勤務態度が悪い社員の対応をしたい! 法的に可能な対処法とは?

2019年04月25日
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勤務態度が悪い社員の対応をしたい! 法的に可能な対処法とは?

インターネット上での動画や画像の投稿が非常に容易になった昨今、飲食業界の社員やアルバイトの学生が、会社の業務に関連した不適切な動画などをSNSに投稿する問題が相次ぎ、社会問題ともなりました。このような行為は、所属する会社の信用を失墜させ、経済的にも多大な被害をもたらす重大な背信行為です。
これらの問題は、日ごろ問題など起こさないと思われていた社員による場合が多いようですが、会社における社員の指導管理体制が問われる問題でもあります。日常的な教育指導を徹底するだけでなく、少しでも問題の兆候があった場合、会社経営者として慎重に対応する必要があることを示唆していると言えるでしょう。
ここでは、問題社員の取り扱いや実施すべき対応について、新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、就業規則によるルール作りとその周知

勤務態度が悪い社員に対応するにあたり、大切になるのは処分時の労働者の納得感です。納得感があれば手続きがスムーズに進み、後に不当解雇で訴えられるなどの問題に発展する可能性も少なくなります。

労働者自身が、なぜ処分されるのか、根拠は何か、会社として必要な手続きを踏んでいるのか、ということを理解しやすいようにしておき、いかに納得させることができるかがポイントになります。

そのためには、労働者を処分する前提として、処分事由や根拠を就業規則で客観的に明示し、周知しておくことが必要です。労働者の納得感の観点だけではなく、会社の対応が、主観や偏見による恣意的なものではないことを明らかにする意味でも大切なのです。

2、解雇前に実施すべきこと

  1. (1)一般的な流れ

    会社が問題社員を解雇することを検討する場合、その前にまずは注意などの軽い処分から始め、解雇以外の懲戒処分などの重い処分へと段階を踏まえることが重要です。たとえば、次のような流れがあります。

    ①注意指導
    労働者の問題が極めて重大でない限り、いきなり解雇に踏み切るのは違法と判断される可能性が高いため、まずは注意を行うことから始めます。
    注意する際のポイントは、口頭だけでなく書面化し、複数回による注意によっても改善されなかったという証拠を残しておくことです。この際、社員の署名などを取得したり、社員に反省文や再発防止の宣言文を提出させたりすることも有効です。

    ②異動・転勤・出向の実施
    注意によっても問題が改善されない場合、能力不足を解消し、問題行動をなくすための手段として職場を変えるための異動・転勤・出向などが考えられます。出向は、社員の同意が原則として必要となる点、注意が必要です。
    この場合も、異動の記録と、異動先においても問題行動が改善されなかったことについての証拠(注意指導記録など)も残しておくとよいでしょう。

    ③懲戒処分
    注意や異動によっても問題が改善しない場合、懲戒処分を検討します。懲戒処分には、戒告、減給、出勤停止、解雇などがあり、就業規則に定めがあります。
    懲戒処分は社員の生活に多大な影響を及ぼすことから、十分慎重に検討したうえで、実施する必要があると言えます。

    ④退職勧奨
    退職勧奨とは、労働者の自主退職(合意退職)を促すことです。解雇は、その有効性が争われるリスクがありますが、自主退職という形であればそのリスクは低くなります。
    解雇はあらゆる手を尽くした後の最終手段とすべきであり、まずは退職勧奨による合意退職を目指すことが大切です。労働者から退職願が出され、合意退職に至った場合には、その後重大な退職トラブルにはなりにくいと言えます。

    ⑤解雇
    退職勧奨を試みても合意退職に至らない場合は、最終手段として、解雇に踏み切ることになります。解雇には、整理解雇、懲戒解雇、普通解雇の3つの種類があり、問題社員を解雇する場合、懲戒解雇または普通解雇となります。

    懲戒解雇は、セクハラや横領など、会社の秩序を著しく乱した労働者に対して、制裁として行われる解雇のことです。懲戒の種別と理由は就業規則に明記されている必要があり、その上で、解雇の理由となった事柄が事実なのか、懲戒理由に当たるのか、解雇に相当するのか、ということが議論されます。
    普通解雇とは、整理解雇と懲戒解雇を除いた解雇一般をいいます。普通解雇の場合、就業規則に定められた解雇理由に当たるか、差別による解雇など法令に違反しないか、解雇予告など労働基準法に定める解雇手続を適切に行っているか、などが問題となります。

  2. (2)解雇にあたる注意事項

    最終手段として解雇を選択する場合、次の点に注意する必要があります。

    ①解雇制限
    労働基準法第16条は、「解雇は、客観的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と定め、使用者が労働者を解雇できる場合を限定することにより労働者の保護を図っています。
    従って、解雇事由に該当するものがあるかどうかを慎重に検討したうえで、解雇に踏み切る必要があります。

    また、解雇にあたり、業務上どの程度の支障が生じたのか、注意や指導などにより改善の機会を与えたか、弁明の機会を与えたか、などの経緯も重要視されます。

    ②証拠の準備
    すでに少しお話ししたとおり、解雇にあたり、従業員に問題行動があったこと、会社がその従業員に対して注意や指導をしてきたこと、についての客観的な証拠を準備することが重要になります。
    また、異動などにより職場を変えたり、能力を踏まえた仕事内容に変更したりして、何とか雇用を継続する努力をしてきたことを示す証拠も必要です。

    これらの経緯を踏まえてもまだ改善されない場合に初めて、解雇を選択せざるを得ないと主張することができるといえるでしょう。
    実際にこれらの手順を踏んでいたとしても、客観的な証拠として残しておかない限り、いざ裁判になったときには主張が認められにくくなります。

    ③解雇予告の必要性
    解雇予告とは、使用者が労働者を解雇する場合に、法律上、30日前までにする解雇の予告のことです。
    労働基準法20条1項は、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。」と定めています。
    使用者が労働者を解雇する場合には、労働者の生活への脅威を防止し、再就職などの準備に時間的余裕を与えるために、法律に定められた手続を踏む必要があるためです。

    この解雇予告をしない場合は、代わりに30日分の給料を解雇予告手当として支払う必要があります。

    なお、即日解雇が可能となるための手続きとして、解雇予告除外認定というものがあり、労働基準監督署へ申請手続きをして承認されれば、即日解雇が可能となります。しかしながら、この認定に法的な拘束力はなく手続きも煩雑であることから、あまり一般的ではなく、解雇予告手続きを踏むのが妥当と言えるでしょう。

3、就業規則が周知されていないときは?

現時点で、就業規則に解雇事由が記載されておらず、その周知もされていない場合どうすべきでしょうか。
労働基準法では、解雇の事由は就業規則の記載事項として定められていますので、まず解雇の事由を明記し、その就業規則を労働者が把握しやすい状態で周知しておくことが必要になります。

就業規則に記載のない事由で、懲戒解雇することはできません。また、労働基準法は、就業規則の内容を労働者に不利益に変更する場合には、労働者全員の同意または変更の合理性が必要と定めていますので、この点を考慮する必要があります。

なお、普通解雇の場合も、合理的な理由がない場合には不当解雇とみなされる可能性が高いため、就業規則に解雇事由を明記しておくことが求められます。ただし、懲戒解雇と異なり、理由が明示されていないと一切解雇できないわけではなく、就業規則や雇用契約で定められている一般的な義務違反による普通解雇というのもありえます。

4、事前の問題社員対策がカギ

問題社員対策として一番よいのは、指導管理を徹底して問題自体を生じさせないことですが、それに加えて、万一問題が生じた場合に備え、対応策を確立しておくことが重要と言えるでしょう。
就業規則や雇用契約書の記載事項の適正化、問題社員への対応手順や証拠の準備方法の確立など、あらかじめ社内で準備しておくことが、いざ問題が生じた場合に助けになります。

また、不当解雇の裁判などは、非常に専門的な知識と経験が必要になるため、初期の段階から弁護士などの専門家に相談することで、対応を間違えないようにすることが必要です。長い目で見れば、泥沼の裁判沙汰を避けられるケースもあり、専門家の判断を仰ぐことには意味があると言えるでしょう。

5、まとめ

これまでみてきたとおり、問題社員への対応は専門知識が必要な部分も多く、一歩間違えれば不当解雇で訴えられるなどの問題に発展しかねません。
問題発生初期の段階で気軽に弁護士に相談できる環境があることで、対応を間違えることなく、スムーズに対処できることがあります。

ベリーベスト法律事務所は、低価格で始められる顧問契約サービスを用意しておりますので、顧問弁護士を設置することを検討されている方は、ぜひ一度新潟オフィスまでご相談いただければと思います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています