われます。逮捕された4人の少年も、成人が起こした事件とは異なり、家庭裁判所に送致されたと報道されています。

そこで本コラムでは、未成年者が逮捕された場合の流れや将来への影響などを、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、少年事件と成年事件の違いとは

「少年事件」とは、性別を問わず20歳未満の未成年が逮捕された事件を指します。成年事件とは20歳以上の成人が逮捕された場合です。

少年事件と成年事件では、逮捕後の流れやその後の処罰など異なります。たとえば成年事件の場合は、罪を犯したことが確かであれば刑罰を科すことを前提に裁判が行われることになります。しかし、少年事件では罪を犯した背景を明らかにした上で、「更生すること」を目的として、手続きが行われます。

少年事件では、事件の背景や犯行動機を明らかにするだけではありません。「なぜ犯行に至ったのか」や「子どもが置かれている環境」などを十分に調査した上で、子どもが更生するために最適な方法を模索することになります。

そのため、少年事件では「全件送致主義」と呼ばれる原則が採用されており、すべての事件が家庭裁判所へ送致されます。もし、更生の余地が少ない、環境を改める必要があると判断されれば少年院への入所などの重い処分が下る可能性があるといえるでしょう。

2、少年が逮捕された場合の流れ

未成年の子どもが罪を犯して逮捕されたら、どのような処遇を受けることになっているのか、ご存じでしょうか。

大前提として14歳未満の子どもが刑法に触れる罪を犯したとしても、「触法少年」と呼ばれ、逮捕されることはありません。刑法第41条によって、「14歳に満たない者の行為は罰しない」と定められているためです。したがって、逮捕されたり罪が問われたりすることはありませんが、児童相談所へ送致され保護を受けるなどの措置が取られることになります。

本項では、14歳以上の少年(「犯罪少年」と呼ばれます)が逮捕された後の流れを解説します。

  1. (1)逮捕から72時間の身柄拘束

    少年が逮捕された場合、逮捕されてから最長48時間のあいだ身柄を拘束され、取り調べが行われます。その後、嫌疑が晴れなければ検察官に事件や身柄を引き渡される「送致」が行われます。送致されると検察官による取り調べが行われ、送致から24時間以内に、検察官が「勾留」もしくは「観護措置請求」を検討します。

  2. (2)勾留、もしくは家庭裁判所への送致

    「勾留(こうりゅう)」とは10日間、拘置所もしくは留置所に身柄を拘束する措置です。さらに必要であれば最大10日間勾留を延長することができ、合計20日間勾留されることになります。ただし、少年事件で勾留されるケースは「やむを得ない場合」に限られます。したがって、勾留を行わずに家庭裁判所に送致されることも少なくありません。

    検察による取り調べが終われば、事件は家庭裁判所に引き継がれます。これを「家庭裁判所への送致」と呼ばれています。

  3. (3)観護措置とは

    「観護措置(かんごそち)」は、少年の身柄保全を目的とした手続きです。家庭裁判所へ送致された日に、観護措置を取るか否かが決定されます。そのほかにも、検察によって「勾留に代わる観護措置」を取ることもあります。勾留に代わる観護措置の場合、身柄拘束期間は10日間に限られます。

    家庭裁判所によって決定された観護措置には、「家庭裁判所の調査官による観護」と「少年鑑別所に送致」するケースがありますが、多くは少年鑑別所への送致が行われるでしょう。期間は一般的に2週間ですが、最大で8週間の身柄拘束を受ける可能性があります。観護措置期間のあいだは、少年自身の心身状態をはじめ、保護者や周囲の環境など多岐にわたる調査を受けるケースが一般的です。

  4. (4)審判開始・不開始の決定

    少年審判とは、家庭裁判所によって少年自身が犯した罪について事実関係を確認するとともに、保護を必要とするかどうかを審理し、判断する手続きです。原則、非公開で行われます。

    少年審判が行われるかどうかは、家庭裁判所が判断します。さまざまな調査結果を踏まえて必要と判断されたとき、審判が行われます。家庭裁判所への送致後、「在宅で期日を待ち、少年審判を受ける」か、「観護措置が取られたのち審判となる」のか、「審判不開始」となるのかが検討され、審判を受けることになるのかどうかが決定することになるでしょう。

    「審判不開始」の場合は、処分が下ることなく身柄も解放されます。罪を犯したことが明確ではない場合や、犯した罪が軽微であり、少年が十分に反省している場合なども審判不開始となる可能性があるでしょう。

  5. (5)少年審判

    審判には原則として、罪を犯した子どもと保護者、そして家庭裁判所の調査官、付添人、教師や雇用主などが参加します。付添人は、家庭裁判所の許可があれば誰でもなれますが、法的な知識が求められる可能性が高い立場であるため、ほとんどの場合が弁護士です。弁護士が付添人となる場合は家庭裁判所の許可は不要となります。

    少年事件の審判は、成人の刑事裁判とは異なり、再発防止を向けた教育的な働きかけを行いながら進められます。少年事件の審判は、原則として「非公開」で行われるので、子どもの様子が公開される心配はありません。罪を犯したことを本人が認めていれば、1時間程度で終了します。

  6. (6)処分の決定

    審判が行われると、家庭裁判所は処分を決定します。少年事件で下される処分は以下の6種類です。

    • 不処分
    • 保護観察処分
    • 少年院送致
    • 児童養護施設や児童自立支援施設等への送致
    • 検察官送致(逆送)
    • 知事または児童相談所長送致


    この中で身柄が拘束される措置は、「少年院送致」や「児童自立支援施設等送致」です。これらの処分が下されると一定期間身柄が拘束されてしまうため、学校や仕事などに影響する可能性があります。

    また、「検察官送致(逆送)」とは、検察官に事件を再度送致することをいいます。殺人など犯した罪が重いケースなど、刑事裁判によって処罰することが妥当と判断されると、検察官に送致されます。検察官送致された場合は、原則として刑事裁判が開かれて、成人と同様に量刑に問われることになります。

    保護観察処分や不処分の場合は、身柄が拘束されませんので、社会的影響を最小限に抑えることができます。保護観察処分は、保護観察官による監督や指導を受けながら、社会の中で更生を目指すことになります。不処分は、処分が下されませんので、逮捕前と変わらない生活を送ることができるでしょう。

3、逮捕の将来に与える影響とは

子どもが逮捕された場合、身柄の拘束時間が長ければ長いほど、日常生活や将来に大きな悪影響を与えます。少年事件の処分は、更生や社会復帰を目指した教育的な働きかけが重視されているとはいえ、物理的に身柄が拘束されてしまうと、現実的には社会的な影響を無視できなくなるでしょう。

勾留や、少年鑑別所への収容、少年院の入所などの処分が下された場合は、学校や職場を長期間欠席することになります。場合によっては、退学や退職を余儀なくされることが少なくありません。また長期間自宅を不在にするため、近所や親戚などで悪評がたてられる可能性も否定できません。さらに、子どもの友人関係などにも大きな影響を与えることもあるでしょう。子どもの人間関係は大人よりも流動的で変化しやすいものです。

子どもが逮捕された場合は、身柄の拘束による社会的影響、人間関係への影響が大きく、将来に悪影響を与えてしまうケースが少なくありません。この悪影響をできるだけ最小限に抑えるためには、弁護士による早期の釈放や、身柄の拘束を受ける処分を回避するための弁護活動が必要不可欠です。

4、子どもが逮捕された場合に弁護士に相談したほうがいい理由

子どもが逮捕された場合、早期に弁護士に相談して付添人となり、子どもの将来への影響を最小限に抑えるために行動してもらえるよう、検討することをおすすめします。ここでは、少年事件を弁護士に依頼すべき理由を解説します。

  1. (1)鑑別所や少年院などへの送致を回避できる

    先ほどお話ししたように、少年事件における身柄拘束の影響は非常に大きいものです。できるかぎり避けなければなりません。そのためには、弁護士による弁護活動が必須です。弁護士に依頼することで、鑑別所や少年院への送致が必要ないことを、客観的事実にもとづき主張できます。

    具体的には「少年を受け入れる家庭環境や学校があること」を主張したり、反省の意を表したり、被害者と示談を完了させるなどの活動を行います。また、少年自身との心の交流を図り、精神的なサポートを行うこともできるでしょう。

    少年事件の場合、少年自身が再度罪を犯さないための環境づくりが重要視されます。本人の意志があり、環境が整えられているとアピールすることで、身柄拘束を避けることも不可能ではありません。

  2. (2)再度罪を犯さないための環境づくり

    弁護士は、弁護活動だけでなく、子どもが更生するための環境づくりもサポート可能です。具体的には学校や職場への働きかけや家庭環境の改善などです。状況に応じて医師などの専門家と連携を取りながら、少年をサポートする環境を整え、社会復帰できるような環境づくりを働きかけます。

    子どもの再犯を防ぐだけでなく、子どもへの処分を軽減させるためにも重要な活動のひとつになります。

  3. (3)精神的な負担の軽減

    子どもが逮捕されると、子ども自身だけでなく保護者も近所や職場などから好奇の目にさらされ大きな心理的負担を強いられます。また、物理的にも度重なる面談や家庭裁判所での面接などで時間を割かれてしまい、仕事などに影響を与えることでしょう。

    しかし、弁護士に依頼することで事件の影響を最小限に抑え心理的負担が大幅に軽減します。弁護士が最適なサポート方法や対処法をアドバイスするため、常に最善の選択が可能なのです。

5、まとめ

子どもが逮捕された場合、子どもの更生、社会復帰を見据えた教育的働きかけが重視されます。しかし、現実的には身柄が拘束されるケースは少なくないため、学校や職場を辞めなければならない可能性があるでしょう。

将来に残る影響を最小限に抑えるためには、逮捕されてからなるべく早い段階で弁護士に依頼して、弁護活動を開始することが重要になります。ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでは、状況に応じて最適な対処法をアドバイスいたします。子どもの将来を守るためにも、逮捕されたらなるべく早い段階でご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています