未成年の子どもがオレオレ詐欺の加害者に!? 弁護士に依頼すべきか?
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新潟県警が警戒を強め、メディアや銀行などを通じて呼びかけをおこなっているにもかかわらず、いまだになくならない犯罪のひとつがオレオレ詐欺です。実際に、平成29年に新潟県内で発生したオレオレ詐欺の被害件数は60件、被害総額1億4525万円にのぼっています。平成30年内は少し減少したようですが、令和の時代を迎えて再び増加傾向にあるようです。
これらの事件では、金銭の引き出しや受け取りといった末端の役割を、未成年の子どもが引き受けているケースが多いものです。ご自身の子どもが加害者になっていたと警察から連絡を受け、呆然とされている方もいるでしょう。未成年の子どもがオレオレ詐欺に加担して逮捕されてしまったら、家族として何ができるのでしょうか。
本コラムでは、未成年の子どもがオレオレ詐欺で逮捕されたご家族向けに、罪の概要と弁護士の必要性などについて解説します。
1、オレオレ詐欺の概要
オレオレ詐欺は悪質な犯罪であること、暴力団の資金源になる可能性があることから深刻な社会問題となっています。そのため、少なくとも成人が逮捕されてしまうと、詐欺組織内でどのような立場であろうと不起訴処分となる可能性が低い犯罪です。
ここでは、オレオレ詐欺の特徴と問われる可能性のある罪について解説します。
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(1)オレオレ詐欺の罰則
オレオレ詐欺という名前の罪状は存在しません。ただし、その犯行内容から詐欺罪、組織的詐欺罪などに問われることが一般的です。有罪になった場合、それぞれの法定刑の範囲内で処罰を受けることになります。
●詐欺罪 10年以下の懲役
他者をだまして金品をだまし取ったり、特定の利益を得たりする詐欺罪(刑法第246条)では、罰金刑の設定がありません。たとえ、詐欺行為の最中に事態が発覚して逮捕されたため金品などは受け取っていない、というケースであっても、罪同様の決定刑が科される可能性があるでしょう(刑法第250条)。
●組織的詐欺罪 1年以上の有期懲役
組織的にオレオレ詐欺がおこなわれていた場合、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」にもとづき、組織的詐欺罪に問われるおそれがあります。本法律は、反社会的団体をはじめとした、組織的な犯罪に対する刑罰を取り締まる目的の法律です。 組織的詐欺罪として有罪となったときに科される可能性がある1年以上の有期懲役とは、1年以上20年以下の懲役刑のことを指します。詐欺罪よりも重い法定刑が科されることになるのです。
●窃盗罪 10年以下の懲役または50万円以下の罰金
他人の口座から現金を引き出すなどの行為をした末端関与者の場合は、窃盗罪に問われる可能性があります。窃盗罪は刑法第235条に定められた犯罪で、量刑は被害額の大きさや犯行内容の悪質性などによって決定します。 -
(2)担当によって量刑は異なる?
中堅以上のメンバーが手口を考え、担当者の割り振りや調整を行うケースが多く、未成年者が主犯となるケースはまれでしょう。
ただし、よく分からずに先輩などに頼まれたという理由で出し子や受け子など、詐欺行為の末端にかかわってしまったというケースもあるかもしれません。それでも多くが「悪いことをしている」「おそらく詐欺だ」と気づいているものです。したがって、詐欺に加担したことに変わりはありません。そのため、一定の処分を受けることになる可能性が高いでしょう。ただし、一般的に犯罪を計画する人物やかけ子よりも、出し子・受け子の処分の方が軽くなる傾向にあります。
2、未成年者がオレオレ詐欺を行った場合
オレオレ詐欺の場合、現金を引き出す際や受け取る際の現行犯逮捕が一般的です。ただし、未成年者の場合、逮捕後の流れや処分内容は成人とは異なることになるでしょう。ここでは、未成年者がオレオレ詐欺にかかわった容疑で逮捕された場合の流れについて解説します。
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(1)未成年でも刑事罰を受ける?
未成年者は罪に問われないと思う方が多いようですが、未成年であっても14歳以上であれば逮捕されますし、殺人などの重大事件であれば刑事裁判によって罪を裁かれることもあり得ます。
ただし、オレオレ詐欺の末端としてかかわってしまったケースなどで、成人と同じ刑事罰が未成年者に適用されることはほとんどないでしょう。原則、少年法に基づいた少年審判によって処分が決定されることになります。
逮捕後は、警察署で取り調べを受け、警察は48時間以内に検察へ送致するかどうかを決定します。事件や身柄を検察に送致されたら、24時間以内に検察は勾留と呼ばれる引き続き身柄の拘束を行いながら取り調べを行う必要性があるかどうかを判断します。勾留の決定は裁判所が行いますが、勾留が認められると、最長23日間帰宅できない状況に陥るでしょう。
被疑者が成人であれば、検察が刑事裁判を起訴するかどうかを判断し、必要に応じて裁判が行われることになります。しかし、未成年者の場合は、検察による取り調べが終わると、どのようなケースであってもまずは家庭裁判所へ送られます。
家庭裁判所では慎重な調査が行われ、少年審判において次のいずれかの処分が下されます。
- 保護観察(家庭内における更生を目指す処分)
- 少年院送致
- 児童自立支援施設等送致
- 都道府県知事または児童相談所長送致
- 不処分
- 検察官送致(重大事件の場合)
なお、少年審判は本人のプライバシーを重視するので、非公開で行われます。
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(2)未成年者が末端関与者である場合の処分
未成年者の処分は被害額や事件の悪質性だけでなく、更生の可能性の程度によっても大きく左右されます。言い換えれば、行為の様態が比較的軽微であっても、本人が反省していない、家庭環境が悪いなど、更生の可能性が低いと判断されれば厳しい処分になるおそれがあるということです。
そもそもオレオレ詐欺は、成人であれば受け子や出し子であっても実刑判決になることが多い悪質な犯罪です。未成年者でも、ある程度厳しい処分になることを覚悟しておいた方がよいでしょう。少年院送致も決して珍しい処分ではありません。
3、弁護士を選任するべき理由と注意点
未成年者が逮捕された場合、何よりも先に弁護士を選任することをおすすめします。ここではご家族が弁護士を選任する重要性と注意点について紹介します。
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(1)取り調べのアドバイスを受けられる
そもそも、逮捕から勾留が決定するまでの最長72時間の間は、たとえ家族であっても本人との面会ができません。また、組織的な犯罪の多くが、勾留後であっても面会が制限されるケースが多くなるでしょう。したがって、ご家族が本人に取り調べの際に正直に話すようになどのアドバイスをすることはできません。
しかし、依頼を受けた弁護士であれば、自由な面会が可能となります。心細い時期に本人に寄り添うとともに、取り調べの際にウソをついたり、組織幹部の言いなりになったりすることで今後何が起きてしまうのかを伝え、適切な対応を促すことができるでしょう。 -
(2)学校や会社への対応を依頼できる
子どもの更生にとってもっとも重要なことは、事件の処分が決定したあとも居場所を確保してあげることです。しかし、事件にかかわってしまったことによって、少年審判による処分を受けるだけでなく、学校や職場にその事実が露呈し、辞めさせられてしまうというケースは少なくありません。そうなれば、たとえ処分を比較的軽いものにできたとしても、戻る場所がなければ、再び荒れた生活に陥りかねないでしょう。
早期に弁護士を依頼することで、本人と直接話をしながら、学校や職場を辞めずに済む方法を模索することができます。更生の妨げになるような過剰すぎる制裁を受けないよう、必要に応じて学校や職場に対して働きかけることが可能となります。 -
(3)弁護士を選任する際の注意点
弁護士には国選弁護人と私選弁護人がいます。資力がない場合は国選弁護人を選ぶことができますが、勾留前に選任できないため早期対応が難しいという大きなデメリットがあります。
また、ご家族が行動する前に、いつのまにか弁護士がついていたというケースがあるかもしれません。しかし、それは詐欺グループの幹部などが選任した私選弁護人です。詐欺グループが選任した弁護士の世話になることで、グループとの関係を絶ちにくくなる可能性が高く、デメリットは大きなものとなるでしょう。可能な限り、早期にご家族が直接、弁護士に依頼することをおすすめします。
また、オレオレ詐欺は振り込みでも現金の受け取りが成立することから、全国の人がターゲットになります。逮捕後に収監される場所が、本人やご家族の住居地付近とは限りません。地元の弁護士に依頼すると思わぬ費用がかかってしまう可能性があるので、全国にオフィスがある法律事務所に依頼すると、メリットが大きいという一面もあるでしょう。
4、まとめ
オレオレ詐欺にかかわった容疑で子どもが逮捕されたときは、精神的に未熟な子どもを支え、処分を軽くするために活動してくれる弁護士を速やかに選任することが大切です。弁護士のアドバイスを受けながら、子どもが更生できる家庭環境であると判断してもらうために、子どもをしっかりと監督し、生活環境を整えることも重要なポイントとなるでしょう。
あなたのお子さまが詐欺容疑で逮捕されてしまったときは、ベリーベスト法律事務所・新潟オフィスでお早めにご相談ください。逮捕された警察署が遠方地域の場合も、他地域のオフィスと連携を取りながら、未成年者自身の更生のため、力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています