未払いの残業代はどこに相談するべき? 相談先や請求方法について
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平成25年9月、新潟県内に本社を置く企業が残業代に関する労使協定を会社側が無断で作成して違法に届け出していたことを受け、従業員が会社に対して未払いの残業代を請求する訴訟を提起しました。結果、会社側は賃金相当額などの支払いを命じられています。
この事件は、わざわざ会社側が残業代に関する労使協定を無断で作成するという非常に悪質なものでしたが、残業代の未払い自体は珍しいことではありません。しかし、残業代の未払いは明確な労働基準法違反であり、未払いの残業代の請求は労働者に認められた権利です。
そこで今回は未払いの残業代を請求するための相談先や、請求方法をベリーベスト法律事務所・新潟オフィスの弁護士が解説します。未払い残業代を請求したいと考えているものの方法がわからない方、専門機関に相談したいと考えている方はぜひ読み進めてください。
1、未払いの残業代はどこに相談するべき?
まずは、未払いの残業代問題を相談できる相談先を紹介します。それぞれの機関に一長一短がありますので、ご自身にあった相談先を選びましょう。
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(1)全労連労働問題ホットライン
全労連労働問題ホットライン(全労連)は、会社で働く労働者の利益を守り職場の悩みを解決するための組織です。サービス残業などの残業代に関するトラブルはもちろん、リストラや賃下げ、セクハラやパワハラ、偽装派遣に至るまで、さまざまな問題について相談できます。
新潟では、「県労連相談センター」という機関がこれにあたります。月曜日の午前10時から午後5時まで、電話での相談を受け付けています。ただし、全労連労働問題ホットラインは相談を受けるだけで、会社側への残業代請求の代行などは行っていません。つまり、請求する際は自分で交渉しなければなりません。 -
(2)労働局雇用均等室
労働局雇用均等室は、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法、パートタイム労働法などの法律に関する相談を受け付ける期間です。
残業代の請求について相談するというよりも、性別や妊娠出産などを理由にした残業代の不払いや、性別の差別、育児休暇を取得させてもらえないなどの問題を相談する機関です。これらの相談をした場合、必要に応じて行政指導や調停会議による調停を行うことができます。 -
(3)労働基準監督署
労働基準監督署は、厚生労働省の出先機関で、企業が労働関連法に違反していないかを監督・指導することが主な業務です。残業代の未払いや不当解雇、不当な賃下げやセクハラ、パワハラなどの企業側の違法行為がある場合は、申告を受けて、指導や是正勧告を行います。それでも改善がみられない場合は、労働関連の法律違反であれば逮捕する権限も有しています。
残業代未払い問題についても、会社側に違法性が認められれば支払うように指導することが可能です。ただし、命令には強制力がありません。つまり、企業側が無視をする可能性もあります。
また、労働基準監督署は労働者の代理人になることはできません。したがって、あなたのかわりに支払いをするように交渉したり、訴訟を提起したりすることはありません。自分で請求・交渉する必要があります。 -
(4)社会保険労務士
社会保険労務士は、社会保険や雇用保険、年金などの手続きの代行をしたり、相談を受け付けたりする国家資格者です。残業代未払い問題については、労働者の意見を代弁して企業と交渉することもできます。
ただし、裁判では代理人になることができません。残業代請求が裁判に至ってしまうケースは、これまで社会保険労務士に依頼していても、改めて弁護士に依頼しなおす必要があります。 -
(5)総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、労働基準監督署や労働局内に設置されている、労働者のための相談機関です。労働問題であればなんでも相談を受け付けており、配置転換や雇い止め、解雇やいじめ、パワハラや残業代未払いなどの相談を受け付けています。
国が設けている相談機関なので相談費用は無料です。ただし、労働者の代理人となり企業側と交渉することはできません。内容を聞いた上で対処法を助言してくれますので、まずは話を聞いてほしいという方は利用してみてはいかがでしょうか。 -
(6)弁護士
残業代未払い問題を弁護士に相談した場合、弁護士は最適な対処法をアドバイスできるだけでなく、労働者の代理人となり企業との交渉が可能です。訴訟の代理人になることもできますので、当初から訴訟を見据えた強気の交渉ができます。
残業代未払い問題を、迅速に解決したい、必ず未払いの残業代を受け取りたいという方は弁護士に相談することを強くおすすめします。残業代を請求する際に必須の証拠集めから、請求までワンストップで一任できるのは弁護士だけです。
2、残業代が請求できるケース
次に残業代を請求できるケースについて解説します。残業代の支払いは会社側の義務で、一部の例外を除き労働者は全額受け取ることができます。
●残業代の支払い上限が決められている
本当は残業代の支払いは義務なのですが、月20時間までしか残業代を支給しないなどの暗黙の了解のもと、残業代の支払いを拒む企業が少なくありません。残業代の一部は支払われているため、「未払いの残業代はない」と思い込まされそうになることもあるようですが、残業代は全額支払うことが義務付けられています。したがって、残業代請求が可能です。
●残業時間の端数が無断で切り捨てられる
労働基準法では、企業は労働者にすべての賃金を支払わなければならないと規定しています。残業代の支払いも例外ではありません。したがって、端数を切り捨てることも許されていません。30分未満は切り捨て、15分未満は切り捨て、などの独自ルールも違法です。
1日単位だけでなく、1ヶ月単位での切り捨ても認められていません。すべての残業代が支払われているかについて、給与明細を確認してみましょう。
●「フレックス制度」や「みなし労働時間制」、「管理職」を理由に残業代が支払われない
就業当初に双方が合意した働き方の中には残業代の支払いが不要なものも存在します。しかし、こちらでご紹介したもののほとんどが残業代の支払い対象です。
「フレックス制度」では、出勤時間や退社時間が裁量に任せられているものの、労働すべき時間は規定されています。規定時間を超えた分については残業代を支払わなければなりません。
「みなし労働時間制」は、給与の中に一定の残業代が含まれているものを指します。ここでも、規定時間を超えた部分については、残業代を支払わなければなりません。さらに、みなし労働時間制を導入するためには、就業規則や雇用契約などに何時間分の残業代が含まれているのかを明記されている必要があります。もし記載されていない場合は残業代の全額を請求可能です。
「管理職」は残業代の支払い義務がないと会社側が主張して、残業代を支払わないケースが少なくありません。しかし、労働基準法における「管理職」とは、経営サイドの立場であること、出退社時間に裁量が持たされているなどの条件を満たしている必要があります。経営者からシフトが決められているなど、実際に役職名がつけられていたとしてもその実態が労働基準法における管理職に該当しないケースでは、使用者側に残業代の支払い義務が生じるとみなされています。いわゆる雇われ店長などでは、残業代の請求ができる可能性が高いケースは少なくありません。
3、残業代請求をするならまずは証拠を
残業代の請求できるケースに該当するならば、ぜひ会社側に請求しましょう。ただし、請求する際には、残業をしていた証拠や、残業代が支払われていない証拠などが必要になります。
まずは、残業をしていた証拠の一例を説明します。
- タイムカードのコピー
- 日誌、日報のコピー
- 会社のパソコンを通じて送信したメールやFAXの送信時間
- 帰宅後の日記
- 友人や家族に対する帰宅の連絡メール
タイムカードのコピーやパソコンの勤怠システムのコピーがあればよいのですが、それらがなくても、諦める必要はありません。上記のように、残業の事実が把握できるものであれば、残業代請求の証拠になります。
4、どれくらい残業代がもらえる? 計算方法について
請求可能な残業代は、未払いとなっている残業代に、1時間あたりの割増賃金をかけたものになります。通常の残業であれば割増率は1.25で、深夜残業であれば1.3です。
請求可能な残業代の概算を計算したい方は、ベリーベスト法律事務所が提供している残業代チェッカーで確認してみてはいかがでしょうか。6つの項目を入力するだけで未払い残業代の概算がわかります。個人情報の入力は不要です。
残業代チェッカー
5、まとめ
今回は、未払いの残業代はどこに相談するべきなのか、おすすめの相談先や具体的な請求方法について、新潟オフィスの弁護士が解説しました。
残業代を請求することは、従業員として当然の権利です。弁護士に相談すれば、請求可能な残業代の計算結果や送付書類の内容について、メールや電話で確認してもらえます。令和元年5月時点で残業代の請求時効は2年と短いため、長期間にわたって残業代の未払いが続いている方は、早めに行動を起こしましょう。
ひとりで悩まず、ベリーベスト法律事務所・新潟オフィスへご相談ください。残業代請求実績豊富な弁護士が適切なアドバイスを行うとともに、未払い分の残業代を支払ってもらえるように交渉します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています