激しい束縛がつらく離婚したい! 束縛を理由に離婚することは可能?
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厚生労働省が公表する「平成30年人口動態統計(確定数)」からは、新潟県では平成30年に8612件の婚姻届の提出があったことが分かります。
結婚して晴れて法律上の夫婦になったとしても、相手の知らなかった側面を知り「こんなはずじゃなかった……」と思い悩む方もいらっしゃることでしょう。
なかには、「夫の束縛がひどくて参ってしまった」「妻の激しい束縛に耐えられない」など、配偶者の束縛が原因となって離婚したいと考えるケースも少なくありません。
束縛を愛情だと心から感じられるうちは、問題は生じません。しかし、苦痛を伴うレベルになってしまうと、モラハラやDV(ドメスティックバイオレンス)に該当する可能性もあります。
本コラムでは束縛を理由とする離婚は可能なのかを、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説していきます。
1、束縛を理由に離婚できる?
離婚は、夫婦間で合意できれば可能です。理由は問われません。
しかし、配偶者が離婚に合意せず裁判になった場合は、束縛を直接の離婚原因として離婚請求を行うことはできません。裁判では、法定離婚事由に該当することを主張して離婚請求を行う必要があるのです。詳しくみていきましょう。
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(1)夫婦間で合意できれば離婚できる
夫婦の話し合いで離婚に合意できれば、どのような離婚原因であっても離婚することができます。そのため束縛が原因で離婚したいことを伝え、相手が合意するのであれば離婚することは可能です。
ただし、束縛が激しい配偶者に直接離婚の話を切り出すことで、相手が逆上しご自身の身に危険が及ぶ可能性があるような場合には、迷わず弁護士や第三者に相談し、準備をした上で離婚したい旨を伝える必要があるでしょう。 -
(2)裁判で認められるためには法定離婚事由が必要
夫婦の話し合いで合意できない場合には、最終的には裁判を提起して離婚請求を行います。
ただし裁判では、民法で定める法定離婚事由に該当することが証拠などから判断できるときにのみ離婚が認められます。裁判では夫婦以外の第三者である裁判官が離婚の成否を決めるので、客観的な判断基準や判断材料が必要になるためです。 -
(3)5つの法定離婚事由
民法で定める法定離婚事由は、次の5つです。
- 配偶者の不貞行為があったとき
- 配偶者の悪意の遺棄があったとき
- 配偶者が3年以上生死不明であるとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
- 婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
法定離婚事由のなかに、「束縛」は直接的に規定されていません。
そのため束縛があることだけを離婚原因として、離婚請求をすることは難しいでしょう。
しかし、束縛を原因として離婚したいと考えるケースでは、束縛の背景にモラハラやDVが隠れていることも少なくありません。そういった場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。ただし、証拠を収集するなどして、客観的にみても婚姻を継続することが困難であることを証明する必要があります。
また別居期間が長い場合にも、「婚姻を継続しがたい重大な事由」と判断される可能性があるでしょう。
2、配偶者からの束縛でよくあるケースとその心理とは?
続いて、配偶者からの束縛でよくあるケースと、なぜ束縛がエスカレートするのか、その心理をみていきましょう。
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(1)必要な生活費を渡さないケース
配偶者からの束縛では、必要な生活費さえ満足に渡さず外で働くことも許さないといったケースがあります。
このようなケースでは、夫が「自由に使えるお金がなければ、妻は外からの刺激や影響を受けることなく自分の元にいてくれるだろう」などと思い、経済的な支配によって束縛していることが少なくありません。
しかしこれは、経済的虐待・経済的DVといえます。暴力を振るったり、暴言を吐いたりするわけではないからといって正当化することはできません。
また必要な生活費を渡さないことは、配偶者の悪意の遺棄といえます。
したがってこのようなケースでは、法定離婚事由の「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」のほかに「配偶者の悪意の遺棄があったとき」を主張して離婚請求できる可能性があります。 -
(2)常に行動をチェックするケース
- GPSで常に居場所をチェックされている。
- 会社にいる証拠の写真を送らされる。
- 毎日SNSやメールをチェックされる。
このように、配偶者の行動を常にチェックしないと気が済まないケースがあります。
配偶者が浮気をしていないか心配するあまり、こういった行動に出るケースが多いようです。しかし、そもそも自分に自信がないといった性格や、環境などが影響していることも少なくありません。
このようなケースでは、「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」を主張するために早期に別居を始めるなどの対処法を取ることが大切です。一定の距離を置くことで、互いに冷静になり、関係を修復できる可能性もあるでしょう。
ただし、別居したからといってすぐに離婚は認められません。時間がかかることを念頭において、対策を考えることが大切です。
3、離婚を成立させる方法
配偶者からの束縛が耐えがたく離婚を決意したときには、次のような方法で離婚を進めていきます。
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(1)協議離婚
離婚は夫婦の話し合いで合意でき、役所に離婚届を提出できれば成立します(協議離婚)。
しかし束縛が激しい配偶者に離婚を直接伝えると、ますます状況が悪化する可能性もあります。また、離婚に向けて話し合いをしたいと思いながらも、「直接顔を合わせて話し合うのもつらい」と感じるケースもあることでしょう。
離婚の際には、財産分与や子どものことなど話し合い取り決めることがたくさんあります。
はやく離婚を成立させたいからといって、このような取り決めをしっかりと行わなかった場合、離婚以外の条件について有利に交渉が進められなくなります。また、後々経済的な問題などで苦しむ可能性もあるでしょう。
苦しい状況であっても、しっかりと話し合い、納得いく形で離婚を決めることが重要です。
なお、離婚自体を迷っているものの、DVを受けているといった場合には「配偶者暴力相談センター」に相談するなど、ご自身だけで悩まず第三者に相談してみることをおすすめします。 -
(2)調停離婚
「配偶者が絶対に離婚しないと主張する」「配偶者が離婚の話し合いに全く応じない」といった場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる方法を検討するとよいでしょう。
調停では、調停委員を交えて夫婦が離婚や離婚の条件などについて話し合いを重ねます。
調停のなかで合意できれば、調停調書が作成され離婚が成立します(調停離婚)。
調停が不成立になった場合には、調停での話し合いは終了します。 -
(3)裁判離婚
調停が不成立になったときには、離婚訴訟を提起することができます。
なお、離婚訴訟は、調停を経てから提起しなければなりません。
離婚訴訟を提起すると、配偶者に訴状が届き訴訟手続きが進みます。裁判期日に、訴状や答弁書、準備書面を提出することによって、離婚原因その他の事実を主張します。
最終的には、裁判官によって離婚が認められるかどうかが判断されることになります。
4、離婚を弁護士に相談するメリットとは?
離婚を決意したら、まずは弁護士に相談するのが得策です。
話し合いの段階で相談して良いのか……、と悩まれる方も少なくありませんが、はやい段階で相談することで、離婚までの道のりが短くなることが期待できます。
具体的には、次のようなサポートを受けることができます。
●配偶者と直接会わずに離婚を進められるので精神的負担を軽減できる
弁護士は、ご依頼者の代理人として配偶者と交渉することができます。そのため精神的な負担を軽減できるメリットがあります。また直接だと言いにくいことも弁護士を介して伝えることができるので、主張もしやすくなるでしょう。
●冷静な話し合いが期待できる
第三者である弁護士が介入することで配偶者も冷静になり、話し合いが進むことが期待できます。
●財産分与や養育費などの適正額が分かるので取り決めで損をしない
離婚の際のお金に関する問題では、ご自身だけで適正額を算出することは難しいものです。
弁護士はこれまでの知見などを元に適正額を算出できるので、後悔の少ない条件で取り決めができるでしょう。
また将来的な不払いに備えて、強制執行認諾文言付き公正証書で合意するといった万全な対策を採るなど、後々を見据えた対応ができるのも弁護士に依頼する利点といえます。
●裁判になったときでも安心して任せられる
裁判では法的知識や経験が必要になります。弁護士に依頼すれば豊富な知識や経験をいかした弁護活動を受けられるので、安心して任せることができます。
5、まとめ
相手の合意があれば、問題なく離婚は成立します。相手が離婚に合意しないときには、法定離婚事由に該当することを主張できるように別居をする、証拠の収集といった準備をすることが重要です。
離婚を決意した場合には、少しでもはやく弁護士に相談し、お金や子どもの問題についてしっかり取り決めをしてから離婚することがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士は、ご相談者の立場に寄り添い解決策をご提案します。おひとりで悩むことなくぜひお気軽にご相談ください。
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