決算公告とは? 具体的な方法や怠った場合の罰則などについて

2022年07月11日
  • 一般企業法務
  • 決算公告とは
決算公告とは? 具体的な方法や怠った場合の罰則などについて

新潟市の民営事業所数は3万5510事業所であり、従業者数は36万4667人となっています。

原則として、株式会社には決算公告を行う義務があります。決算公告義務違反には過料の制裁も設けられていますので、会社法の規定に従い、確実に決算公告を行うことが大切です。

本コラムでは、決算公告の概要・義務の対象となる会社・方法や手続き・決算公告義務違反に対する罰則などについてベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、決算公告とは?

「決算公告」とは、株式会社が貸借対照表(大会社の場合は貸借対照表・損益計算書)を公告することを意味します(民法第440条第1項)。
原則として、株式会社には決算公告を行うことが義務付けられています

  1. (1)決算公告の目的

    決算公告の目的は、株主・債権者・取引先などに対して会社の財務状況を周知して、取引の安全を確保することにあります。

    決算公告の内容から、会社の財務状況が健全であることを確認できれば、株主は安心して株式を長期保有できます。
    債権者は、債権回収に関して不安を抱く必要がなくなります。また、取引先も、安心して取引を続けることができるでしょう。

    このように、決算公告によって財務状況の透明性を確保することは、会社がステークホルダー(企業のあらゆる利害関係者)からの信頼を得るために非常に重要な手続きなのです

  2. (2)決算公告の記載事項

    決算公告には、貸借対照表(大会社の場合は貸借対照表・損益計算書)の掲載に加えて、以下の事項を記載しなければなりません(会社法第440条第1項、会社計算規則第136条第1項)。

    • 継続企業の前提に関する注記
    • 重要な会計方針に係る事項に関する注記
    • 貸借対照表に関する注記
    • 税効果会計に関する注記
    • 関連当事者との取引に関する注記
    • 一株当たり情報に関する注記
    • 重要な後発事象に関する注記
    • 当期純損益金額(損益計算書を公告する場合は不要)


    ただし、官報または日刊新聞紙による公告を行う場合には、貸借対照表の要旨を公告すれば足りるとされています(会社法第440条第2項)。

    このように簡略化した公告が認められているのは、官報や新聞紙などの掲載紙面の紙幅が限られていることによるものです。
    要旨公告の記載方法は、会社計算規則第137条から第146条の規定に従う必要があります。

  3. (3)決算公告を行うべき時期

    決算公告は、定時株主総会の終結後、遅滞なく行わなければなりません(会社法第440条第1項)。

    具体的な公告期限は設けられていませんが、定時株主総会が終わったら、できるだけ早めに決算公告を行うことをおすすめします。

2、決算公告を行う必要がある会社・ない会社

決算公告を行う必要があるかどうかは、会社の種類や状況に応じて異なります。

  1. (1)株式会社は原則として決算公告が必要

    株式会社は原則として、決算公告を行うことが義務付けられます(会社法第440条第1項)。

    ただし、後述するように、株式会社であっても決算公告が不要となる例外がいくつか認められています。

  2. (2)上場会社は決算公告が不要

    金融商品取引法第24条第1項に基づき、内閣総理大臣に有価証券報告書を提出しなければならない株式会社は、決算公告を行う義務を負いません(会社法第440条第4項)。
    有価証券報告書の提出義務を負っているのは、主に上場会社です。

    有価証券報告書には、上場会社の財務状況の透明性を確保するため、貸借対照表や損益計算書の内容を含めた詳細な情報が記載されています。
    決算公告の内容は有価証券報告書と大部分が重複するため、有価証券報告書の提出とは別に決算公告を行うことは、不要とされているのです

  3. (3)ホームページ等で貸借対照表の内容を公表していれば、決算公告が不要

    株式会社のホームページなど、インターネットを通じて貸借対照表の内容情報を提供する場合には、決算公告の義務が免除されます(会社法第440条第3項、会社計算規則第147条)。

    この場合、定時株主総会の終結後、終結日から5年を経過するまでの間、継続して貸借対照表の内容情報を提供しなければなりません。

  4. (4)特例有限会社は決算公告が不要

    特例有限会社とは、会社法施行に伴って廃止された「有限会社法」に基づいて設立された会社のうち、現在は商号中に「有限会社」の文字を冠しながら株式会社として存続しているものです。

    特例有限会社は、会社法上の株式会社に当たりますが、決算公告の義務が免除されています(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第28条)。
    これは、会社法施行以前の有限会社には決算公告が義務付けられていなかったことをふまえて、以前からの取り扱いを維持するための措置です。

  5. (5)合名会社・合資会社・合同会社は決算公告が不要

    決算公告は、株式会社のみに義務付けられています。
    これに対して、持分会社である「合名会社」「合資会社」「合同会社」については、決算公告が義務付けられていません。

    特に、合同会社は、小規模なビジネスを法人化する際に比較的よく用いられています。
    煩雑な決算公告を回避したい場合には、会社設立の際に、株式会社ではなく合同会社を選択することも検討しましょう。

3、決算公告の方法・手続き

決算公告を行うにあたっては、会社法によって3つの方法が認められています。
会社法所定の手続きに沿って、スムーズに決算公告を行うことができるように、準備を進めましょう

  1. (1)決算公告の3つの方法

    決算公告の方法としては、「官報」「日刊新聞紙」「電子公告」の3種類が認められています(会社法第939条第1項)。

    ① 官報
    政府発行の機関紙である官報に、貸借対照表の要旨を掲載して公告を行います。

    ② 日刊新聞紙
    時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に、貸借対照表の要旨を掲載して公告を行います。

    ③ 電子公告
    会社のホームページなど、電磁的方法を通じて公告を行います。
    官報・日刊新聞紙による公告の場合とは異なり、貸借対照表(大会社の場合は貸借対照表・損益計算書)の全文に加えて、前掲の注記等を掲載しなければなりません。
  2. (2)決算公告の手続き

    決算公告は、株主総会決議によって計算書類の承認を経た後、定款所定の方法によって行います。

    ① 株主総会決議による計算書類の承認
    株式会社の取締役は、作成された貸借対照表・損益計算書などの計算書類を、定時株主総会に提出または提供しなければなりません(会社法第438条第1項)。
    なお、以下のいずれかに該当する会社では、計算書類について対応する監査や承認を受ける必要があります。
    • 取締役会設置会社ではない監査役設置会社→監査役による監査
    • 取締役会設置会社ではない会計監査人設置会社→監査役および会計監査人による監査
    • 取締役会設置会社→取締役会による承認
    • 定時株主総会に提出・提供された計算書類は、株主総会の普通決議による承認を受けなければなりません(同法第2項)。


    ② 定款所定の方法による決算公告
    定時株主総会の終結後、株主総会によって承認された貸借対照表等について、決算公告の手続きをとります。
    決算公告は、定款に定める公告方法によって行います(会社法第939条第1項)。
    定款に公告方法の定めがない場合は、官報公告となります(同条第4項)。

4、決算公告を行わなかった場合の罰則

決算公告義務違反については、会社法に基づき、「過料」という制裁が課される可能性があります。

  1. (1)決算公告義務違反は過料の対象

    会社法上義務付けられている公告を怠った場合、取締役・監査役等の役員は「100万円以下の過料」に処されます(会社法第976条第2号)。

    したがって、決算公告が義務付けられている株式会社の役員は、決算公告を怠った場合に過料の制裁を受ける可能性があります。

  2. (2)実際に過料が科される可能性は?

    法律上の義務であっても、実際には、決算公告義務を果たしていない株式会社は数多くあります。

    決算公告は、会社法および会社計算規則の規定に従って行う必要があります。
    記載内容に関するルールは非常に細かく、そのすべてを遵守した決算公告を作成することは容易ではありません。

    株式会社のなかには、1人会社や家族経営の小規模な会社もあり、「煩雑な決算公告事務にまで手がまわらない」という状況であるところも多いでしょう。

    しかし、決算公告は会社法上の義務です。義務違反が発覚すれば、世間からの批判を受ける可能性があります。
    また、決算公告の本来の目的は、株主に加えて、債権者や取引先に対する透明性の確保にあります。
    したがって、会社の社会的信用や債権者・取引先などからの信頼を確保するために、会社法の規定に従ってきちんと決算公告を行うことをおすすめします

5、まとめ

株式会社には、一部の例外を除いて決算公告を行うことが義務付けられています。
実際には決算公告義務を怠っている会社も多いですが、株主・債権者・取引先等の信頼を得るためにも、会社法の規定に従ってきちんと官報公告を行うようにしましょう。

ベリーベスト法律事務所では、決算公告事務を含めて、会社経営に関する日常的な法律相談を随時受け付けております
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