会社をクビになっても退職金はもらえる? 懲戒解雇だともらえない?

2024年11月21日
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会社をクビになっても退職金はもらえる? 懲戒解雇だともらえない?

新潟県の毎月勤労統計によると、令和6年7月の新潟県内の常用労働者(規模5人以上)は81万8605人で、前年同月比0.9%の減少となりました。

会社都合で一方的にクビを宣告されたにもかかわらず、退職金は支払わないと言われたら、従業員としては納得がいかないでしょう。
実は会社をクビになったり、事実上、退職に追い込まれたりしたようなケースでも、会社に退職金の支払い義務が発生する可能性はあります。

この記事では、解雇された場合でも退職金をもらえるのかについて、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。


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1、懲戒解雇だと退職金は不支給や減額になる?

労働者が会社から懲戒解雇された場合など、労働者側に一定の非違行為(責任)が認められる場合には、退職金が不支給または減額となる可能性があります。

退職金の不支給・減額の根拠となるのが「不支給条項」「減額条項」と呼ばれるものです。

  1. (1)退職金の不支給・減額には労働契約上の定めが必要

    会社に退職金制度が存在する場合、使用者は労働者に対して、原則としてその制度に従って計算した退職金を満額支払わなければなりません。
    退職金制度は労働契約の一内容であり、使用者側が勝手に不支給または減額することは許されないからです。

    しかし、一定の場合には退職金を不支給または減額する旨を就業規則(または退職金規程)で定めておけば、それも労働契約の内容になります。

    このような退職金の不支給条項・減額条項が設けられている場合、当該条項の規定に従う限りにおいて、使用者は労働者に支払うべき退職金を不支給または減額とすることができるのです。

  2. (2)懲戒解雇でも退職金の支払い義務が認められることがある

    多くの企業において、退職金の不支給条項として、「懲戒解雇の場合、退職金を支給しない」という定めが置かれています。
    この場合、懲戒解雇時には退職金の不支給条項に該当するため、退職金を一切支払わなくてもよいように思う方も少なくありません。

    しかし裁判実務上は、懲戒解雇時に退職金を全額カットする不支給条項を定めていたケースでも、使用者に退職金の一部または全部の支払いを命じている場合があるのです。

    これは、退職金に「賃金の後払い的性格」という要素があるためと考えられています。
    つまり、退職金はこれまでの労働に対する対価という側面があるので、いくら従業員に非があるといっても、会社が勝手に全額不支給とすることは認められないという考え方です。

    解雇の理由にもよりますが、懲戒解雇の場合であっても、おおむね通常の3〜5割程度の退職金が認められる場合があります。
    どの程度の退職金がもらえるかは、退職金を受け取る権利の主張を効果的に行えるかどうかに左右されるため、弁護士に相談して準備を進めましょう。

2、リストラの場合は退職金の上乗せもあり得る

懲戒解雇ではなく、人員整理のためにいわゆる「リストラ」が行われる際には、退職金は通常時よりも増額される場合もあります。

  1. (1)リストラの方法|整理解雇と合意退職

    リストラの方法には、大きく分けて「整理解雇(普通解雇)」と「合意退職」の二つがあります。

    整理解雇とは、会社の一方的な判断により、人員整理の必要性などを根拠として、労働者に解雇(クビ)を通告することをいいます。

    これに対して合意退職とは、会社都合ではあるものの、会社と労働者が合意のうえで、労働者が会社を退職することをいいます。
    具体的には、会社の経営状況の悪化により、人員を削減するために希望退職者を募り、従業員の合意のうえで退職してもらう方法もリストラの一方法です。

  2. (2)リストラ時に退職金が上乗せされる理由

    労働契約法第16条に定められる「解雇権濫用の法理」との関係で、整理解雇のハードルは極めて高くなっています。

    会社が適法に整理解雇をするためには、以下の4要件が必要とされています。

    • 人員整理の必要性
    • 解雇回避努力義務の履行
    • 被解雇者選定の合理性
    • 解雇手続きの妥当性


    これらの要件は厳しく判断されるため、会社が労働者を適法に整理解雇することは非常に難しいといえます。
    そのため、会社としては労働者との間で後に紛争が発生することを防止する観点から、できる限り合意退職のかたちを取りたいと考えます。

    その際、労働者に退職へ合意してもらうことの交換条件として提示されるのが「退職金の上乗せ」です。
    退職金の上乗せは、就業規則(または退職金規程)に根拠があるわけではありませんが、退職に関する会社と労働者の間の交渉によって決定されます。
    もし会社から一方的に整理解雇を通告された場合には、退職金の増額について交渉する余地があるため、対応方針を検討しましょう。

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3、そもそも退職金制度があるかどうか確認しましょう

会社を退職した(クビになった)労働者が退職金を請求する際には、まず退職金制度の内容を確認しましょう。

  1. (1)退職金の有無は労働契約の内容により決まる

    そもそも退職金は、毎月支払われる賃金とは異なり、労働基準法上、使用者に支払いが義務付けられたものではありません。
    退職金は、あくまでも使用者と労働者の間で締結された労働契約の定めに基づいて支払われるものなのです。

    したがって、労働契約のひとつとして「退職金制度」が設けられている場合は、その制度内容に従って、労働者が退職金を受け取る権利を有します。

  2. (2)就業規則や退職金規程を確認しよう

    会社が退職金制度を定める場合、会社は以下の事項を就業規則に定めておかなければなりません(労働基準法第89条第3号の2)。

    • 退職金制度が適用される労働者の範囲
    • 退職手当の決定、計算、支払いの方法
    • 退職手当の支払い時期


    実際には、「就業規則」という社内規程の中で退職金制度が定められている場合と、それとは別に「退職金規程」という社内規程を作っている場合があります(いずれも適法です)。

    そのため、ご自身が退職金を受け取る権利があるかどうかを知りたい場合は、まず会社の「就業規則」「退職金規程」といった名称の社内規程を確認してみましょう。

4、クビになったときに退職金を請求する方法

会社から一方的にクビを通告され、退職金も一切もらえなかったという場合には、速やかに弁護士に相談して法的な対応をとることをおすすめします。次に弁護士に相談するメリットや退職金を請求する流れについて解説します。

  1. (1)弁護士に相談して社内規程をチェック

    会社に対して退職金を請求するには、社内規程からその根拠となる規定を探す必要があります。

    就業規則・退職金規程などの社内規程は、必ずしも読みやすいものではないため、専門家である弁護士と一緒にチェックするのが安心です。

    また、前述の懲戒解雇時の例からもわかるように、不支給条項または減額条項に該当したとしても、それだけで退職金の不支給または減額が法的に認められるとは限りません。

    そのため、ご自身の正当な権利を適切に主張するには、弁護士のアドバイスを受けながら法的な検討を行うことが不可欠といえます。

  2. (2)会社と交渉して退職金を請求する

    退職金制度などに関する事前の検討が完了したら、実際に会社と交渉し、退職金の請求をします。

    退職金の支払いに関する交渉を弁護士に依頼すると、会社は労働者側の本気度を感じ取るため、ご自身のみで交渉をするよりも建設的な話し合いができる可能性が高まります。

    また、労働者ご自身が交渉の矢面に立つ必要はなく、弁護士が労働者側の主張を法的に整理して主張するため、精神的な負担も大きく軽減されるでしょう。

  3. (3)労働審判・訴訟で会社に退職金を請求する

    会社との交渉が不調に終わった場合は、労働審判や訴訟などの法的措置を通じて、会社に退職金の支払いを求めることになります。

    労働審判や訴訟では、労働者ご自身に退職金を受け取る権利があることを、適切な証拠・資料によって裏付けていく必要があります。

    弁護士に依頼をすれば、主張立証活動や手続き面での注意事項などについて随時アドバイスを受けられるため、万全の準備を整えることが可能です。

5、まとめ

会社をクビになった際に、退職金の支払いを拒否されたとしても、法的な観点からは退職金を受け取る権利があるというケースも多いです。
そのため、会社から一方的に退職金なしのクビを通告されてしまった場合には、弁護士に相談して対処法を検討することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスでは、会社から不当な扱いを受けた労働者の方をサポートするため、労働問題の専門チームが全面的なバックアップ体制を整えています。万が一、不当解雇・退職金の不払いなどに遭ってしまった際には、ぜひご相談ください。
弁護士が親身になって、労働問題の解決に向けてサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています