強制わいせつ罪とは? 逮捕された場合の流れと量刑を弁護士が解説
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酔っぱらった勢いで、新潟市内の居酒屋で女性の下半身を触ってしまった。強制わいせつ罪で逮捕されるのではないか不安で夜も眠れない……。
飲みの席でのこうした行為は、悪ふざけで済まされるのでしょうか。それとも、または強制わいせつ罪で逮捕されるのでしょうか。
少しでも冷静になるためには、そもそも自分がした行為が強制わいせつ罪に当たるのか、逮捕された場合はどうなるのかなどを知っておいたほうが良いでしょう。
今回のコラムでは、強制わいせつ罪の概要とともに、逮捕や起訴の可能性などを解説します。
1、強制わいせつ罪とはどんな犯罪か
強制わいせつ罪がどんな犯罪なのか、定義や具体的な行為について解説します。
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(1)強制わいせつの定義
強制わいせつとは、相手の意に反してわいせつな行為をすることです。 以下のように、被害者の年齢によってその定義が変わります。
- 被害者が13歳未満…わいせつな行為をした
- 被害者が13歳以上…暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした
わいせつな行為とは、ごく簡単に言えば、被害者が性的な意味で恥ずかしいと感じる行為のことを指します。
暴行または脅迫には、凶器や言葉による脅しのほか、抵抗できない状況であったかなどが関係しますが、合意がない状態でのわいせつ行為であれば、多くの場合は暴行や脅迫があったと考えられています。
ここでのポイントは、被害者が13歳未満であれば、暴行または脅迫を用いずとも、また、相手との合意があったとしても、強制わいせつ罪に該当する点です。
これは、まだ13歳未満の子どもにはわいせつな行為が何かが分からず、合意する能力がないと考えられているからです。 -
(2)強制わいせつに該当する行為
強制わいせつ罪に問われるのは、胸や性器を触る、キスをする、服を脱がせる、抱きつくなどの行為です。
しばしば、強制わいせつなのか、迷惑防止条例違反の痴漢なのかが問われるケースがありますが、その基準は事件の様態によっても異なります。
たとえば、下着の中に手を入れる、服の上から長時間触り続けるなどの悪質な行為であれば、強制わいせつ罪に該当する可能性がありますが、一概には言い切れません。
新潟県内では2018年、飲食店やタクシーの車内で女性職員の尻や太ももを触ったとして、警部補の男が強制わいせつ容疑で逮捕された事例がありました。 -
(3)泥酔していても強制わいせつ罪になる?
強制わいせつ罪には「故意」が必要です。
では、知人の女性と居酒屋に行き、酔った勢いで嫌がる女性の下半身を触ってしまった場合、泥酔していて記憶がないから故意ではないと主張できるのでしょうか。
結論としては、泥酔して本当に記憶がなかったとしても、逮捕されれば反論は難しいです。
もちろん警察としては、訴えた女性が虚偽の申告をしていないかも含めて捜査します。
しかし、泥酔していて記憶がない被疑者より、事件の詳細を説明できる女性のほうが供述の信用性は高いと判断されやすくなります。
取り調べでも、多少の記憶はあるだろうという認識のもと、警察は厳しく追及していきます。
実際、強制わいせつ事件で逮捕・起訴された人の中には、泥酔状態で犯行をおこなった方も多数います。
2、強制わいせつ罪の量刑と社会生活への影響
強制わいせつ罪で有罪になったときの量刑と、考えられる生活への影響について見てみます。
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(1)強制わいせつ罪の量刑
強制わいせつ罪で有罪になると「6ヶ月以上10年以下の懲役」に処せられます。
実刑判決となれば、少なくとも6ヶ月以上は刑務所に収監されることとなり、会社に通うことも、家族と一緒にいることもできません。
なお、強制わいせつ行為によって被害者に怪我をさせた、または被害者を死亡させてしまったという場合は、「強制わいせつ致死傷罪」に問われ、「無期または3年以上の懲役」と、さらに重い処分を受けることになります。 -
(2)前科がついた後の生活への影響
懲役刑のみの強制わいせつ罪では、有罪になり前科がつけば日常生活への影響が非常に大きいです。
具体的には、以下のような影響を及ぼす可能性があります。
- 会社を解雇される
- 再就職への影響(前科調査、ブランク期間が長引くなど)
- 結婚しにくくなる
- 離婚される
- 友人を失う
- 一定の国家資格者の資格はく奪
3、後になって逮捕、起訴されることはあるのか
強制わいせつ事件における後日逮捕や起訴、不起訴の可能性について解説します。
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(1)後日逮捕される可能性はある
後日逮捕とは、裁判所が発行する逮捕状にもとづき、警察官に逮捕されることです。
事件の直後にその場で逮捕される現行犯逮捕と異なり、事件の発覚と証拠が必要です。
被害者の通報により事件が発覚し、防犯カメラの映像や目撃者などの証拠が集まれば、逮捕状が発行され、後日逮捕される可能性はあります。 -
(2)起訴される可能性が高まっている
強制わいせつ事件では、被害者が羞恥心から裁判を望まなかったり、示談によって告訴が取り下げられたりし、起訴率が高くない傾向にありました。
これは、強制わいせつ罪が、告訴がなければ起訴できない犯罪だったからです。
しかし、平成29年の刑法改正により、被害者の告訴がなくても起訴できるようになりました。
近年では被害者保護の取り組みも進んでいるため、被害者がより訴えやすい状況にもなっています。
よって、強制わいせつ罪で起訴される可能性は、以前より高まったと考えることができます。 -
(3)不起訴になるケース
必ずしも不起訴処分になるわけではないものの、不起訴処分を得るための重要な要素に、示談があります。
示談成立に、初犯で悪質性が少ない、反省しているなどの条件が加われば、不起訴処分となる可能性も残ります。
たとえ起訴されたとしても、量刑が軽くなる、被害者との賠償金トラブルを回避できるなどのメリットも考えられますので、示談は非常に重要なものです。
4、強制わいせつ事件は弁護士への相談が鍵
懲役刑のみの重い犯罪である強制わいせつでは、弁護士に相談することが、不起訴処分の獲得や、できるだけ量刑を軽くするためのポイントとなります。
捜査機関での取り調べに適切に対応するための様々なアドバイスを受けることができます。
後日逮捕されるのが不安な場合も、弁護士の付き添いで自首をする、事件発覚前に示談を成立させるなどの方法で、逮捕や起訴を免れる可能性もでてきます。
逮捕前や逮捕直後の段階から具体的にサポートできるのは専門家である弁護士だけですので、早めに相談するようにしましょう。
5、まとめ
今回は、強制わいせつ罪の概要や、逮捕や起訴の可能性などを解説しました。
強制わいせつ事件を起こしてしまった以上、何もしないで不安な毎日を過ごすことは精神的な負担になりますし、今後の流れにも影響を与える可能性があります。
ご自身の行為が強制わいせつ罪に該当するのか、逮捕された後の起訴の可能性や量刑がどの程度になるのかは、事件の様態によっても異なります。
今後考えられる展開や対策などについて、不安な点がある場合は、まずはベリーベスト法律事務所 新潟オフィスまでご相談ください。新潟オフィスの弁護士がじっくりとお話をうかがい適切なサポートをいたします。
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