会社からリストラ宣告を受けたら拒否できる? 違法なケースや対処法を解説
- 不当解雇・退職勧奨
- リストラ
- 拒否
新潟県が公表している「労働力調査結果」よると、令和6年10月における新潟県内の完全失業率は2.5%で、前月に比べて0.1ポイント上昇していますが、前年同月比では5万人減少しています。
勤務先の企業から突然リストラ宣告を受けた場合、生活の糧を失うことに大きく戸惑ってしまうことでしょう。
法律的には、実は会社にとってもリストラのハードルは高いのが実情です。
そのため従業員(労働者)としては、リストラの宣告を受けた場合などには、ご自身の権利内容を正しく把握したうえで、冷静に対処しましょう。
この記事では、会社からリストラ宣告された場合の対処法を中心に、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそもリストラとは?|リストラの2パターン
リストラとは、一般的に、会社の経営状態を改善するために行われる人員整理をいいます。
法的には、いわゆる「リストラ」には以下の2通りのパターンが存在します。
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(1)退職勧奨・合意退職による場合
一つ目は、会社から従業員に対する「退職勧奨」が行われ、従業員がそれに応じて合意退職するパターンです。希望退職者募集が行われ、それに応募した従業員が退職する場合も、このパターンに該当します。
退職勧奨・合意退職の方法によりリストラが行われる場合、会社と従業員の間で退職に関する合意書が締結されます。
退職合意書の中では、従業員側が会社に対して、退職に関する追加の請求を行わない旨の合意が記載されるのが通常です。
なお、合意退職の見返りとして、会社から従業員に対して退職金が上乗せして支給されることが多いです。 -
(2)整理解雇による場合
二つ目は、会社が一方的に、従業員に対して解雇を言い渡すパターンです。
会社の経営難を理由とする解雇は、一般に「整理解雇」と呼ばれています。
整理解雇の場合、会社が従業員との間の労働契約を一方的に終了するわけですから、当然それなりの理由が必要になります。労働契約法第16条に規定される「解雇権濫用の法理」により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は認められません。
整理解雇の場合において、「解雇権濫用の法理」がどのように適用されるかについては、後で詳しく解説します。
2、リストラは拒否できる?
突然リストラ宣告を受けた場合、生活資金も確保できていない状況で会社を辞めなければならないとすれば、従業員としては生活に困窮してしまうおそれがあります。そのため、できればリストラを拒否したいところですが、法的に拒否することは可能なのでしょうか。
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(1)退職勧奨を拒否することは自由
会社から退職勧奨を受けているにすぎない場合は、退職勧奨に応じるかどうかは従業員の自由です。したがって、会社からの退職勧奨に必ずしも応じる必要はありません。
また、「退職条件次第で応じる」、「タイミングを見ながら応じるかどうか検討する」などの方針を立てるのもいいでしょう。
ご自身で判断するのが難しいようであれば、早期に弁護士に相談をすることをおすすめします。 -
(2)整理解雇は拒否できない|解雇の違法性を争う
整理解雇は会社側の一方的な行為のため、従業員が拒否することはできません。
しかし、整理解雇を適法に行うためのハードルは非常に高くなっています。そのため従業員としては、「整理解雇を拒否する」という姿勢ではなく、「整理解雇の違法性を争う」という形で権利を主張することになるでしょう。
お問い合わせください。
3、リストラが違法になる場合とは?
会社によるリストラ宣告は、その方法や条件によっては違法(不当解雇)と判断されることがあります。
以下で解説するような違法なリストラに遭った場合、すんなりリストラを受け入れることなく、従業員としての権利を適切に主張しましょう。
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(1)退職勧奨が事実上の強制に当たる場合
退職勧奨は、あくまでも従業員に対して任意の退職を要請するものです。
もし退職勧奨が事実上の強制(退職強要)に及んでいた場合、法律上は「解雇」として取り扱われます。この場合、労働契約法第16条で定められる「解雇権濫用の法理」が適用され、退職勧奨が違法と判断される場合もあります。
退職勧奨が事実上の強制であると評価されるケースとしては、以下のような場合が考えられます。- 「退職勧奨に応じなければ懲戒解雇する」などと脅されていた場合
- 退職勧奨とセットで暴言・無視・追い出し部屋への異動などのパワハラ行為が行われていた場合
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(2)整理解雇の4要件を満たさない場合
整理解雇の方法によるリストラは、解雇権濫用の法理を踏まえて、「整理解雇の4要件」を満たすことが判例上必要とされています。
整理解雇の4要件は以下のとおりです。① 人員整理の必要性
整理解雇をしなければ会社の経営が破綻するというレベルでの、極めて高度な必要性が要求されます。
② 解雇回避努力義務の履行
配置転換・希望退職者募集・ワークシェアリング・役員報酬のカットなど、他のあらゆる手段を講じたうえで、なお整理解雇がやむを得ないと評価できることが必要です。
③ 被解雇者選定の合理性
整理解雇の対象者を選ぶ際に、合理的・客観的・公平な基準に従った選考が行われたといえることが必要です。
④ 解雇手続きの妥当性
会社が、解雇対象者本人や労働組合などと十分に協議し、整理解雇についての納得を得るための努力を尽くしていたといえることが必要です。
上記の整理解雇の4要件をひとつでも満たさない場合、整理解雇は違法となり得ます。
4、リストラ対象になった場合の対処法は?
会社から突然リストラ宣告を受けた場合、従業員としてはご自身の生活を守りつつ、会社に対する権利主張の準備を進めなければなりません。
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(1)退職時期をできるだけ引き延ばす
会社からのリストラ宣告が退職勧奨の段階にとどまる場合には、いったん退職届の提出を拒否しましょう。退職勧奨を拒否するのは従業員の自由ですし、そのことを理由として、従業員を不当に取り扱うことは違法です。
もし「退職勧奨に応じなければ懲戒解雇にする」と脅されても、このような会社の主張には正当性がないため、引き続き拒否の姿勢を貫いておきましょう。
会社に在籍している間は通常どおりの賃金が受け取れるため、最終的に退職に応じるとしても、退職時期をできるだけ引き延ばすことにはメリットがあります。 -
(2)生活資金を確保する|退職金・雇用保険
退職勧奨に応じるという判断をした場合や、会社から整理解雇を通告された場合には、近々会社から賃金を受け取れなくなります。この場合、退職後の生活に備えて、生活資金を確保しておくことが大切です。
もし会社から退職金が出る場合には、退職金により当面の生活資金を確保できるでしょう。
さらに、リストラは会社都合退職の扱いになるため、雇用保険についても、自己都合退職と比較して早期に受給できます。もし自己都合退職の扱いとされていたら、会社都合退職に修正するよう要求しましょう。
退職金や雇用保険で生活資金を確保できるめどが立ったら、再就職活動を開始して、一日も早く次の仕事を見つけましょう。
5、リストラを言い渡された従業員に弁護士がサポートできること
会社から退職勧奨を受けた場合や、整理解雇された場合には、以下に説明する理由から速やかに弁護士に相談することが得策です。
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(1)会社との交渉を代行
会社から退職勧奨を受けた場合、上乗せ退職金を含む退職条件についての交渉が発生します。
交渉の際には、会社がリストラについてどのようなリスクを抱えているのかを推測しつつ、従業員としての権利を適切に主張することが大切です。
労働紛争に対する対応経験が豊富な弁護士に依頼をすると、上記の観点を踏まえたうえで、会社との交渉を全面的に代行してくれます。 -
(2)労働審判や訴訟の手続きも任せられる
整理解雇の違法性を争う場合、交渉だけでは問題が解決せず、会社との間で労働審判や訴訟といった法的手続きに発展することも少なくありません。
この場合にも、弁護士に依頼をしておけば、膨大な書類の準備や裁判所での手続きなど、面倒で負担がかかる作業をすべて任せることができるので安心です。
6、まとめ
会社からのリストラ宣告に遭った場合、戸惑うのも無理はありませんが、従業員としての権利を踏まえて冷静に対処することが大切です。
退職勧奨であれば拒否することができますし、整理解雇の場合は違法性を争うこともできます。
もしリストラ宣告への対処法がわからない場合は、できるだけお早めにベリーベスト法律事務所 新潟オフィスにご相談ください。
労働問題の経験豊富な弁護士チームが依頼者の権利を守るため、親身になって対応します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています