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不正に勤怠を打刻する社員を解雇できる? 懲戒処分の概要と注意点

2020年03月05日
  • 労働問題
  • 勤怠
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  • 処分
不正に勤怠を打刻する社員を解雇できる? 懲戒処分の概要と注意点

新潟労働局から、令和元年における県内の有効求人倍率(原数値)の平均は1.64倍であったことが公表されています。このような雇用情勢においては、企業の立場からすると優秀な人材を長期的に確保することが課題になるものでしょう。
しかし雇用した社員に、勤怠を管理するタイムカードやWEBで不正打刻を行うといった勤務不良が見受けられることも珍しいことではありません。
このようなケースでは、会社は不正に勤怠を打刻する社員に対して、適切な処分を行うシステムを構築しておくことが重要になります。適正な処分は、再発防止や他の社員のやる気を失わせないことにつながることでしょう。

本コラムでは、「不正に勤怠を打刻する社員に対してどのように処分すべきか」についてベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、勤怠の不正は「詐欺罪」にも該当するケースもある

従業員同士で実際の出勤より早い時刻にタイムカードを打刻し合っている。
社外でプライベートな時間を過ごして会社に戻って打刻している。
実際より長時間勤務したかのようにWEB打刻している。

このような勤怠の不正が発生すると、会社は本来支払う必要のない残業代などを支払わなければならなくなります。
勤怠の不正が悪質なケースでは、刑法上の「詐欺罪」が成立する可能性があります。
詐欺罪は、最大10年もの懲役刑に処されることがある重い犯罪です。
勤怠の不正で詐欺罪に問うケースは、実際にはあまり多くはありません。しかし不正が悪質な場合には、詐欺罪が成立する可能性があることを使用者側でも把握しておくと良いでしょう。
なお社員が不正に取得した分の残業代などについては、会社は社員に対して民事上の不当利得として返還請求することができます。

2、不正が悪質な場合に検討すべき「懲戒解雇」

労働契約を締結して採用されている社員には、労務提供の義務と企業秩序維持の義務があります。そのため会社は、企業秩序に違反した労働者に対して懲戒処分をすることができます。

懲戒処分には、「けん責」「減給」「出勤停止」「論旨解雇」「懲戒解雇」などの種類があります。懲戒処分は、程度に応じた適切な制裁処分を選択しなければなりません。

勤怠の不正が著しく悪質であるときには、会社は社員の「懲戒解雇」を検討する必要がでてくるでしょう。「懲戒解雇」は、就業規則や諸規定に大きく反し、著しく企業秩序を乱す労働者を排除するために行われる処分です。

勤怠に関して悪質な不正を行う社員は、会社にとってリスクにもなります。また厳しい処分を行うことで、他の社員による不正の再発防止にもつながることが期待できるでしょう。
ただし、懲戒解雇を行う場合には、裁判でも懲戒解雇の有効性を証明できるだけの材料を集めてから行うことが重要になります。

3、不正が悪質といえるケースとは?

懲戒解雇は、社員にとってもっとも重い制裁処分です。そのため不正が悪質といえるケースについて行うべき処分といえます。
まずは懲戒処分の原則などを確認したうえで、不正が悪質といえるケースをみていきましょう。

  1. (1)懲戒処分の原則

    懲戒処分を行う場合には、次のような原則にもとづく必要があるとされます。

    ●懲戒処分を行う場合には、次のような原則にもとづく必要があるとされます。
    懲戒処分を行う場合には、あらかじめ就業規則に懲戒事由や懲戒の程度の規定があることが必要です。なおかつ、社員に対してその規定が周知されていなければなりません。
    また就業規則を規定する前の行為については、就業規則の規定をさかのぼらせて適用することはできません。

    ●合理性・相当性の原則
    懲戒事由と懲戒処分は、客観的に相当性があると判断できるものでなければなりません。
    そのため客観的にみて、軽度の行為と判断される場合は重い処分をすることはできないとされます。

    ●平等適用の原則
    懲戒処分は、社員全体に平等に適用しなければなりません。同じ行為をした複数の社員がいた場合に、特定の社員のみに懲戒処分を行うようなことは認められません。

    ●二重処分の禁止の原則
    ひとつの行為に対して、二重に懲戒処分を行うことはできないとされます。

    ●適正手続きの原則
    懲戒処分は、適正な手続きのもとで行われる必要があります。
    たとえば懲罰委員会が懲戒処分を決定する旨が定められているときには、経営者の独断によって懲戒処分が決定されるようなことは認められません。


    これらの原則にもとづき、社員の不正の程度・期間やこれまで懲戒処分になった事例といったさまざまな事情を総合的に勘案して、どのような処分が妥当かを適切に判断することが大切です。

  2. (2)悪質な不正と判断された事案

    不正が悪質といえるケースとしては、社員が残業代を過大に請求するために意図的に不正を行ったことが明らかな場合が挙げられます。

    参考として、勤怠の不正に関して懲戒解雇が有効とされた代表的な判例をご紹介します。
    昭和42年3月2日の最高裁の判例は、同僚に退出時刻を打刻してもらい終日勤務をしていたかのように不正を働いた社員と、その同僚に対する懲戒解雇の有効性について争われた事案です。
    この事案では、「タイムレコーダーの記録を同僚に依頼するような不正があった場合は、不正打刻を手伝った同僚と打刻を依頼した本人を解雇する」旨が社内に周知徹底されていました。
    裁判所は、社員がそのことを熟知していたにもかかわらず無視して不正を行ったことに着目して、懲戒解雇は有効と判断しました。
    原審では、不正について「ふとしたはずみで偶然になされたもの」としていたのですが、最高裁判所の判決ではこれを否定し結論を覆しています。

4、懲戒解雇が認められにくいケース

社員が勤怠の不正を行っていた場合でも、会社側が適切な労務管理を行っていなければ懲戒解雇が不当解雇と判断される可能性があります。

会社として長時間の離席を把握しながらも見て見ぬふりをしていた。
タイムカードを打刻しない社員に対して管理者が適切な指導を行っていなかった。
不正打刻を行っている社員がいることに気が付きながらも注意や指導を行っていなかった。

このような場合には、裁判で懲戒解雇の有効性が争われたときでも懲戒解雇が認められにくいといえます。

また社員の不正の意図が明確とまでは言い切れないケースでも、懲戒解雇が認められにくいとされます。たとえば、タイムカードの不正打刻が実際の勤務時間より短い場合と長い場合が混ざっているようなケースでは、積極的に残業代を過大に請求する意図が明確とは言い切れないものでしょう。

その他、不正が長期間に及ばず、実際の労働時間と打刻時間の差がそう大きくないケースでも、懲戒解雇という重い処分は認められにくいと考えられます。

いずれにしても懲戒解雇を行う場合には、事前に弁護士に相談して慎重に進めることが得策です。

5、退職を促したい場合に企業ができること

勤怠の不正を行った社員の悪質さを示す証拠がそろわないため懲戒解雇できないけれども、本人に反省の態度がなく他の社員に悪影響を及ぼしているので会社を辞めてもらいたい……。
そういった場合には、「退職勧奨」を検討することも選択肢のひとつです。

  1. (1)退職勧奨

    退職勧奨とは、会社側が労働者に対して自主的に退職するよう促すことをいいます。
    退職勧奨には解雇のような法的な効果はなく、会社は退職を促すことはできても最終的には労働者の意思によって退職の有無が決まります。

  2. (2)行き過ぎた退職勧奨は違法

    退職勧奨は会社側の違法性が問われることも少なくないので、会社側も慎重に行うことが大切です。
    会社を辞めてもらいたいからといって行き過ぎた退職勧奨を行えば、反対に社員から会社の責任を追及され社会的信用を落とすことにもつながりかねません。

    裁判例では、「社会通念上相当な程度を超えるほどに」「不当な心理的圧力を加えたり、名誉感情を不当に害する言動を用いたりした場合」には違法な退職勧奨になるとしています。
    また、退職する以外に方法はないと社員に思わせた場合にも、違法な退職勧奨といえるでしょう。

    あくまでも退職勧奨は、労働者が退職するかどうかを自由に決定できる状況において、会社は退職を促すことができる仕組みであることを理解しておくことが重要です。

6、まとめ

本コラムでは、不正に勤怠を打刻する社員に対する対応や処分に関して解説しました。

不正に勤怠を打刻する社員に対しては、その悪質さの程度などによってどのような懲戒処分にすべきかを適切に判断しなければなりません。社員が争う場合も想定して判断することが大切です。

ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士は、懲戒処分の妥当性についても判例やこれまでの知見をもとに、適切な対応をアドバイスします。
社員である労働者とのトラブル、会社経営や労務管理などについても法的なサポートやアドバイスが可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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