強制わいせつ行為してしまった被害者と示談したい! 方法や示談金の相場とは?
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飲み会で居酒屋を利用した際に、取引先の女性をトイレの個室に押し込み、強引に胸をもんでキスをしてしまったあなた。女性は、泣きながらトイレを飛び出してそのまま帰宅してしまいました。
酒に酔っていた際は「これくらいのことで大げさだ」と思っていたあなたですが……? 翌朝。酔いがさめて冷静になったとたん「相手に被害届を提出されるかも……」と不安になり、後悔の念にさいなまれていませんか?
このケースでは、強制わいせつ罪に問われる可能性があります。強制わいせつ罪は、非常に厳しい罰則が科される性犯罪です。刑務所に入りたくないとお考えであれば、いち早く謝罪し、示談交渉を行うことが、最良の対策になるでしょう。ここでは、新潟オフィスの弁護士が、強制わいせつ事件の示談について解説します。
1、強制わいせつ罪の概要
冒頭の事例のような行為は、強制わいせつ罪に該当する可能性があります。 まずは、強制わいせつ罪について詳しく解説しましょう。
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(1)強制わいせつ罪の法的根拠
強制わいせつ罪は、刑法176条に規定されている性犯罪のひとつです。ここでは、「暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者」と明記し、強制わいせつ行為が犯罪であることを定義しています。
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(2)強制わいせつ罪が成立する条件
強制わいせつ罪が成立するのは、刑法第176条が示すとおり「暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をした場合」です。
ここでは、強制わいせつ罪が成立する条件を分解して見ていきましょう。
まず「暴行・脅迫を用いて」とは、たとえば殴ったり蹴ったりするような暴力的な行為や、ナイフを突き立てて「抵抗したら刺すぞ」と脅すような行為だけを指しているわけではありません。過去の判例では、暴行・脅迫について「被害者の抵抗を抑圧する程度」と示されています。
難しい言いまわしなので分かりやすく例示してみましょう。- 無理やりトイレの個室に押し込み、密室内で強引に胸を触る
- 満員電車の車内で、大声を出せないのをいいことにパンツの中に手を入れて陰部を触る
- 突然抱きついて胸をもむ
このように、抵抗することを許さない状況を作り出して犯行に及ぶことや、抵抗できない状況に乗じてわいせつな行為をすれば、それ自体が暴行・脅迫だと捉えられます。
次に「わいせつな行為」ですが、こちらも判例の言葉を借りると「他人の性的羞恥心を害する行為」と示されています。- 下着の中に手を入れ、胸や陰部を触る
- 衣服の上からでも、執拗に胸や尻をもむ
- 突然抱きついて胸をもむ
これらの行為は、強制わいせつ罪が定義する「わいせつな行為」に該当します。
また、恋人同士や家族であれば情愛の行為として許されるキスも、相手の承諾なしにすればわいせつな行為とみなされる可能性があります。キスが強制わいせつ罪に該当したケースでは、犯人側は「相手もその気になっていると思っていた」などと釈明しますが、口唇は性的な感情を催す部位であることを考慮すれば、承諾なしに強引にキスすることは間違いなく「わいせつな行為」だといえるでしょう。 -
(3)強制わいせつ罪の罰則
強制わいせつ罪の罰則は、刑法第176条に「6ヶ月以上または10年以下の懲役」と明記されています。
ここで注目したいのが「懲役刑のみ」という点です。多くの犯罪が「◯年以下の懲役または◯◯万円以下の罰金」と規定しているのですが、強制わいせつ罪には罰金刑の規定がありません。
有罪が確定すれば、懲役刑以外の処罰がないことから、強制わいせつ罪がいかに厳しい犯罪であるのかが分かります。 -
(4)相手が13歳未満の場合のわいせつ行為
刑法では「13歳未満へのわいせつ行為」を強制わいせつ罪の対象と規定しています。13歳未満の場合は性的に未成熟で十分な認識力がないとみなされます。たとえ本人が承諾したとしても、「暴力や脅迫を用いて」いなくとも、性的行為自体が暴力的な性行為だと解釈され、強制わいせつ罪に該当します。
2、強制わいせつ事件の示談
数ある刑法犯罪の中でも、特に強制わいせつ事件は示談による解決が有効です。弁護士の観点から、強制わいせつ罪における示談の効果や、交渉の進め方について解説します。
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(1)なぜ強制わいせつ事件で示談が有効なのか?
強制わいせつ罪で逮捕されると、まず短期間で釈放されることは期待できません。
平成29年度版「犯罪白書」によると、強制わいせつ罪で逮捕された後、身柄拘束を継続するための「勾留請求」が行われた割合は96.5%です。ほぼ確実に勾留請求が申請され、満期で23日間もの身柄拘束を受けることになります。
長期間の勾留となれば、会社にもただの病欠ではごまかすことができなくなるでしょう。その後の社会復帰や日常生活に大きな影響を及ぼす可能性は否定できません。
また、強制わいせつ罪は、刑法第176条の規定によって、6ヶ月以上10ヶ月以下の懲役刑が科せられる犯罪です。刑事裁判に発展して有罪判決を受ければ、長短は別にしても懲役刑を免れることはできないと考えられます。同時に、懲役刑を受ければ、数ヶ月・数年単位の欠勤となるため、会社を解雇される可能性がでてきます。
長期間の勾留・懲役刑を防ぐためには、示談が最良の手段です。
強制わいせつ罪は、これまで被害者による被害届の提出がなければ逮捕されることがない犯罪でしたが、2017年に法改正が行われ、警察の判断で逮捕が可能な「非親告罪」の犯罪となりました。それでも、被害者との示談が成立していれば、検察官は勾留請求の申請を避ける傾向があります。また、勾留後に示談が成立すれば刑事裁判の提起である起訴もしないことが多く、起訴されたとしても執行猶予付き判決を得ることが期待できます。
事件後の社会生活を守りたいと考えるのであれば、強制わいせつ事件は示談で解決を目指すべきです。 -
(2)強制わいせつ事件の示談交渉の方法
性犯罪の特徴として、示談交渉が難航することが挙げられます。性犯罪の示談交渉が難しい理由としては「被害者が加害者やその家族と会うのを拒む」という点が挙げられます。
性犯罪の被害者は、加害者本人やその家族と会うことで、性犯罪被害のつらい経験を想起してしまい、心的障害から立ち直れなくなってしまうのです。
そのため、強制わいせつ事件の示談は、示談交渉の専門家でもある弁護士に一任することをおすすめします。弁護士は、あくまでも第三者としての立場を守りながら、事例に照らして妥当な線で被害者との示談交渉を進めてくれます。
逮捕された犯人の家族が示談交渉を持ちかけても全く相手にされなかったが、弁護士に一任したところ示談がまとまったというケースは少なくありません。強制わいせつ事件の示談を有効に進めるためには、弁護士によるサポートが必須であると心得ておきましょう。 -
(3)強制わいせつ事件の示談金の相場
強制わいせつ事件の示談交渉を進める際には、示談金の額を提示することになります。
強制わいせつ事件の示談金は、事案の悪質性や被害者の感情など、事件の様態や交渉によって金額が決まります。ただし、事案の悪質性や被害者の感情によっては、相場程度の示談金では首を縦に振らないこともあり得るでしょう。
3、まとめ
ここまで、強制わいせつ罪の概要や示談の進め方などについてご説明してきました。
強制わいせつ罪は、決して「この程度のことで」などと軽んじてはならない犯罪行為です。あなたにとってはお酒の勢いや一瞬の気の迷いでしかなくても、被害者にとっては、一生消えない心の傷になるものなのです。
しかし、あなた自身も社会生活を営んでいかなければならない以上、前科がついてしまうのは避けておきたいところです。そのためにも、誠実に謝罪して、反省の気持ちを金銭に換えて表しつつ、示談を進めることが重要です。
強制わいせつ事件に発展するかもしれないと不安に悩む日々を過ごしている方は、ぜひベリーベスト法律事務所 新潟オフィスまでご相談ください。新潟オフィスの弁護士が、全力でサポートさせていただきます。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています