GPSは使い方によって罪に問われる! 警察から連絡がきたらすべきこと

2022年07月19日
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GPSは使い方によって罪に問われる! 警察から連絡がきたらすべきこと

新潟市において小学2年生の女児が殺害され、線路上に遺棄された事件を受けて、平成30年7月、新潟県議会は、性犯罪者に対してGPS端末を装着して監視をするシステムの導入を求める意見書を国に対して提出しました。

GPS端末は、家電量販店やインターネットサイトなどで誰でも手軽に購入できることから、浮気調査などで利用されることも少なくありません。GPSを利用すれば、対象者がどこにいるのかをいつでも確認することができます。そのため、GPSを利用する側としては非常に便利な手段といえるでしょう。

しかし、GPSを取り付けられた側としては、知らないうちに自分の位置情報が取得されることになり、不利益や危害を被る可能性があります。そのため、使い方によっては、GPSの利用は罪に問われる可能性があるのです。

本コラムでは、GPSの取り付けが罪に問われる可能性があるケースなどについて、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、GPSの取り付けが罪に問われる可能性があるケース

以下のようなケースでは、GPSの取り付けが罪に問われる可能性があります。

  1. (1)GPSを取り付ける際に車を傷つけた場合

    浮気調査などを行う際には、対象者の車などにGPS端末を取り付けるといったことが行われる場合があります。

    GPS端末を取り付ける際に、車のシートの一部を剝がしたり、固定するためにビスで車に穴をあけたりした場合には、対象者の所有する物を破損させることになります。
    このような行為をしてしまうと、器物損壊罪に問われる可能性があるのです(刑法261条)。
    ただし、器物損壊罪は、他人の物を破損した場合に成立する犯罪です。
    配偶者の浮気調査のためにご自身の車にGPSを取り付ける際に、車が損傷しても器物損壊罪は成立しません。

  2. (2)GPSを取り付けるために自宅や敷地に立ち入った場合

    GPS端末を取り付けるために、他人の自宅に忍び込んだり、他人の自宅敷地内に立ち入ったりすると、住居侵入罪が成立する可能性があります(刑法130条)。

    「住居侵入罪」というと建物に忍び込むことをイメージする方も多いかもしれませんが、住居ではない敷地内に忍び込むことも住居侵入罪の対象になる点に注意が必要です。
    たとえば、GPS端末を取り付けるために、相手の車が停まっている駐車場に立ち入る行為も、住居侵入罪が成立する可能性があります

  3. (3)ストーカー目的でGPS端末を取り付けた場合

    GPS端末を取り付ける際に相手の所持する物を傷つけた場合には、上記のとおり、器物損壊罪が成立します。
    一方、ストーカー目的でGPS端末を無断で取り付けた場合には、相手の所持する物を傷つけなかったとしてもストーカー規制法違反となる可能性があります

  4. (4)ストーカー目的でGPSにより位置情報を取得した場合

    GPS端末を利用して相手の位置情報を取得することによって、プライバシーの侵害が生じることになります。

    プライバシーの侵害は、あくまでも民事上の問題であるため、原則として刑事上の犯罪には該当しません。
    しかし、ストーカー目的でGPSにより無断で相手の位置情報を取得した場合には、ストーカー規制法違反となります

2、違法とされる根拠となる法律と刑罰

上記の行為をした場合には、以下のような法律に違反することになります。

  1. (1)刑法

    GPS端末を取り付けるために他人の車などを傷つけた場合には、器物損壊罪が成立します(刑法261条)。
    器物損壊罪が成立した場合には、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処せられます
    また、GPS端末を取り付けるために他人の自宅や敷地内に立ち入った場合には、住居侵入罪が成立します(刑法130条)。住居侵入罪が成立した場合には、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられるのです。

  2. (2)ストーカー規制法

    ストーカー規制法では、「恋愛感情などの好意の感情や、それが満たされないことに対する怨恨(えんこん)感情を充足するという目的から、特定の人に対して行われる、つきまといなどの行為」を禁止するための法律です。

    これまでのストーカー規制法では、GPS端末を利用して相手の位置情報を取得する行為は、ストーカー規制法の禁止行為には含まれていませんでした。
    しかし、元交際相手の車などにGPS端末を取り付けて、位置情報を取得するといったストーカー事案が増えてきたこともあり、法改正が行われて、令和3年8月26日からは以下の行為についてもストーカー規制法の対象に含まれることになりました。

    • 無断でGPS機器を取り付ける行為
    • 無断でGPS機器の位置情報を取得する行為


    ストーカー規制法に違反してストーカー行為を行った場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
    また、禁止命令に違反してストーカー行為を繰り返した場合には、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。

  3. (3)迷惑防止条例

    ストーカー規制法では、恋愛感情などの行為の感情やそれが満たされないことに対する怨恨感情を充足するという目的をもってつきまといなどをする行為を対象にしています。
    逆に言えば、そのような目的を有していない場合には、ストーカー規制法による処罰対象にはなりません。

    しかし、都道府県が定める迷惑防止条例に違反する可能性はあります。
    新潟県迷惑行為等防止条例では、GPSの取り付けや位置情報の取得を禁止する規定はありませんが、今後の条例の改正によっては、GPSの取り付けや位置情報の取得も禁止行為に含まれる可能性があるでしょう。

  4. (4)不正アクセス禁止法

    GPS端末を取り付ける方法ではなく、相手のスマートフォンのGPS機能を利用して位置情報を取得することができるアプリを勝手にダウンロードすることによって、行動の監視を行うことがあります。

    アクセス権限がないにもかかわらず、勝手にIDやパスワードを利用してネットワークに侵入する行為は、不正アクセス禁止法が禁止する「不正アクセス行為」に該当する可能性があります。
    不正アクセス行為をした場合には、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。

3、GPSによる犯罪で逮捕された後の流れ

GPSによる犯罪によって逮捕された場合には、以下のような流れで刑事手続きが進んでいきます。

  1. (1)逮捕

    GPSによる犯罪によって逮捕された場合には、警察の留置施設で身柄拘束を受けることになります
    逮捕された被疑者は、警察署において犯行の経緯や理由などについて取り調べが行われ、その後、検察に身柄が送致されます。
    なお、逮捕による身柄拘束には、法律上時間制限が定められており、警察は逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を解放するか、検察に送致しなければならないとされています。

  2. (2)勾留

    警察から被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、引き続き身柄拘束の必要性があると判断した場合には、裁判所に勾留請求を行います。勾留請求が認められた場合には、そこから10日間身柄拘束が継続することになります。
    また、勾留には延長が認められていますので、勾留の延長がされた場合には、さらに10日間身柄拘束が継続します。

  3. (3)起訴または不起訴

    勾留期間が満了する時点までに検察官は、事件を起訴するか不起訴にするかの判断を行います。事件が起訴された場合には、略式裁判または正式裁判が行われます。
    事件が不起訴になった場合には、身柄が解放されて、前科が付くこともありません

4、できるだけ早期に弁護士を依頼すべき理由

GPSに関する犯罪の容疑で逮捕されてしまった場合には、早めに弁護士に依頼をすることをおすすめします。

  1. (1)被害者との示談交渉

    GPSに関する犯罪は、GPSを取り付けられた相手が被害者になりますので、被害者との間で示談交渉を行う必要があります。

    しかし、GPSを取り付けられた相手としては加害者に対して嫌悪感を抱いていますので、加害者が直接被害者に示談を提示しても、断れる可能性が高くなってしまいます。
    スムーズに示談交渉を進めるためには、弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします
    加害者と直接交渉をすることを拒絶している被害者であっても、弁護士が窓口になることによって、示談に応じてくれる可能性が高くなります。
    また、加害者が捜査機関に身柄拘束されているケースで被害者との早期に示談を成立させることができれば、身柄の解放が認められたり、不起訴処分を獲得できたりする可能性を高まります。

  2. (2)取り調べに対するアドバイス

    警察による取り調べを受けるというのは、ほとんどの方が初めて経験することになります。そのため、どのように対応すればよいかわからず、困られる方が多いのです。
    取り調べの際に作成される供述調書は、その後の刑事裁判で重要な証拠となります。
    供述調書に記載された内容に誤りがあったとしても、既に署名押印のある作成済みの供述調書の内容を覆すのは非常に難しいため、取り調べには慎重に対応する必要があります。

    弁護士に依頼をすることによって、身柄拘束をされている場合でも迅速に面会に行き、その場で取り調べに対するアドバイスを行うことができます
    取り調べに関する疑問や不安があれば弁護士に相談をすることができるため、初めての取り調べであっても、安心して臨むことができるのです。

5、まとめ

現在ではGPS端末は誰でも手軽に入手することができるものとなっているため、罪にあたるとは知らないまま、犯罪に該当する行為を行ってしまう方も少なくありません。
逮捕されてしまい、身柄拘束を受けたり、有罪判決を言い渡されたりしてしまった場合には、日常生活に多大な不利益が及ぶことになります。
そのため、逮捕されてしまったら、不利益を軽減するために、早期に弁護士に依頼をすることが大切です

新潟県にお住まいで、GPSに関する犯罪の容疑でご自身が捜査機関に事情を聞かれたり、ご家族が逮捕された方は、ベリーベスト法律事務所 新潟オフィスにまでご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています