コロナ不況で会社破産を検討する際の手続きを弁護士が詳しく解説

2020年11月24日
  • 事業再生・倒産
  • 会社破産
  • 弁護士
コロナ不況で会社破産を検討する際の手続きを弁護士が詳しく解説

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、令和2年3月以降、ライブハウスやナイトクラブ、接客を伴う飲食店などは営業自粛を迫られました。2020年上半期の新潟県内の倒産件数は46件、そのうち、新型コロナウイルス関連の倒産は6件発生しており、その影響は少なくないようです。今後も急激な経営状況の悪化により、休廃業を迫られる企業はもちろん、会社破産の増加も予想されます。
これらの事態に陥った場合、会社破産はどのような手続きを経て行われるのでしょうか。本記事では、会社破産の手続きのメリット・デメリットについて新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、会社破産(法人破産)とは

資金繰りがいきづまり、どうしても借金が返せなくなったときには、会社破産を検討することになります。会社破産の要件や「倒産」と「会社破産」の違いなどを見ていきましょう。

  1. (1)会社破産の要件

    会社破産が行えるのは、以下の二つがあてはまるケースです。

    ① 会社が取引先に対し、継続して債務の弁済ができないこと
    取引先に債務を弁済しなければならない時期が来ているのに、支払い能力がなく、債務の大半を弁済できない状態を指します。また、弁済できない状態が一時的ではなく、相当な期間継続していることも要件のひとつです。

    ② 債務超過に陥っていること
    また、会社の財産で債務を完済することができないほど、債務超過に陥っていることも要件のひとつです。債務超過の場合についても、一時的なものではなく継続的に債務超過に陥っている状態でなければなりません。

  2. (2)倒産・廃業と会社破産との違い

    会社破産とよく似た言葉に、「倒産」や「廃業」があります。
    倒産とは、法律用語ではありませんが、一般的に経営が破綻して債務が弁済できず、経済活動の継続が不可能である状態が相当な期間継続していることを指します。倒産には、会社破産のように、裁判所を介する手続きである「法的整理」と、裁判所を介さずに行う「私的整理」があります。一方、廃業とは理由のいかんを問わず会社をたたむ(=会社の事業を停止する)ことを言います。

  3. (3)会社破産するときの注意点

    会社破産をするときは、以下の二つの点について注意が必要です。

    ① 十分な資金を残しておく
    会社破産をするのにもお金がかかります。裁判所に納める予納金や弁護士費用のほか、事業所を閉鎖するまでの人件費や家賃などのランニングコストも必要になります。そのため、最低でも1か月分以上の事業資金を用意しておく必要があります。

    ② 破産手続き前に勝手に財産の処分や弁済をしない
    「会社破産の手続きをする前に、懇意にしてもらっていた取引先や金融機関には、先に弁済しておこう」と考える方もいるかもしれません。しかし、このような行為は破産財団(破産手続き開始決定後に換価処分されるはずの財産)の侵害にあたり、なおかつ破産手続き前であれ債権者平等の原則に反する行為にもなります。したがって破産手続き開始後に、弁済を受けた債権者は、破産管財人から返還を要求される可能性があり、かえって債権者に迷惑をかけてしまうことになりかねません。
    破産手続き前に勝手に財産を処分したり、一部の債権者だけに弁済をしたりすることはやめましょう

2、会社破産手続きの流れ

会社破産の手続きは以下のような流れで進みます。
裁判官や破産管財人、債権者などとの打ち合わせや連絡のやりとりも生じますが、弁護士に依頼した場合には、打ち合わせや債権者集会に代理人として同席するので、安心して臨むことができます。

  1. (1)破産手続き開始の申し立ての準備

    会社の資金繰りなどの状況をみながら、どの時点で事業を停止するか、どのような方針で自己破産の申し立てを行うかを検討します。その後、取締役会で会社破産の決定に関する決議を行いますが、取締役会のない会社では全取締役の過半数の同意が必要です。
    申し立ての前には以下の書類を用意します。

    ●全部事項証明書(申し立て前3か月以内に発行されたもの)
    ●預貯金通帳(過去2年分)
    ●法人税申告書(貸借対照表・損益計算書)(直近2期分)
    ●従業員名簿、賃金台帳
    ●委任状
    ●代表者の陳述書
    ●破産申し立てについての取締役会議事録もしくは取締役の同意書  など

    以下の書類については、委任された弁護士が作成します。

    ●破産手続き申立書
    ●債権者一覧表
    ●委任状
    ●財産目録

  2. (2)破産手続き開始の申し立て

    法人の本社所在地を管轄する裁判所に、破産手続き申立書を必要書類とともに提出し、自己破産の申し立てを行います。その後、破産手続き開始決定前に法人の代表者・代理人の弁護士・裁判官で面談して、債務者(破産)審尋を行い、会社の状況や破産手続きの方針について話し合います。

  3. (3)破産手続き開始決定・破産管財人選定

    裁判所に申し立てが受理されると、破産手続き開始要件に合致しているか審査された後、破産手続き開始決定が出されます。この時点で会社は解散(消滅)し、会社の財産は破産財団に帰属することになります。債権者がもし強制執行や保全処分を行っていた場合は無効になるので注意が必要です。

  4. (4)破産管財人の決定・面談

    破産手続き開始決定と同時に、裁判所から破産管財人が正式に選任されます。
    破産管財人は、破産手続き開始決定後、債務者の財産(破産財団)をすべて管理する役割を担い、実務上、弁護士が選ばれるのが一般的です。破産管財人が選任されると、債務者・代理人弁護士と破産管財人とで事情聴取をかねた打ち合わせを行います。会社の財産の内容や処分方法について管財人と話し合います。その後、破産管財人は順次財産の換価処分を行いますので、債務者は必要に応じて管財人に協力するようにしましょう。

  5. (5)債権者集会の開催

    破産手続き開始決定日から数か月後に、第1回の債権者集会が裁判所で開かれます。
    債権者集会では、破産管財人から債務者が破産に至った経緯や、会社の資産状況などについて債権者に説明がなされます。この時点で管財業務が完了していない場合は、次回の債権者集会の日時が告げられますが、たいていの場合1回で終了します。なお、配当する財産がない場合は、ここで破産手続きの廃止(異時廃止)の決定がなされて破産手続きが終了します。

  6. (6)債権者への配当・破産手続きの終了

    破産財団の換価処分が終了して配当すべき財産がある場合は、債権者集会の終了後、そのまま配当手続きが行われます。一般債権者には債権額に応じて公平に配当されますが、優先的破産債権(他の債権より優先的に返済・配当を受けることができる債権)がある場合は他の債権に優先して配当されます。配当が終われば破産手続きが終了し、会社の登記が閉鎖されることで、正式に会社が消滅することとなります。

3、法人(会社)破産するメリット・デメリット

「会社破産すると、会社をつぶした人間として一生後ろ指をさされるのではないか……」と心配な方もいらっしゃるかもしれません。会社破産にはたしかにデメリットもありますが、メリットもあります。

  1. (1)メリット①取り立てがなくなる

    債権者からの取り立てがなくなることは、会社破産の大きなメリットです
    経営が傾いて資金繰りがひっ迫してくると、借金が返せなくなることはもちろん、買掛金の支払いもできない状態になってしまいます。そうすると、会社や代表者個人あてに金融機関や取引先から何度も取り立ての電話やメールの催促や、直接訪問されて返済や支払いを迫られることもありうるでしょう。
    会社破産を申し立て、裁判所から破産手続き開始決定が下ると、債権者は債務者に直接コンタクトが取れなくなるので、取り立てがなくなります。

  2. (2)メリット②生活を立て直し新たに再出発できる

    会社破産すると法人自体が消滅するので、法人が抱えていた債務もすべてゼロになります。借金の返済をしなくてよくなり、返済日に向けた資金繰りに悩む必要もなくなります。法人税を滞納していた場合も、会社自体が清算されてなくなってしまうので、滞納していた税金の納付義務もなくなります。そのため、破産手続きがすべて終われば生活を立て直し、新たな生活がスタートできるでしょう。

  3. (3)デメリット①事業が存続できなくなる

    破産手続きの申し立てを行うと、破産手続き開始決定前に会社の事業は停止しなければなりません。また、その後債権者集会を経て換価処分した財産が配当されたあと、法人格は消滅するため、事業はそこで強制的に終了となります。どんなに手塩にかけて大事に育ててきた会社であっても、事業は存続できなくなるので、事業主にとってはつらいことかもしれません。

  4. (4)デメリット②会社の資産はすべて処分・従業員も全員解雇

    会社破産手続きでは、会社の所有する土地建物や社用車、売掛債権などの財産はすべて換価処分(入札による売却、金銭に換えること)され、債権者の配当へと充てられてしまいます。

    また、会社が消滅するので従業員も全員解雇しなければなりません。もし従業員に支払う解雇予告手当や給与が用意できない場合は、国が未払い賃金の一部を立て替えて従業員に支払ってくれる未払賃金立替払制度が利用できます

4、経営者も破産する?

会社を破産させる場合は、代表者個人も自己破産することになるのでしょうか。代表者個人が自己破産したらどうなるのか、見ていきましょう。

  1. (1)連帯保証をしている場合は経営者も自己破産しなければならない

    法人の債務について、経営者が連帯保証人になっているケースが多くみられます。
    このような場合は、会社破産すると連帯保証人としての債務を背負いきれず、必然的に経営者自身も自己破産しなければならなくなる可能性は非常に高いといえます。

  2. (2)経営者自身の資産も処分しなければならなくなる

    経営者自身も自己破産すれば、会社破産と同様に経営者の自宅や車といった資産をすべて処分しなければならなくなります。ただし、99万円までの現金と最低限の家財道具は手元に残すことができるので、それらをもとに生活を立て直して人生の再スタートをきることができるでしょう。

  3. (3)信用情報に傷がつく

    経営者が自己破産すると信用情報機関に自己破産した旨の情報が入り、信用情報に傷がついてしまいます。これが、いわゆる「ブラックリストに載った」状態です。そうなると、新規借り入れやクレジットカードの作成もできません。自己破産の場合、信用情報機関から自己破産の情報が消えるまで10年ほどかかるといわれています

5、会社破産を弁護士に相談すべき理由

  1. (1)入念に準備ができる

    弁護士に依頼すれば、取締役会決議や破産の申し立てのベストなタイミングについてアドバイスが受けられます。また、書類や財産調査などの準備も入念に行うことができます。また、「もう会社の存続は無理かもしれない」と思っていても、資金繰りの状況しだいでは、事業存続できる可能性はゼロではありません。弁護士がいれば、それが可能かどうかの判断も可能です。

  2. (2)従業員や取引先への対応を任せられる

    会社破産の手続きの中で、さらなる信頼を損なわないためには、従業員や取引先への真摯な対応が必要となります。弁護士のサポートを受ければ、弁護士に代理人として従業員や取引先との対応を任せることができます。

  3. (3)債権者集会や破産管財人との打ち合わせにも同席

    破産手続き開始決定後には、破産管財人と顔を合わせて打ち合わせをしなければなりません。その後は裁判所で開かれる債権者集会への出席も必要です。破産管財人との打ち合わせや債権者集会で何を話せばよいかわからず不安になる方も多いと思いますが、いずれも弁護士が同席してサポートするので、安心して臨むことができるでしょう。

6、まとめ

会社を大事に育て、順調に成長をしてきたとしても、景気の状況によっては経営が傾き、債務超過に陥ってしまう可能性はゼロではありません。コロナ不況の昨今では、会社破産の道を選ぶ会社が増えてくるかもしれません。
ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでは、会社破産を検討される皆さまのお話を伺い、弁護士が全面的にサポートをしております。会社破産は悪い面ばかりではなく、良い面も多くあります。経験豊富な弁護士と力を合わせて生活再建の道を一緒に目指しましょう。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています